上 下
10 / 34

10話 戦闘

しおりを挟む
 少し経つといわれた通りに魔物がやってきた。蟻だ。硬い外骨格に鋭い顎、大きさは80cmほどだろうか。外にいるのと大差ないように見える。

「蟻だな。ちょうど2匹だ。左は私がやろう。右は任せたぞ」

 そういってミレティアは駆け出して行った。そして盾は構えずに、斧槍を左手に持ち替えて地面すれすれから蟻の首元をめがけて振り上げた。どこにもかすることなく首だけに当たり。音もなく飛んでいった。残された胴体も本来なら少しの間動くものだが、頭を急に失ってしまったからだろう。どてっと倒れてしまった。

「すごい」

 任された右側の蟻を忘れて、僕はすっとつぶやいてしまった。
 だがしかしそんなことはミレティアには関係なかった。仲間がやられた蟻は想像通りにミレティアに飛びかかっていった。少し危ないと思ったが、その次の瞬間には蹴り上げた足が見えた。軽そうな見た目に反して、案外蟻は重い。それを数メートル蹴り飛ばした。

「ほら、そっちは任せたぞ。まあ少しやってみてくれ」

「はい!」

 僕は小さい盾と剣を構えて、うまく動けなくなってる蟻に近づいて行った。
 蟻はいままでも外で何匹も狩ってきた。いつも通り。その気持ちでゆっくりと近づいていく。そして頭に向かって剣を振り下ろす。鈍い音とともに頭の半ばまで、深く剣が進んでいくが、昆虫系の魔物はこの程度では死なない。蟻は右側の足を引きずりながらも顎を動かしてこちらに近づこうとする。それに伴ってだんだんと剣が奥へと入っていき。20秒ほどで顔面が斜めに割れた。
 ここまでくればあとは放っておいても死ぬが、時間ももったいないので切り落とした目のほうにさっと動き、首を落とした。

「なかなか力は強いじゃないか。Dランクくらいならすぐになれそうじゃないか」

 とミレティアは笑う。

「でもまあ。あんまり数がいるときはそんな戦い方じゃだめだな。あと盾はもっと大きいのにするか、その大きさなら人型以外には出さなくてもいいかもな」

「ありがとうございます」

「まあ1回見ただけじゃ何とも言えないけどな」

 はははと笑いながらミレティアは補足を付けるように言った。
しおりを挟む

処理中です...