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第1章「エクスシア学園」
第11節
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彼女は刃が紫色に光る鎌を造り出し、目にも留まらぬ速さで敵の眼前に迫ると、その体を刻んでいった。一瞬にして、サードアルファの三名はバラバラになって床に散らばった。
敵を排除し終えたそれは、次の対象を探しているようだった。鳴り止まぬ殺意が蠢いている。やがて辺りを見まわす顔がルーテラの方向で止まった。
ルーテラは四肢の回復に全力を注いでおり、逃げることなど出来ない。このままではルーテラが危ないと感じた私は翼をなんとか回復させ、地面を蹴って空中へ舞い上がるとラキナの胸を目指して飛び込んだ。私はラキナに抱きつき、なだめる。
彼女の体つきはゴツゴツとしていてもはや人のそれではない。これではまるで悪魔だ。おそらく、天核の出力は五十パーセントを超えているはずだ。
これ以上このまま放置すれば、元に戻れなくなってしまう。私は他人に肩入れはしないと決めていたはずなのに、この学園に来てから人助けをしてばかりだ。
今回もまた、ラキナを助けたいと思ってしまっている。おそらくこれが本来の私の性格なのだろう。いくら取り繕ったとしても自分の根本的な部分を覆い隠すことはできないのだ。
すると、突然誰かの声が聞こえた気がした。自分の中にいる別の誰かが私に話しかけたのだ。私はその声に従い、自らの天核の出力をあげた。するとどうだろうか、私から発せられた紫色の光に呼応してみるみるうちにその姿は元のラキナへと戻っていった。
私達はそのまま地面に降り立つとその場に倒れ込んでしまった。最後に見えたラキナの表情はとても安心しているように見えた。
模擬戦から一週間が経過した。結局、あの模擬戦は中止になってしまった。三クラスが戦闘不能になり、生き残ったのはサードデルタだけであったが、ラキナの天核出力値が規約違反となっていたために失格となってしまった。
その結果、ラキナは二週間の謹慎処分になり、今もまだ自室で監視下に置かれている。一方であのとき少しばかり天核の出力をあげてしまった私もまた一週間の謹慎処分となり、たった今解放されたばかりだ。
振り返ってみると、あの日の謎は二つある。まずはラキナの天核の出力が暴走したこと。そして、もう一つは私にだけ聞こえた声のことだ。前者はなんらかが原因で誘発された発作と考えられるが、後者は全く検討がつかない。
念のため本部に連絡してみたのだが、原因不明というありきたりで曖昧な解答しか得られなかった。
「おっはー。」
私は元気よく挨拶をしてサードデルタの教室に入る。
「ロセアちゃん、おかえり!」
教室で一人私を出迎えてくれたのはルーテラだった。
「ただいまんもす。ルーテラもすっかり再生したみたいだね。」
先週最後にみた彼女の姿は血まみれで、手足が引きちぎらされた姿だったため完全に元の体に戻っているのをみて安心する。
「まぁ天核が壊れなければウチら不死身だしね。ただ、ちょっと痛いのが嫌だけど。」
ルーテラは相変わらずのサイドテールを左右に揺らしながら、笑っている。
「ところで、アズレアとヴィレスは?」
「あー、なんか呼び出しくらって教官室に行っちゃった。」
「ふーん。」
何かあったのだろうか。
「アズレアちゃんってば模擬戦が失格になったのずっと落ち込んでるんだよ。」
「そんなに勝ちたかったのかな?」
ルーテラはやや首を傾げながら答える。
「んーそうみたい。」
「どして?」
「模擬戦っていうのはね、大規模戦闘訓練ではあるんだけど暗黙の了解っていうのかな。勝ったクラスが毎年昇級試験を受ける資格をもらえているんだよね。」
「アズレアは昇級したいの?」
「うん、前に少しだけ話してくれたことがあるんだけど、自分の家が…」
すると、ガタンと勢いよく扉が開き片目が前髪で隠れた少女が現れた。
「お前、何話そうとしてるんだ。」
アズレアはものすごい剣幕でルーテラを睨みつける。
「え、えとえと。」
「はあ。」
彼女は大きなため息をつく。すると、巻き髪緑髪少女がアズレアを突き飛ばしながら登場した。
