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第七話
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『松本~松本~松本です。篠ノ井線、中央線、上高地線、地下鉄浅間線、深志線、入山辺線は乗り換えです。この電車は安曇野線直通 特急 安曇日光45号 有明行きです。次は一日市場に止まります。』
「ここが、松本か…」
特急に揺られておおよそ5時間。現在の日本の3番目の都市、かつての名古屋と同じポジションである、長野県松本市に着いた…
見ただけで分かる大都市だ。私が出たのは松本駅のお城口であったが、春日部に負けないどころかその倍近く沢山のビルが建っている。高校生の頃、どこぞのアニメで「第2東京市」とか言われてたので、ググってみたが、ただの地方都市で、その時の春日部や越谷とあまり変わらない外観だった記憶がある。だが、これは2020年の人に「これは新宿だ」と言っても普通に騙せそうだ。
「お待ちしておりました、小倉朱雀様とそのお仲間様。私は深大寺三鷹。今から会場に送迎いたします。」
目の前のロータリーに一つのマイクロバスが止まり中から一人の小柄の女性が出てきた。
「会場に送迎?何のことだ?」
「朱雀様は”異能力格闘技大会”にエントリーしてるので…」
「はい?」
異能力格闘技大会??さては、あの人、謀ったな??まだ、異能力が発動出来ないのに…
「ほら、とりあえず、乗りましょう。エントリーされたんだから。」
紫苑とキリアは私をバスに押し込ませながら乗り込んだ。
「さては、お前らもそれを知っていたのか!?」
「逆に松本に連れて行かれても感づかない貴方が悪い。」
紫苑は開き直った。
「はい、準備が整いましたね。発車いたします」
「そもそも、格闘技大会ってなんだよ。」
「知らない」
「は?」
紫苑も何も知らないらしい。
「キリアは何か知っているのか?」
「全く分かりません…グナイゼナウさんに松本に行けばいいんじゃないかと言われただけです…」
と言う事は…全てグナイゼナウの所為ということか、よくわかった。マジふざけんな。
「何も知らないけど、多分”アイツ”が主体の大会じゃないんかな?”アイツ”のメイドもいるし…」
「誰だよ…」
「はい、大会は、我が主、我修院様が企画した大会です。」
「誰だ?」
どこからか声が返ってきた。
「まさか、全部聞いていたの?」
「運転席と客席間に壁がないので、完全に筒抜けですよ。」
「あと、メイドは間違いではないですが、正式には妻です。」
「え?妻になったの????私がインドに言っている間にそんなことになっていたの???」
紫苑は驚いた。
「紫苑様のメールに我修院様がその情報を送ったはずですが。」
「あ、ごめん、アイツからのメール全部未読無視してたわ」
「じゃあ、知っているはずありませんね」
「で、それで、我修院って誰なんだ?」
「我修院様は松本を支配している偉い人ですよ。」
キリアはこう答えた。
「只の変態野郎よ」
続けて紫苑はこう答えた。
「私を作った人で、グナイゼナウ様と共同で松本市・春日部市のほぼ全てを支配しています。」
そして、三鷹はこう答えた。
「…て、「私を作った」ってどういう事だ?あと、「支配している」というのもよくわからん。」
「このメイドは我衆院によってつくられた人工人間よ。そして、アイツは異能協会のNo.2で、異能協会は松本・春日部を本拠地にしているから実質支配しているものよ。」
「そんなヤバイ奴なのか…」
「でも、変態野郎よ、グナイゼナウも威厳ないようなものだけど、アイツに関してはもっとないわ。」
「そんなことはありません、威厳はしっかりとございます」
「アイツのメイドだからそんなことしか言えないのね…」
ん…?何か口論になりそうだな。
「二人とも、喧嘩はやめてください!!笑顔…笑顔ですよ!!!」
キリアがエスカレートしそうな二人の会話を遮ろうとした。
