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カワセミ
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「…えっと……」
「あ、そうだ、はいこれ」
考えて、というわりには高梨は引き出しから…アメの袋を取りだし、まず俺に「ほい」と投げてきた。
咄嗟にキャッチすると、イチゴの、端が絞ってある包装。
高梨からそれを受け取った春雪くんは、何かを考えた間の後、口に入れガリガリと音を立てた。
「どうしてハルって呼んだの」
春雪くんを眺めていた高梨は平然として、「お母さんから聞いてたから」と答えた。
「西賀には甘すぎるか?そのアメ」
急に振られ「は?」と言ってしまったが、それを期に春雪くんは一度俺に振り返る。
来たときよりは、ぼんやりがなくなっているように見えた。
春雪くんは伏し目のまま、「母さんの病気はどうなるの」と、俺か高梨か…とにかく機械的に聞いている。
「ん?駐在さんに聞かなくても知ってるでしょ?
君は、お母さんが気になるんだね」
「………」
「お母さんは君を愛していたと思う?」
「…わからない」
「そうか、君は頭が悪いね」
あまりにあっさりと悪口を言うので「高梨、」とさっきよりもはっきりと高梨を制するが、「うるさいな黙って聞いてろ」と返ってきた。
そしてまた春雪くんにアメを渡している。
……飴と鞭?
春雪くんもそう思ったのかもしれない、今度は飴を開けずにじっと高梨を見つめ、「これじゃ、喉乾いちゃうかも」と言った。
「あぁ。じゃあ西賀、茶でも買ってこい」
にやっと笑った高梨に、「全く」と診察室を出て気付いた。待合室に患者がいない。
そうか、最後の診察なのか。確かに時間は掛かりそうだしな。
側の自販機に金を入れ、ガタンと音を立てたとき、ふと気付き、「サブリミナルか」と口から漏れていた。
なるほど、なるほど…?
また診察室に戻ると「………、ある日突然いて、」と春雪くんは高梨に話していた。
「母さんが、小さい頃、俺がいるからって、我慢してたの知ってる」
「どうして?」
「……わかんない。言われたのかもしれない…。でも、寝るとき、「次は貴方も愛してくれる人がいいね」って」
「じゃあ、多分それだね」
「…そうかも」
「さて、何故いま君はそれを話したんだろう、思い出したんだろう?」
それはお前が言ったからじゃないのか?と思ったタイミングで高梨が俺を見たので、「ハルくん、」と彼を呼び肩をぽんと叩く。
ビクッとされた。
なるほど。
彼の恐怖は反射的なものだったらしい。
振り向いて安心したように息を吐き、「ありがとう…」と茶を受け取ってくれた。
「大丈夫、ここでは君と、西賀と俺しかいない。秘密の空間だ。誰もノックをしない」
伏し目になった春雪くんを見て「その男は勝手に部屋へ来たのかな」と高梨は聞く。
春雪くんは強く二回頷き「なんでわかるの」と驚いた。
「まぁ、行動分析かな。
あ、薬は本当に飲みたいときに飲んでね。えっと、まあ30日分あげるよ。1日一回寝る前。起きる8時間前くらいに飲んで。
西賀、夜勤や非番のとき…まぁ、昼に空いてる時はたまに一緒に来て。でも、一人で来たくなったら来て良いよ。
薬の管理は…処方箋って残るんだよね。
お母さんの分だとマジで2回くらい自殺未遂出来る量だからね。ちなみに通院してからえっと1,2,3,4…うんまぁいっぱい。ホントに二人で飲みきったの?飲みきってないなら怪しいから捨てて。はい0ね」
「……でも、前のがいいな」
「眠れない?」
「いや、」
「いや、多分眠れてないでしょ。違うのにする。だから絶対8時間ね…て言わなくても多分そうすると思うよ。夢すら見なくなるかもね」
「え、」
「それは怖い?」
「………」
「怖いならやめるよ。どうする?」
「…それは無理かも」
「はい了解。もしも学校に行けなければそれでも良いよ」
「…そんなに?」
「うん」
「…本当に考えてくれてますか」
「そりゃぁ。でもさ、それってどちらかと言えば俺より君が考えるべきなんだよ?
ねぇ、君のお母さんはなんでそうしたんだと思ってる?」
それに春雪くんは黙り込んだ。
ふぅ、と息を吐いた高梨は「今から言うのは本当の雑談ね」と前置きをした。
「宗教哲学ってなもんで、俺の知り合いに、昔すっげぇヤンキーだった中卒がいる。そいつが坊さんになったんだ」
「…なんの話?なんで?」
「さぁ?人の心はわからないよ。
で、まぁ聞いたことあるでしょ、「神は人の上に人を作らず」って。あれの解釈をしてくれた。
その坊さんは言う、人間そんなに出来ちゃいないと。だから神が作られたんだとさ」
「…ん?」
「理屈で言えば人間同士に上下はないってこと。だけど、あるのが現状。それは作ったものなんだ。見えるもの、わかる者を対象としたとき、不平不満は強者に行くんだよ。
例えば新興宗教なんてもんは人間の教祖を神と崇めるだろ。だから、そいつに集中砲火しちまうわけだ。言ってることわかる?」
「…いや、全然…」
「どうしようも出来ない虚無ややるせなさってどこにぶつけるか、空白なんだよ。それが神様なんだと。だから、神は皆を許します、なんだ。つまり許す許さないじゃない。
人間が逃げる最大の知恵が、神様なんだよ。だから解明が出来ない」
「…なんか、精神病みたい」
「あ、そうだ、はいこれ」
考えて、というわりには高梨は引き出しから…アメの袋を取りだし、まず俺に「ほい」と投げてきた。
咄嗟にキャッチすると、イチゴの、端が絞ってある包装。
高梨からそれを受け取った春雪くんは、何かを考えた間の後、口に入れガリガリと音を立てた。
「どうしてハルって呼んだの」
春雪くんを眺めていた高梨は平然として、「お母さんから聞いてたから」と答えた。
「西賀には甘すぎるか?そのアメ」
急に振られ「は?」と言ってしまったが、それを期に春雪くんは一度俺に振り返る。
来たときよりは、ぼんやりがなくなっているように見えた。
春雪くんは伏し目のまま、「母さんの病気はどうなるの」と、俺か高梨か…とにかく機械的に聞いている。
「ん?駐在さんに聞かなくても知ってるでしょ?
