心中 Rock'n Beat!!

二色燕𠀋

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群青盛衰記

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 すげぇ。
 帰って来た同居人、依田紅葉。

「紅葉、マジでウザイ、本当にウザイ」

 ナイスボイスの元夫(元相方太夫、穂咲さん)と今夫(現在の相方太夫、後輩の勇咲くん)に肩を借りながら。

「あっはっはー!ツキコー、ジントニジントニ」

 最近依田の中で急上昇中のバンドボーカルのんちゃんと。

「ちょっ、のんちゃん?勘弁してこのデカイのホントめんどい」
「うひゃひゃー、切腹!切腹!」

 ひでぇへべれけ具合で我が店、『violent』に来店しました。

 ワタクシはその場で一瞬驚愕しましたが我に返り「うらぁぁ!なんで来たんだバカ野郎!」と依田を鞭でぶっ叩き遊ばしました。
 本日もお日柄よく、乾燥して音が響いております。

 ママさんがカウンターに頬杖を付きタバコを吸い、「最近飲み屋にされてる」とぼやく。
 谷間に勇咲くんは依田から手を離し「うひゃー、ママさん、見えちゃうねえ」と声を上げた。
 あたしだって寄せて上げてるわよ。

「あははー、スケベだねぇ勇咲くんー」

 のんちゃんが爆笑しながら勇咲くんをぶっ叩き「ん?」目を丸くする中。

「あ゛ーお前っ!勇咲っ!ちょっ、紅葉重っ、おい!ダメだって離しちゃぁ!」
「えぇ~、あんたの相方っしょ~、やだよ酒臭い」
「あんたらいつから飲んでんのよ」

 ママさんの前に勇咲くんが座り「新幹線から~。ここ二件目」とママさんのおっぱいに話掛ける横に、のんちゃんは勇咲くんの体を興味深そうに触って確認しながら座る。

 とにかくあと二人はその隣に座らせ、ジントニック4杯を作って出した。

 のんちゃんがそんなんだし、文楽夫婦も「よしよし紅葉」とか、穂咲さんが依田の頭を抱えるように抱きついているし、最早見映えの客層が一気にゲイバーと化したSMバー。

 他のお客さんは気にせず打たれて「ああん」と喘ぐハイシーを眺めていた。

「ママさん、ゲイバーってかハッテン場みたい」
「ツキコ、思ってること口に出しすぎ」

 耳打ちすれば苦笑のママさん。
 こりゃぁさっさと帰らせたい。

「いやぁね、俺ぁやめよ、弟子だけとかやめよって言ったんれすよ、おっぱい」
「あんた露骨におっぱいに話しかけてるね」
「いやぁ、あそこ夫婦がいまこー、おっぱいみたいに寄り添ってるやない?」
「勇咲くん大丈夫?のんちゃん何してるの?」
「んー、なんかねぇ、松本まつもとくんの身体がおかしいなぁって」
「松本って言うの!?」
「のんちゃん~、本名はダメだって~ぇ」
「何この堅いの。縄?」
「え、あったりぃ~。亀甲縛りぃ~」

 盛り上がる二人に再びあたしは「ママさん、」と。

「ハッテン場みたい」
「ツキコ、全部あんたの知り合いでしょ」

 言うなれば若干ママさんのコメカミにムカつきマークが浮かんだ気がしたので「すみません~…」と小さく謝った。

「てかのんちゃんなんでいるの!?」
「んー?ツアーせんしゅーらく間近だからだよー」
「覚えたのね千秋楽。え、山口さんと高畑さんは?」
「あーね、『SMバー行きたい』って言ったら今回は断られたー」
「当たり前だよねのんちゃん。脱退間近に何言ってんだよって言われたでしょ」
「あったりぃ♪」

 相変わらず爆走だな。
 てか。

「で!そっちの解散した夫婦はどーしたの!」

 イチャイチャしやがって。
 最早勇咲くんにもバレるんじゃないかという勢いで穂咲さんは依田に触りまくってる。なんならカウンターで見えないけど股間辺り触ってないかと、あの日が若干甦った。

「解散してないからS嬢!」
「うわぁ、すげぇ効果ない悪口だね兄さん」
「うるせぇ松本!」

 しかし無視をして勇咲くん、「なんかさぁ、」と語り始めた。

「俺あの二人見て、昔ゲイカップルがこれ見よがしに目の前でおっ始めたの思い出したよ」
「え、何それ」

 意外にもママさん、勇咲くんに食いついた。「うひゃぁおっぱい」とか言ってる勇咲くんを見て、

 こりゃあたしは同居人を叱咤(調教)しなければと、場所を移動した。
 なんやかんやあれから黙りこくってる依田が少し気になる。

「イチャイチャしてる中悪いね、
 おい依田」
「多分ね…」

 依田は返事をしないで突っ伏していた。
 穂咲さん、苦笑いで言う、「寝てると思うよ」と。

「マジかよ」

 微動だにしない。
 何?より存在感凄いんだけど、店で。

「なんでこいつこんな酔ってんの?」
「千秋楽終わったからじゃん?」
「あんたもよく来ましたね」
「いや連れて来られたんだよ」

 ははぁ。
 絶対嘘やろと見つめれば「まぁ、」と。

「ちょっとしたスケベ心も手伝ったけど」
「…あんた正直よね、意外と」
「ほらほら、太夫はいつも物語を語るからね」

 なるほどねぇ。

 隣できゃっきゃと話声がし、奥では「ああん、」「ひゅー」が聞こえるなか、ふと依田が「亀ちゃん!」と勢いよく頭を上げた。
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