6 / 47
1巻
1-2
しおりを挟む◆
「だれも、いない……?」
そんな風に過保護な家族たちに囲まれる毎日。
だけど久しぶりに静かな日ができた。
ふむ、暇だな。いつも家族が集まる談話室のソファで、私はごろりと転がった。
いつもなら家族の誰かしらが家にいて構ってくれるんだけど、今日はみんないない。いや、まあそれが普通なんだけどね? だって両親は働いているし双子のお兄様たちにも学校があるんだから。
いつもはまだ学校に通っていないジュール兄様が遊んでくれるけど、今日は何かの大会に行っているらしい。
お庭に出れば少しは退屈しのぎになると思うんだけど、外出はおろか、実質自宅のはずのお庭でさえ家族が過保護すぎて許してくれない。――精神年齢は成人だから、さすがにおままごとなんてできないし。
そのままごろごろしていたらふと頭の上に影が落ちてきた。
「暇そうだな? お嬢」
「ゲイル……」
目の前に立っていたのはゲイル。この人もなかなかのイケメンさんだ。お父様が綺麗系ならゲイルはワイルド系。お髭はないけど、あっても違和感はないような顔立ちをしている。
ゲイルはお父様の直属の部下でオルニスのエース――いわゆる暗殺者として勤めているらしい。とはいえ私にはすごく優しいし、可愛がってくれる。
今も暇そうな私を見て少し考えるように首を傾げた後、ぽんと手を打ってこう言ってくれた。
「よし、カイン様に王宮まで資料を持ってくるように言われてるけど一緒に行くか?」
「いく!」
思わず寝転がっていたソファから飛び起きる。
これはチャンス! 異世界の町並みとか気になってたんだよね! ゲイルと一緒なら安全面は問題ないだろうし。
私の専属メイドのリリアに許可を取りに行けば、ゲイルの説得もあって心配しながらも許してくれた。
やったね! 初めてのお出かけ、楽しみだなあ。
「わぁ! おみせがいっぱい!」
「ここは王都。国の中心部で人が多いからな」
馬車に乗って屋敷の外に出て、街の中で降ろしてもらう。
カラフルな建物が立ち並んでいて、人もたくさんいる。活気に溢れた街に私は思わず目を輝かせた。その賑やかさは地球での繁華街に似ているけれど、歩いている人たちの服装がファンタジーだ。
それに文字や、食べ物、街の匂い。そんなものがどこか違う。
その中でも一際お花のようないい香りがしたお店があった。
「ゲイル、あれはー?」
小さな緑と黄色の建物。深緑色の屋根がどこか大人っぽい雰囲気だ。
ショーウィンドウには小さな箱と綺麗な小袋が数種類置いてある。
ゲイルはちらりとお店に視線を送る。
「ん? ……茶葉の専門店だな。ちょうどいい。差し入れに買ってくか」
「おちゃ! かってくー!」
なるほど、お茶だったのか。私が頷くと、ゲイルは私を連れてお店に向かった。
店内には色とりどりの箱が積まれている。優しそうなお姉さんがいくつか中身を見せてくれた。
「わあ!」
一気に花の匂いが強くなる。フレーバーティーとかハーブティーが近いのかな? 紅茶っぽい茶葉にお花が入っているようなものもある。うーんお父様はこの頃忙しそうだし、疲れが取れそうなのがいいな。
お姉さんとゲイルにも手伝ってもらってお茶を選んで、また馬車に乗って王宮に到着した。
王宮はとっても大きい。ゲイルが言うには使用人寮が男女二棟ずつに騎士団、魔術師団、獣騎士団それぞれに棟が三つずつあるそうだ。それにもちろん王族の居住空間や庭園もあって……はぐれたら大変なことになりそう。
あまりの王宮の広さに驚き、ゲイルの足にしがみつく。するとなにかぞわぞわする感覚が、周囲にたくさんあることに気づいた。なんだろうこれ。
気持ち悪くて、思わずゲイルにぎゅっと抱きつく。
ゲイルは私の異変に気が付いたのか、私を抱え上げて、顔をのぞきこんだ。
「お嬢? どうした?」
「なんかへん……」
「体調崩しちまったか? 医務室いくか?」
「だいじょぶ、おとーしゃまのとこ……」
そう言ってみたものの、身体がぞわぞわするのは止まらない。せめて原因を探ろうと目をつぶって集中する。するとたくさんある気持ち悪い感じの中に、三つほっとするものがあった。一つは近い――というか隣だ。もしかしてゲイルだろうか?
