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本編
大輝編68話~年末の結末~
「えーと、じゃあまず大輝さんのプロフィールでも……」
いきなり放送禁止になりそうなワードを物故もうとした睦月を俺が抑え込んで、ひとまず番組を立て直すことに成功しつつある様だ。
だからって何で俺のプロフィールなんて……。
「えっと、大輝の趣味はゲームで……胸は大き目が好きだよね。あとは……」
「お前黙ってろって言っただろ……」
「喋らせてよー!私が何だかんだ大輝のことなら一番知ってるんだから!」
むくれた様な顔になって睦月が俺を睨む。
この顔はやばい。
修学旅行の悪夢が瞬時に蘇って、俺はさっと睦月の肩を掴んだ。
「お、お前が一番知ってるのはわかってる。うん、大丈夫だ。だから俺が自分で答える。おーけー?」
「やだ。私に言わせてくれないなら……」
ああ、こいつ力使おうとしてやがる……。
いきなりオーラ漲らせやがって……。
「わ、わかった。だけど表面的なのだけにしておいてくれませんか……」
「任せてよ!」
「あ、じゃあお伺いしてもいいですか?」
観客の視線もさることながら、出演者の視線までもが痛い。
そもそも俺部外者だったはずなのに、何でここにいるんだよ……。
「ねぇ大輝くん。昨日やったマルチなんだけど」
睦月が俺について色々喋っている間で、絵里香ちゃんが俺に話しかけてくる。
こいつらもしかして組んでたりするの?
俺の注意をゲームの話題に向けさせて、その間で情報を引き出させようという……。
「ああ、どうした?」
「和歌さんって、物凄い課金してる人だよね?また今度お願いしたいんだけど」
「ああ、それなら和歌さんも、絵里香ちゃんは筋がいいって褒めてたし……お願いしとくよ」
実際和歌さんは一回か二回くらいしか直接絵里香ちゃんに会ったことがないはずだけど、割と気に入ってる様に見えた。
歳は随分……じゃなくてちょっと離れてるけど、いい友達になれるんじゃないだろうか。
「でぇ、大輝って実は……」
「まだ続いてたのか、俺の話……」
「え、まだこれから中学校入ってすぐの……」
「はぁ!?ちょっと待て、お前あれ言うつもりなのかよ!!」
「お?これは大輝さん、いい反応ですよ。椎名さん、お願いします」
「ま、待て!黙秘権を発動する!!そのことだけは、誰にも言っちゃいけない!!」
そんな俺の願いは悉く却下され、俺の睦月への……いや春海への告白は全国に晒されることとなった。
初々しい~とか、可愛い~とか声が前から後ろから聞こえる。
ああ、遺書でも書いてくれば良かった。
というか何だ、睦月は俺を公開処刑したいほど嫌いなのか?
