突然婚約破棄された出来損ない令嬢は、騎士になって世の中を見返します!

香取鞠里

文字の大きさ
5 / 12

5.甘く厳しい訓練の日々

しおりを挟む
「おいおい、大丈夫か? そんなんで。ほら、もう一回最初からやり直しだ」


「そんな……」


 こちらがギブアップの目を向けるも、私の騎士としての教育を行ってくれているルキは、全く私の声なんて聞こえていないかのように、重たいため息を吐き出す。


「もう出来損ないって言われるのが嫌なら立て」

「えええー」


 けれど、ルキの言うとおりなので立ち上がって、再びルキに教えてもらった型を取る。


 ルキの特訓は容赦なかった。

 朝から晩までみっちり二人で特訓を行うこと3日。

 ていうか、ずっと私の特訓に付きっきりだけど、ルキは自分のことはしなくていいのだろうか?

 そんなことを考えながら剣を振っていると、不意にルキに頭をペチッと叩かれる。


「いったぁ! 何すんのよ!」

「今、何考えてた?」

「な、何って……! ルキは、私の特訓が始まってからずっと私の特訓につきっきりだけど、自分のことしなくていいのかなって……」


 するとルキはにやぁっと嫌な笑みを浮かべてこちらに顔を突き出した。


「へえ~、俺のことが気になっちゃってるの?」

「そんなわけ無いでしょうが!」


 思わずルキに向かって怒っちゃったけれど、私の胸はドキドキと激しく鼓動を刻んでいる。

 あれ? 私、どうしてこんなにドキドキしてるんだろう……?


 こんな風に私はルキに手とり足とり、時にはからかわれたりしながら、厳しくも楽しい時間を重ねていった。


 厳しい訓練を重ねること、約一年半が経過する。


「おお! イルア、かなり良くなったな!」

「本当!?」


 出来損ないと言われていたのが嘘のように、私は着実に実力を上げていた。


「ああ。イルアって、実は剣術の方に能力が長けていたのかもな。以前までのお前が嘘みたいだ」

「もう、誰にも出来損ないとは言わせないね」

「俺もそう思う」


 一通り練習を終えてルキの方へ話しながら歩み寄る。
 そのとき、思わず私はなにもないところでつまずいてしまった。


「うわっ」

 こういうところは、以前の出来損ないのときと変わらないなと思う。


「おい、大丈夫か!?」


 違うのは、そばで私の身体を支えて、心配してくれる人が今はいるということだ。


「ありがとう、ルキ……」


 思わずルキと一緒に居るときに突如心臓が暴れ出すのは、今も変わっていない。

 思わず顔まで熱くなってくるのだから、困ったものだ。

 
「本当、剣術の腕はかなり上げたけど、そういうところは抜けてるままだよな」

「も、もう……!」

「そろそろ団員と一緒の稽古にも入れてもらえることが決まってるんだから、変なところで怪我するなよ?」

「もちろんよ」


 そのとき、夕陽に照らされた空間の中、異様な空気のまま私とルキはいつの間にか見つめあっていた。

 ルキの手がふわりと私の頬に触れる。


「……えっと、ルキ……?」


 いつもと違う、何となく漂う甘い空気に耐えきれずに思わず口を開く。


「イルア……、俺……」


 私を見つめたまま、少し思い詰めたようにルキが口を開きかけたとき、突如街の方から悲鳴のような声が聞こえた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「平民とでも結婚すれば?」と捨てられた令嬢、隣国の王太子に溺愛されてますが?

ゆっこ
恋愛
「……君との婚約は、ここで破棄させてもらう」  その言葉を、私は静かに受け止めた。  今から一時間前。私、セレナ・エヴァレットは、婚約者である王国第一王子リカルド・アルヴェイン殿下に、唐突に婚約破棄を言い渡された。 「急すぎますわね。何か私が問題を起こしましたか?」 「いや、そういうわけではない。ただ、君のような冷たい女性ではなく、もっと人の心を思いやれる優しい女性と生涯を共にしたいと考えただけだ」  そう言って、彼は隣に立つ金髪碧眼の令嬢に視線をやった。

