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一過性
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野島さんは現場で、30分だけ早く切り上げてくれと一緒に頭を下げ回ってくれた。
それでもそれを感じさせないほどいつも通り凛とした、自然な収録をしていた。
たまにちょこちょこと勇気くんと平中くんがスタジオの裏手側に姿を見せる。雰囲気的にどうやら二人は仲良くなったようだ。
収録終わり、お疲れさまでしたと野島さんがハケると、勇気くんはお母さんに抱き付き「おかーさん、あのね!」と楽しそうに言った。
「おれもせーゆー、なりたいな!」
唐突な報告だったが、野島さんはニヤリと笑って平中くんを見つつ「大変よ~勇気」と抱っこする。
「ありがとうね、平中くん」
「いえ…」
「さて、急いでいってらっしゃい!」
そう送り出してくれた背中で「勇気もじゃあ、勉強しないとね~」と会話しているそれに平中くんと目を合わせ、俺はふっと笑っていた。
平中くんと勇気くんがどんな話をしたのかはわからない。ただ、心が暖まった。
こういうのは、大人と大人ではなかなか拾えない。
子育てってもしかするとこれに似ているのかもしれないな、なんて少し思ったりした。
…そう言えばそれもあるのかもしれない、子供を欲しいと思ったことがなかったけれど、珍しく仕事中に芳明の顔が浮かんだ。
今日は夜勤だ、仕事終わりに帰宅しても芳明はいない。
互いに時間が合って「最近あったこと」をまとめて話すことも、少しだけ減ってしまうだろう。
まぁ、よくある。話すことに加えておこう、その時に思い出せたら良いな。
ふぅ、と息を吐いた彼は「結構疲れたけどあぁ言われるとなー」と少し誇らしげだった。
楽屋に入る前の道中、出演者への挨拶回りを済ませた。
「俺実はハブられてたタイプでさ」
楽屋には既にメイクさんが来ている。
今日は明るい照明だ、彼の肌は白色人種故に暗めのメイクになったが、ほんの少しで終わるほど顔立ちが良いし、彼も別に注文は付けないらしい。
「楽で良いわね~、あんた顔超良いし」
メイクの宇野さん(中性)も平中くんを褒め称え、「じゃね、ハルちゃん」とすぐに去って行った。
「…あの人真っピンクで派手なのに、超薄くていいね、化粧」
彼が、ラックに掛かっていた背広っぽい衣装を手に取る。
昼に見たあの背中が過ってしまい、着替えにはあまり目をやれなくなった。
「宇野さん初めて?」
「うん多分。俺が眞田さん?に、近辺は男性スタッフにしてくれって言ったからかな」
「あ、そうだったんだ」
「俺女苦手なんだよ、ハブられた原因だったしって、ガキみたいなこと言うけど」
「…そうなの?」
つい見てしまったが、丁度タートルネックを着たばかりでよかった。
長ーい上着を羽織りながら「いや、まぁ…」と気まずそう。
「きゃーきゃーきゃーきゃーカラスみてぇに騒がれるから厄介で。アニヲタと知ればすぐBL」
「あー…なるほど」
「まぁBL好きだけどね、娯楽の一部として。
うるせぇっつったらもー、次にはホモだなんだ言われて、事実だっただけに結構トラウマになった。あいつらの掌はぐるぐるよ。
配信のコメ欄たまに荒らすヤツ、多分高校の頃の女子なんだよね。一発ヤッて振ったヲタク仲間だった女」
うわぁ。それなりのことしてるじゃん…。
てか、やっぱりそうだった。
「配信ってそういえば何」
「え?SNSラジオだよ?」
「え、聞いてないけど」
「こっち来てから確かに言ってないな。あっちでもみんな管理してないから楽にやってるけど、多分忘れられてたんだろうな」
「…マジで?」
「スターライトが最初、「いまの時代はそういうのだ!」ってチャンネル作ってくれたからまぁ…俺が好きな作品…アニメはもちろん漫画や映画、小説とかをテキトーに喋ってるだけのなんか、女子高生の日記かよみたいなやつ。芳しくなくて放置されたから好きにやってる」
「…いやいやちょっ…言ってよそれ!」
「宮殿で?」
「どっちかって言うと俺に!全く引き継ぎなかったよ!あーもうあとでチェッ」
「いややめてホンットヲタクだから。まぁ深め考察してると自分では思ってるけどだからよりやめて」
…いまの子マジで謎なんだけど…でもアクティブじゃん…何が引きこもりだよぅ。
俺が明け暮れていると「時間は?」と聞かれたので、さっと時計を見た。あと10分。
「わかった早く行こヤバイ!」
と、大御所番組だし気を張ったのだが、セットにはピンの下火芸人と隣に恐らく母っぽい女性が服装を直している。
緊張しきったアイドルやら少し前に引退した若いスポーツ選手やら、逆にお堅そうな俳優やら…確かに頭の収録だ、一花の方々がメインだろうが、それにしてもカオスな面々。
それらがポツポツとしかいなかった。
多分その他中堅や大御所はギリギリに来るのだろう、MC大御所なんて後の、観客の拍手で登場だし。
これはどうなるかマジでわからない、まさか野島さんパターン、持ち越しはないにしてもビル消灯までは行かないよな…。
本当は少し楽しみ、というポジションに居たいものだが、演者の関係者となるとただただヒヤヒヤしかしないのをどうにかしたくて、話してはおいたが芳明に一本メールをした。