それがまさか全国規模になるなんて思ってもみなかったけど……。
「もう、その時の大輝が物凄く可愛くて……写真見ます?」
「ちょ!!」
睦月がスマホの写真を取り出し、中学校の頃の俺の写真までも全国に流れた。
「わぁ、大輝くん可愛い!!」
中でも絵里香ちゃんが大喜びで、これを止めてしまうのは何となく気が引けた。
くそ、策士め……。
絵里香ちゃんを餌に使うとは、卑怯な……。
「そう言えば、去年は大輝さんが椎名さんにライブ中絶叫告白してましたよね」
「くっ……」
「今年は、ああいうのやらないんですか?」
「やるわけないでしょ……」
そんなの期待されても困る。
喜ぶのなんて、睦月と春喜さんに秀美さんくらいなもんだろ……。
大体絵里香ちゃんが隣にいるのに、そんなのやったらどうなるか想像もつかない。
「いやぁ、去年はあんなに嬉しい告白されましたから……それに、夏くらいに一回、決定的な一言を……」
「も、もうやめて睦月様……何でもしますから……」
あんなことまで暴露されたら、さすがに学校行けない。
そして俺のライフはもうゼロだ。
「じゃあ、お二人は小学生の頃からのお付き合いってことになるんですか?」
「まぁ、そういうことになりますね。ねぇ、大輝?」
「ああ……そッスね……」
あんまり番組の雰囲気を壊さない様に、ライフを回復させなくては。
そう思ったら、何となくこいつとの出会いの頃を思い出していた。
そういえばこいつ、出会った頃はまだ可愛くて……いや、割とめちゃくちゃしてるやつだったな。
神だってことがわかってからは段々遠慮がなくなって、日に日にエスカレートしてる気がする。
最終的に俺が爆発したりするんじゃないか、とかちょっと思ってしまう。
いや、いくらこいつでも俺を殺す様なことはしないどころか……多分地球が爆発する、とかなったら俺とハーレムメンバーだけでも生かそうとか考えるに違いない。
そう考えると頼もしい限りだが……。
しかし、この日々の嫌がらせに近いものは一体何なんだ本当……。
どっかで見覚えあるんだよなぁ、ああいうの……スケールは桁違いだけど。
「……大輝、聞いてる?」
「え?」
しまった、思い出に浸りすぎて現実から意識が……。
「た、大輝さん聞いてなかったんですか?」
「えっと……」
「大輝、私……割と大事なこと言ったつもりなんだけど……」
「大輝くん、さすがにそれはまずいと思うなぁ」
「…………」
やっばい!!
睦月が究極にむくれた顔してる!!
「ち、違うんだ睦月、聞いてくれ!じ、実はさっきほら……出会いの話があっただろ?それで……出会った頃を思い出してたんだ!」
「え……?そうなの?」
「ああ!お、お前の話を聞いてないなんてこと、あるはずないだろ!?」
「そうだよね!」
おお、いつになくチョロいなこの女。
何とかこれで機嫌は直りそうか……?
「で、大輝くん、睦月お姉ちゃん何て言ってたと思う?」
「えっ」
何故そこでその問題を掘り返すんだこの子!!
鬼か!?悪魔か!?
本当は俺のこと嫌いなの!?
「え、えっと……ごめんなさい、聞こえないほど思い出に浸っちゃってました……」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙が痛い。
そして俺を見る色んな人の視線が刺さる様だ。
そんなに大事なこと言ったのか、こいつ……。
言う前に一言声かけるとかしてくれたらいいのに……。
「他の女のこと考えてた、とかだったらぶん殴ろうかと思ったけど」
あ、危ねぇ!!
うっかり俺殺されちゃうところだった!!
こいつの全力パンチとか生身で食らったら、まず即死だわ。
生放送で殺人とか、シャレにならなすぎる。
絵里香ちゃんにも深刻なトラウマ植え付けるところだったぜ……。
「私のこと、考えてたんだよね?」
「え、えっとそうです……」
「ふむ……じゃあ許しちゃおうかな。だけど、もう一度言うから今度はちゃんと聞いてもらうけどね」
もう一回言うのか。
何言ってたのかわからんが、そういうことなら、聞かせてもらおうかな。
復帰します、とかだったらさすがに全力で止めるけど。
「大輝」
「あ、は、はい」
疚しいことはないが、何となく正面から見つめられると、どうしても滑らかに言葉が出てこない。
「もう!取って食おうってわけじゃないんだからそんなに身構えないでよ、傷つくなぁ……」
「あ、ご、ごめん」
「あと一回しか言わないからね?」
「あ、ああ」
観客と出演者、司会に絵里香ちゃん。
全員の目が俺と睦月に注がれる。
カメラの向こうでは何万人っていう単位で俺たちを見ているんだろう。
「大輝、私今年の夏大輝が言ってくれたこと……凄く嬉しかった」
「あ、あれですか……」
「あれです。まぁ、テレビ見てる人もこの会場の人も全員知ってるけどね」
「内容まで言いやがったのか……まぁいいや……」
「だからね、今度は私が大輝に思いを伝えようと」
「えっ?」
睦月が、俺に?
