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28話 発見

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 熊のもとへ行き2日、予想通り熊のいた場所は熊しか現れず、その範囲はとても限定的で3時間もあれば回りきれるほどだ。きっとこの中にあるはずだと僕は思っているが、なかなか見つからない。ただでさえ雪でほとんど同じ景色なのに、ぐるぐると回ってるせいでほとんど何も変化がない。このままだとおかしくなりそうだと少し思う。
 戦い自体も熊が相手で緊張しきりというのもある。ミレティアが倒せば簡単に済むとはいえ、それではミレティアに疲労が溜まり続けるし、サラさんも魔力を気にしながら戦わないといけない。当然僕は一人では厳しい。慣れてきて刃が通るようにはなったがそれだけだ。

「一旦戻るか」

 ミレティアが言う。

「あと少し残りたいです」

 サラさんが答える。
 最近は会話もぐんとへった。情報が嘘だった場合この探索は無意味になってしまうし、僕の予想が外れてても同じだ。そんな考え事をしてるとつい躓いて転んでしまった。僕自身もう限界なのかもしれない。進展もなにもない。中にずっといるせいでお金もたまらない。ずっと明るいせいで寝てもなかなか疲れが取れない。

「大丈夫か?」

「はい。すみません」

 これじゃあ足を引っ張ってるだけだ。もうやめにしようか。そもそも僕はいったい何の役に立ってるんだ。

「とりあえず休憩するか。というか遊ぼう」

 ミレティアは突然提案してきた。

「遊ぶって何ですか?」

 サラさんは怪訝な顔でミレティアを見る。

「こういうことだよ!」

 そういって雪玉をサラさんの顔面に投げつけた。非難の声を上げる前に次々と投げ続け、立ち上がった僕にも投げてきた。
 さすがに投げられっぱなしというのも嫌だったのかサラさんもやり返し、僕もやり返した。最初は少し遠慮や魔物の心配もあったが、数分すればそんなのはなくなった。それからかなりの時間投げ合い最後にはミレティアがばたりと大笑いしながら倒れて言った。

「大丈夫さ。あるさ。それもここに。この近くに!」

「そうですね」

 サラさんは笑って答える。初めて笑ってるところを見たかもしれない。

「案外このあたりかもな」

 とミレティアは雪をわっさわっさとかき分ける。

「二人もやってみ?」

 と提案さえする。サラさんは何をバカなと微笑み、僕は少し掘ってみた。なんだか様子がおかしい。思ってたよりも何倍も深い。それを見ていたミレティアも僕の方へと近づいて一緒に掘り始める。
 明らかにおかしい。ほかのところならもう地面が見えてるころなのに、ずっと白い。サラさんも参加して一緒に掘る。何分掘ったかわからないが突然その時は来た。
 真っ黒い小さな球体が姿を現したのだ。

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