「私、笑顔出来ないので。」
「私だって、笑顔苦手だし。」
そんなところで張り合ってどうするんだよ…
「ほら皆さん!!目的地に着きましたよ!!」
「本当ですね。ここが大会開催地の”やまびこドーム”です。」
案内されたのは、恐らく、幕張メッセと同じくらいどころかそれ以上の大きさのドーム状の建物だ。
「デカすぎんだろ…こんなところで行われる格闘技大会ってなんだよ…」
「この大会は、我修院様…というより異能協会が開催側となっている大会ですので、このように松本で最も大きい建物である、やまびこドームで開催されるのです。」
「やまびこドームは1989年に建造された、松本では最古のドーム型の建物よ」
「1989年製?私が生まれるより前にあったのか…」
「紫苑様それは半分誤りでございます。」
「え?」
「1989年製なのは一代目のやまびこドームです。一代目は今の10分の1の広さしかありません。2065年に名岡松春が法律で首都に設定されたのちに、その一代目やまびこドームは取り壊され、その1年後に二代目やまびこドームが作られたのです。」
「くっ…負けたわ…」
いや、まだ張り合っていたのかよ…
「…やはり、二人とも仲が悪いなぁ」
「この声はっ…!!」
2人を遮るように一人の男が割り込んできた…
「お前が、我修院という人なのか?」
「いかにも、俺が異能協会のNo2、我修院瑞浪だ…」
「出たよ…ヤバい奴が…」
見た目はおおよそ30~40代くらいの男だ。ついさっき紫苑が言ったように、グナイゼナウに会ったときにはある程度感じられた威厳というかオーラがこの男には一切感じられない。
「ヤバイ奴とは何だ。いかにも俺は清楚だが?」
「我修院が清楚なら、私は超絶清楚にはいりますが?」
「黙れ、お前が清楚だったら、この世の終わりだぞ。」
なんか、小学生レベルの喧嘩が始まったぞ…
「…朱雀と言ったけな…お前、なんでここに呼ばれたのか分かるか?」
「そんなの、私もわからない…」
「うん、俺もわからん」
「はい?」
「なんか、今日、この大会のトーナメント表を見たら、俺が参加しようとした枠に何故かお前の名前が入っていたんだ。もう訳が分からない。」
「…このトーナメント表を改変出来る人っている?」
「俺とグナイゼナウさんくらいだったような…」
うん、知ってた。やりやがったな。
「だが、これはチャンスだ。お前がそれだけグナイゼナウに期待されているということだな。知らんけど」
「でも、実質無能力者みたいなものだし…」
「あ~なんだ、クリスタル持っているのに、能力を今まで発動したことないということか。それなら問題ない。まぁ知らんけど。」
「 知らんけどの一言が妙に引っかかるんだが?」
「まぁ、大丈夫だろう、この大会で死者は出ていない。」
「そういう問題なのか?」
「まぁいい、とりあえず今日はもう遅い。明日が大会本番だし、近くのホテルではよ寝ろ。」
そうか…気づいたら、もう18時か…今日はグナイゼナウとの面談にキリアと紫苑の合流、春日部から松本への移動、そして何も知らない大会に参加させられたりと、色々と忙しいというかダルい一日だったな。
「ほら、西側に見える、一級のホテルの部屋のルームキーだ。お前のためにスイートルームを取ってやったぞ。」
私は我修院という男から、ルームキーを手渡しされた。
「ど、どうも…」
「あ、この部屋は定員2人までだから、青蓮華は公園内で野宿してろ」
「は?何で取ってないの!?私だって大会参加者よ!!」
「知るか、取らなかったお前が悪い」
紫苑も参加していたのか…ということはあの時の「知らない」は嘘だったのか!?
「朱雀さん、行きましょう、紫苑さんなら野宿できるサバイバル能力あるので大丈夫ですよ。」
「ちょっと!?キリアまで…」
私は、紫苑と謎の男(?)我修院と別れて、今日チェックインする予定のホテルへと向かった…
取り敢えず、明日は強制参加させられた、ガチでよくわからん異能力格闘技大会だ… 私は、まだ一回も異能発動していないのに本当に大丈夫なのか?
