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翌朝から学園の講堂に着くとアレクシが席を確保しており、その隣にアドリエンヌが座るのが当たり前のようになっていった。
以前アドリエンヌがアレクシを出迎えていた時のように、今度はアレクシが笑顔で出迎えるようになったのだ。
だが、アレクシが優しくしてくるのは目的があるからだと考えたアドリエンヌは、変に期待することはなかった。
朝の出欠が終わると、早々にみんなで課題について話し合う。
アレクシがチームに加わったことで、作戦に余裕が生まれるのでそれはありがたかった。
以前はアトラスとエメが炎と土魔法と地形を使って追い込み、ルシールが粘度を高くした水でエアーバードを捕獲する作戦を立てていた。
だが、アトラスとアレクシがエアーバードを追い込む役を担ってくれることになり、モンスターが出た時にエメが直ぐに防御魔法を使うことができるようになった。
ざっと作戦内容を見直し、地図を見せながら地形を確認する。
そこであらためてアドリエンヌはアレクシに訊いた。
「王太子殿下はどの属性が得意なのですか?」
「私はどの属性も特に問題なく使える。まぁ、君にはとても敵わないが」
その一言でルシールとアトラスが驚いた顔をしてアドリエンヌの顔を見つめた。アドリエンヌは諦めたように言った。
「そうなんですの、王太子殿下にもばれてしまってますの……」
それを聞いて納得したようにルシールが呟く。
「それで王太子殿下は、ブロン子爵令嬢よりアドリエンヌを選んだのね」
それにアドリエンヌが慌てて答える。
「選んだだなんて! それにただの監視ですもの」
アレクシは楽しそうに微笑んだ。
「確かにアドリエンヌの言うとおりかもしれない。選んだわけではない、最初から私にはアドリエンヌしかいないからね。だが、婚約を解消したいようだし私もどうすればよいか考えているところだ」
そう言ってアドリエンヌをじっと見つめる。そこでエメが口を挟む。
「アレクシ殿下、あまりそういった言い方は……」
そこでアトラスが爆弾発言をした。
「アレクシ、もしアドリエンヌとの婚約解消をするのなら、その後私がアドリエンヌの婚約者として立候補しても良いだろうか?」
アドリエンヌは思わず口をパクパクさせながらアトラスを見つめた。ルシールは瞳を輝かせながらアトラスを見つめ、エメは頭を抱えている。
そんな中アレクシは表情ひとつ変えずに答える。
「かまわない。だが、もしも婚約を解消するようなことがあれば、の話だ。それに最終的に選ぶのはアドリエンヌ自身だ」
それを聞いてアトラスは微笑んだ。
「それでもチャンスがあるだけましというものだ」
そう言うと、アドリエンヌに向きなおりじっと見つめて言った。
「アドリエンヌ、そういった訳で私との婚約を考えておいてほしい」
思いもよらぬ展開で、アドリエンヌは呆気にとられながらなんとか答える。
「あえ? えっと、へい」
思わず変な返事を返してしまった。アトラスは気にしていない様子だったが、ルシールが反応する。
「アドリエンヌ『へい』はないわぁ~」
その突っ込みで、その場にいる全員が笑った。
講堂で誰の目もはばからずそんな会話をしていたせいか、アドリエンヌがアトラスからも婚約の打診を受けていることが学園内で噂になった。
さらにアレクシは人目をはばからず甘い言葉を囁くので、アドリエンヌは令嬢たちからは羨望の的となり、令息たちからは憧憬の念で見られることが多くなっていた。
アドリエンヌは自分に力があるからこんな状況になっているとわかっていたので、周囲から勘違いされていることがとても恥ずかしかった。
そうして注目を受ける中、アレクシを入れて特訓を開始した。
アドリエンヌが時間を巻き戻る前、アレクシは『練習する必要はない』と言って訓練には参加せずこの課題をぶっつけ本番でやった。
なのでアレクシが練習に参加すると言った時には、思わずアレクシの顔を凝視した。そんなアドリエンヌをアレクシは見つめ返して言った。
「アドリエンヌ、どうした? そんなに君に見つめられると私も緊張する」
嘘ばっかり!