そして、もう一つが近づいてくる。じゃあこの感覚は――と思いながらぱっと目を開けると、そこにいたのはお父様だった。焦ったような顔で手を伸ばされる。
「フィル……?」
「おとーしゃま……? っふぇ、おとーしゃまあ!」
なんだか無性にお父様に近づきたくて、ゲイルの腕から降りようと体を捩る。
ぞわぞわしていたものが身体中に広がって気持ち悪い。こわい。
いやいやと首を振る私をゲイルから受け取り、お父様が背中をポンポンしてくれる。けれど私の涙は止まらなかった。
「ふぇ、うぇ、うぇえん!」
私が降りたあとのゲイルが気まずそうに頬を掻くのが見えた。
「カイン様、これが頼まれたやつ。あと、お嬢が選んだ差し入れなんですが……。その感じじゃお嬢はカイン様から離れないと思うので、俺が運んでおきますね」
「ひっく、げいりゅ、ごめんねぇぇ……!」
「あーあー、泣くな泣くな。大丈夫だぞ。先に帰って待ってるからな?」
ポンポンと私の頭を撫でてゲイルは帰っていく。お父様と二人になってもぞわぞわした感じが治まる気配はない。
いやだ、気持ち悪い……なんなんだろうこれ?
お父様は私を抱っこして、王宮内の仮眠室に運んでくれた。お父様は私をベッドに降ろそうとしたけど、私はお父様から離れるのが嫌で腕にしがみついてしまう。
「大丈夫ですよ。お父様はここにいますからね。ぎゅーってしてますからね」
するとお父様は言葉通りに私をぎゅっとしたままベッドに一緒に横になってくれた。
もぞもぞとお父様の胸のなかで丸くなる。お父様の腕の中は安心できて、ぞわぞわする感じも少し遠のいた気がする。
そんな私の様子を見て、お父様はどこかに連絡をしているようだった。
少しするとお母様の声が聞こえた。ちらっと見るとお父様は電話のような魔道具を耳に当てている。それから二人がお話をしているのが聞こえた。どうやらお父様は私の症状を魔力酔いだと考えたらしく、医療と魔術に通じるお母様を呼んだようだった。
でもおかしい、魔力は五歳にならないと感じることはできないはず。それなのにまだ三歳の私が魔力酔いするなんてありうるんだろうか。そんなことを考えているうちに瞼が重くなった。
しばらくうとうととしていると再び何かが近づいてくるのを感じる。
目を開けるのと同時に、バンッと大きな音を立てて扉が開いた。
お父様の胸から少し顔を出す。そこにいたのはお母様だった。
「おかーしゃま……」
「フィル! 苦いかもしれないけど、これを舐めて」
お母様が私の口に入れたのは茶色くて丸いラムネみたいなものだった。
すっごく苦い。漢方みたいな味がする。それでもなんとか舐めきると、お父様とお母様がえらいえらいと撫でてくれた。すると気持ち悪かったのもだんだんと落ち着いてくる。そして泣き疲れたのか眠気が襲ってくる。
「この子は愛護者なのかもしれないわ」
そんなお母様の声が遠くに聞こえる。愛護者? なんだろうそれ。でもお母様悲しそう。良くないことなのかな……。聞きたかったけれど私は眠ってしまった。
それからもう一度目覚めると家だった。
そしてなんと次の日から本格的な外出禁止令が発動された。五歳になって魔力鑑定が終わるまで外出はもちろんのこと、我が家のメイドや執事以外の人との接触は禁止とお母様に言われた。
やっぱり夢うつつで聞いた愛護者というのが問題らしい。
では愛護者とは何かというと、魔力が膨大で精霊に愛される人のことだそうだ。
お母様によると私の体内にある魔力が体の中に収まりきらず、周囲の知らない人間の魔力を感じ取ったことで起きたものらしい。