あれ?そういえば……確かに普段から態度で示してくることは多かったけど、気持ちとして伝えてくることってそんなになかった様な……。
もしかして、俺ってやつはそんな大事なことを聞き流していたのか……?
「そんなに意外?私、多分口に出して言うことってあんまりなかったかなって」
「そ、そうだけど……」
「大輝、私ね。あの言葉が凄く嬉しくて……それに去年もあんなになるまで頑張ってくれて……本当に嬉しかったの。だからね、私も一つ」
睦月が珍しく深呼吸なんかしてる。
緊張してるのか。
「私も、大輝とずっと一緒にいたいです。だから、私に傍にいさせてください。
私の目の前で、どんなことからも大輝を守っていくから」
おおおおお!!と会場が湧く。
な、何だこれ!
ていうか何で俺が守られる立場なんだ!?
「大輝が私を一番よく見てくれてるっていうのは、みんなもよくわかってるし多分、絵里香ちゃんにもわかっちゃってると思う」
「…………」
そういやこいつ、絵里香ちゃんに吹き込みやがったんだっけ。
「だから、私は一番近くで大輝を見ていたい。ダメ?」
「だ、ダメじゃない……けど……」
いや待ってよ、え、こんなの全国に流れてるの?
俺もう明日から……いやもう今日の時点でスタジオから出られなくね?
さすがに恥ずかしすぎるんだが……。
「はっきりしてよもう……こういう時くらい、びしっと」
「び、びしっとって……えええ……」
周りの俺を見る目が、期待に満ちているのを感じる。
俺に、一体何を期待しているというのか。
まさかとは思うけど、ここでキスしろ、とかそんな無茶ぶりは……。
「大輝、私の気持ち受け取ってくれるよね?」
「え、ま、まさか……」
さすがにそれは全国ネットで流されるのはきつい。
そんなわけで身をよじって逃げようとしたが、体が動かない。
「さぁ大輝さん、覚悟を決めましょう!椎名さん、どうぞ!!」
どうぞじゃねぇ!!
睦月のやつ、力使いやがった!!
動きの取れなくなった俺の肩を掴んで、睦月が優しい目で俺を見つめる。
何だ、この慈愛に満ちた視線は……あれ、もしかしてこいつ……。
ああ、そうか……小学生が好きな子の気を引こうとして、意地悪するときのあれか、やっぱり……。
こいつはこいつなりに、俺の気を引きたくて、構ってほしくて……っていうことなんだろう。
なら、俺もここで逃げようなんて……まぁ無理なんだけどさ、物理的に。
睦月の唇が俺に触れた瞬間、会場は今までにないほどに沸いた。
中には泣いてる人まで……そんなに感動的か?これ。
俺が力で動けない様にされてるなんて実態を知ったら、ドン引きだと思うんだけど。
色々あったが、無事?生放送は終了した。
睦月は今も色んな人からオファーが来るらしいが、その度全部断っている。
今回は俺に思いを伝えるいい機会だから、ということで引き受けたらしいが、それならせめて生放送じゃなくて収録の番組でやっていただきたかった。
別に睦月の思いが嬉しくなかったわけじゃないし、寧ろ……まだ心が少し踊っている様な感覚があるわけだが。
そして絵里香ちゃんだが……何でもずばずば物を言うところを買われて芸能界入りするかも、という話になっていた。
この調子で忙しくなって俺のことなんか忘れてくれたら、それはそれで楽でいいんだけどな……。
まぁ、そんなこと言ったらメンバーからも超怒られると思うからまず言わないけど。