そう思いながらアドリエンヌはなんとか笑顔を作ると返す。
「王太子殿下は完璧ですもの、一緒に練習しなくてもよろしいのではないでしょうか」
「そんなことはない。私は君と練習できるのがとても嬉しいよ。最近はいつだって君といたいのだから」
は? なにを考えてますの?! この腹黒王子!!
アドリエンヌは心の中で悪態をつくと微笑む。
「そうでしたの、そうは見えませんでしたわ」
「信じてはくれないのだね。これも私の行いのせいだから仕方がないが」
ルシールがそんな二人を見つめて嬉しそうに言った。
「とても仲がよろしいのですね。二人の世界って感じ! もっと早くにペアを組んでいればよろしかったのではないでしょうか」
「な?! 仲はよろしくありませんわ!」
するとそれを受けてアレクシは頷くと言った。
「そうだな、残念なことに私はアドリエンヌに嫌われてしまっているからね」
アドリエンヌはアレクシを見つめ、顔をひきつらせながら答える。
「そんな、嫌ってるわけありませんわ」
するとアレクシが真剣な眼差しでアドリエンヌを見つめる。
「本当に?」
あまりにも長い時間アドリエンヌを見つめ返して来るので、恥ずかしくなりアドリエンヌはアレクシから目を逸らすと言った。
「ほ、ほら、じゃあ練習を始めますわ!」
練習中、こんなやり取りが二人の常となっていきそれを周囲が冷やかすことが増えていった。
アレクシの態度が急に変わったことで、アドリエンヌは戸惑った。だが、その度にアレクシは神の子を必要としているのだとあらためて実感するのだった。
そんなある日、目の前の机の上に広げられた森の地図に視線を落とし不意に思い付いたことをアレクシに訊いた。
「そうですわ、王太子殿下でしたら森のどこにエアーバードがいるか探索できますわよね?」
「そうだね、やろうと思えば可能だ」
エメがそれを聞いて言った。
「そうか、だとすると僕たちのチームはかなり優勢になりますね」
そう言うとエメはルシールに向きなおる。
「ルシール、あとは君がエアーバードにどれだけ正確に魔法を当てられるかにかかってきます」
ルシールは少し不安そうな顔で答える。
「そんな、プレッシャーかけないでください」
「もちろん、僕たちもエアーバードを捕獲しやすいように手を尽くしますよ」
そんな穏やかなやり取りを横目に、その時アドリエンヌは森の地図を見つめながら嫌なものを感じ取っていた。
この日の話し合いと練習が終わると、いつもならララの店に行くところだがアドリエンヌは用事があるからとそれを断った。すると突然、アレクシがアドリエンヌを屋敷まで送ると言い出した。
「王太子殿下に送っていただくわけには……」
「頼む、私が君と一緒にいたいんだ」
「はい? え? あの、そうなんですの? でも送っていただくなんて……」
そう言って戸惑うアドリエンヌにエメが言った。
「アドリエンヌ、王太子殿下からのお誘いです。あまり断るのは良くないのではないでしょうか。それに、たまには婚約者と一緒に帰るのも良いかもしれませんよ? お二人で色々と話し合われてください」
エメにそう説得されアドリエンヌは断るのを諦めた。
「わかりましたわ」
だが、話し合うつもりなど毛頭なかった。それにアレクシは馬車で帰るだろう、だから別々の馬車に乗ってしまえば良いと考えた。
学園の門を出たところで、王太子殿下専用の馬車が来るのを待つため立ち止まるが、アレクシは立ち止まらずに先へ進んで行く。
向こうに馬車が止めてあるのだろうかと思っていると、アレクシは振り返って言った。
「どうした、立ち止まって」
「いえ、あの馬車は他の場所に?」
「いや、君はいつも歩いて帰っているだろう? だから私も今日は歩くつもりだ」
そこまでしなくてもいいですのに。
そう思いながらアレクシのあとを追った。
しばらく無言でアレクシの後ろを歩いていると、アレクシは振り向きもせずにアドリエンヌに話しかけてきた。
「君は一人でなにかするつもりじゃないのか?」
「はい? なんのことですの?」
すると、そこでアレクシは立ち止まり振り向いて言った。
「君は先程地図を見ていた時に地図の一点を凝視してなにやら考えていた。あそこになにかあるんじゃないのか?」
どれだけ観察されていたのだろうと思い、アドリエンヌは少し動揺したが笑顔で答える。