本来は五歳になるまで魔力は感じ取れないけれど、私の場合は多すぎる魔力が溢れて他の人の魔力に影響されるのだそうだ。
家族や小さいときから一緒の使用人たちは大丈夫なのだけど、他の人の魔力は初めて感じるものだったせいで、酔って体調を崩したとか。ううん、誰からも愛されるっていうお願いのせいでこんなことになるなんて。
いや外出禁止令自体は問題ない。今までの生活と似たようなものだから。ただ……
「フィルー」
「あれ? ここにいると思うんだけど」
問題なのはこれだ。兄様たちがさらに過保護になった。
それ自体はまだいいんだけど、勉強や仕事を後回しにして私の部屋に来るのが問題だ。
私のために自分のやるべきことを後回しにしてほしくない。
目をうるうるさせて、私のせいで兄様たちが悪い子になっちゃったって両親に言いつけてみたのにな……
私のことを探し回っている兄様たちの前に行く。
「リーべにいしゃま、エルにいしゃま。きょうはがくえんってやくしょく!」
そう、あまりにも私を優先するから、昨日約束させた。家を出る時間はとっくに過ぎている。これは確実に遅刻だ。ならば私がとる行動は一つ。
「にーしゃまたちが、がくえんにいくまでフィルはおへやからでません! ゲイルー!」
そうしてゲイルを呼んだ瞬間、私は気づけば自室に帰ってきていた。
さすがゲイル。部屋の外でゲイルが兄様たちを説得している声が聞こえる。
これでさすがに兄様たちも学園に行くだろう。
やがて部屋の前が静かになった。
うん、今日も平和だ。
部屋で好きな本を読んでのんびりしていると、ふと自分のお腹から音が聞こえた。
窓の外を見ると太陽が真上にある。
もうお昼かぁ、お腹空いた……いつもなら昼食に呼ばれるぐらいの時間なのに誰も来ない。部屋から出ればお屋敷が騒がしかった。
何かあったのかな?
なんだかバタバタしているメイドのリリアに、何があったのか聞いてみる。
するとなんと私のお祖父様とお祖母様が私に会いにきたらしい。
お名前はディーンお祖父様とスカーレットお祖母様。
なんの連絡もない訪問だったから、使用人たちがバタバタしているみたい。
それだけじゃない。困ったことに今、うちにはお父様もお母様もいない。いるのはジュール兄様と私だけ……つまり、対応できる大人がいない。
私に関しては両親どちらかの許可がないとお祖父様たちと会うこともできないしね。
また私のお腹がぐう、と鳴る。リリアが、私たちのご飯の準備をするために慌てて厨房に向かってくれた。
忙しいところに申し訳ないけど、もしお祖父様とお祖母様にお会いするときお腹が鳴ったらよろしくないからね。
リリアが厨房に行くのを見送って、とりあえず私はジュール兄様を探すことにした。
ジュール兄様はうるさいのが苦手だけど、私と一緒なら大丈夫だからご挨拶ぐらいは一緒にできるはずだ。
この時間だとジュール兄様は多分温室かな?
でも屋敷がこんなにざわざわしていたらもっと静かな場所にいるかも。お父様の執務室のとなりに図書室があるからそこかもしれない。
「ジュールにいしゃまー?」
てこてこと歩いて図書室に着いたから呼んでみる。すると大きな音がした。
何かが落っこちる音と転ぶ音。音がしたからここにいると思うんだけど、と歩いていくと、お母様と同じピンク色の髪が見えた。ジュール兄様だ。
近づくと、しゃがんだジュール兄様の周りに本が散乱している。
落としちゃったのかな。
「フィルの声……したから……側に」
んーと、多分私の声がしてこっちに来ようとしたら、床に置いた本に躓いたってことかな?
