手の届く存在

スカーレット

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本編

大輝編70話~お嬢さまの覚悟~

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「いいか、西条さん」

俺は覚悟を決めることにした。
この子に対して正しい知識をという、俺の百パーセント善意の行動。
これが今日、どんな結果をもたらすのかはわからない。

しかし、西条さんはきっと後々、俺に感謝する日が来るに違いない。
自分の過ちを正してくれたこと、そして正しい知識を教えてくれたことを。

「ほ、保健体育の授業、聞いてた?」
「保健体育、ですか?」

不思議そうな顔をしている西条さん。
何故ここで脈絡のない話を、なんて思っているのかもしれない。

「そ、そうだ、保健体育の授業だ。あれでほら……人体の仕組みとか、そういうのやらなかった?」
「やりましたわ。ですけれど、少々おかしなことがありまして……」
「おかしなこと?」
「何か特別な授業の時に、わたくしだけ別の教室で授業を受けさせられましたの」
「は?」

どういうことだ?
性教育の授業を、意図的に避けられたってことか?
この子の家がヤクザの家だから、ってことで学校側が意図的に……?

考えられない話でもないが……それだと明日香もそうされていておかしくないはずだ。
あいつだって、それなりに人並みの性知識は持っていた。
となれば……なるほど。

「そ、そうか。事情は大体わかったよ。じゃあ質問を変える。西条さん……えっと、下世話な話になるけど、月のものはくるだろう?毎月、ほら」
「……何故、殿方がその話を知っていますの?」
「え?」
「女性だけの秘密であると伺っております。それを、何故殿方が!?」

掴みかからんばかりの勢いで西条さんが俺を睨みつける。
さっきまでオドオドしてたお嬢様とは思えない様な表情だ。

「い、いや落ち着いて!誰でも……いや、小学生とかは知らないかもしれないけど、中学生くらいから大体誰でも知ってる話だから、生理とか!」
「な、何ですって……?」

そして憤怒の表情が驚愕の表情に変わり、西条さんは俯いた。

「ま、まぁ知る知らないの話はこの際置いとこう。それより、ちゃんとくるんだろ?」
「え、ええ……きますけれど……」
「その生理、何でくるんだと思う?」

何で俺がこんなところでお嬢様相手に性教育とかせにゃならんのだ……。
俺は性教育よりもおしっこがしたくてたまらないというのに。

「それは……老廃物を代謝によって排出する行為の一環であると」
「はい、そこだ。そこからもう間違っている。それについて詳しく説明しようじゃないか」
「は、はぁ」
「だ、だから……お願いします、トイレから出てってください」
「何でですの!?関係ないじゃありませんか!早く興奮を収めて、おしっこして見せてくださいまし!!」

くそ、騙されてくれなかった……。
こうなったらもう、本当のことを言うしかないのか……。

「一つ、言っておくぞ……こうなっちまった俺のアレはな……最低でも数十分近くはこうなんだ。つまり、すっきりさせないと元には戻らないんだよ」
「す、すっきり?どういうことですの?」

またか!!
まぁ生理についての知識もない様な子だ、男のメカニズムなんか周りが聞かせているとは思えない。
もしかしたらあの親父さんも携帯にはフィルターとかかけてるかもしれないしな……。

だけど、それだったらさすがにこの状況自体があり得ない様な……。

「ああ、もうまどろっこしいことはやめだ!いいか?男のアレは、女に突き刺す為にあるんだ!」
「つ、突き刺す!?」
「そうだ!生理ってのはな、子どもをつくる為の体作りの一環だ。子宮が内膜を定期的に排出して……」

などなど、もう半ばやけっぱちで性知識を説く。
本当、何でトイレ行きたかっただけのはずなのにこんなことになっているのか。
そして俺の言うことを理解したのか、西条さんが顔色を変えていった。

「と、ということは……」
「ああ、そうだ。西条さんは意図的にその知識を間違えて覚えさせられていたんだ」
「で、でしたら……お父様に、確認したいのですがよろしいでしょうか?」
「は!?いや待て!そんなの俺が教えたなんてことになったら、俺が殺されちまうって!いや、間違ったことは教えてないけど、絶対親父さんいい気分になんかならないからな!?」
「何故ですの!?宇堂さんは正しいことを教えてくださったのでしょう!?」
「人間ってのは大体そういうもんなんだって!!考えてみろよ、西条さんに娘ができて、将来何処の馬の骨ともわからない男から性知識を植え付けられたなんてこと!」
「……その殿方を殺して、わたくしも死ぬかもしれませんわね」
「お、落ち着け……それに、正しいことが全てじゃないんだよ、この世の中。間違って覚えさせたのだって、悪気があったとは考えにくい。西条さんがそうなるってわかっていたからそうしたんじゃないかって、俺は思うけどな」

納得できない、という表情で西条さんが俺を見る。
そんな顔されたって、俺に教えてやれることなんてもうない。

「で、だな。その知識を踏まえた上でもう一回言うぞ?西条さんは、俺のアレを見て平気でいられるのか?」
「!!」
「排泄器官だけど生殖器という言い方もあるし、そういう用途でも使うものなんだよ。そして生殖行動には快楽が伴う。だから長年この世界ではそういうことへの研究もされてきているわけで……」
「…………」
「その生殖器を見て、西条さんは冷静でいられるのか?だったら俺今すぐにでも脱ぐわ」
「あ、あの……」
「何だ?」
「す、すっきりさせる方法って、もしかして……」
「……ああ、俗に言う射精ってやつだな」
「…………!」