「うちのローンの完済できる様になったらいいなぁ」
なんて、親孝行なセリフが絵里香ちゃんから出てきたのはちょっと驚きだったが、俺としては喜ばしいことだと思う。
絵里香ちゃんママが睦月にしきりに礼を言っていて、正直俺としては複雑な気分だった。
「大輝、今回も強引だったかな?」
帰りの電車で手をつなぎながら座って、睦月がふと漏らした。
今更だろ、と思うが正直、明日から外出るのちょっと怖い、という気持ちがある。
幸い睦月のファンだった人たちにはそこまで過激派な人がいなそうだから、まだマシと言えるかもしれないが。
「まぁ、強引だってのは否定しないけどな。まぁでも、何だ……嬉しかったよ……」
その俺の言葉を受けて睦月がぱぁっと顔を明るくする。
ここで、強引なのやめて、とか塩対応したら多分俺は明日の朝日が拝めなかったりとか、悲惨な結末を迎えるのだろう。
「絵里香ちゃんの件、無事片付きそうで良かったね」
「何だお前、やっぱりそれ狙ってたのか……まぁ正直なこと言うと、どうしようってずっと考えてたことではあるからな……」
「ああなれば、きっと絵里香ちゃんは大輝にそこまで夢中ってわけにもいかなくなるし……多分絵里香ちゃんなら芸能界でやっていけるよ、私と違ってね」
「お前だって、やろうと思えばできるだろ。あの時はまぁ、時限アイドルだったから仕方ないかもしれないけど」
「ううん。私、さっき言ったこと全部本音だからね?だから……大輝と一緒にいられないんだったら、アイドルなんかしたくないもん」
そう言って腕を絡めてくる。
何だかんだこいつに巻き込まれっぱなしだけど、睦月は睦月で色々考えているんだろうと考えると、無碍にも出来ない。
巻き込まれるのなんか、今更だし、これからもきっと、ずっとそうなんだろう。
だったら出来るだけ巻き込まれてやって、こいつが少しでも喜ぶ方向でやっていくのが平和でいい。
もう少しで地元に到着する電車の中で、そんなことを考えていた。
しかし年末くらい、もう少し平和に暮らせないもんかね。
いきなり放送禁止になりそうなワードを物故もうとした睦月を俺が抑え込んで、ひとまず番組を立て直すことに成功しつつある様だ。
だからって何で俺のプロフィールなんて……。
「えっと、大輝の趣味はゲームで……胸は大き目が好きだよね。あとは……」
「お前黙ってろって言っただろ……」
「喋らせてよー!私が何だかんだ大輝のことなら一番知ってるんだから!」
むくれた様な顔になって睦月が俺を睨む。
この顔はやばい。
修学旅行の悪夢が瞬時に蘇って、俺はさっと睦月の肩を掴んだ。
「お、お前が一番知ってるのはわかってる。うん、大丈夫だ。だから俺が自分で答える。おーけー?」
「やだ。私に言わせてくれないなら……」
ああ、こいつ力使おうとしてやがる……。
いきなりオーラ漲らせやがって……。
「わ、わかった。だけど表面的なのだけにしておいてくれませんか……」
「任せてよ!」
「あ、じゃあお伺いしてもいいですか?」
観客の視線もさることながら、出演者の視線までもが痛い。
そもそも俺部外者だったはずなのに、何でここにいるんだよ……。
「ねぇ大輝くん。昨日やったマルチなんだけど」
睦月が俺について色々喋っている間で、絵里香ちゃんが俺に話しかけてくる。
こいつらもしかして組んでたりするの?