「ここが、松本か…」
特急に揺られておおよそ5時間。現在の日本の3番目の都市、かつての名古屋と同じポジションである、長野県松本市に着いた…
見ただけで分かる大都市だ。私が出たのは松本駅のお城口であったが、春日部に負けないどころかその倍近く沢山のビルが建っている。高校生の頃、どこぞのアニメで「第2東京市」とか言われてたので、ググってみたが、ただの地方都市で、その時の春日部や越谷とあまり変わらない外観だった記憶がある。だが、これは2020年の人に「これは新宿だ」と言っても普通に騙せそうだ。
「お待ちしておりました、小倉朱雀様とそのお仲間様。私は深大寺三鷹。今から会場に送迎いたします。」
目の前のロータリーに一つのマイクロバスが止まり中から一人の小柄の女性が出てきた。
「会場に送迎?何のことだ?」
「朱雀様は”異能力格闘技大会”にエントリーしてるので…」
「はい?」
異能力格闘技大会??さては、あの人、謀ったな??まだ、異能力が発動出来ないのに…
「ほら、とりあえず、乗りましょう。エントリーされたんだから。」
紫苑とキリアは私をバスに押し込ませながら乗り込んだ。
「さては、お前らもそれを知っていたのか!?」
「逆に松本に連れて行かれても感づかない貴方が悪い。」
紫苑は開き直った。
「はい、準備が整いましたね。発車いたします」
「そもそも、格闘技大会ってなんだよ。」
「知らない」
「は?」
紫苑も何も知らないらしい。
「キリアは何か知っているのか?」
「全く分かりません…グナイゼナウさんに松本に行けばいいんじゃないかと言われただけです…」
と言う事は…全てグナイゼナウの所為ということか、よくわかった。マジふざけんな。
「何も知らないけど、多分”アイツ”が主体の大会じゃないんかな?”アイツ”のメイドもいるし…」
「誰だよ…」
「はい、大会は、我が主、我修院様が企画した大会です。」
「誰だ?」
どこからか声が返ってきた。
「まさか、全部聞いていたの?」
「運転席と客席間に壁がないので、完全に筒抜けですよ。」
「あと、メイドは間違いではないですが、正式には妻です。」
「え?妻になったの????私がインドに言っている間にそんなことになっていたの???」
紫苑は驚いた。
「紫苑様のメールに我修院様がその情報を送ったはずですが。」
「あ、ごめん、アイツからのメール全部未読無視してたわ」
「じゃあ、知っているはずありませんね」
「で、それで、我修院って誰なんだ?」
「我修院様は松本を支配している偉い人ですよ。」
キリアはこう答えた。
「只の変態野郎よ」
続けて紫苑はこう答えた。
「私を作った人で、グナイゼナウ様と共同で松本市・春日部市のほぼ全てを支配しています。」
そして、三鷹はこう答えた。
「…て、「私を作った」ってどういう事だ?あと、「支配している」というのもよくわからん。」
「このメイドは我衆院によってつくられた人工人間よ。そして、アイツは異能協会のNo.2で、異能協会は松本・春日部を本拠地にしているから実質支配しているものよ。」
「そんなヤバイ奴なのか…」
「でも、変態野郎よ、グナイゼナウも威厳ないようなものだけど、アイツに関してはもっとないわ。」
「そんなことはありません、威厳はしっかりとございます」
「アイツのメイドだからそんなことしか言えないのね…」
ん…?何か口論になりそうだな。
「二人とも、喧嘩はやめてください!!笑顔…笑顔ですよ!!!」
キリアがエスカレートしそうな二人の会話を遮ろうとした。
「私、笑顔出来ないので。」
「私だって、笑顔苦手だし。」
そんなところで張り合ってどうするんだよ…
「ほら皆さん!!目的地に着きましたよ!!」
「本当ですね。ここが大会開催地の”やまびこドーム”です。」
案内されたのは、恐らく、幕張メッセと同じくらいどころかそれ以上の大きさのドーム状の建物だ。
