Get So Hell? 2nd!

二色燕𠀋

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火蓋

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「どんな、とは?」
「単純に性格の好き嫌いで構わない。僕はな、5月に清国しんこく上海シャンハイへ赴こうとしている。そこに藤宮鷹がいるんだ。暫く共に同じ船なら、気になるところでな」
「…上海って…」

 初めて聞いた話に、少し驚いた。

「…最早一介のヤクザでもないのな、あいつ」
「…藤宮鷹が日本やら何やらを考えているのか、わからん話ですよ。藤嶋かてそうや。あれの方が守銭奴かもしれない」

 嘲笑うような、顔をしかめる表情で言った翡翠に、「…どうやら不味い酒になっちまったか」と、高杉は案外気を使う男のようだった。

「なら、やめよう。政治の話は面白くない」
「坊さんなら尚更だな。俺も医者ではあるが」
「いや、それも修行と捉えて我々は旅に出た。
 京が火蓋と言うのは、話しても良い内容なのか」

 朱鷺貴がそう聞けば高杉も久坂も目を見合わせたが「まぁダメだな」と高杉が言った。

「…ならば欲をかいて聞くべきでもないかな」
「…民として、と言うならばそうだな、これだ」

 高杉は空になった酒瓶を振って見せた。

「まぁ、酒の話は坊主には似合わないな。
 さぁて酒も尽きちまったな。楽しかった。また何かで会えれば良いが、こんな酒はもうないかもしれねぇ。感謝する、貴重な見聞だった」

 高杉が立ち上がり、「まぁそういうわけで」と言うのだから、それぞれ酒を取り敢えずは飲み干した。

 高杉が去ったあと「確かに…」と翡翠は升を眺め、良く見れば月明かりで少し、火照っているようにも見えた。

「久々に飲みまして、うーん…」

 確かに強い酒ではあった。

「…寝てしまうかもしれへん」
「…あれ、お前仮にも酒屋だったわけだよな」
「まぁ夜風に当たってりゃあなんとかなります。あれですなぁ、酒とは弱くなるもんですなぁ」
「…ん…まぁ俺も半ば聞いてないんやけどねぇ。寝るか、寝ちまうか、バチ当たるけどぶっちゃけ…」

 ぐっと、最後まで取っておいてしまったほぼ一升を無理に飲んだせいだろうか、少し遅れたがなるほどぐっと来てしまったと朱鷺貴がふいに柱へ寄り掛かれば「あっ」と翡翠は思い出した。

 …そーだこの人、下戸であり凄く質も悪く酔うんだよなと思い出せば「もーえーよね?えーよね?寝ても自然のやつやね?えーよね?」と、えらく饒舌になってしまったので「トキさん、」と、若干理性が保たれた気がした。

「あぁあ、水ですかね、水。一升持ってきますかね水」
「んー?入らんよ水。出すしかないなぁ」
「出すって何一体」
「立ち小便やね、気もっちーよね、放尿」
「…それはええの?恐らく駄目やない?」
「バレなきゃええねんちぃとしてくるわ~」

 え、本気なの?と思っているうちにふらふら、ふらふらと少し離れて庭の笹の前に腰を据えて立つようなのだから、うーんけどまぁ意味わからへんしええわな、と翡翠は縁側に座りっぱなしなのだが「何しとんねんわれ、」と、丁度良く幹斎が朱鷺貴を呼びに来てしまうのが凄いなぁ、とぼんやり翡翠は思う。

「何って小便やろじーさん」
「…いや、それがなんやねん言うとるんやこんのアホ弟子ぃ!」

 はわわ~と縁側に寝転がった翡翠にも「なんやお前もっ!」とタコ坊主は怒っている。

「はぁ?なんでやお前ら、ちょっ、」
「さつまいも飲んだぁこーなったんねっ」
「まぁ嫌な予感がしたんだ朱鷺貴お前にはっ!何故飲んだっ!」

 あくまで自分の間で逸物をしまった朱鷺貴は「なんでかね?ホンマなんでかね?気持つぇーわぁ」とふらふら幹斎に寄り掛かってしまう。
 「アホっ、おいっ!あぶなっ、倒れるわっ!助けろ従者!」と叫んでも「床冷たいから気持ちーわー」と、翡翠もポンコツに成り下がっていた。

 死にそうな勢いで朱鷺貴を持ってきた幹斎は「アホこの死ね!」と言いながら、最早叩きつけるように朱鷺貴を縁側に置けば「痛っ」と、更に打ち所も悪く「うぇっ、は、吐く…かも」と急に真っ青になっては起き上がり石段に吐瀉しやがった。

 「うぉぉいコラぁ!」と怒る幹斎に「はははトキさん今年のゴミ~」と、お前は恐らく何か悪い漢方でも食っただろうと言うほどに変なヤツになっていた。

 結局、吐瀉物は泣く泣く幹斎とその他壮士や悠禅や左京が掃除をし、

「最早このバカ共は置いておけ」

 と縁側に寝かされたままになってしまった二人は、元旦のご祈祷すらも終わってしまった。

 元日、昼に起きた頃には、翡翠は翡翠で漢方のお陰で後酔いもなく、朱鷺貴は朱鷺貴で出すものを出していたため後酔いはなかったが、朱鷺貴の場合は吐いたせいで体温が下がっていた。あっさり風邪を引いてしまい、

「うむぅこれは三が日は謹慎にしてやろうと思ったがもーええわ呆れた」

 と幹斎から見放され、罰としてというか、翡翠の仕事に「看病」が入り、大変バタバタした元旦になってしまった。

──1862年。
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