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第20話 でも、これが作戦かもしれないから、慎重に行こう
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それにしても、箕輪さんたも東山さんも、こんなことがあったと教えてくれてもよかったのに。もしかしたら、ヒバリ先輩が「卒業」したのはその件が関係しているのかもしれない。
でも、何かあってもちゃんと助けに行くよと言ってくれれば、私はそう簡単に「卒業」なんてしないよ。
せっかく、世の中のために「悪」と戦う「善」の存在たる魔法少女になれたのだから、私は戦い続ける。
そう、活力が衰えて、「もうそろそろ」と引導を渡されるまでは。
でも、この日、助けは来なかった。
次の日も、朝からカハラ署長による取り調べを受けた。
「お前はマールムの一員で、再び蜂起を企てているんじゃないのか?」
「蜂起って何ですか?」
「いや、しらばっくれるにしても、それはないだろう。お前くらいの歳でも、国中が大騒ぎになった五年前のマールムの武装蜂起を覚えていないはずがない。ましてやマールムの一員だったらな。そもそもお前の家族も蜂起に加わったんじゃないか?」
「武装蜂起?」
「そうだよ。魔人こそこの国のトップに立つべきだと言って、あちこちの軍の駐屯地や警察を襲ったじゃないか」
「それで、どうなったんですか?」
「それはお前らが身をもって知っているはずだろう。俺たち警察もマールムと戦い。一時はひやっとしたもんだが、幸いティーツィアがこっちについてくれたから助かった」
「ティーツィアはマールムと戦ったのですか?」
「いちいち調子が狂う奴だな。同じ魔人でもティーツィアは穏健派で、力を使えない普通の人間と共に暮らすことを目指していたんだから」
ということは、魔人とは力を使える人のことのようだ。
「じゃあ、マールムは全滅したんですか」
「だからなんで俺にそれを聞く? 主立ったメンバーはすべて戦死したり、捕まって処刑されたりしたはずが、なにせ魔人だからな、取りこぼされて今でも潜伏している残党はいるだろう。お前は残党の一員で、街の様子を調べに現れたんじゃないか?」
「だから言いましたよね、私はティーツィアで、マールムと戦っていたって。そもそも、私は魔人じゃなくて、普通の人間です」
「ではなんで力を使えた? 昨日お前が現れたとき、詠唱を行って、数メートルだが瞬間移動をしたのを大勢が見ていたんだぞ。それが力じゃなくてなんなのだ?」
「確かにそれは力を使いましたが、私はマールムと戦うためにティーツィアの人から力を分け与えてもらったんです。普通の人間なんです」
「分け与えてもらった? そんなはずはない。ティーツィアも力を使うことも、ましてや魔人でない普通の人間に力を与えることも禁じられている。奴らはそんなことをするはずがない。ああもう、頭がこんがらがってきた。少したばこを吸ってくるから、ミサ君、その間頼む。有用なことが聞けたら、調書にしておいてくれ」
そうまくし立てて、カハラ署長は取り調べ室を出て行った。
なぜかミサさんも部屋を出て行った。
頭がこんがらがるのはこっちの方だ。
一体マールムとティーツィアって、どういう人たちなのだろう。
この世界、というかこの国のマールムとティーツィアは、元の世界、いや、日本にいたマールムとティーツィアとどういう関係なのだろう。
だんだんここが日本でも外国でもなく、異世界ではないかという思いが強くなってきた。
「時空の狭間なんて、私たちみたいにもともと力を持っていても、よっぽど頑張らないと無理です」
そう箕輪さんが言っていた。
あのときは時空の狭間ってあるんだなあぐらいに聞いていたけれど、時空の狭間に人間を飛ばせるなら、時空の向こう側、つまり異世界にも人間を飛ばすことができるはずよね。
「お待たせしました」
そんなことを考えていたら、ミサさんが戻ってきた。片手でマグカップを二個持っている。
それを机の上に置き、私の向かい側に座る。
コーヒーのいい香りが広がる。
「お砂糖はスプーンに一杯だけ入れてきたけれど、よかったかしら」
「あ、はい、ありがとうございます」
あ、これ、取り調べ官交代ってやつだ。
強面の取り調べ官では落ちなかったとき、優しげな取り調べ官が出てくる。
そして、カツ丼を出すのよ。
「さあ、食え。あんまり強情を通すもんじゃないぞ。故郷のお母さんもお前を待っているだろう。早くしゃべった方が、俺たちもお前のいいようにしてやることができるんだ」
そう言って、自白を促すのだ。
今ここではカツ丼ではなくて、コーヒーだけれど。
「なんと言われても、知らないことは知りません」
私は先手を打ってそう言った。
「何も自白を引き出そうっていうんじゃないわ」
「じゃあ、あの、その」
「ミサでいいわ」
「ミサさんは、私にどうしろとおっしゃるんですか」
「私も取り調べの経験はそこそこ長いからね、本当のことを言っているのか、嘘をついているのかはなんとなくわかるの。それに、まだヒラだから署長みたいに立場ってものもないし、何件検挙しないといけないっていうプレッシャーもないわ」
「はあ、そうなんですか」