何でメカニズムを知らんくせに、さっき顔を赤くしてたのか。
そして先ほどと同じ様に西条さんの顔色がおかしいことになっている。

「いいか?俺のおしっこが見たいってことは、まずはこいつを鎮める必要があって、その為に西条さんはその前過程も見なければならないということなんだ。そう、俺の性的な部分を。それで西条さんは見て平気でいられるのか、ということを聞いているわけだけど……大丈夫?」
「だ、大丈夫……ですわ……」

絶対大丈夫じゃない顔色してる。
もう一押しだ。

「そうか、じゃあ俺の射精の瞬間も見たい、ってことになるんだけど、その認識でいいんだな?」
「わ、わたくし、そんなはしたないこと……」
「いいや、言ってるのと同義だね。だったら、おしっこ見たいって言うのだって同じことなんだぜ?」
「な、何故ですの!?」
「俺のアレを……陰部を見たいって言ってるのと同じなんだから」

多少躊躇いはしたが、俺はこの一言で場を呑んだと思った。
勝利を確信していた。
これで漸く落ち着いておしっこできる、そう思っていた。

「……そ、それで構いませんわ。そもそも明日香さんだって、何度も見ているのでしょう?」
「はぁ!?い、いやうちのメンバーはおしっこまで見てないはずだけど……」
「でしたら、わたくしが一歩リードですわね。構いませんわ、見せてくださいまし!!」

何と……ここへきてお嬢様は覚醒してしまった様だ。
どうあっても逃げられそうにない。
何で初対面の相手に射精からおしっこまで全部見せなくてはならないのか……。

そんなにしてまで、明日香に勝ちたいのかこの子……。

「わ、わかったよ……負けた。で、どうやって鎮めるんだ?手伝ってくれるのか?」
「て、手伝う!?」
「さっきも言っただろ、これは生殖行為の延長線上のもので、それによって俺の生殖器は静まるんだって」
「そ、そうでしたわ……」
「俺に、自分でしろって言うのか?それともお手伝いしてくれるのか?」

なんて言っていながら、俺自身更に興奮を覚えてしまっていた。
これは非情によろしくない。

「お、お手伝いを……明日香さんだって、何度もそうしてるのでしょうし……」
「おいおい、本気か?そもそもそういうことは結婚する相手としか、って人だってこの世にはいるんだぞ?お嬢様なんてその典型なわけだけど、それでいいのか?」
「で、ですけれど……そうですわ!!」
「ん?」

またこのお嬢様、ロクでもないことを思いついたな、と直感した。

「さ、先ほどわたくしのおしっこ……見ましたわね」
「え……ああ、まぁ……」

割とじっくり見ました。

「で、でしたら……その、開いているところも、見ましたわよね……」

言いながら恥じらうのやめろ……その攻撃は俺に効く……。

「えっと……」
「見ましたわよね!?」
「は、はい見ました!」
「でしたら、責任を取ってくださいまし!!」

そうきたか……。
来るかもしれない、とは思っていたが、これまでの過程でもうあり得ないだろうと思っていた発言の一つだった。

「せ、責任って……」
「わたくしと、結婚いたしましょう」

え、やだよめんどくさそうだしこの人……。
そもそも俺、誰とも結婚しないって決めてるし……。

「何ですの、その顔……お嫌ですの?」

やばい、顔に出ていたか……。
何やらトイレの外が騒がしく感じる。
あいつら……聞き耳立ててやがるのか……。

こりゃうっかりでも滅多なことは言えないぞ……。

「あ、あのな西条さん……見てしまったことは謝る。謝罪する。何でもしようと思う。だけど、結婚だけはダメだ」
「何故ですの?」
「俺は、あのメンバーの誰とも結婚しないと決めているんだ。もちろん色々事情はあるんだけど……だから、結婚はしない。こればっかりはたとえ殺されても変えるつもりはないからな」
「た、確かに結婚は……飛躍しすぎましたわね」
「そ、そうだろう?一生のことなんだし、落ち着いてよく考えるべきだと思うんだよ」

何となく、股間が落ち着いてきて忘れていたはずの尿意が復活の兆しを見せている気がする。
大体、お互いのことほとんど何も知らない状態で、おしっこ見たからって結婚とかもう色々おかしいだろ。
世の中には変わった嗜好のカップルだっていて、そういうの見せあったりするって聞いたことあるけど……そいつらが全員結婚してるかって言ったら答えは否だろう。

それこそ不一致があったりして、別れたりってことだって十分あり得るんだから。

「宇堂さん、何故もぞもぞしてますの?」
「あの……股間が落ち着いてきたみたいで……またおしっこしたくなっちゃって……」
「そ、それ以上我慢すると、膀胱炎なんかになったりしませんこと?」
「あ、あり得るな……」

どうやら結婚の話からは話題を逸らせた様だ。
だけど、正直もうそれどころじゃない。

「で、でしたら……おしっこだけで今回は……」

だけってのもおかしい話だけどな。
大体人に見せるもんじゃないんだから……。
なんて思っていたら西条さんが俺の足元にしゃがみこんで、俺のズボンに手を伸ばした。

「な、何してるの?」
「お手伝いしますから、早く出してしまいましょう!!」

そう言うや、お嬢様の手によって俺のズボンが下着ごと刷り下ろされる。

「ちょ、ま、待って」
「大丈夫ですわ、お任せください!!」

そして相棒はその姿を白日の下に晒し、それを合図にするかの様に勢いよく……。
あとは言わなくてももうおわかりだろう。

「…………」
「…………」

水も滴る……とは言うがその水がまさか……なんてこと、お嬢様は予想だにしなかっただろう。
俺も想定外だった。
気分だけは非常にすっきりしている。

頭から浴びたお嬢様が、放心した様に俺を見ていた。
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