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21話

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 数分経つと大分落ち着いたのかしゅくしゅくと話し始めた。僕はなんとなく2人で話す方がいいだろうと思って放置された熊の解体を始めた。
 解体といっても蟻なんかと一緒で体は痩せて、ダンジョン内の非常食になっても売り物にはならなさそうなので、皮を適当に剥ぎ、雪の上で広げる。ここまでするころには話はひと段落したらしく、声がかかった。

「悪いな1人で」

「いえいえ」

 振り返るとミレティアが魔法使いを支えて立っていた。説得できたようだと笑顔で僕は続けた。

「一緒に帰るんですね」

「ああ」

「よかった。短い間ですけどよろしくお願いします」

「よ、よろしく」

「まあさっさと戻るぞ。魔石と皮だけとって今回は走る!」

「走るって、僕はいいですけど」

 と話してる途中に武器を僕に放り投げ、魔法使いを抱える。魔法使いは突然のことに声を上げたが関係ないようで一言。

「戦闘は任したぞ!」

 そういって来た道を駆け始めた。皮と武器を抱え僕もとりあえず追いかける。幸い帰り道では魔物に出くわさずに階段までつけた。ミレティアはそのままそこを抜け、僕もそれに続いた。
 あの強い感覚がやってきて、でもそこには思っていた光景は広がらなかった。

「え?」

「ん?」

 僕の疑問の声にちょっと止まって振り返ってくれる。

「はぁいや、はぁ。その外に出るとは思ってなくて」

「ん?ああ。そういうことか。こういうタイプもあるからな。走りながら説明するな」

 と言ってまた走り始める。これ街まで走るのかな?僕はとりあえず一度大きく息を吸って一つだけ聞いた。

「じゃあ、2層にいくなら1層の出口は探さなくてもいいんですか?」

「危険度に余裕があるなら別にいいぞ。でもまあ普通は探してから目指すけどな」

「はぁなるほど」

 僕の体はこれ以上の質問に耐えれそうになかったので、後の道中は走ることだけに集中して街へと戻った。
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