あんまりおしゃべりが得意じゃないジュール兄様だけど、慣れれば大体理解できるので問題はない。
「けがしてないでしゅか?」
「うん」
頷いたのを見て、私は現在の状況を伝えることを優先する。
「お、おじーしゃまと、おばーしゃまがきてて、おとーしゃまに、れんらくしたいんでしゅけど……」
噛みまくりだけど、しょうがないよ、三歳児だもん。
正直ジュール兄様とどっこいどっこいのわかりにくさだと思う。それでもジュール兄様は理解してくれたようだ。
「……連絡用の魔道具なら、執務室」
そう言って手を差し出してくれた。よーし、行きますか!
ジュール兄様と手を繋いでお父様の執務室に向かう。
執務室のテーブルの上に魔道具があるのを見つけて、ジュール兄様が取ってくれた。
連絡用の魔道具は通信相手が登録してあれば、相手を思い浮かべると勝手に繋がるってお父様が言っていた。
さっそく私はソファに座って魔道具を持って、お父様を思い浮かべる。だけど何も反応がない。
え、これ繋がってるの? え? どっち? まだ? まだなの?
あたふたしていると兄様がぽんぽんと撫でてくれる。ちょっと落ち着いた。
そのままじっと待っているとようやく魔道具から声が聞こえた。
『フィル?』
「おとーしゃま‼」
繋がった! 使い方合ってた!
魔道具越しにお父様の声がする。焦った声だ。
『どうしました? 体調を崩しましたか⁉』
「ちがうの! おきゃくしゃまでしゅ!」
『お客様……? 今日はそんな予定なかったはず』
「ディーンおじーしゃまとスカーレットおばーしゃまってリリアがいってました!」
『は? ……あんのクソ親父ッ‼』
お父様は意外とお口が悪いようだ。ちょっとびっくりした。お父様もそのことに気が付いたのか、すぐに優しい声に変わる。
『フィル、今からすぐ戻ります。……それまでおもてなしをお願いしてもいいですか?』
「はい! やりましゅ!」
『ジュールもいましたね。フィルを助けてあげなさい。もしフィルが体調を崩すようなら引き離してくれ』
「うん……」
そう言ってお父様は通信を切った。魔道具からはもう何も聞こえない。
おもてなし。初めてのおつかいみたいでワクワクする。それにこれに成功したら少しは過保護が減るかもしれない。フリードリヒ家の娘としてしっかりおもてなししなきゃね! 最近はすることがなくて淑女教育を頑張って受けていたからそれも発揮したい。
一人、やる気に満ちていると、ちょうどリリアがご飯の用意ができたと教えてくれた。お腹がまたぐううと音をたてる。
うん、まずは腹ごしらえだね。
ジュール兄様とご飯を急いで食べてから、お祖父様たちが待っているというお部屋に向かう。
案内してくれたのは我が家の執事長アルバだ。うちの事はアルバに聞けば大抵の事は分かる。今回、初めてのご挨拶ということもあってついてきてくれた。
私はお祖父様とお祖母様に初めて会うけど兄様は会ったことあるのかな。どんな人なんだろう。怖い人じゃないといいな、お父様の両親だし大丈夫だよね? というか挨拶って貴族の正式な感じ? それとも家族みたいに軽い感じ? どっち⁉
……悩んでても仕方ない、なるようになれ!
ドアに向かって軽くノックして、深呼吸。それから覚悟を決めてドアを開いた。
「しつれいしまっ……す?」
え、お祖父様とお祖母様何をしてるの? ドアを開けるとそこにはお祖父様と思われる人が土下座をし、お祖母様と思われる人が仁王立ちしている光景があった。
二人ともどこかお父様に似ている。
「もう! だから言ったじゃないですか!」
「す、すまん、レティ……」
「約束もなしにカインの屋敷に来るだなんて! 迷惑になることを考えなさいな!」
「だが、ま、孫娘が生まれたと聞いてな?」
「それでも急な訪問はいけません! 屋敷の者も困っていたでしょう⁉」
お祖父様が押し負けている。そうか、この急な訪問はディーンお祖父様のせいだったのか。なんか、お母様たちを見ているみたい。うちのお父様もお母様に弱いのだ。
というか、会いたがってた孫はここにいるよ! というか私の魔力は漏れてるはずだから気づいてもおかしくないんだけどな。ここに割って入れるほど私の心は強くない。
ちらっと助けを求めてジュール兄様を見ると、兄様はじーっとお祖父様たちを見ていたけれど、部屋の窓際に置かれた植物に興味が移ったようで、そちらを見ている。兄様実は鋼メンタル?
