ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 1st episode

8

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「…あっそう」
『明日からは入間いるまくんとこ行ってね。明日からお前らが働く職場、メールしといたからね』
「ん?」

 待て待て。

「お前らって?」
『あれ?言ったよね?お前と星川だよ』
「いやいや聞いてない聞いてない」
『いやいや言ったよ?これからお前ら一緒って。今回の事件の時にちらっと』

 なに言ってんだこの野郎。

 …あ。

「え?」
『捜査続行でーす。お前あんなんで済むと思うなよ?俺をからかってんの?
ただそれにはね、お前らがウチにいると厄介だからね。籍を厚労省に移しまーす』
「え、」

 えぇぇえ!

「なんじゃそりゃ!」
『なんじゃそりゃ!はっはっは!良いリアクション。メンバーはどうだった?気に入った?』
「いやその前にさ…」
『お前だってさ、納得行かなかっただろ?未練たらたらじゃない?
 いいじゃん日本平和だし。頑張ってよ』
「…やべぇ、あんた上司じゃなくなるなら言うけどな、次会ったらマジ撃ち殺すからな」
『あー怖い。けどこれさ、事務所の電話なの忘れてない?録音されてるよ』
「うるせぇ」
『ちなみに退籍も(仮)だからね。ただ、しばらくは入間くんがお前の上司ね。明日朝イチで挨拶しに行ってね絶対』
「あんたさ…」

 腹立ってきた。

「わかってて言ってんだよな」
『…はいはい。俺にわからないことなんてないからね若造。お前の経歴なんてこっちの手元だよ。
 だからこっちからこうしてお願いの電話を入れてんの』
「あっそう。喧嘩売ってるわけだな」
『そう思うならそうだよ』
「いいよ、チャンスと思ってやってやろうじゃねぇか」
『それはよかった。
引き続きお前が指揮官だ。いいかい壽美田。その事件の被害者遺族及び当事者は何もお前だけじゃないんだ。
 俺もその頃FBIにいた。皮肉にもそれでいまの地位にいる。言いたいこと、わかるか?』

 わかるけどさ…。

「あーはいはいはい!やりますよ!まったく!」
『はっはっは!君は優しいね』
「物好き変態」
『悪口も得意だね』
「じゃぁわがまま一つ。一人増やしますから」
『ほぅ、どこの誰?』
「…人質の箕原くん」
『は!?』
「切りますよ。おやすみなさい」

 無理矢理電話を切った。

 あぁ…。変な上司を持つとなんでこんなに大変なんだろう。
 フランス行ったりアメリカ行ったり。まだこの辺はいい。カンボジアとかエチオピアとかコンゴ共和国?とか。最早FBIなんてあんのかよとかいうよくわかんない国に派遣されたり。

 そもそもこの人なんでこんなに人事移動力あるんだ。普通そういうのは本拠地のアメリカだろう。謎過ぎるんだよなぁ、あの人。

 日本のFBIの中でも謎に包まれた人。彼はなんなんだ、一体。なんとなく凄い人なのかもしれないけど。変な国知ってるし。

 でも…。

『君は死んでいるね』

 顔合わせの日に言われた。

『そんな子は仕方がないからバリ島に行きなさい』

 そう言われてバリに1ヶ月派遣された。
 良い国ではあった。しかしあれは逆に死にたくなった。

『少しはマシになった?じゃぁ捨て身の覚悟でエジプト』

 全然言葉がわからなくて苦戦した。

『ヨーロッパ繋がりでフランス』
『英国ならやっぱりアメリカ』
『アメリカ行けたならカナダ』
『うーん、中国』
『あ、ドイツヤバイよね』
『ノルウェーで鮭買ってきて』
『コーヒー飲みたい』

 あれから7年でそれだけの国に行った。
 現段階で日本。いい加減過酷すぎてPTSDとか、なんかそーゆー精神的な病気を発症しそうなんだが。

 それくらいに暗殺もした。それくらいに情勢も見た。

『一人を殺したら最後なんだよ、流星』

 確かにその通りだ。

 タバコを取りだしジッポライターに面影を見つける。

『これはお前が持ってて。俺が間違ったときのために』

 火打ち石の噛み合わせが悪い。開けて噛み合わせを直す。中から出てきた銃弾をしまい、ジッポを擦った。

 あんたはどうしてこれを俺に預けたのか。どうしてあんたはすべてを捨てたのか。どうして、裏切ったのか。

 あぁ、ダメだ。
 日本の12畳1LDKは、俺一人には広すぎる。

 明日から厚労省か。
 波乱の予感しかしない。
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