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第4章「ゼレス」
第1節
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「この騒動に紛れて、本部の制圧が完了しました。これでよろしかったのですか。」
突如、先ほどの老人が私の元へ飛んできた。
「うん、時は満ちた。始めよう爺や。」
「かしこまりました。」
老人はそう言って、私の元を離れようとする。
「待って、爺や。あそこのアズレアも説得してくれない?」
「それはあなた様が直接申された方がよろしいかと。」
「うーん、わかったよ。」
そうして、爺やは一瞬でこの場から去って行った。私はアズレアに追いつこうと、少しばかり速度を上げる。
「アズレア!」
「ロセアっち。さっきの老人なんのようだったんだ?」
アズレアは特に怪しむ様子もなく尋ねてきた。
「ロセアなら、アズレアを家族に会わせられる。」
「どういう意味だ?」
「そのために、力を貸して欲しい。一緒にこの国を、世界を変えよう。」
その私の言葉を聞いたアズレアの瞳はきらめいた。
学園に戻り、ラキナを部屋へ運ぶと私は自室へと戻った。爺やの報告が真実ならば、この学園は現在こちら側のものということだ。
しかし、ここにいる生徒はそんなことなど露知らずに生活しているはずだ。つまり、ここからどのようにしてこちらへ引き込むかが肝心となってくる。
一体どれだけの生徒がこちら側へ来てくれるだろうか。心配事は止まないがひとまず、最も邪魔であった本部の敵対勢力が消えただけでもよしとしよう。
翌日、私はいつものように教室へ向かった。
「おはよー、ラキナ。」
教室には既に白衣姿のラキナがいた。
「あれ、なんで制服じゃないの?」
「今日の授業はないそうよ。だから研究しようと思って。」
「そっかー。」
それはそうだ。完全にこちら側になった本部は今頃、今日の作戦の準備で忙しいことだろう。
見れば、ラキナの足下はストッキングのみで裸足だった。昨日の怪我もそのままだ。天核エネルギーを抜き取ったせいで、やはり記憶の混濁が起きているようだった。
私は自分の机へ行こうと、歩き出す。しかし、ラキナの右手がそれを引き止めた。
「なに?この手は。」
「食事会の約束。いや待って、思い出した。あれは何なの。」
「あれってなんのことかなー?」
「とぼけないで。ロセアさんは何をしようとしているの。」
「ラキナは知らなくていいんだよー。」
私とラキナは教卓を挟んで向かい合った。
「答えて。」
そう言うと、ラキナは突然拳銃を私に向けた。記憶は不鮮明でもこの不穏な学園内の空気を感じ取っていたというわけか。
「それでロセアを殺す気―?」
対して私も天核を起動する。心臓がドクンと音を立て、目が赤く発光すると黒い翼がリュックサックから生えた。
「ラキナにもう天核の力はない。その拳銃もただの鉄くずだよ?」
私は教卓に乗り出し、両手で頬杖をつくとラキナを見つめた。
「自分がなんで怪我をしたのかとか、覚えてる?」
突如、先ほどの老人が私の元へ飛んできた。
「うん、時は満ちた。始めよう爺や。」
「かしこまりました。」
老人はそう言って、私の元を離れようとする。
「待って、爺や。あそこのアズレアも説得してくれない?」
「それはあなた様が直接申された方がよろしいかと。」
「うーん、わかったよ。」
そうして、爺やは一瞬でこの場から去って行った。私はアズレアに追いつこうと、少しばかり速度を上げる。
「アズレア!」
「ロセアっち。さっきの老人なんのようだったんだ?」
アズレアは特に怪しむ様子もなく尋ねてきた。
「ロセアなら、アズレアを家族に会わせられる。」
「どういう意味だ?」
「そのために、力を貸して欲しい。一緒にこの国を、世界を変えよう。」
その私の言葉を聞いたアズレアの瞳はきらめいた。
学園に戻り、ラキナを部屋へ運ぶと私は自室へと戻った。爺やの報告が真実ならば、この学園は現在こちら側のものということだ。
しかし、ここにいる生徒はそんなことなど露知らずに生活しているはずだ。つまり、ここからどのようにしてこちらへ引き込むかが肝心となってくる。
一体どれだけの生徒がこちら側へ来てくれるだろうか。心配事は止まないがひとまず、最も邪魔であった本部の敵対勢力が消えただけでもよしとしよう。
翌日、私はいつものように教室へ向かった。
「おはよー、ラキナ。」
教室には既に白衣姿のラキナがいた。
「あれ、なんで制服じゃないの?」
「今日の授業はないそうよ。だから研究しようと思って。」
「そっかー。」
それはそうだ。完全にこちら側になった本部は今頃、今日の作戦の準備で忙しいことだろう。
見れば、ラキナの足下はストッキングのみで裸足だった。昨日の怪我もそのままだ。天核エネルギーを抜き取ったせいで、やはり記憶の混濁が起きているようだった。
私は自分の机へ行こうと、歩き出す。しかし、ラキナの右手がそれを引き止めた。
「なに?この手は。」
「食事会の約束。いや待って、思い出した。あれは何なの。」
「あれってなんのことかなー?」
「とぼけないで。ロセアさんは何をしようとしているの。」
「ラキナは知らなくていいんだよー。」
私とラキナは教卓を挟んで向かい合った。
「答えて。」
そう言うと、ラキナは突然拳銃を私に向けた。記憶は不鮮明でもこの不穏な学園内の空気を感じ取っていたというわけか。
「それでロセアを殺す気―?」
対して私も天核を起動する。心臓がドクンと音を立て、目が赤く発光すると黒い翼がリュックサックから生えた。
「ラキナにもう天核の力はない。その拳銃もただの鉄くずだよ?」
私は教卓に乗り出し、両手で頬杖をつくとラキナを見つめた。
「自分がなんで怪我をしたのかとか、覚えてる?」
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