君は、お母さんが気になるんだね」
「………」
「お母さんは君を愛していたと思う?」
「…わからない」
「そうか、君は頭が悪いね」
あまりにあっさりと悪口を言うので「高梨、」とさっきよりもはっきりと高梨を制するが、「うるさいな黙って聞いてろ」と返ってきた。
そしてまた春雪くんにアメを渡している。
……飴と鞭?
春雪くんもそう思ったのかもしれない、今度は飴を開けずにじっと高梨を見つめ、「これじゃ、喉乾いちゃうかも」と言った。
「あぁ。じゃあ西賀、茶でも買ってこい」
にやっと笑った高梨に、「全く」と診察室を出て気付いた。待合室に患者がいない。
そうか、最後の診察なのか。確かに時間は掛かりそうだしな。
側の自販機に金を入れ、ガタンと音を立てたとき、ふと気付き、「サブリミナルか」と口から漏れていた。
なるほど、なるほど…?
また診察室に戻ると「………、ある日突然いて、」と春雪くんは高梨に話していた。
「母さんが、小さい頃、俺がいるからって、我慢してたの知ってる」
「どうして?」
「……わかんない。言われたのかもしれない…。でも、寝るとき、「次は貴方も愛してくれる人がいいね」って」
「じゃあ、多分それだね」
「…そうかも」
「さて、何故いま君はそれを話したんだろう、思い出したんだろう?」
それはお前が言ったからじゃないのか?と思ったタイミングで高梨が俺を見たので、「ハルくん、」と彼を呼び肩をぽんと叩く。
ビクッとされた。
なるほど。
彼の恐怖は反射的なものだったらしい。
振り向いて安心したように息を吐き、「ありがとう…」と茶を受け取ってくれた。
「大丈夫、ここでは君と、西賀と俺しかいない。秘密の空間だ。誰もノックをしない」
伏し目になった春雪くんを見て「その男は勝手に部屋へ来たのかな」と高梨は聞く。
春雪くんは強く二回頷き「なんでわかるの」と驚いた。
「まぁ、行動分析かな。
あ、薬は本当に飲みたいときに飲んでね。えっと、まあ30日分あげるよ。1日一回寝る前。起きる8時間前くらいに飲んで。
西賀、夜勤や非番のとき…まぁ、昼に空いてる時はたまに一緒に来て。でも、一人で来たくなったら来て良いよ。
薬の管理は…処方箋って残るんだよね。
お母さんの分だとマジで2回くらい自殺未遂出来る量だからね。ちなみに通院してからえっと1,2,3,4…うんまぁいっぱい。ホントに二人で飲みきったの?飲みきってないなら怪しいから捨てて。はい0ね」
「……でも、前のがいいな」
「眠れない?」
「いや、」
「いや、多分眠れてないでしょ。違うのにする。だから絶対8時間ね…て言わなくても多分そうすると思うよ。夢すら見なくなるかもね」
「え、」
「それは怖い?」
「………」
「怖いならやめるよ。どうする?」
「…それは無理かも」
「はい了解。もしも学校に行けなければそれでも良いよ」
「…そんなに?」
「うん」
「…本当に考えてくれてますか」
「そりゃぁ。でもさ、それってどちらかと言えば俺より君が考えるべきなんだよ?
ねぇ、君のお母さんはなんでそうしたんだと思ってる?」
それに春雪くんは黙り込んだ。
ふぅ、と息を吐いた高梨は「今から言うのは本当の雑談ね」と前置きをした。
「宗教哲学ってなもんで、俺の知り合いに、昔すっげぇヤンキーだった中卒がいる。そいつが坊さんになったんだ」
「…なんの話?なんで?」
「さぁ?人の心はわからないよ。
で、まぁ聞いたことあるでしょ、「神は人の上に人を作らず」って。あれの解釈をしてくれた。
その坊さんは言う、人間そんなに出来ちゃいないと。だから神が作られたんだとさ」
「…ん?」
「理屈で言えば人間同士に上下はないってこと。だけど、あるのが現状。それは作ったものなんだ。見えるもの、わかる者を対象としたとき、不平不満は強者に行くんだよ。
例えば新興宗教なんてもんは人間の教祖を神と崇めるだろ。だから、そいつに集中砲火しちまうわけだ。言ってることわかる?」
「…いや、全然…」
「どうしようも出来ない虚無ややるせなさってどこにぶつけるか、空白なんだよ。それが神様なんだと。だから、神は皆を許します、なんだ。つまり許す許さないじゃない。
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