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そこでオルヘルスはグランツを引き止める。
「殿下、少々お待ちくださるかしら。渡したいものがありますの」
「渡したいもの?」
「はい。これですわ」
そう言って包みを差し出した。グランツはそれを受け取ると中身を取り出す。
「これは、君が?」
オルヘルスは急に恥ずかしくなって、うつむくとうなずいて言った。
「殿下はもっと素晴らしいベルトバックを持ってらっしゃるかもしれませんが、よろしければ使ってくださるかしら」
「オリ、ありがとう!」
そう言ってグランツは、オルヘルスを抱きしめた。
「殿下! そんな、は、恥ずかしいですわ!」
「あぁ、すまない。思わず、我慢できなかった」
そう答えると、グランツはオルヘルスから体を離し、すぐさまそのベルトバックを装着すると、愛おしそうに刺繍の部分をなでた。
「この刺繍は君が?」
「はい。刺繍は得意なんですの」
「そのようだ」
グランツはそう言うとオルヘルスを見つめる。
「本当にありがとう。大切にする」
「はい」
本当はお揃いのハンカチを持っていると話そうとしたが、気恥ずかしくなってしまい結局言わずじまいで狩猟会へ向かった。
狩猟会では、他の貴族たちと狩りの腕を争う。もちろんオルヘルスは狩猟はしないので、馬車の中で準備されている軽食を取りながらグランツの帰りを待つだけだった。
「では行ってくる。君のために頑張るよ」
そう言われたが内心オルヘルスは心配で仕方がなかった。狩猟中の事故も少なからず起きているからだ。
「はい、わかりました。無事に戻ってきてくださいませ」
そう言ってグランツを見上げた。
「本当に、君は……」
グランツはそう言って口許を押さえる。
「はい、なんでしょう?」
そう答えると、グランツはじっとオルヘルスを見つめ、額にキスをすると微笑んで言った。
「必ず君のもとに帰るよ」
そうしてグランツを見送り、馬車からは降りずにまっているあいだ、グランツには申し訳ないと思いながらも動物たちが無事に逃げ切ることを祈った。
すると突然眠気に襲われ目を閉じた。
気がつくと、オルヘルスは誰かにうしろから抱きかかえられていた。驚いて少し体を離して振り向くと、グランツが微笑みかけていた。
「おはよう。よく寝ていたね」
「申し訳ありません! 大切なときに寝てしまうなんて」
「構わない。それより、もう少しだけこのままで」
そう言って、グランツはオルヘルスを強く抱きしめ、首もとに顔を埋める。
「殿下?!」
「私もこれでも相当我慢しているんだ。だから、少しばかり君を補充させてくれ」
オルヘルスは黙ってグランツの腕をギュッとつかんだ。
「オリ、ありがとう」
「な、なにに対して仰ってますの?」
「君という、素晴らしい存在自体に」
「大袈裟ですわ」
「そんなことはない」
オルヘルスがどう返していいかわからず黙っていると、グランツもそのままなにも言わずにオルヘルスを抱きしめ続けた。
「殿下?」
声をかけると、グランツはやっとオルヘルスを解放した。
「すまない、もう大丈夫だ。さて、君もお腹が空いたろう? 外で食事の準備ができているはずだ。行こう」
そう言って馬車を降りるよう促され、外へ出てみると、テーブルや椅子が準備されていた。
そしてどこからかいい匂いが漂い、急にお腹が空いてきた。
そこでグランツが苦笑しながら言った。
「実は戦利品をここで調理するはずだったんだが、今日は坊主だったんでね。本当は君にジビエ料理を振る舞いたかったんだが、それは今度になりそうだ」
「そうですのね? でも正直少しホッとしましたわ」
「なぜ?」
「どうしても可哀想と思ってしまいますもの」
「そうか、私は少し配慮が足りなかったようだ」
「そんな事ありませんわ。それに、こうして殿下とお話ができるだけで、私はとても楽しいですもの」
するとグランツはオルヘルスを見つめ呟く。
「可愛い……。ずっとそばに置くためには……」
「なんですの? 皮、ですの?」
するとグランツは我に返ったように言った。
「いや、なんでもない」
そう言うと座るよう促した。
運ばれてくる食事に舌鼓を打ちつつ、グランツと楽しく会話をしていると、デザートへ差しかかる。
デザートはサクサクの生地にりんごがまるごと入っているアップルパイだった。
「りんごがまるごとそのまま入ったアップルパイは初めて見ました」