俺の注意をゲームの話題に向けさせて、その間で情報を引き出させようという……。
「ああ、どうした?」
「和歌さんって、物凄い課金してる人だよね?また今度お願いしたいんだけど」
「ああ、それなら和歌さんも、絵里香ちゃんは筋がいいって褒めてたし……お願いしとくよ」
実際和歌さんは一回か二回くらいしか直接絵里香ちゃんに会ったことがないはずだけど、割と気に入ってる様に見えた。
歳は随分……じゃなくてちょっと離れてるけど、いい友達になれるんじゃないだろうか。
「でぇ、大輝って実は……」
「まだ続いてたのか、俺の話……」
「え、まだこれから中学校入ってすぐの……」
「はぁ!?ちょっと待て、お前あれ言うつもりなのかよ!!」
「お?これは大輝さん、いい反応ですよ。椎名さん、お願いします」
「ま、待て!黙秘権を発動する!!そのことだけは、誰にも言っちゃいけない!!」
そんな俺の願いは悉く却下され、俺の睦月への……いや春海への告白は全国に晒されることとなった。
初々しい~とか、可愛い~とか声が前から後ろから聞こえる。
ああ、遺書でも書いてくれば良かった。
というか何だ、睦月は俺を公開処刑したいほど嫌いなのか?
それがまさか全国規模になるなんて思ってもみなかったけど……。
「もう、その時の大輝が物凄く可愛くて……写真見ます?」
「ちょ!!」
睦月がスマホの写真を取り出し、中学校の頃の俺の写真までも全国に流れた。
「わぁ、大輝くん可愛い!!」
中でも絵里香ちゃんが大喜びで、これを止めてしまうのは何となく気が引けた。
くそ、策士め……。
絵里香ちゃんを餌に使うとは、卑怯な……。
「そう言えば、去年は大輝さんが椎名さんにライブ中絶叫告白してましたよね」
「くっ……」
「今年は、ああいうのやらないんですか?」
「やるわけないでしょ……」
そんなの期待されても困る。
喜ぶのなんて、睦月と春喜さんに秀美さんくらいなもんだろ……。
大体絵里香ちゃんが隣にいるのに、そんなのやったらどうなるか想像もつかない。
「いやぁ、去年はあんなに嬉しい告白されましたから……それに、夏くらいに一回、決定的な一言を……」
「も、もうやめて睦月様……何でもしますから……」
あんなことまで暴露されたら、さすがに学校行けない。
そして俺のライフはもうゼロだ。
「じゃあ、お二人は小学生の頃からのお付き合いってことになるんですか?」
「まぁ、そういうことになりますね。ねぇ、大輝?」
「ああ……そッスね……」
あんまり番組の雰囲気を壊さない様に、ライフを回復させなくては。
そう思ったら、何となくこいつとの出会いの頃を思い出していた。
そういえばこいつ、出会った頃はまだ可愛くて……いや、割とめちゃくちゃしてるやつだったな。
神だってことがわかってからは段々遠慮がなくなって、日に日にエスカレートしてる気がする。
最終的に俺が爆発したりするんじゃないか、とかちょっと思ってしまう。
いや、いくらこいつでも俺を殺す様なことはしないどころか……多分地球が爆発する、とかなったら俺とハーレムメンバーだけでも生かそうとか考えるに違いない。
そう考えると頼もしい限りだが……。
しかし、この日々の嫌がらせに近いものは一体何なんだ本当……。
どっかで見覚えあるんだよなぁ、ああいうの……スケールは桁違いだけど。
「……大輝、聞いてる?」
「え?」
しまった、思い出に浸りすぎて現実から意識が……。
「た、大輝さん聞いてなかったんですか?」
「えっと……」
「大輝、私……割と大事なこと言ったつもりなんだけど……」
「大輝くん、さすがにそれはまずいと思うなぁ」
「…………」
やっばい!!
睦月が究極にむくれた顔してる!!
「ち、違うんだ睦月、聞いてくれ!じ、実はさっきほら……出会いの話があっただろ?それで……出会った頃を思い出してたんだ!」
「え……?そうなの?」
「ああ!お、お前の話を聞いてないなんてこと、あるはずないだろ!?」
「そうだよね!」
おお、いつになくチョロいなこの女。
何とかこれで機嫌は直りそうか……?
「で、大輝くん、睦月お姉ちゃん何て言ってたと思う?」
「えっ」
何故そこでその問題を掘り返すんだこの子!!