「そうなの。で、あなたからは嘘の雰囲気は感じないんだよね。というか、嘘をつこうにも、何も知らないって感じかな」
あ、この人、いい人なのかな。
でも、これが作戦かもしれないから、慎重に行こう。
でも、何かあってもちゃんと助けに行くよと言ってくれれば、私はそう簡単に「卒業」なんてしないよ。
せっかく、世の中のために「悪」と戦う「善」の存在たる魔法少女になれたのだから、私は戦い続ける。
そう、活力が衰えて、「もうそろそろ」と引導を渡されるまでは。
でも、この日、助けは来なかった。
次の日も、朝からカハラ署長による取り調べを受けた。
「お前はマールムの一員で、再び蜂起を企てているんじゃないのか?」
「蜂起って何ですか?」
「いや、しらばっくれるにしても、それはないだろう。お前くらいの歳でも、国中が大騒ぎになった五年前のマールムの武装蜂起を覚えていないはずがない。ましてやマールムの一員だったらな。そもそもお前の家族も蜂起に加わったんじゃないか?」
「武装蜂起?」
「そうだよ。魔人こそこの国のトップに立つべきだと言って、あちこちの軍の駐屯地や警察を襲ったじゃないか」
「それで、どうなったんですか?」
「それはお前らが身をもって知っているはずだろう。俺たち警察もマールムと戦い。一時はひやっとしたもんだが、幸いティーツィアがこっちについてくれたから助かった」
「ティーツィアはマールムと戦ったのですか?」
「いちいち調子が狂う奴だな。同じ魔人でもティーツィアは穏健派で、力を使えない普通の人間と共に暮らすことを目指していたんだから」
ということは、魔人とは力を使える人のことのようだ。
「じゃあ、マールムは全滅したんですか」
「だからなんで俺にそれを聞く? 主立ったメンバーはすべて戦死したり、捕まって処刑されたりしたはずが、なにせ魔人だからな、取りこぼされて今でも潜伏している残党はいるだろう。お前は残党の一員で、街の様子を調べに現れたんじゃないか?」
「だから言いましたよね、私はティーツィアで、マールムと戦っていたって。そもそも、私は魔人じゃなくて、普通の人間です」
「ではなんで力を使えた? 昨日お前が現れたとき、詠唱を行って、数メートルだが瞬間移動をしたのを大勢が見ていたんだぞ。それが力じゃなくてなんなのだ?」
「確かにそれは力を使いましたが、私はマールムと戦うためにティーツィアの人から力を分け与えてもらったんです。普通の人間なんです」
「分け与えてもらった? そんなはずはない。ティーツィアも力を使うことも、ましてや魔人でない普通の人間に力を与えることも禁じられている。奴らはそんなことをするはずがない。ああもう、頭がこんがらがってきた。少したばこを吸ってくるから、ミサ君、その間頼む。有用なことが聞けたら、調書にしておいてくれ」
そうまくし立てて、カハラ署長は取り調べ室を出て行った。
なぜかミサさんも部屋を出て行った。
頭がこんがらがるのはこっちの方だ。
一体マールムとティーツィアって、どういう人たちなのだろう。
この世界、というかこの国のマールムとティーツィアは、元の世界、いや、日本にいたマールムとティーツィアとどういう関係なのだろう。
だんだんここが日本でも外国でもなく、異世界ではないかという思いが強くなってきた。
「時空の狭間なんて、私たちみたいにもともと力を持っていても、よっぽど頑張らないと無理です」
そう箕輪さんが言っていた。
あのときは時空の狭間ってあるんだなあぐらいに聞いていたけれど、時空の狭間に人間を飛ばせるなら、時空の向こう側、つまり異世界にも人間を飛ばすことができるはずよね。
「お待たせしました」
そんなことを考えていたら、ミサさんが戻ってきた。片手でマグカップを二個持っている。
それを机の上に置き、私の向かい側に座る。
コーヒーのいい香りが広がる。
「お砂糖はスプーンに一杯だけ入れてきたけれど、よかったかしら」
「あ、はい、ありがとうございます」
あ、これ、取り調べ官交代ってやつだ。
強面の取り調べ官では落ちなかったとき、優しげな取り調べ官が出てくる。
そして、カツ丼を出すのよ。
「さあ、食え。あんまり強情を通すもんじゃないぞ。故郷のお母さんもお前を待っているだろう。早くしゃべった方が、俺たちもお前のいいようにしてやることができるんだ」
そう言って、自白を促すのだ。
今ここではカツ丼ではなくて、コーヒーだけれど。
「なんと言われても、知らないことは知りません」
私は先手を打ってそう言った。
「何も自白を引き出そうっていうんじゃないわ」
「じゃあ、あの、その」
「ミサでいいわ」
「ミサさんは、私にどうしろとおっしゃるんですか」
「私も取り調べの経験はそこそこ長いからね、本当のことを言っているのか、嘘をついているのかはなんとなくわかるの。それに、まだヒラだから署長みたいに立場ってものもないし、何件検挙しないといけないっていうプレッシャーもないわ」
「はあ、そうなんですか」
「そうなの。で、あなたからは嘘の雰囲気は感じないんだよね。というか、嘘をつこうにも、何も知らないって感じかな」
あ、この人、いい人なのかな。
でも、これが作戦かもしれないから、慎重に行こう。
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