シェフが切り分けている横でそう驚きの声をあげていると、グランツは満足そうにうなずいた。
「これにたっぷりのロベリア産のハチミツが入ったカスタードクリームをかけて食べると、最高にうまい」
「そうなんですのね」
話を聞いて、オルヘルスはワクワクしながらアップルパイにカスタードクリームをたっぷり絡めると、口に運んだ。
その瞬間、カスタードのバニラの香りとサクサクのパイの食感、そしてハチミツの甘さとリンゴの甘酸っぱい味が口の中に広がり、とても幸せな気持ちになった。
グランツはそんなオルヘルスを見つめ、口許にてを伸ばすと口角についたカスタードクリームを拭った。
「殿下、申し訳ありません」
そう言ってハンカチを取り出そうとした瞬間、グランツは指についたクリームをなめた。
「そんな、汚いですわ!」
驚いて叫ぶオルヘルスを見て、グランツは微笑む。
「汚なくない。それにオリ、私たちは夫婦になるのだよ? これぐらいを汚ながってどうする。夫婦になればこれ以上のことがあるのに」
それを聞いてオルヘルスは顔から火が出そうなほど恥ずかしくなり、思わず立ち上がる。
「私お花摘に行ってまいりますわ!!」
ハンカチとポーチを持って用意されていた簡易的な化粧室へ駆け込むと、オルヘルスは自分を落ち着かせようと呼吸を整える。
そうして自分をなんとか落ち着かせると、ついでに用をすませ、化粧直しをした。
それでもまだドキドキしていたが、グランツが待っていることを考えて戻ることにした。
ところが表に出ると、エーリクとアリネアが待ち構えていた。
アリネアは腕を組み、尊大な態度でオルヘルスにいい放つ。
「遅いじゃない。ちょうどあなたが化粧室に入るところが見えたから待ってましたの」
次いでエーリクが言った。
「お前にやらせたいことがある」
今さらなんだというのか。オルヘルスはなにを言われるのかと身構える。
「なんですの?」
エーリクはニヤリと笑った。
「どうやって殿下や陛下に取り入ったのか知らないが、お前は気に入られているようだ」
それに次いでアリネアが言った。
「それで、今までのことは誤解だって説明してちょうだい。そうね、誤解を招くようなことをした自分が全部悪かったって言えばいいわ」
「嫌です。お断りですわ」
オルヘルスがそう即答すると、口答えされると思っていなかったのか、二人とも呆気にとられた顔をした。
「殿下、少々お待ちくださるかしら。渡したいものがありますの」
「渡したいもの?」
「はい。これですわ」
そう言って包みを差し出した。グランツはそれを受け取ると中身を取り出す。
「これは、君が?」
オルヘルスは急に恥ずかしくなって、うつむくとうなずいて言った。
「殿下はもっと素晴らしいベルトバックを持ってらっしゃるかもしれませんが、よろしければ使ってくださるかしら」
「オリ、ありがとう!」
そう言ってグランツは、オルヘルスを抱きしめた。
「殿下! そんな、は、恥ずかしいですわ!」
「あぁ、すまない。思わず、我慢できなかった」
そう答えると、グランツはオルヘルスから体を離し、すぐさまそのベルトバックを装着すると、愛おしそうに刺繍の部分をなでた。
「この刺繍は君が?」
「はい。刺繍は得意なんですの」
「そのようだ」
グランツはそう言うとオルヘルスを見つめる。
「本当にありがとう。大切にする」
「はい」
本当はお揃いのハンカチを持っていると話そうとしたが、気恥ずかしくなってしまい結局言わずじまいで狩猟会へ向かった。
狩猟会では、他の貴族たちと狩りの腕を争う。もちろんオルヘルスは狩猟はしないので、馬車の中で準備されている軽食を取りながらグランツの帰りを待つだけだった。
「では行ってくる。君のために頑張るよ」
そう言われたが内心オルヘルスは心配で仕方がなかった。狩猟中の事故も少なからず起きているからだ。
「はい、わかりました。無事に戻ってきてくださいませ」
そう言ってグランツを見上げた。
「本当に、君は……」
グランツはそう言って口許を押さえる。
「はい、なんでしょう?」
そう答えると、グランツはじっとオルヘルスを見つめ、額にキスをすると微笑んで言った。
「必ず君のもとに帰るよ」
そうしてグランツを見送り、馬車からは降りずにまっているあいだ、グランツには申し訳ないと思いながらも動物たちが無事に逃げ切ることを祈った。
すると突然眠気に襲われ目を閉じた。
気がつくと、オルヘルスは誰かにうしろから抱きかかえられていた。驚いて少し体を離して振り向くと、グランツが微笑みかけていた。
