羽虫転生〜そして伝説となる〜

✳︎そして、結ばれる

ーーちょっとくらい、いいよね、夢なんだし…

私は夢の中だと割り切って、男に近付いた。

赤い顔のまま固まっている男に、声をかけようかと思ったけど、やめた。
声を出した瞬間に目が覚めたら嫌だし。
もう少し、この夢の続きを堪能したい。
だから、話しかけない代わりに微笑んだ。

男は私の微笑みを見て、さらにガチッと固まった。…少し面白い


私に見惚れてるってことは、少なくとも夢の中の人化した私は、彼の好みタイプってことだよね？
（ちなみに私の前世の見た目は、黒目黒髪ロング、顔はまぁ普通。身長は高め、スタイルは割といい方で、胸はEカップあります！）
嫌がられてはないと判断して、大胆にも裸のまま抱き付いた。


…ビクッ‼︎ピシッ


男は体を震わせると、より一層固まった。まるで、銅像のようだ…

男は寝るとき、いつも上半身裸に布団をかけて寝ていたから、今は素肌同士が密着した状態。

虫の時も思ってたけど、体おおきぃなぁ…

男の体は狩人なだけあってムキムキで、ギュッと隙間なく抱きつくと、私の頬が彼の筋肉に覆われた胸板あたりにくる。彼の硬い腹筋に私の胸が押し潰されてムニュと形を崩す。

それが面白くて、ムニュとしては離れ、ムニュとしては離れ、を繰り返した。

「…～～～dax,gmo...ッ‼︎」

そんなことをしていると、再起動した男に姫抱っこされてベットに連れて行かれた。

私をベットに優しく座らせた男は、私の顎を持ち上げて、愛おしくて堪らないといった表情のままキスをした。
最初は軽く、唇を押し付けるだけのもの。でも、すぐに舌が絡むような深い口づけに変わって、体を触られながら、唾液を流し込まれる頃には意識が朦朧としていた。



そして、そのまま………








………朝です、おはようございま～す。
自分の姿を見て、やっぱりね…と苦笑する。
私のボディは、羽虫のまま。
ベットには、まだ男が布団をかぶって寝ている。


……夢オチ、ってやつね。わかる。


そりゃ、いくら異世界でも、種族は変わらないよね。

夢の中で、男に抱き潰されたはずの体に、疲労や違和感は無いし、安定の羽虫ボディに溜息をつく。


妙にリアルな夢でも、夢は夢。


…夢の中だけでも、結ばれたんだもん。幸せ、だよね。


私は男から離れられるギリギリの位置まで飛び上がり、ベッドの上から愛しい男ひとの顔を、眺めた。


そして、夢の中のアレやコレやを思い出し、悶もだえた。いや～、我ながら昨夜はお盛んでしたね！…夢だけど！


男が起きて、目があったら絶対、顔が赤くなって見せられない顔になる。挙動不審間違いなしだ。


今ほど羽虫ボディでよかったと思ったことはない。だって、羽虫の顔色なんて、人間にはわからないはず。


…神様、今だけですよ？羽虫ボディを全面的に受け入れてはいませんから、あしからず。


神に物申していると、男が起きる時間となった。



「……………？…ん゛ん～？」



男は何かを手探りすると、その何かを見つけられず、慌ててパチッと目を開けた。

そして、上空に飛ぶ私を見つけ、微笑んだ。出会った時から、羽虫私に向ける彼の笑顔は変わらず甘い。

だか、この後、いつもと違うことが起きた。













「おはよう」




…………ぇ。


え、エェエェェエーーーーッッ？？！？！



ことばが　わかる　だと～？！？！