「デカすぎんだろ…こんなところで行われる格闘技大会ってなんだよ…」
「この大会は、我修院様…というより異能協会が開催側となっている大会ですので、このように松本で最も大きい建物である、やまびこドームで開催されるのです。」
「やまびこドームは1989年に建造された、松本では最古のドーム型の建物よ」
「1989年製?私が生まれるより前にあったのか…」
「紫苑様それは半分誤りでございます。」
「え?」
「1989年製なのは一代目のやまびこドームです。一代目は今の10分の1の広さしかありません。2065年に名岡松春が法律で首都に設定されたのちに、その一代目やまびこドームは取り壊され、その1年後に二代目やまびこドームが作られたのです。」
「くっ…負けたわ…」
いや、まだ張り合っていたのかよ…
「…やはり、二人とも仲が悪いなぁ」
「この声はっ…!!」
2人を遮るように一人の男が割り込んできた…
「お前が、我修院という人なのか?」
「いかにも、俺が異能協会のNo2、我修院瑞浪だ…」
「出たよ…ヤバい奴が…」
見た目はおおよそ30~40代くらいの男だ。ついさっき紫苑が言ったように、グナイゼナウに会ったときにはある程度感じられた威厳というかオーラがこの男には一切感じられない。
「ヤバイ奴とは何だ。いかにも俺は清楚だが?」
「我修院が清楚なら、私は超絶清楚にはいりますが?」
「黙れ、お前が清楚だったら、この世の終わりだぞ。」
なんか、小学生レベルの喧嘩が始まったぞ…
「…朱雀と言ったけな…お前、なんでここに呼ばれたのか分かるか?」
「そんなの、私もわからない…」
「うん、俺もわからん」
「はい?」
「なんか、今日、この大会のトーナメント表を見たら、俺が参加しようとした枠に何故かお前の名前が入っていたんだ。もう訳が分からない。」
「…このトーナメント表を改変出来る人っている?」
「俺とグナイゼナウさんくらいだったような…」
うん、知ってた。やりやがったな。
「だが、これはチャンスだ。お前がそれだけグナイゼナウに期待されているということだな。知らんけど」
「でも、実質無能力者みたいなものだし…」
「あ~なんだ、クリスタル持っているのに、能力を今まで発動したことないということか。それなら問題ない。まぁ知らんけど。」
「 知らんけどの一言が妙に引っかかるんだが?」
「まぁ、大丈夫だろう、この大会で死者は出ていない。」
「そういう問題なのか?」
「まぁいい、とりあえず今日はもう遅い。明日が大会本番だし、近くのホテルではよ寝ろ。」
そうか…気づいたら、もう18時か…今日はグナイゼナウとの面談にキリアと紫苑の合流、春日部から松本への移動、そして何も知らない大会に参加させられたりと、色々と忙しいというかダルい一日だったな。
「ほら、西側に見える、一級のホテルの部屋のルームキーだ。お前のためにスイートルームを取ってやったぞ。」
私は我修院という男から、ルームキーを手渡しされた。
「ど、どうも…」
「あ、この部屋は定員2人までだから、青蓮華は公園内で野宿してろ」
「は?何で取ってないの!?私だって大会参加者よ!!」
「知るか、取らなかったお前が悪い」
紫苑も参加していたのか…ということはあの時の「知らない」は嘘だったのか!?
「朱雀さん、行きましょう、紫苑さんなら野宿できるサバイバル能力あるので大丈夫ですよ。」
「ちょっと!?キリアまで…」
私は、紫苑と謎の男(?)我修院と別れて、今日チェックインする予定のホテルへと向かった…
取り敢えず、明日は強制参加させられた、ガチでよくわからん異能力格闘技大会だ… 私は、まだ一回も異能発動していないのに本当に大丈夫なのか?
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