鬼か!?悪魔か!?
本当は俺のこと嫌いなの!?
「え、えっと……ごめんなさい、聞こえないほど思い出に浸っちゃってました……」
「…………」
「…………」
「…………」
沈黙が痛い。
そして俺を見る色んな人の視線が刺さる様だ。
そんなに大事なこと言ったのか、こいつ……。
言う前に一言声かけるとかしてくれたらいいのに……。
「他の女のこと考えてた、とかだったらぶん殴ろうかと思ったけど」
あ、危ねぇ!!
うっかり俺殺されちゃうところだった!!
こいつの全力パンチとか生身で食らったら、まず即死だわ。
生放送で殺人とか、シャレにならなすぎる。
絵里香ちゃんにも深刻なトラウマ植え付けるところだったぜ……。
「私のこと、考えてたんだよね?」
「え、えっとそうです……」
「ふむ……じゃあ許しちゃおうかな。だけど、もう一度言うから今度はちゃんと聞いてもらうけどね」
もう一回言うのか。
何言ってたのかわからんが、そういうことなら、聞かせてもらおうかな。
復帰します、とかだったらさすがに全力で止めるけど。
「大輝」
「あ、は、はい」
疚しいことはないが、何となく正面から見つめられると、どうしても滑らかに言葉が出てこない。
「もう!取って食おうってわけじゃないんだからそんなに身構えないでよ、傷つくなぁ……」
「あ、ご、ごめん」
「あと一回しか言わないからね?」
「あ、ああ」
観客と出演者、司会に絵里香ちゃん。
全員の目が俺と睦月に注がれる。
カメラの向こうでは何万人っていう単位で俺たちを見ているんだろう。
「大輝、私今年の夏大輝が言ってくれたこと……凄く嬉しかった」
「あ、あれですか……」
「あれです。まぁ、テレビ見てる人もこの会場の人も全員知ってるけどね」
「内容まで言いやがったのか……まぁいいや……」
「だからね、今度は私が大輝に思いを伝えようと」
「えっ?」
睦月が、俺に?
あれ?そういえば……確かに普段から態度で示してくることは多かったけど、気持ちとして伝えてくることってそんなになかった様な……。
もしかして、俺ってやつはそんな大事なことを聞き流していたのか……?
「そんなに意外?私、多分口に出して言うことってあんまりなかったかなって」
「そ、そうだけど……」
「大輝、私ね。あの言葉が凄く嬉しくて……それに去年もあんなになるまで頑張ってくれて……本当に嬉しかったの。だからね、私も一つ」
睦月が珍しく深呼吸なんかしてる。
緊張してるのか。
「私も、大輝とずっと一緒にいたいです。だから、私に傍にいさせてください。
私の目の前で、どんなことからも大輝を守っていくから」
おおおおお!!と会場が湧く。
な、何だこれ!
ていうか何で俺が守られる立場なんだ!?
「大輝が私を一番よく見てくれてるっていうのは、みんなもよくわかってるし多分、絵里香ちゃんにもわかっちゃってると思う」
「…………」
そういやこいつ、絵里香ちゃんに吹き込みやがったんだっけ。
「だから、私は一番近くで大輝を見ていたい。ダメ?」
「だ、ダメじゃない……けど……」
いや待ってよ、え、こんなの全国に流れてるの?
俺もう明日から……いやもう今日の時点でスタジオから出られなくね?
さすがに恥ずかしすぎるんだが……。
「はっきりしてよもう……こういう時くらい、びしっと」
「び、びしっとって……えええ……」
周りの俺を見る目が、期待に満ちているのを感じる。
俺に、一体何を期待しているというのか。
まさかとは思うけど、ここでキスしろ、とかそんな無茶ぶりは……。
「大輝、私の気持ち受け取ってくれるよね?」
「え、ま、まさか……」
さすがにそれは全国ネットで流されるのはきつい。
そんなわけで身をよじって逃げようとしたが、体が動かない。
「さぁ大輝さん、覚悟を決めましょう!椎名さん、どうぞ!!」
どうぞじゃねぇ!!
