心中 Rock'n Beat!!

二色燕𠀋

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群青盛衰記

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 それから古典芸能の犬猿兄弟は先に帰ってしまった。

 依田はまだ一人寝ていて、のんちゃんが隣に座って頬杖付き依田を眺めてる。ジントニックから山崎へ酒を変えた頃にママさんがのんちゃんに尋ねた。

「随分と物憂げに酒飲むのね」
「まぁ、そうですね」

 のんちゃんはママさんに控えめに笑う。
 私はその間にパフォーマンスをしたしりて大して話は聞いていない。

 のんちゃんは寂しそうに、ウィスキーグラスを持って氷を無駄に回したりして何かをママさんと話していた。

 きっと聞き上手なママさんだ、バンドのこととか、話してるんだろう。あたしは目の前で四つん這いになっている常連のお客さんを足蹴にして鞭をふるってるというのに。

「いやぁん、ツキコ様~」
「声が小さぁぁい!」

 ばしーん。

 あーあ、今日もぜーんぜん楽しくねぇ。おっさん喘がしたところであたしレズだもん。まぁ、金持ち苛めてると思うしかない。
 でもそうか、夢売り商売よねと、一通りIT社長を苛めてカウンターに戻れば、いつもの笑顔でのんちゃんが「お疲れ~」と手を振ってくれた。

「さぁて、俺はそろそろ帰ろうかな。明日スタ練だし。中野だし」
「あ、終電かぁのんちゃん」
「そーそ。このまま飲んでたら朝になっちゃうや」
「そっか、」

 のんちゃんが水色のロングなチェスターコートを着て立とうとした時、「ん?」と。

 のんちゃんのコートを依田が引っ張り「のんちゃん…」と夢見心地だった。

 あたしは最早のんちゃん、40間近で水色のロングコートとか、若いなぁ、しかも黒スキニーとか後ろから見たら大学生やんとか若干思いつつも「依田、やめなさいよ!」と依田の頭をぶっ叩いた。

「はっはっはー、ジャグジーどぉしたん?」

 しかしにかにかでその依田の髪を、汗びっしゃびゃなのも気にせずにかき上げて覗き込む仕草がなんか色。

 やだあたしどうしようお邪魔かしらとか思っていたら「のんちゃぁぁぁん」と、依田がすがるように、背を屈めていたのんちゃんに抱きついて危うくちゅーしそうになっていた。

「のんちゃぁぁん!」
「ははっ、なになにどーしたの、痛いよジャグジー」

 また背中を擦ってあげるのんちゃんは、あたしとママさんを見て、笑顔ながら困った顔をしていた。

「依田、のんちゃん終電なくなっちゃうからさぁ、」
「亀ちゃん?」

 ふと我に返って顔を上げた依田から漸くのんちゃんは逃れたが「仕方ないなぁ…」と、再び隣に座った。
 のんちゃんは「一杯だけね」と言ってママさんにジントニックを頼んでいた。ママさんはのんちゃんにジントニックと、依田に水を出していた。

 一応楽しそうに笑ったのんちゃんは「はーい、ツキコもかんぱーい」と、ジントニック、水、鏡月(瓶)で乾杯した。

「水じゃん!」

 飲んだ依田がそう叫んだが、「違うよ、高い日本酒だよ」とテキトーな事をママさんが依田に言えば「そっかぁ…」と、首を傾げながらちびちび飲んでいる。

 アホだなお前。大自然なんちゃらの水2L200円だわ。

 一気飲みしてから落ち着いてきたのか、漸く依田は一息吐いた。

「さぁて、ジャグジー、朝まで?」
「へっ!?」
「もう俺、終電ないからね」
「え、」

 はっと時計を見たが22時半。まだあるはずだがのんちゃん、笑顔で頬杖付いて依田を眺めている。

「え、嘘っ、すみません、あの、タクシー代、」
「じゃここの飲み代よろしく。どうせ俺一人で飲みに行くかも、とか思ってたし」
「えっ、えっ、」
「のんちゃん、依田は勘違いしてると思いますよ」
「あ、亀ちゃん!」
「あんだよクソ文楽」
「亀ちゃん…」

 今日あたしとお前の会話、お前あたしの名前しか呼んでねぇよバカとか頭の中で悪口をひたすら考えていれば、「亀ちゃんん!」と、感極まったように依田が立ち上がった。

 何、怖っ、デカっ!

 しかし思い止まったらしくふとぎこちなく、握手のように手を出してきたので、恐る恐る取れば両手で握られぶんぶんと腕を上下に降られた。

 何、どうしちゃったの依田。

「心配だったんだよね、ジャグジー」
「は?」

 のんちゃんがそう言えば無言で頭を上下する依田。
 なにそれおかしい。

「…全く、心配かけてぇ、」
「え、あ、はい、」
「俺がねぇ、どれだけ悶えたと」
「俺にも悶えてたらしいねジャグジー」
「えっ、」
「いやさっき松本くんが言ってた。ごめんね、心配かけて。
 ライブではそーゆーの、出さないつもりだったんだけどね…」

 ニコニコはしてるけどちょっと切なそうにのんちゃんは笑った。
 どうやら二人して傷心か?
 ポカンとしていたらママさんがふと言った。

「ツキコ、多分熱出して休んだやつじゃないの」

と。
あ、あぁ~!
思い出したぞ一月近く前。

「それだよ亀ちゃん!
 俺、もし帰って亀ちゃんが干からびてたらって、新幹線でめっちゃ怖かったんだからぁ!」
「え、いや、ま、ごめんだけどさぁ。
一月前じゃん」
「でも大して身寄りないじゃん!ホントにそれで、君ってアホだからびょーいんとか行かないで…肺炎とか、んなのになったら、俺もうさぁ…」

 途端に依田は鳴き始めた。
 すげぇブス顔で唇食いしばって。

いや
恐ぇよマジで。
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