仄暗く愛おしい

零瑠~ぜる~

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泡沫の4

仄暗く愛おしい

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 珍しい雹樹の我儘に、瑞樰は少し困りながらも嬉しいと思ってしまった。何時も、自分の我儘を聞いてもらうばかりだからこんな風に彼の望みを聞けるのを喜んでしまった。
「雹樹の事、ちゃんと見てるよ?
雹樹は、私の大切な大切な家族だもん。」
「瑞樰が、僕の事大切に思ってるのは知ってる。けど、もっと!」
抱き寄せて、ぎゅっと腕の中に閉じ込めながら雹樹が言う。普段の彼ら叱らぬ行動に、今回どれだけ彼に心配をかけたかを察した。長い時を生きてきたとはいえ、彼が瑞樰の死をなんとも思っていない訳が無い。これだけ、言葉と態度で好きだと愛情を示してくれているのだから。瑞樰が眠りについた時はきっと、辛かっただろう。そのことを思うと、どうしようもなかったとはいえ本当にひどい事をしてしまったと後悔が過ぎる。雹樹の背に腕を回し、ぎゅっと抱きしめ返した。
「これからは、ずっと一緒だよ。私は、雹樹と同じように生きていけるんでしょう?
ヒトとは違う理の中を生きていくのでしょう?
だったら、これから先はずっと雹樹の傍に居るってことだよ。」
抱きしめた雹樹の体が一瞬、びくっと震えたがずっと一緒に居ると告げると抱きしめる腕に力が込められた。
緩く優しく、それでも抜け出すことは出来ないきつさで抱きしめられその程よい束縛に幸せを感じた。こんなにも、自分を思い求めてくれる存在が居る事に。
「こいつらが、生きている間はこいつらの傍に居るということだね?
仕方がない、そのくらいは譲歩しよう。本の数十年くらいは、待ってあげる。」
ほんの数十年と軽く言える当たり、やはり雹樹の感覚は人間とはかけ離れている。そんな彼の言葉を聞きながら、瑞樰はこれからは自分も彼と同じ時間を生きるのだなぁとぼんやりと思った。未だに、自分が人外になってしまった実感が薄いためどこか他人事のように感じてしまう。
「ふふ、ほんの数十年か。そうだね、雹樹と一緒に皆と生きて。皆が、生き切ったら改めて雹樹と二人でゆっくり生きていこうか。」
随分とアバウトで気の長い話だと思いながらも、瑞樰はそんなことを言える今が幸せだと思った。ほんの数か月前までは、いつ死ぬか分からないような状態だったというのに。
『雹樹の言うように、ほんの数十年。尊さんとクリスさんと・・・・鏡さんも。一緒に暮らして生きて生き切って、その後<あと>の人外の時間を雹樹と一緒に過ごすのもきっと楽しいんだろうな。』
ふわふわと真綿の様な優しい気持ちで、この先の生活を夢見ることが出来る幸せを瑞樰は噛み締めていた。
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