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第四章 竜夢 ~即時取得~
遥かなる階
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ルロイが見上げると、
灰がかった大理石のような材質の
石材が均質に螺旋上に積み上げられ
さながら巨大な螺旋階段が
天へ向かってそびえ立っている。
他のダンジョン群同様、
この塔はレッジョが街としての歴史を
歩み始めた時代にはすでに
この場所にあったのだ。
見る者によって不遜にも
天へと届く塔を創り、高慢にも
神へ挑みし文明の末路を思わせる。
が、人知を超えた何かが人間の限界を
越えんとする冒険者を
招き試しているようにも見える。
「着いちゃいましたね、『遥かなる階』
マティスもまた『遥かなる階』の
高みの果ての大空を見上げていた。
「俺は、少し前まで空に居たんだ。
あの無限のような……
もう追放されちまったが」
自嘲気味にマティスが呟く。
地上から遥かに高い空の青みが既に、
それこそがマティスにとっての
本来の故郷であるかのようであった。
「さぁ、早く行こうじゃねぇか」
マティスが皮肉っぽくではあるが、
初めてルロイに笑って見せた。
『遥かなる階』その内部は
意外にすっきりと広々としていた。
ルロイとしては複雑怪奇な迷宮を
想像していたのだが、中央の柱の周りを
塔全体が螺旋階段式にせり上がり、
昇るべき方向を指し示している。
構造はシンプルだが雰囲気は荘重。
冒険者であれば純粋で美しいと感じる
そんなダンジョンであった。
「さて……」
青い顔にした角を生やした
一つ目の戦鬼が五、六、七……
いや上の階から次々と獲物の人間の臭い
に反応して降りてくる。
既に十から先は数える余裕すらなくなる。
戦鬼どもは、餓えたように皆一様に
ギチギチと歯ぎしりをして、
各々の斧や剣、槍を握りしめ
一歩ずつルロイとマティスに迫る。
これらは皆このダンジョンで、
命を落とした冒険者の成れの果て。
「こりゃ、ダンジョンの威容に
舌を巻いてる暇はありませんね」
「とっとと片付けるぞ」
マティスはハルバードを振り回し、
戦鬼が手のする得物、
それに手や足に刃を引っ掛け、
難なく相手のバランスを崩してから、
刺突や斬撃で次々にとどめを刺してゆく。
次々と敵と切り結び、
本調子になっていったのかマティスは
ハルバードを振り回す速度を早めて行く。
両腕で得物を旋回させ、
青白い戦鬼たちを次々に蹴散らし、
肉塊へと戻す。
そのまま階段を上へ上へと
駆け上って行く。
ルロイもまた、マティスが蹴散らした
戦鬼の死骸の一部に
転びそうになりながらも、
マティスに遅れずに付いてゆく。
ルロイは内心自ら護身用の短剣を
振るわずに済むことに安堵しつつも、
暴風さながらのマティスの戦いぶりに
気後れしつつもあった。
「凄い槍捌きですね。
速すぎて人間技に見えない」
「なに、年がら年中空を駆け回ってりゃ、
この程度の速度でものが見えるのが
もはや当たり前になってくる」
階段を駆け上って行くにつれ、
明らかに戦鬼たちの戦い方も、
最初に出くわした者たちよりも手ごわく
洗練された戦い方になっていった。
塔を駆け上がるごとに敵の質も
上がっているのは明白だった。
無敵のように思えたマティスの進撃も
次第に鈍り始めていった。
それでもマティスが戦闘で押される
というほどの事はなく、問題は
次々に階段から襲い来る
戦鬼たちの圧倒的な数であった。
マティスの額に汗の玉が浮かび
ようやく少しばかりの疲労の色
が見え隠れする。
「マティスさん、大丈夫ですか?」
「へっ、お前は自分の心配だけしてろ」
多少声の調子を乱しながらも