以前アドリエンヌがアレクシを出迎えていた時のように、今度はアレクシが笑顔で出迎えるようになったのだ。
だが、アレクシが優しくしてくるのは目的があるからだと考えたアドリエンヌは、変に期待することはなかった。
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アレクシがチームに加わったことで、作戦に余裕が生まれるのでそれはありがたかった。
以前はアトラスとエメが炎と土魔法と地形を使って追い込み、ルシールが粘度を高くした水でエアーバードを捕獲する作戦を立てていた。
だが、アトラスとアレクシがエアーバードを追い込む役を担ってくれることになり、モンスターが出た時にエメが直ぐに防御魔法を使うことができるようになった。
ざっと作戦内容を見直し、地図を見せながら地形を確認する。
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「王太子殿下はどの属性が得意なのですか?」
「私はどの属性も特に問題なく使える。まぁ、君にはとても敵わないが」
その一言でルシールとアトラスが驚いた顔をしてアドリエンヌの顔を見つめた。アドリエンヌは諦めたように言った。
「そうなんですの、王太子殿下にもばれてしまってますの……」
それを聞いて納得したようにルシールが呟く。
「それで王太子殿下は、ブロン子爵令嬢よりアドリエンヌを選んだのね」
それにアドリエンヌが慌てて答える。
「選んだだなんて! それにただの監視ですもの」
アレクシは楽しそうに微笑んだ。
「確かにアドリエンヌの言うとおりかもしれない。選んだわけではない、最初から私にはアドリエンヌしかいないからね。だが、婚約を解消したいようだし私もどうすればよいか考えているところだ」
そう言ってアドリエンヌをじっと見つめる。そこでエメが口を挟む。
「アレクシ殿下、あまりそういった言い方は……」
そこでアトラスが爆弾発言をした。
「アレクシ、もしアドリエンヌとの婚約解消をするのなら、その後私がアドリエンヌの婚約者として立候補しても良いだろうか?」
アドリエンヌは思わず口をパクパクさせながらアトラスを見つめた。ルシールは瞳を輝かせながらアトラスを見つめ、エメは頭を抱えている。
そんな中アレクシは表情ひとつ変えずに答える。
「かまわない。だが、もしも婚約を解消するようなことがあれば、の話だ。それに最終的に選ぶのはアドリエンヌ自身だ」
それを聞いてアトラスは微笑んだ。
「それでもチャンスがあるだけましというものだ」
そう言うと、アドリエンヌに向きなおりじっと見つめて言った。
「アドリエンヌ、そういった訳で私との婚約を考えておいてほしい」
思いもよらぬ展開で、アドリエンヌは呆気にとられながらなんとか答える。
「あえ? えっと、へい」
思わず変な返事を返してしまった。アトラスは気にしていない様子だったが、ルシールが反応する。
「アドリエンヌ『へい』はないわぁ~」
その突っ込みで、その場にいる全員が笑った。
講堂で誰の目もはばからずそんな会話をしていたせいか、アドリエンヌがアトラスからも婚約の打診を受けていることが学園内で噂になった。
さらにアレクシは人目をはばからず甘い言葉を囁くので、アドリエンヌは令嬢たちからは羨望の的となり、令息たちからは憧憬の念で見られることが多くなっていた。
アドリエンヌは自分に力があるからこんな状況になっているとわかっていたので、周囲から勘違いされていることがとても恥ずかしかった。
そうして注目を受ける中、アレクシを入れて特訓を開始した。
アドリエンヌが時間を巻き戻る前、アレクシは『練習する必要はない』と言って訓練には参加せずこの課題をぶっつけ本番でやった。
なのでアレクシが練習に参加すると言った時には、思わずアレクシの顔を凝視した。そんなアドリエンヌをアレクシは見つめ返して言った。
「アドリエンヌ、どうした? そんなに君に見つめられると私も緊張する」
嘘ばっかり!
そう思いながらアドリエンヌはなんとか笑顔を作ると返す。
「王太子殿下は完璧ですもの、一緒に練習しなくてもよろしいのではないでしょうか」
「そんなことはない。私は君と練習できるのがとても嬉しいよ。最近はいつだって君といたいのだから」
は? なにを考えてますの?! この腹黒王子!!
