ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 4th episode

11

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「お疲れさん」
「お疲れさまでーす!あれ?あきちゃんどうしたの?」
「あぁ、言ってやるな」
「霞すげぇな。私服?」
「はい。タンスの肥やしです」

 タンスの肥やしでホストクラブに来ようと言う発想。そしてこの服を一度買った霞の感性に感服だ。

「流星さんも似合ってますよ!」

 そう霞が言うと政宗が吹き出した。「どうしたんですかぁ?」とか言う霞に、「彗星さんだよ彗星さん」と、要らぬ情報を吹き込む。

「須和間彗星さんってんだよこいつ…!」
「政宗、キレるよマジ。
 マジ俺この後高田にぜってぇ電話する」

 「きらきらネーム…」とか言って笑ってる政宗を完全に無視し、「どうだった?」と霞に聞く。

「もぉスゴいですよ!あそこ、全員薬中!」

 不謹慎かつ偏見もいいところだ。それを無邪気に言っちゃうあたり霞はやっぱりズレている。
 霞担当の瞬は黙ってイヤホンを外し、小さく溜め息を吐いた。

「なんとなく観察してみると、お客さんからホストに渡したり、ホストからお客さんに渡したり…。
 私なんか、ドリンクにこっそり入れられてたんで、飲むフリしました。
 そしたら、そいつから、『実はね、君のために魔法を掛けたんだよ』とか言われて!はぁ!?みたいな。それがこれです」

 霞はポケットからアクリル製の試験官を取り出し、政宗に渡した。

「そいつの名前が、話してた“カイト”?」
「そう!でも私が見た感じだとそんなことしてるのあの人だけだった気がする」
「Hestiaのカイトね、潤が帰ってきたら聞いてみよう」

 瞬は手持ちのiPadを見せてきた。

「あまり参考にはならないかもしれませんが…」

 見てみると、どうやらそこまで人気があるホストでは無いらしい。一応設定は20歳。

「諒斗はどう?」

 声を掛けると諒斗は「ひぃぃ!」と悲鳴を上げた。よほど潤が酷いのか。というかいつの間にまたイヤホン付けたのか。

「…担当変えようかな」
「いや、違うんだよ!潤さん…」

 とても言いにくそうだ。

「相手が女も男も見境無いんだよ!」

 諒斗の悲痛な叫びに、思わず咳き込み、二本目のタバコを落としてしまい、隣では政宗が「うぉぉ…」と唸った。思わず目が合ってしまう。

「あのバカ…!」
「諒斗、ホントにもういいぞ…」

 これは後任は政宗かな。若い子にあの獣の担当をやらせてしまった俺たちの責任だ。

「でも…ちゃんとなんか要所は押さえてるんですよぅ…!
しかもこれダメ。聞いてないとなんか…潤さん殺されそう…」

どうゆーこと?

「何が?」
「いや、その…プレイの一貫なんでしょうけどナイフとか首締めとか言ってるからぁ!苦しそうなんです!」
「…諒斗、貸して」

 最早泣きそうな諒斗に手を差し延べる。が、「それもどうなんだ…」と政宗は言う。だが、

「いや、やる!ここまで来たらやってやるー!」

という訳がわからない気合いを見せる。

 政宗が笑った。

「わかったわかった。頑張れ」
「…帰ってきたら説教だなあいつ」
「まぁ、仕事してんならいいんじゃね?諒斗、あいつは結構掴んでんのか」
「…うん、」
「よし、拾った情報をくれ」

 案外、根性のあるやつだ。

「…多分、霞が言うようにあそこではヤクが当たり前で、どうやら…売ってる?潤さんはどうやら面接で採用された時点で渡されて、配れって言われてたみたいだけど…」
「やり口がヤクザだな」
「てか古くないですか?なんか会話を聞いてると居なくなった従業員もいるっぽいですね」
「そうだ政宗。龍ヶ崎のやつ、店に来た?」
「へ?」
「多分俺がここに来る少し前とか」
「…いや。ただオーナーは来たけど。聞いてる感じからして確かに言われてみればヤクザっぽい…」
「あぁ!潤さんそいつに貰ってた!ハズ!」

 まぁ枝野、昼間に行くって言ってたしな。

「そいつ多分會澤組の組員だよ」
「なんで知ってんの!?」
「企業秘密」

 しかしこれは微妙なラインに立ってきたな。

「あのさ、ちょっと聞きたいんだけどさ。
 警視庁捜対5課にこの情報を流したとしたらどうなると思う?」

 これは皆様に聞いてみよう。皆一様に、「なんで?」とか、「え?」とか言っている。

「まぁ合同捜査じゃねぇけどさ」
「かっさらわれて終わるんじゃねぇか?」
「別にくれてやるよ。手柄をやるからエレボスのなんか情報あったらくれよって」

 政宗はピンと来たようで、「お前…そーゆーことか…」と呟き、すぐに、「やめとけよ」と顔をしかめた。

「お前、結構厄介なことになってんだろ」
「…なってないけど」

 一瞬ひりついた空気に、他にいた若手たちが黙り込んだ。それを見て政宗も改め、

「まぁその話はあとだ。
 確かに今の捜査は少し俺たちの管轄外かもしれないがまだ序盤だ。まぁ後に5課とは関わるとは思うが…俺と諒斗だって一応マトリだ。他にやり方はあるんじゃないか?」

 言われてみれば確かにそれもそうだ。
 薬物エキスパートが厚労省にいながら、警視庁と俺を繋ぎ合わせて二つの捜査をした高田の意図がぼんやりながら読めてきている。恐らくエレボスのヒントは警視庁にもあるのだ。
 だからこそ、一度警視庁にぶん投げてどうなるか見たいのだが。雑すぎるだろうか。
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