マティスは余裕を見せつける。
当のマティスはと言うと、
自分と同じ得物であるハルバードを持った
プレート式のフルアーマーを着込んだ
戦鬼と相対している。
お互いに、得物の斧刃をバインドさせ
にらみ合っている最中であった。
「ま、流石にそういつまでも
簡単に通してはくれねぇよな」
膠着状態を打破するため、
マティスは素早く得物を巻き
斧刃で戦鬼のハルバードに引っ掛ける。
戦鬼はそうはさせまいと、
マティスの斧刃を押し上げる。
そして、素早く得物をマティスの
ハルバードから外しそのまま引き下げ、
マティスの胸を突こうとする。
すかさずマティスが柄で防ぐと、
今度は得物の刃をマティスの顔の前に
持って行き隙のある箇所を狙う。
マティスはハルバードの前部で
突きを払い、右足を踏み込みつつ
ハルバードの前後を入れ替え、
更に石突の部分で戦鬼の得物を横へ払う。
それにつられ戦鬼が体勢を崩した隙に、
ハルバードを横に回転させ
斧刃で戦鬼の首をそのまま刎ねる。
ルロイは思わず息をのむ。
ほれぼれするような技術と
力のせめぎ合いである。
これなら自分などが心配など
杞憂であったかと胸をなでおろす。
が、ようやく一体倒したと思ったら、
今度は槍を下段に構えた戦鬼が
奇声と共にマティスに突進してくる。
すんでのところでマティスは、
ハルバードで槍の穂先を上から
押さえつけ突進を防ぐ。
「ギアァァァ」
「ちっ、キリがねぇ!」
幸い、戦鬼たちはマティスの存在に
釘付けになっており、
柱や階段の陰に隠れているルロイには
今のところ目もくれない。とは言え、
流石にマティス一人に任せきるのは
限界であることを悟る。
「悪いな、雑魚とは言え
もう俺一人じゃ対応しきれん」
「で、ですよねぇ~」
「前言撤回。自分の身は自分で守れ」
マティスがさらりとルロイに告げる。
それとほぼ同時にロングソードと
円盾を装備した戦鬼の一体が
ルロイを睨みつけ獰猛な笑みで
にじり寄ってくる。
灰がかった大理石のような材質の
石材が均質に螺旋上に積み上げられ
さながら巨大な螺旋階段が
天へ向かってそびえ立っている。
他のダンジョン群同様、
この塔はレッジョが街としての歴史を
歩み始めた時代にはすでに
この場所にあったのだ。
見る者によって不遜にも
天へと届く塔を創り、高慢にも
神へ挑みし文明の末路を思わせる。
が、人知を超えた何かが人間の限界を
越えんとする冒険者を
招き試しているようにも見える。
「着いちゃいましたね、『遥かなる階』
マティスもまた『遥かなる階』の
高みの果ての大空を見上げていた。
「俺は、少し前まで空に居たんだ。
あの無限のような……
もう追放されちまったが」
自嘲気味にマティスが呟く。
地上から遥かに高い空の青みが既に、
それこそがマティスにとっての
本来の故郷であるかのようであった。
「さぁ、早く行こうじゃねぇか」
マティスが皮肉っぽくではあるが、
初めてルロイに笑って見せた。
『遥かなる階』その内部は
意外にすっきりと広々としていた。
ルロイとしては複雑怪奇な迷宮を
想像していたのだが、中央の柱の周りを
塔全体が螺旋階段式にせり上がり、
昇るべき方向を指し示している。
構造はシンプルだが雰囲気は荘重。
冒険者であれば純粋で美しいと感じる
そんなダンジョンであった。
「さて……」
青い顔にした角を生やした
一つ目の戦鬼が五、六、七……
いや上の階から次々と獲物の人間の臭い
に反応して降りてくる。
既に十から先は数える余裕すらなくなる。
戦鬼どもは、餓えたように皆一様に
ギチギチと歯ぎしりをして、
各々の斧や剣、槍を握りしめ
一歩ずつルロイとマティスに迫る。
これらは皆このダンジョンで、
命を落とした冒険者の成れの果て。
「こりゃ、ダンジョンの威容に