アドリエンヌは心の中で悪態をつくと微笑む。
「そうでしたの、そうは見えませんでしたわ」
「信じてはくれないのだね。これも私の行いのせいだから仕方がないが」
ルシールがそんな二人を見つめて嬉しそうに言った。
「とても仲がよろしいのですね。二人の世界って感じ! もっと早くにペアを組んでいればよろしかったのではないでしょうか」
「な?! 仲はよろしくありませんわ!」
するとそれを受けてアレクシは頷くと言った。
「そうだな、残念なことに私はアドリエンヌに嫌われてしまっているからね」
アドリエンヌはアレクシを見つめ、顔をひきつらせながら答える。
「そんな、嫌ってるわけありませんわ」
するとアレクシが真剣な眼差しでアドリエンヌを見つめる。
「本当に?」
あまりにも長い時間アドリエンヌを見つめ返して来るので、恥ずかしくなりアドリエンヌはアレクシから目を逸らすと言った。
「ほ、ほら、じゃあ練習を始めますわ!」
練習中、こんなやり取りが二人の常となっていきそれを周囲が冷やかすことが増えていった。
アレクシの態度が急に変わったことで、アドリエンヌは戸惑った。だが、その度にアレクシは神の子を必要としているのだとあらためて実感するのだった。
そんなある日、目の前の机の上に広げられた森の地図に視線を落とし不意に思い付いたことをアレクシに訊いた。
「そうですわ、王太子殿下でしたら森のどこにエアーバードがいるか探索できますわよね?」
「そうだね、やろうと思えば可能だ」
エメがそれを聞いて言った。
「そうか、だとすると僕たちのチームはかなり優勢になりますね」
そう言うとエメはルシールに向きなおる。
「ルシール、あとは君がエアーバードにどれだけ正確に魔法を当てられるかにかかってきます」
ルシールは少し不安そうな顔で答える。
「そんな、プレッシャーかけないでください」
「もちろん、僕たちもエアーバードを捕獲しやすいように手を尽くしますよ」
そんな穏やかなやり取りを横目に、その時アドリエンヌは森の地図を見つめながら嫌なものを感じ取っていた。
この日の話し合いと練習が終わると、いつもならララの店に行くところだがアドリエンヌは用事があるからとそれを断った。すると突然、アレクシがアドリエンヌを屋敷まで送ると言い出した。
「王太子殿下に送っていただくわけには……」
「頼む、私が君と一緒にいたいんだ」
「はい? え? あの、そうなんですの? でも送っていただくなんて……」
そう言って戸惑うアドリエンヌにエメが言った。
「アドリエンヌ、王太子殿下からのお誘いです。あまり断るのは良くないのではないでしょうか。それに、たまには婚約者と一緒に帰るのも良いかもしれませんよ? お二人で色々と話し合われてください」
エメにそう説得されアドリエンヌは断るのを諦めた。
「わかりましたわ」
だが、話し合うつもりなど毛頭なかった。それにアレクシは馬車で帰るだろう、だから別々の馬車に乗ってしまえば良いと考えた。
学園の門を出たところで、王太子殿下専用の馬車が来るのを待つため立ち止まるが、アレクシは立ち止まらずに先へ進んで行く。
向こうに馬車が止めてあるのだろうかと思っていると、アレクシは振り返って言った。
「どうした、立ち止まって」
「いえ、あの馬車は他の場所に?」
「いや、君はいつも歩いて帰っているだろう? だから私も今日は歩くつもりだ」
そこまでしなくてもいいですのに。
そう思いながらアレクシのあとを追った。
しばらく無言でアレクシの後ろを歩いていると、アレクシは振り向きもせずにアドリエンヌに話しかけてきた。
「君は一人でなにかするつもりじゃないのか?」
「はい? なんのことですの?」
すると、そこでアレクシは立ち止まり振り向いて言った。
「君は先程地図を見ていた時に地図の一点を凝視してなにやら考えていた。あそこになにかあるんじゃないのか?」
どれだけ観察されていたのだろうと思い、アドリエンヌは少し動揺したが笑顔で答える。
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