「おはよう。よく寝ていたね」
「申し訳ありません! 大切なときに寝てしまうなんて」
「構わない。それより、もう少しだけこのままで」
そう言って、グランツはオルヘルスを強く抱きしめ、首もとに顔を埋める。
「殿下?!」
「私もこれでも相当我慢しているんだ。だから、少しばかり君を補充させてくれ」
オルヘルスは黙ってグランツの腕をギュッとつかんだ。
「オリ、ありがとう」
「な、なにに対して仰ってますの?」
「君という、素晴らしい存在自体に」
「大袈裟ですわ」
「そんなことはない」
オルヘルスがどう返していいかわからず黙っていると、グランツもそのままなにも言わずにオルヘルスを抱きしめ続けた。
「殿下?」
声をかけると、グランツはやっとオルヘルスを解放した。
「すまない、もう大丈夫だ。さて、君もお腹が空いたろう? 外で食事の準備ができているはずだ。行こう」
そう言って馬車を降りるよう促され、外へ出てみると、テーブルや椅子が準備されていた。
そしてどこからかいい匂いが漂い、急にお腹が空いてきた。
そこでグランツが苦笑しながら言った。
「実は戦利品をここで調理するはずだったんだが、今日は坊主だったんでね。本当は君にジビエ料理を振る舞いたかったんだが、それは今度になりそうだ」
「そうですのね? でも正直少しホッとしましたわ」
「なぜ?」
「どうしても可哀想と思ってしまいますもの」
「そうか、私は少し配慮が足りなかったようだ」
「そんな事ありませんわ。それに、こうして殿下とお話ができるだけで、私はとても楽しいですもの」
するとグランツはオルヘルスを見つめ呟く。
「可愛い……。ずっとそばに置くためには……」
「なんですの? 皮、ですの?」
するとグランツは我に返ったように言った。
「いや、なんでもない」
そう言うと座るよう促した。
運ばれてくる食事に舌鼓を打ちつつ、グランツと楽しく会話をしていると、デザートへ差しかかる。
デザートはサクサクの生地にりんごがまるごと入っているアップルパイだった。
「りんごがまるごとそのまま入ったアップルパイは初めて見ました」
シェフが切り分けている横でそう驚きの声をあげていると、グランツは満足そうにうなずいた。
「これにたっぷりのロベリア産のハチミツが入ったカスタードクリームをかけて食べると、最高にうまい」
「そうなんですのね」
話を聞いて、オルヘルスはワクワクしながらアップルパイにカスタードクリームをたっぷり絡めると、口に運んだ。
その瞬間、カスタードのバニラの香りとサクサクのパイの食感、そしてハチミツの甘さとリンゴの甘酸っぱい味が口の中に広がり、とても幸せな気持ちになった。
グランツはそんなオルヘルスを見つめ、口許にてを伸ばすと口角についたカスタードクリームを拭った。
「殿下、申し訳ありません」
そう言ってハンカチを取り出そうとした瞬間、グランツは指についたクリームをなめた。
「そんな、汚いですわ!」
驚いて叫ぶオルヘルスを見て、グランツは微笑む。
「汚なくない。それにオリ、私たちは夫婦になるのだよ? これぐらいを汚ながってどうする。夫婦になればこれ以上のことがあるのに」
それを聞いてオルヘルスは顔から火が出そうなほど恥ずかしくなり、思わず立ち上がる。
「私お花摘に行ってまいりますわ!!」
ハンカチとポーチを持って用意されていた簡易的な化粧室へ駆け込むと、オルヘルスは自分を落ち着かせようと呼吸を整える。
そうして自分をなんとか落ち着かせると、ついでに用をすませ、化粧直しをした。
それでもまだドキドキしていたが、グランツが待っていることを考えて戻ることにした。
ところが表に出ると、エーリクとアリネアが待ち構えていた。
アリネアは腕を組み、尊大な態度でオルヘルスにいい放つ。
「遅いじゃない。ちょうどあなたが化粧室に入るところが見えたから待ってましたの」
次いでエーリクが言った。
「お前にやらせたいことがある」
今さらなんだというのか。オルヘルスはなにを言われるのかと身構える。
「なんですの?」
エーリクはニヤリと笑った。
「どうやって殿下や陛下に取り入ったのか知らないが、お前は気に入られているようだ」
それに次いでアリネアが言った。
「それで、今までのことは誤解だって説明してちょうだい。そうね、誤解を招くようなことをした自分が全部悪かったって言えばいいわ」
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