心中 Rock'n Beat!!

二色燕𠀋

文字の大きさ
69 / 74
道行Music Beat

6

しおりを挟む
 広間に通され、掛け軸の前に老人(母親)とゲイ男優ネコ顔の弟が正座する。目の前にはシュウマイの袋。

 シュールだ、これシュールリアリズムとかいうやつだ。

 我々三人も正座、暫く沈黙が鎮座。なんちってとかくだらないことを考えるくらいに雰囲気厳粛。

 ふと、寝ちゃいそうな依田母上、モゴモゴと「はて」と言った。

「紅葉はん、あんたぁ、まふ。あんで葬式来んかったねぇ」
「はぁ、ご冥福は申し上げたと思いますが藍さん」
「まぁ、今更んなことはええんやけど。
 んで雀生はん。そん子が言うとった東京のおなごかいな」
「左様でございますが」

 老人、じろっとあたしを見ては口元を歪め「ふん、」と。

「これやから大阪モンは品があらへん言うねんな雀生はん。あんさん、ほんな派手な若いんをウチの長男に押し付けたんどすにゃ?」

 わかるわー。
 すげぇ見下されましたなあたし。けどババア、半分くらい何言ってっかわかんねー。

「まぁ確かに、若さ故に少々至らなさもあるやもしれまへんけど、何分紅葉殿が選んだおなごにケチをつけようなんざ、いささかそちらも如何なものか」

 意味がわからない。どうしよう。老人ってこんな高等テク会話するの?古典芸能だからなの?

「なによりわたくしめなぞ、この屋敷からは追い出された境遇ですが。今更何を冥府、失礼、世迷い事をおっしゃっているのかが私のようなうつけにはわかりませんよ藍さん」

 どうやら古典芸能独自らしい。

「何を戯言を申すか紅葉殿。私らに被害者面をするもまぁ道理やけど、はて、母上はどうしましたか」
「5年ほど前に他界しておりますが」
「あぁ、ほうかい」

 それはそれは黒い、嫌らしさ満点で依田母は笑った。

「…私めと致しましてははっきりと、その時分ときぶんにてこちらとの縁は断ち切れたと思いましたが浅はかでしたな。
長男家督と言うなればしかし、父もいない今私が継ごうなど、筋違いかと思いますが」
「兄さん、ホントにその子と結婚する気?」

 ネコ顔弟、母親似の笑い方で依田を見つめる。
 依田は心底低い声で「何が言いたい春暁」と、臨戦態勢。

「いやぁ、僕としては藍は母、悠善ゆうぜんは父、紅葉は兄であることに間違いはない。単に弟として聞きたいのですが?」
「まぁ、それも道理だが」

 この辺に来て勇咲くんが足を崩して片膝立てた。わかる。飽きるよなこれと目線でエール。

「はぁ、あんさぁ。俺よくわかんねぇんだがなんでこんな胸糞悪い話に付き合わされてんの?まどろっこしくて飽きるんだが、互いに何が」
「勇咲、少し黙ってろ」

 雀生師匠が制すれば「はぁ、」と溜め息。
 これ絶対次の矛先あたしじゃん。

「…ご無礼を。まだまだ未熟な者でして。
しかしそれも道理と存ずる。藍はん、あんたは何故勇咲と紅葉、紅葉の許嫁まで呼んだのですか」
「あぁ、雀生師匠。勇咲さんは僕が呼びました」

 3人一斉に「はぁ!?」とハモった。

「忘れちゃったんですか勇咲さん。
 いや、まぁまずは雀生師匠。
 つまり母は兄にこの家、自分の身辺を任せたい所存なのですよ。何分母も歳だ」
「…言葉を返すようだが鵜助、それはお前の仕事ではないか?ウチのと言うが紅葉は、あんさんら二人から追い出されて、儂がここまで」
「でも戸籍はウチにあるでしょ、兄さん」

 黙った。
 そりゃぁ確かに厄介だ。

「本来ならあんたかて、息子の一人も居ればいいが、それを許さなかった僕の父を恨みますか雀生師匠。それともお宅ら夫妻の」
「黙って聞いていればなんだお前。
 お前と藍さんの恨みは俺にはわからない。だが道理と納得して干渉せずに生きてきた。確かに籍は依田家だが、お前に何がわかるんだ春暁。俺の師、父はそれでも雀生だ。それはお前かて同じじゃないのか、なあ」

 キレてる。
 それには雀生師匠も「紅葉、」と嗜めるように低く言うが、依田は止まらない。

「俺をどう言おうがお宅ら二人からは致し方ない。被害者面なぞせずに受け止めようと思うがなぁ、まわりの人間になんの関係がある。
 亀ちゃんがどう、師匠がどう、しかし言われてしまうも俺の人柄だ。だが許せない。恨み言、俺が聞いてやろうじゃないか、なんだ、何が不満なんだあんたら。どこまで人をバカにすれば」
「違うよ兄さん」

 静かに弟が言うのに、依田は仕方なく引っ込めた。

「悪いとなんて兄さんは思わなくていいだろうよ」
「春暁、お前その腹積もりで私の横に座るか」
「母さん。あんたの気持ちもわかるよ。
 略奪するような妙な背徳に苦しんだのも僕は見ている。だが、略奪された兄も、本妻だった兄の母も見ている。今更なんだと、言いたいが僕は確かにここを継げないかもしれない」
「何故そうなる春暁」
「簡単ですよ兄さん」

 弟はふと笑い、立ち上がった。そして言う、

「高山鵜助、もとい高山鵜志が弟子は女形極めたく候へ。つきましてはお相手竹垣勇咲、本名松本まつもと涼一りょういちと結婚いたす所存です」

…は?

「は、はぇぇえ?」

 やっと出てきた勇咲くん。
 しかしとんでもねぇ爆弾を投げられ候。変化球過ぎて全員に被爆。

 なるほどジャクソンくん。
 これは君ではダメな事案だわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...