丁度出勤準備を始めた頃だろうか、すぐに「了解。夕飯はきっちり食べてね」と返信が来た。
それでもそれを感じさせないほどいつも通り凛とした、自然な収録をしていた。
たまにちょこちょこと勇気くんと平中くんがスタジオの裏手側に姿を見せる。雰囲気的にどうやら二人は仲良くなったようだ。
収録終わり、お疲れさまでしたと野島さんがハケると、勇気くんはお母さんに抱き付き「おかーさん、あのね!」と楽しそうに言った。
「おれもせーゆー、なりたいな!」
唐突な報告だったが、野島さんはニヤリと笑って平中くんを見つつ「大変よ~勇気」と抱っこする。
「ありがとうね、平中くん」
「いえ…」
「さて、急いでいってらっしゃい!」
そう送り出してくれた背中で「勇気もじゃあ、勉強しないとね~」と会話しているそれに平中くんと目を合わせ、俺はふっと笑っていた。
平中くんと勇気くんがどんな話をしたのかはわからない。ただ、心が暖まった。
こういうのは、大人と大人ではなかなか拾えない。
子育てってもしかするとこれに似ているのかもしれないな、なんて少し思ったりした。
…そう言えばそれもあるのかもしれない、子供を欲しいと思ったことがなかったけれど、珍しく仕事中に芳明の顔が浮かんだ。
今日は夜勤だ、仕事終わりに帰宅しても芳明はいない。
互いに時間が合って「最近あったこと」をまとめて話すことも、少しだけ減ってしまうだろう。
まぁ、よくある。話すことに加えておこう、その時に思い出せたら良いな。
ふぅ、と息を吐いた彼は「結構疲れたけどあぁ言われるとなー」と少し誇らしげだった。
楽屋に入る前の道中、出演者への挨拶回りを済ませた。
「俺実はハブられてたタイプでさ」
楽屋には既にメイクさんが来ている。
今日は明るい照明だ、彼の肌は白色人種故に暗めのメイクになったが、ほんの少しで終わるほど顔立ちが良いし、彼も別に注文は付けないらしい。
「楽で良いわね~、あんた顔超良いし」
メイクの宇野さん(中性)も平中くんを褒め称え、「じゃね、ハルちゃん」とすぐに去って行った。
「…あの人真っピンクで派手なのに、超薄くていいね、化粧」
彼が、ラックに掛かっていた背広っぽい衣装を手に取る。
昼に見たあの背中が過ってしまい、着替えにはあまり目をやれなくなった。
「宇野さん初めて?」
「うん多分。俺が眞田さん?に、近辺は男性スタッフにしてくれって言ったからかな」
「あ、そうだったんだ」
「俺女苦手なんだよ、ハブられた原因だったしって、ガキみたいなこと言うけど」
「…そうなの?」
つい見てしまったが、丁度タートルネックを着たばかりでよかった。
長ーい上着を羽織りながら「いや、まぁ…」と気まずそう。
「きゃーきゃーきゃーきゃーカラスみてぇに騒がれるから厄介で。アニヲタと知ればすぐBL」
「あー…なるほど」
「まぁBL好きだけどね、娯楽の一部として。
うるせぇっつったらもー、次にはホモだなんだ言われて、事実だっただけに結構トラウマになった。あいつらの掌はぐるぐるよ。
配信のコメ欄たまに荒らすヤツ、多分高校の頃の女子なんだよね。一発ヤッて振ったヲタク仲間だった女」
うわぁ。それなりのことしてるじゃん…。
てか、やっぱりそうだった。
「配信ってそういえば何」
「え?SNSラジオだよ?」
「え、聞いてないけど」
「こっち来てから確かに言ってないな。あっちでもみんな管理してないから楽にやってるけど、多分忘れられてたんだろうな」
「…マジで?」
「スターライトが最初、「いまの時代はそういうのだ!」ってチャンネル作ってくれたからまぁ…俺が好きな作品…アニメはもちろん漫画や映画、小説とかをテキトーに喋ってるだけのなんか、女子高生の日記かよみたいなやつ。芳しくなくて放置されたから好きにやってる」
「…いやいやちょっ…言ってよそれ!」
「宮殿で?」
「どっちかって言うと俺に!全く引き継ぎなかったよ!あーもうあとでチェッ」
「いややめてホンットヲタクだから。まぁ深め考察してると自分では思ってるけどだからよりやめて」
…いまの子マジで謎なんだけど…でもアクティブじゃん…何が引きこもりだよぅ。
俺が明け暮れていると「時間は?」と聞かれたので、さっと時計を見た。あと10分。
「わかった早く行こヤバイ!」
と、大御所番組だし気を張ったのだが、セットにはピンの下火芸人と隣に恐らく母っぽい女性が服装を直している。
緊張しきったアイドルやら少し前に引退した若いスポーツ選手やら、逆にお堅そうな俳優やら…確かに頭の収録だ、一花の方々がメインだろうが、それにしてもカオスな面々。
それらがポツポツとしかいなかった。
多分その他中堅や大御所はギリギリに来るのだろう、MC大御所なんて後の、観客の拍手で登場だし。
これはどうなるかマジでわからない、まさか野島さんパターン、持ち越しはないにしてもビル消灯までは行かないよな…。
本当は少し楽しみ、というポジションに居たいものだが、演者の関係者となるとただただヒヤヒヤしかしないのをどうにかしたくて、話してはおいたが芳明に一本メールをした。
丁度出勤準備を始めた頃だろうか、すぐに「了解。夕飯はきっちり食べてね」と返信が来た。
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