暗殺目的で結婚に挑んだ王女は、敵国の王子に溺愛されました。

香取鞠里

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 私の侍女も一緒に彼の侍女とともにティータイムをセッティングしてくれる。
 もしもクラウド側も私と同じようにお互いによく思っていなかった場合、私の身の危険も考えて、私のお付きの者もさりげなくルカリアでの使者の様子を監視してくれているのだ。

 だから、目の前に出された紅茶は安全だろう。現に、クラウドと私がどちらがどちらを取っても大丈夫な風に出された。


「では、いただこうか」

 そのとき、「クラウド様」と外からノックが入り、彼はドアのそばにいた侍女の方へ行く。

 チャンスだ!!

 今、クラウド側の視線は全て私やテーブルの紅茶から離れている。
 私は私の侍女と目配せすると、母親から預かった粉末を少しひとつの紅茶に混ぜ混んだ。

 これは、猛毒の薬草を粉末にしたものだ。
 紅茶と色が似ていることや味が変化しないとの話から、ちょっとのことじゃ気づかれないだろう。
 飲むと、数分以内に体内で異常が起きるという話だが、これでクラウドが倒れたら、そのどさくさに紛れて私はシグノアに帰ろう。

 無事に粉末を入れ終わった後、何も知らないクラウドがこちらに戻ってくる。


「すまない。では、いただこうか。少し冷めてしまったかな」

「あ……っ」


 そのとき、あろうことか、クラウドは私が粉末を仕込んだ方と逆のカップを手にした。

「ああ、こちらのカップの方が先に湯を淹れていたからな。紅茶には詳しくないが、そちらのカップの方が冷めてないだろうと思って」

 クラウドが自分から少し離れた方のカップを手にしたことを私が不審に思ったことを悟ったのだろう。クラウドは、心配無用とばかりにそう告げる。

 けれど、そうじゃない。

 クラウドがそれを飲むということは、私が猛毒入りの紅茶を飲むということだ。
 悪いことはするなという罰なのだろうか。
 私はためらいがちに視線を猛毒入りの紅茶に移す。

 紅茶に罪はないとはいえ、今回は失敗だ。

 飲まないのか?と目で問いかけるクラウドに不審に思われないようにカップを手に取ると、私は自然に見えるように手を滑らせてカップを落下させた。


「大丈夫か?」

 そのとき、慌てたようにクラウドが立ち上がり、私のそばに来て私の体をつかんだ。

 カップは割れはしなかったし、私のドレスも無事だ。私の侍女が想定の範囲内とばかりにこぼれた紅茶を率先して片付けに入った。

 クラウドは私に何ともないことを確認して、ホッと肩の力が抜けたようだった。


「アリー王女が怪我や火傷をしなかったのなら良かった。新しいのは用意させるから。後でゆっくり飲むといい」

「…………っ」


 自分が悪いとはいえ、私を心配して気遣うクラウドに、無性に腹が立った。
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