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2話

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 話が途切れて、火の音がうるさく感じるころにミレティアは切り出してきた。
 
「ところでそっちは行く当てはあるのか?元気になったってこの辺では活動しにくいだろうし、ところでランクはいくつだ?」

「Eです」

「慣れてきたばっかってところだな。そうするとまあ。あんまりあてとかはないんだな」

「はい。衝動的に飛び出してきて、実は家族とかもいないもので」

「そうかそうか。じゃあ私についてくるか?私はここから2つ先の街で活動するつもりなんだ。まあ冒険者をやめるなりなんなりするつもりでも金は要るし、それなら慣れたやつのほうがいいだろ?」

「それはそうですけど、いいんですか?お仲間とかに聞かなくて」

「大丈夫。私はいまソロで活動してるし、一人は辛いなって思ってたところなんだ。まあラウル君さえよければ臨時でもいいし、パーティーを組まないか?」

 正直冒険者を続けるかどうかは迷っていた。でも確かに不慣れな仕事をするのは辛いだろうし、他に手に職なんてない。渡りに船なのかもしれないと思い。

「それなら、ご迷惑をおかけすると思いますけど、よろしくお願いします」

「よろしくな。これでもうパーティーだ。かたくるしい感じはなしでいこう。私はそういうのに慣れてないしな」

「はい。よろしくです」

「はは。まあゆっくりだな。行く先は当てがないみたいだし、私のところでいいかな?最近ダンジョンがいくつかできて賑わってるところだ。ここよりは少し落ちるだろうが、新しい私たちにはぴったりだと思うぞ」

「というと、ラナードですか?」

「そうだ。新しいダンジョン。新しい街。これぞ冒険者って感じじゃないか?嫌なら別を考えるけど、よかったら、どうだ?」

「いい、ですね。行きましょう!」

「よし!」

 一つの扉が閉じるとまた別の一つの扉が開く。そんな言葉をシスターが言ってた気がする。僕はそれをいましみじみと感じたのだった。
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