舌を巻いてる暇はありませんね」
「とっとと片付けるぞ」
マティスはハルバードを振り回し、
戦鬼が手のする得物、
それに手や足に刃を引っ掛け、
難なく相手のバランスを崩してから、
刺突や斬撃で次々にとどめを刺してゆく。
次々と敵と切り結び、
本調子になっていったのかマティスは
ハルバードを振り回す速度を早めて行く。
両腕で得物を旋回させ、
青白い戦鬼たちを次々に蹴散らし、
肉塊へと戻す。
そのまま階段を上へ上へと
駆け上って行く。
ルロイもまた、マティスが蹴散らした
戦鬼の死骸の一部に
転びそうになりながらも、
マティスに遅れずに付いてゆく。
ルロイは内心自ら護身用の短剣を
振るわずに済むことに安堵しつつも、
暴風さながらのマティスの戦いぶりに
気後れしつつもあった。
「凄い槍捌きですね。
速すぎて人間技に見えない」
「なに、年がら年中空を駆け回ってりゃ、
この程度の速度でものが見えるのが
もはや当たり前になってくる」
階段を駆け上って行くにつれ、
明らかに戦鬼たちの戦い方も、
最初に出くわした者たちよりも手ごわく
洗練された戦い方になっていった。
塔を駆け上がるごとに敵の質も
上がっているのは明白だった。
無敵のように思えたマティスの進撃も
次第に鈍り始めていった。
それでもマティスが戦闘で押される
というほどの事はなく、問題は
次々に階段から襲い来る
戦鬼たちの圧倒的な数であった。
マティスの額に汗の玉が浮かび
ようやく少しばかりの疲労の色
が見え隠れする。
「マティスさん、大丈夫ですか?」
「へっ、お前は自分の心配だけしてろ」
多少声の調子を乱しながらも
マティスは余裕を見せつける。
当のマティスはと言うと、
自分と同じ得物であるハルバードを持った
プレート式のフルアーマーを着込んだ
戦鬼と相対している。
お互いに、得物の斧刃をバインドさせ
にらみ合っている最中であった。
「ま、流石にそういつまでも
簡単に通してはくれねぇよな」
膠着状態を打破するため、
マティスは素早く得物を巻き
斧刃で戦鬼のハルバードに引っ掛ける。
戦鬼はそうはさせまいと、
マティスの斧刃を押し上げる。
そして、素早く得物をマティスの
ハルバードから外しそのまま引き下げ、
マティスの胸を突こうとする。
すかさずマティスが柄で防ぐと、
今度は得物の刃をマティスの顔の前に
持って行き隙のある箇所を狙う。
マティスはハルバードの前部で
突きを払い、右足を踏み込みつつ
ハルバードの前後を入れ替え、
更に石突の部分で戦鬼の得物を横へ払う。
それにつられ戦鬼が体勢を崩した隙に、
ハルバードを横に回転させ
斧刃で戦鬼の首をそのまま刎ねる。
ルロイは思わず息をのむ。
ほれぼれするような技術と
力のせめぎ合いである。
これなら自分などが心配など
杞憂であったかと胸をなでおろす。
が、ようやく一体倒したと思ったら、
今度は槍を下段に構えた戦鬼が
奇声と共にマティスに突進してくる。
すんでのところでマティスは、
ハルバードで槍の穂先を上から
押さえつけ突進を防ぐ。
「ギアァァァ」
「ちっ、キリがねぇ!」
幸い、戦鬼たちはマティスの存在に
釘付けになっており、
柱や階段の陰に隠れているルロイには
今のところ目もくれない。とは言え、
流石にマティス一人に任せきるのは
限界であることを悟る。
「悪いな、雑魚とは言え
もう俺一人じゃ対応しきれん」
「で、ですよねぇ~」
「前言撤回。自分の身は自分で守れ」
マティスがさらりとルロイに告げる。
それとほぼ同時にロングソードと
円盾を装備した戦鬼の一体が
ルロイを睨みつけ獰猛な笑みで
にじり寄ってくる。
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