婚約破棄された悪役令嬢は逆玉に乗せる💗乙女ゲームに転生してしまったゼネコン親父

青の雀
恋愛
聖女と結婚したいからと婚約破棄されてしまったマーガレット ショックのあまり寝込んでしまう 夢の中で前世の記憶を取り戻すが、前世ニッポン人で高校生の時に父親が亡くなり国立大学の工学部に進学するも、弟妹を養うため様々なアルバイトを経験する その後、就職氷河期にもかかわらず、大手ゼネコンに入社し、45歳で役員に昇り詰める。 高校生の娘が遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したことを知るが、マーガレットとして、鈴之助の記憶と経験をもとにゲームのストーリー通りには行かせないと奮闘する 肉体ブティックに入れず、別建てにしました 婚約破棄から玉の輿みたいな話です

髪の毛が綺麗すぎると婚約破棄された令嬢は、元婚約者通うサロンで毛根壊滅薬を使う

常野夏子
恋愛
社交界で「髪の美しさ」を理由に婚約破棄された令嬢ミーア。 失意に沈む彼女だったが、やがて冷徹な復讐心が胸に芽生える。 やがて恐ろしい薬を手に入れたミーアは、元婚約者が通う高級サロンに忍び込み計画を実行に移す—— 一滴で全てを奪い去るその力。 目を覆いたくなるほどの変貌。 そして、ミーアはさらに世界規模の支配に手を伸ばす——?

貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。

木山楽斗
恋愛
アルフェンド伯爵家の妾の子として生まれたエノフィアは、軟禁に近い状態で生活を送っていた。 伯爵家の人々は決して彼女を伯爵家の一員として認めず、彼女を閉じ込めていたのである。 そんな彼女は、ある日伯爵家から追放されることになった。アルフェンド伯爵家の財政は火の車であり、妾の子である彼女は切り捨てられることになったのだ。 しかし同時に、彼女を訪ねてくる人が人がいた。それは、王国の第三王子であるゼルーグである。 ゼルーグは、エノフィアを妻に迎えるつもりだった。 妾の子であり、伯爵家からも疎まれていた自分が何故、そんな疑問を覚えながらもエノフィアはゼルーグの話を聞くのだった。

『冷酷な悪役令嬢』と婚約破棄されましたが、追放先の辺境で領地経営を始めたら、いつの間にか伝説の女領主になっていました。

黒崎隼人
ファンタジー
「君のような冷たい女とは、もう一緒にいられない」 政略結婚した王太子に、そう告げられ一方的に離婚された悪役令嬢クラリス。聖女を新たな妃に迎えたいがための、理不尽な追放劇だった。 だが、彼女は涙ひとつ見せない。その胸に宿るのは、屈辱と、そして確固たる決意。 「結構ですわ。ならば見せてあげましょう。あなた方が捨てた女の、本当の価値を」 追放された先は、父亡き後の荒れ果てた辺境領地。腐敗した役人、飢える民、乾いた大地。絶望的な状況から、彼女の真の物語は始まる。 経営学、剣術、リーダーシップ――完璧すぎると疎まれたその才能のすべてを武器に、クラリスは民のため、己の誇りのために立ち上がる。 これは、悪役令嬢の汚名を着せられた一人の女性が、自らの手で運命を切り拓き、やがて伝説の“改革者”と呼ばれるまでの、華麗なる逆転の物語。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

竜神に愛された令嬢は華麗に微笑む。〜嫌われ令嬢? いいえ、嫌われているのはお父さまのほうでしてよ。〜

石河 翠
恋愛
侯爵令嬢のジェニファーは、ある日父親から侯爵家当主代理として罪を償えと脅される。 それというのも、竜神からの預かりものである宝石に手をつけてしまったからだというのだ。 ジェニファーは、彼女の出産の際に母親が命を落としたことで、実の父親からひどく憎まれていた。 執事のロデリックを含め、家人勢揃いで出かけることに。 やがて彼女は別れの言葉を告げるとためらいなく竜穴に身を投げるが、実は彼女にはある秘密があって……。 虐げられたか弱い令嬢と思いきや、メンタル最強のヒロインと、彼女のためなら人間の真似事もやぶさかではないヒロインに激甘なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:4950419)をお借りしています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...