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誰かが泣いてる
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...。
少しのあいだ、静寂が続いていた。
「ここは?」
知らない場所に来たなら、大抵誰でもその一声をあげるだろう。
実際、僕は知らない場所に来ていたのだ。
「何処だと思う?」
手をつないだままのヒカリに逆に訊かれ、僕は少しうろたえる。
すると、ヒカリは大人しい微笑を浮かべた。
それは、幼い子供をみて、和んでいる姉のような姿だ。
「ここはね。いろんなものがあって、いろんなものが混ざりあっている
世界。」
足元をよく見ると、赤、青、緑...とにかくいろんな色があるようだ。
だが。
周りは黒だ。
「向こう側は真っ黒だね。」
僕はヒカリに語りかけた。
「そう。向こうには光が当たっていないから。一ヶ所が明るくなるとね、
もう一方は必ず暗くなってしまうの。どうしてか分からないの。ただ...。」
僕の手が、少し強く握られたのを感じた。
「闇はものを暗く、見えなくするの。だから、ほら見て。誰かが泣いてる。」
ヒカリの指を指した先、
それは暗いし、遠くてよく分からない。
「見えなくて泣いているの。助けてって言っているみたいよ。」
ヒカリは握っている腕を、高くかざした。
そして、手を離す。
すると。
目の前が暗くて見えなくなった。
自分がそこに落ちたのだと分かるのに、少し時間がかかった。
...。
確かに、聞こえる。
きこえる。
誰かが泣いている声が。
「そこに誰かいるの?」
僕は声の主に呼び掛けてみた。
声は届いていないようだ。
「どうして泣いているの?」
返事はない。
どうして泣いているのだろう。
こんなに落ち着く闇の中なのに。
そういえば、自分も、気づいたら闇の中にいた。
そのときは、すごく怖かった。
あれ...?
どうして僕は...。
「ほら、わかったでしょ。悲しそう、あの子。」
いつの間にか、隣にヒカリが立っていた。
「私、闇は嫌い。だからすぐ、光にしてあげるね。」
ヒカリが手をかざす。
すると、徐々にそこが明るくなっていった。
「ほら見て。光があるとね。こんなにたくさんのものを映すことができるのよ。」
夜明けが、始まっていた。
これから少しずつ、ここは明るくなっていくだろう。
だが、
泣いていた少女は夜明けに気づかず、眠っていた。
少しのあいだ、静寂が続いていた。
「ここは?」
知らない場所に来たなら、大抵誰でもその一声をあげるだろう。
実際、僕は知らない場所に来ていたのだ。
「何処だと思う?」
手をつないだままのヒカリに逆に訊かれ、僕は少しうろたえる。
すると、ヒカリは大人しい微笑を浮かべた。
それは、幼い子供をみて、和んでいる姉のような姿だ。
「ここはね。いろんなものがあって、いろんなものが混ざりあっている
世界。」
足元をよく見ると、赤、青、緑...とにかくいろんな色があるようだ。
だが。
周りは黒だ。
「向こう側は真っ黒だね。」
僕はヒカリに語りかけた。
「そう。向こうには光が当たっていないから。一ヶ所が明るくなるとね、
もう一方は必ず暗くなってしまうの。どうしてか分からないの。ただ...。」
僕の手が、少し強く握られたのを感じた。
「闇はものを暗く、見えなくするの。だから、ほら見て。誰かが泣いてる。」
ヒカリの指を指した先、
それは暗いし、遠くてよく分からない。
「見えなくて泣いているの。助けてって言っているみたいよ。」
ヒカリは握っている腕を、高くかざした。
そして、手を離す。
すると。
目の前が暗くて見えなくなった。
自分がそこに落ちたのだと分かるのに、少し時間がかかった。
...。
確かに、聞こえる。
きこえる。
誰かが泣いている声が。
「そこに誰かいるの?」
僕は声の主に呼び掛けてみた。
声は届いていないようだ。
「どうして泣いているの?」
返事はない。
どうして泣いているのだろう。
こんなに落ち着く闇の中なのに。
そういえば、自分も、気づいたら闇の中にいた。
そのときは、すごく怖かった。
あれ...?
どうして僕は...。
「ほら、わかったでしょ。悲しそう、あの子。」
いつの間にか、隣にヒカリが立っていた。
「私、闇は嫌い。だからすぐ、光にしてあげるね。」
ヒカリが手をかざす。
すると、徐々にそこが明るくなっていった。
「ほら見て。光があるとね。こんなにたくさんのものを映すことができるのよ。」
夜明けが、始まっていた。
これから少しずつ、ここは明るくなっていくだろう。
だが、
泣いていた少女は夜明けに気づかず、眠っていた。
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