睦月のやつ、力使いやがった!!
動きの取れなくなった俺の肩を掴んで、睦月が優しい目で俺を見つめる。
何だ、この慈愛に満ちた視線は……あれ、もしかしてこいつ……。
ああ、そうか……小学生が好きな子の気を引こうとして、意地悪するときのあれか、やっぱり……。
こいつはこいつなりに、俺の気を引きたくて、構ってほしくて……っていうことなんだろう。
なら、俺もここで逃げようなんて……まぁ無理なんだけどさ、物理的に。
睦月の唇が俺に触れた瞬間、会場は今までにないほどに沸いた。
中には泣いてる人まで……そんなに感動的か?これ。
俺が力で動けない様にされてるなんて実態を知ったら、ドン引きだと思うんだけど。
色々あったが、無事?生放送は終了した。
睦月は今も色んな人からオファーが来るらしいが、その度全部断っている。
今回は俺に思いを伝えるいい機会だから、ということで引き受けたらしいが、それならせめて生放送じゃなくて収録の番組でやっていただきたかった。
別に睦月の思いが嬉しくなかったわけじゃないし、寧ろ……まだ心が少し踊っている様な感覚があるわけだが。
そして絵里香ちゃんだが……何でもずばずば物を言うところを買われて芸能界入りするかも、という話になっていた。
この調子で忙しくなって俺のことなんか忘れてくれたら、それはそれで楽でいいんだけどな……。
まぁ、そんなこと言ったらメンバーからも超怒られると思うからまず言わないけど。
「うちのローンの完済できる様になったらいいなぁ」
なんて、親孝行なセリフが絵里香ちゃんから出てきたのはちょっと驚きだったが、俺としては喜ばしいことだと思う。
絵里香ちゃんママが睦月にしきりに礼を言っていて、正直俺としては複雑な気分だった。
「大輝、今回も強引だったかな?」
帰りの電車で手をつなぎながら座って、睦月がふと漏らした。
今更だろ、と思うが正直、明日から外出るのちょっと怖い、という気持ちがある。
幸い睦月のファンだった人たちにはそこまで過激派な人がいなそうだから、まだマシと言えるかもしれないが。
「まぁ、強引だってのは否定しないけどな。まぁでも、何だ……嬉しかったよ……」
その俺の言葉を受けて睦月がぱぁっと顔を明るくする。
ここで、強引なのやめて、とか塩対応したら多分俺は明日の朝日が拝めなかったりとか、悲惨な結末を迎えるのだろう。
「絵里香ちゃんの件、無事片付きそうで良かったね」
「何だお前、やっぱりそれ狙ってたのか……まぁ正直なこと言うと、どうしようってずっと考えてたことではあるからな……」
「ああなれば、きっと絵里香ちゃんは大輝にそこまで夢中ってわけにもいかなくなるし……多分絵里香ちゃんなら芸能界でやっていけるよ、私と違ってね」
「お前だって、やろうと思えばできるだろ。あの時はまぁ、時限アイドルだったから仕方ないかもしれないけど」
「ううん。私、さっき言ったこと全部本音だからね?だから……大輝と一緒にいられないんだったら、アイドルなんかしたくないもん」
そう言って腕を絡めてくる。
何だかんだこいつに巻き込まれっぱなしだけど、睦月は睦月で色々考えているんだろうと考えると、無碍にも出来ない。
巻き込まれるのなんか、今更だし、これからもきっと、ずっとそうなんだろう。
だったら出来るだけ巻き込まれてやって、こいつが少しでも喜ぶ方向でやっていくのが平和でいい。
もう少しで地元に到着する電車の中で、そんなことを考えていた。
しかし年末くらい、もう少し平和に暮らせないもんかね。
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だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!