「そんなことより昇級ですわー!」
その言葉に私とルーテラは顔を見合わせる。そして、同じ質問を発したのだった。
「昇級?」
敵を排除し終えたそれは、次の対象を探しているようだった。鳴り止まぬ殺意が蠢いている。やがて辺りを見まわす顔がルーテラの方向で止まった。
ルーテラは四肢の回復に全力を注いでおり、逃げることなど出来ない。このままではルーテラが危ないと感じた私は翼をなんとか回復させ、地面を蹴って空中へ舞い上がるとラキナの胸を目指して飛び込んだ。私はラキナに抱きつき、なだめる。
彼女の体つきはゴツゴツとしていてもはや人のそれではない。これではまるで悪魔だ。おそらく、天核の出力は五十パーセントを超えているはずだ。
これ以上このまま放置すれば、元に戻れなくなってしまう。私は他人に肩入れはしないと決めていたはずなのに、この学園に来てから人助けをしてばかりだ。
今回もまた、ラキナを助けたいと思ってしまっている。おそらくこれが本来の私の性格なのだろう。いくら取り繕ったとしても自分の根本的な部分を覆い隠すことはできないのだ。
すると、突然誰かの声が聞こえた気がした。自分の中にいる別の誰かが私に話しかけたのだ。私はその声に従い、自らの天核の出力をあげた。するとどうだろうか、私から発せられた紫色の光に呼応してみるみるうちにその姿は元のラキナへと戻っていった。
私達はそのまま地面に降り立つとその場に倒れ込んでしまった。最後に見えたラキナの表情はとても安心しているように見えた。
模擬戦から一週間が経過した。結局、あの模擬戦は中止になってしまった。三クラスが戦闘不能になり、生き残ったのはサードデルタだけであったが、ラキナの天核出力値が規約違反となっていたために失格となってしまった。
その結果、ラキナは二週間の謹慎処分になり、今もまだ自室で監視下に置かれている。一方であのとき少しばかり天核の出力をあげてしまった私もまた一週間の謹慎処分となり、たった今解放されたばかりだ。
振り返ってみると、あの日の謎は二つある。まずはラキナの天核の出力が暴走したこと。そして、もう一つは私にだけ聞こえた声のことだ。前者はなんらかが原因で誘発された発作と考えられるが、後者は全く検討がつかない。
念のため本部に連絡してみたのだが、原因不明というありきたりで曖昧な解答しか得られなかった。
「おっはー。」
私は元気よく挨拶をしてサードデルタの教室に入る。
「ロセアちゃん、おかえり!」
教室で一人私を出迎えてくれたのはルーテラだった。
「ただいまんもす。ルーテラもすっかり再生したみたいだね。」
先週最後にみた彼女の姿は血まみれで、手足が引きちぎらされた姿だったため完全に元の体に戻っているのをみて安心する。
「まぁ天核が壊れなければウチら不死身だしね。ただ、ちょっと痛いのが嫌だけど。」
ルーテラは相変わらずのサイドテールを左右に揺らしながら、笑っている。
「ところで、アズレアとヴィレスは?」
「あー、なんか呼び出しくらって教官室に行っちゃった。」
「ふーん。」
何かあったのだろうか。
「アズレアちゃんってば模擬戦が失格になったのずっと落ち込んでるんだよ。」
「そんなに勝ちたかったのかな?」
ルーテラはやや首を傾げながら答える。
「んーそうみたい。」
「どして?」
「模擬戦っていうのはね、大規模戦闘訓練ではあるんだけど暗黙の了解っていうのかな。勝ったクラスが毎年昇級試験を受ける資格をもらえているんだよね。」
「アズレアは昇級したいの?」
「うん、前に少しだけ話してくれたことがあるんだけど、自分の家が…」
すると、ガタンと勢いよく扉が開き片目が前髪で隠れた少女が現れた。
「お前、何話そうとしてるんだ。」
アズレアはものすごい剣幕でルーテラを睨みつける。
「え、えとえと。」
「はあ。」
彼女は大きなため息をつく。すると、巻き髪緑髪少女がアズレアを突き飛ばしながら登場した。
「そんなことより昇級ですわー!」
その言葉に私とルーテラは顔を見合わせる。そして、同じ質問を発したのだった。
「昇級?」
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