心中 Rock'n Beat!!

二色燕𠀋

文字の大きさ
36 / 74
橙色海岸にて名付ける

2

しおりを挟む
 ライブは最高潮に終わる。
 いつもそれが少し寂しくて、ついつい飲みに行っちゃうが、

「卯月~ぃ、渋谷で飲んでぅかぁねぇ~!」

 留守電を残す。
 山口と高畑は

「のん…」
「ちょ、大丈夫かよ」

 心配そう。だって俺今日ライブ前からわりと飲んでてライブでは

「あひゃー!踊ぉーぜみんなー!」

 ジャンプしてギター弾けたもん。39にして。多分、明日は筋肉痛で動けないもん、俺。

 ファンの子とか、「最高です抱いてください」に対しハグしまくってもうライブテンションの汗と変な汗とでびしゃびしゃだったもん。

「Let's dancing everybody there~♪
Let's dancing everybody show~♪」
「ノリノリだねのん」
「えへへー♪たーのしかったな!」
「ホントに音楽バカだなぁ、のんは」

 3人でこんな調子で居酒屋に行ったはいいが。

「待った、吐く」

 着いて我に返る、
 やべぇ、非常に酒が回っている。

「え、のん!?」

 高畑のそれに構えずひたすらにトイレを探し、

「う゛ぇぇぇ゛」

 吐いた。
 何これジャグジーやん。

「あぁ、全くのんはぁ、」

 気付けば山口が「はいよしよし~」と背を擦ってくれてる。果たしてもらいゲロとかしないのだろうか山口。
 しかし山口は始終苦笑いだった。

「どう?どう?あと胃液?はい、水」

 飲んだ。で、

「お゛ぇぇぇ゛」

 しばらく繰り返して。
 治まった頃には俺がスッキリ、山口はちょっと口に手を押さえて笑顔ながらも顔面蒼白。

「え、山ちゃん、大丈夫?」
「うん、先席ついてて」

 仕方ない。
 扉を閉めたらやはり「っぅぇっ、」が聞こえてきた。
 ごめん山口と思いながらトイレの前に座っていれば高畑が「あ、のん」と言ってきて。

「おやじさんが、お前ら帰ってこないって心配してるけど大丈夫か?
 歯ブラシくれたよおやじさん」
「あー、マジで?流石だね。ありがとうございます。
 山ちゃんがもらいゲロしてるー。ちょっと行ってくる~」

 親父さんに挨拶しようとここは高畑に任せることにした。はぁ、と言う高畑の溜め息が聞こえる。

 顔見知りの店でよかった。
 歯ブラシは恐らく、前回来たときに「ゲロ吐いたら歯ぁ磨きたいよね」という話をしたからだろう。流石店主、わかってくれてる。

 厨房を覗きおやじさんと目が合い、「すんません、曽根崎そねざきですぅ」と挨拶すれば、

「のんちゃん、今回は初パターンだね」

 と、アゴヒゲ、元バンドマンでドラマーだったおやじさん、杵島きねじまさんがにかっと笑った。昔のドラマーらしい、体格の良さだ。

 「あー、歯ブラシ奥ね~」と言って厨房の隣のスペース(化粧室みたいなところ)を指差してくれた。

「ありがとーございまぁす」

 礼を言って、洗面台?を借りた。
 正直このスペース、長年通っているが謎なのだ。

 ホテルのアメニティだろう、包装された、小さな歯みがき粉入りの歯ブラシ2セットと、焼酎のカップが鏡台に置いてあった。

 借りて歯みがきをしていれば高畑に連れられた山口が顔面蒼白で「俺も…」と言った。
 すぐに高畑が「コップなんか借りてくるわ」と去って行く。

「マジごめん山ちゃん」
「いや、いいよ…」

 山口も歯ブラシの包装を開ける。すぐに「あっ」と言ったので「なに?」と聞いてから口を濯いだ。

「これラブホの歯ブラシだ」

 なんてことを言う。しかし、

「ふはっ、」

 笑ってしまった。

「やるねぇおやっさん」
「すげぇな、最近出来たとこだよ」
「マジで?どこ?」
「あの通り入ったとこ」

 指でジェスチャーしながら山口が説明するが、「わかんないや」実際ぴんと来なかった。

「あー、じゃぁツアー終わったら行こっかのん」

 とか至って普通にふざけたことを言うので、

「うん、可愛い子連れて来れたらね」

 と、返したところで「なんちゅー話してんの?」と高畑がやってきた。

「ノリが若くねぇか二人して」
「いひゃ、」

 高畑が山口にコップを渡す。

「却って俺は歳を感じたよー」
「ほーだね」
「ろ、露骨過ぎる親父ギャグ?だよねー」

 山口は普通にまた「ほーだね」と言ったが、高畑に「のんはそゆとこダメー」と言われた。

 ははぁ、楽しくなってきたな。

 早く卯月も来ないかな。
 なんならジャグジーを呼んでもいいや。

 あれ、てか。

「ねぇ高畑」
「ん?なに」
「ジャグジーって名前なんだっけ」

 メールの電話帳を見て聞いてみる。
 しかし二人とも、「あっ」だの「えーっと」だの言ってる。

 確かメアドを交換したときにジャグジー、本名を入れていたんだ。(赤外線で誕生日とかまで入っていた、しかもガラケー)

「なんだっけ」
「三味線だよね。もう見慣れない奴なんじゃない?」
「いや、見慣れない後輩たくさん入ってんだよ、スマホだから」
「あーね。同期が微妙だよなあれ」
「いやそれはいいよ高畑。ジャグジー」
「確か凄くあいつの名前褒めてたよのん。変わった名前じゃなかった?」
「いや変わった名前の最近のバンドマンたくさんいるんだよ」
「あーね。古典芸能っぽいやつじゃん?」
「うーん…」

 しばらく探してみた。

赤川次郎丸

 絶対違う。

川崎歌音

 絶対女だ。
 あとわかんねぇな。

「つかツキコ呼んだなら聞けば?」
「あっ、確かに」

 そうしよう。
 早く来ないかな卯月。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...