「フィル様」
おろおろしているとアルバが声をかけてきた。
「こうなられたスカーレット様は長いですのでお話を待つ必要はございません。話しかけても大丈夫ですよ」
「ほんと?」
「はい」
アルバの言うことなら信用できる。よし、頑張るよ。おもてなししなきゃだもんね!
私は未だ言い争っている二人の前に進むと、三歳児なりに声を張り上げた。
「お、おじーしゃま! おばーしゃま! ふぃ、フィエルテ・フリードリヒでしゅ! ようこそおいでくだしゃいましたっ!」
何とか言い切った!
ちゃんと教わったカーテシーもできたし、大丈夫なはず。
ちらっとアルバを見るとニコニコ拍手してるしね! 大丈夫だよね!
しかし反応が目の前の二人から返ってこない。何か間違えただろうか、と見上げるとスカーレットお祖母様が私をグイッと抱き上げた。
「まぁ、まぁまぁまぁ! なんて可愛らしいのっ! あなた! 見てくださいな! 天使のように愛らしい……きっと聖女様のように美しい子になるわ!」
「おぉ、これは確かに妖精のようだ! 両親にもよく似ておる」
天使、聖女、妖精。
うちの家族は私のことを褒めすぎでは⁉ なんでみんなこんなにでろでろなの! 私、まさか魅了魔法みたいなの使える感じ⁉ そんなのいらない! 褒められるのは嬉しいけど褒められすぎるのは怖いよ!
リリアがお茶の用意をしてくれたから、すぐにおもてなしに移りたいのにお祖父様とお祖母様が手を放してくれない。
このままだとおもてなしできずにお父様が帰ってきてしまう。初めて任された仕事を失敗するなんて嫌だ。
そう思いながらも目の前の二人は止まらない。ジュール兄様も声をかけられないみたいだし……そう思っているとついに部屋の中に新しい声が響いた。
「私の可愛い娘に何をしてるんですか」
「おお! カインか」
間にあわなかった……。おもてなし頑張るって言ったのに。できると思ったのに。
ちゃんと任せられたお仕事ができたら少しは過保護じゃなくなると思って、心配しなくてもいいよって言えると思ったのに。
なんだか、泣けてきた。これは、だめだ。涙が零れないように耐える。
「フィル」
柔らかなお母様の声。なんで? 帰ってくるのはお父様だけじゃなかったの?
「おいで?」
「ふぇ、おかーしゃまぁ! ごめんなさい! おもてなし、できなくて……」
お祖母様の手からお母様に移って大号泣してしまった。
「アルバからカーテシーが綺麗だったって聞いたわ、頑張ったわね」
「ひっく、でも、おもてなし……」
お茶を出して、お菓子も……なんて、昔は普通にできていたのに。悔しさが勝ってしまう。
「父さんの暴走に母さんが説教してたんだから。フィルは悪くありませんよ」
「よく頑張ったわ。お母様たちすごく嬉しいわよ?」
ぽろぽろと涙が零れる。お母様もお父様もそう優しく言ってくれる。おかしいなぁ、前世の年齢的にこんなことで泣いたりしないはずなのに、本当に身体の年齢に引っ張られているみたいだ。
「フィエルテ……ごめんなさいね? 私たちのせいであなたを泣かせてしまって」
「すまなかった、愛らしいお前を見て少々舞い上がりすぎた」
お祖母様とお祖父様が謝ってくれる。
そもそも私が勝手に泣いたんだし、謝る必要なんてないんだけど。私は涙をぬぐって二人に改めてお辞儀をした。
「フィル、おじーしゃまとおばーしゃまのことしゅきでしゅ。……ないちゃってごめんなさい」
「いいのよ! 悪いのはディーンだもの!」
「れ、レティ……」
172
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
