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The 5th episode
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国立帝都大学は、都内でも大規模な大学で、三大一流大学のひとつだ。勿論、世界的に優秀な人材を産み出してきた大学であるわけだが…。
「あの、枝野さん」
「なんだ?」
生徒数もハンパじゃなければ学者や教授の数もハンパない。それを…
「すみませんが一応貴方先輩なのでなんか…前歩いてくれません?すげーやりにくいんですけど」
「いや俺こーゆーとこ苦手なんだよ」
「はぁ、そうですか」
俺の後ろに隠れるようにこそこそしている40代、露骨なオールバック三下ヤクザ。ヤクザってそんなもんなのか。
「てかさ、俺裏口って言ったじゃん」
「俺が入ったのって何口でした?」
「どう見ても正面だろ!」
わかんねぇよこんだけ広くてこんだけ人が居たんじゃ。人が門から入っていく数ハンパないんだよこの時間。
「てか、広いっすね」
「うん…」
「どこに向かってるんですか?」
「は?」
「いや、誰から何をどうするのかイマイチわかってないのに俺今あんたより前を歩いているんですよね」
お前が使えないからな。
「なんか俺凄く理不尽な事言われてる気がする…。お前マイペースだね」
「そうですか?」
お前よりかだいぶペースは早いと思うが。
「物理学研究所の谷栄一郎から金返して貰う」
「はーい。物理学研究所ってどこ?」
「あっち」
そう言って枝野が指した方向は左手の方で。取り敢えずその方角へ向かってみることにした。
「あのよぅ、冨多」
「なんですか」
「堂々としすぎじゃないか?」
「仕方ないでしょう」
やましい仕事をしてるのはお前らの方だからな。俺には関係ない。
面倒だから枝野に歩みを合わせてやるのもやめた。早く済ませてしまいたい、こんな野暮用。
「なんか機嫌悪くねぇか?」
「んなことないですよ。さっさと金巻き上げましょう」
「案外単細胞だな」
その台詞には少し足が止まった。
「それ、よく言われます」
「褒めてねぇよ、全然」
溜め息をひとつ吐いて、枝野が先に歩いて行く。
はっきり言って、かったりぃ。
二日目にしてこの仕事、すげぇどうでもよくなってきている。
しかし、こいつらの生態系を知っておかなきゃならないのは事実だ。
「枝野さん」
「ん?」
「その教授は、なんでこんなヤクザから金借りたんですか」
「さぁ。ヤクザから金借りるやつは何かしら後ろに黒い繋がりがあったり、八方塞がりだったりするからな。まぁ、ろくなヤツではないのは確かだな」
「それ、あんたが言います?」
「言うよ。俺だから言うんだよ」
…なるほどな。
「あんたさ」
「んぁ?」
イライラする。
タバコに火をつけた。
「なんでこんなことしてんの?」
「は?
喧嘩売ってんのか若造」
「そうかもね」
「…ふっ」
枝野はふと笑い、冷たい目で俺を見つめた。
多分、俺と同じだ。
「てめぇにだけは言われたくねぇな」
「…あぁそうですか」
それから互いに無言のまま、物理学研究所へ向かう。
その研究所は大学の構内にあって。
その辺を歩いていたよくわかんない白衣を着た学生を捕まえて谷栄一郎について聞き出してみると、「ただいま外出中です…」と震える声で言われた。
「へぇ、外出ねぇ。
ここにこの時間にこちらが伺うと言ってあるんだけど、やっぱりルーズな男だねぇ」
「え?」
「んじゃ冨多。一人ずつ片っ端から聞いていくか。ありがとな学生くん」
「えっ、そんな…」
「誰かしら知ってんでしょ?まさか、一人で誰にも何も言わずに逃げちゃったの?」
「いや、あの…」
「君さぁ…」
大学の廊下で繰り広げられる問答。講義中の時間帯だからか人通りは少ないが野次馬は集まりつつある。
可哀想にな、若造くん。
「早くしたほうが身のためだよ。この職業は皆気が短いからね。なんならどこにいるか教えてよ」
こっそり耳打ちで言えば、怯えた学生は、「ち、地下の…第三研究室…です」
と言った。
「ありがとう。じゃぁね。
枝野さん、第三研究室ってどこですか?」
それから枝野に先頭を歩かせて地下室まで行く。
人通りがなくなった地下で、ふと枝野が、「お前さ」と言ってきた。
「警察呼ばれたらどうする気?」
「呼ばないでしょう。だって呼んだら、そのせんせーだって捕まるんだから」
「まぁそうだが」
「あれくらいのガキは、その程度の知識と度胸しかない。だから呼ばないですよ。呼ぶとしたら、外の野次馬学生くらいかな」
「どうすんだよ」
「別に。逃げればいい」
「簡単に言うなぁ、お前」
「俺はわりと逃げ足だけは早いんですよ。今までお上さんに世話になったことなんてないですよ」
SWATに勘違いで殺されかけたことはあるけどな。
「てかぶっちゃけお上さんよりテロリストの方が怖いしね」
「まぁ、そりゃぁ言えてるが」
「この前もあったでしょ。ニュースでやってたじゃないですか。ホテル立て籠ったやつ。怖いわー」
試しに話題を振ってみる。少々雑だがまぁいいか。
「あー、あれな。流石にビビるよな」
「あれも犯人捕まってないんでしょ?お上さん、あんなホテル一個に一週間掛けてやがるし。ほら、テロの方が怖いよ」
「そうだな。ものにもよるだろうがな」
なかなか、長期戦だな。
「あれってでも噂じゃぁヤクザ関連なんじゃねぇかって話じゃないですか?こっちの業界にいるとちらほら聞きますが」
「うーん、どうかな。あんな派手なヤクザ、聞いたことねぇよ」
「まぁ確かに」
そんなところで第三研究室についた。
「あの、枝野さん」
「なんだ?」
生徒数もハンパじゃなければ学者や教授の数もハンパない。それを…
「すみませんが一応貴方先輩なのでなんか…前歩いてくれません?すげーやりにくいんですけど」
「いや俺こーゆーとこ苦手なんだよ」
「はぁ、そうですか」
俺の後ろに隠れるようにこそこそしている40代、露骨なオールバック三下ヤクザ。ヤクザってそんなもんなのか。
「てかさ、俺裏口って言ったじゃん」
「俺が入ったのって何口でした?」
「どう見ても正面だろ!」
わかんねぇよこんだけ広くてこんだけ人が居たんじゃ。人が門から入っていく数ハンパないんだよこの時間。
「てか、広いっすね」
「うん…」
「どこに向かってるんですか?」
「は?」
「いや、誰から何をどうするのかイマイチわかってないのに俺今あんたより前を歩いているんですよね」
お前が使えないからな。
「なんか俺凄く理不尽な事言われてる気がする…。お前マイペースだね」
「そうですか?」
お前よりかだいぶペースは早いと思うが。
「物理学研究所の谷栄一郎から金返して貰う」
「はーい。物理学研究所ってどこ?」
「あっち」
そう言って枝野が指した方向は左手の方で。取り敢えずその方角へ向かってみることにした。
「あのよぅ、冨多」
「なんですか」
「堂々としすぎじゃないか?」
「仕方ないでしょう」
やましい仕事をしてるのはお前らの方だからな。俺には関係ない。
面倒だから枝野に歩みを合わせてやるのもやめた。早く済ませてしまいたい、こんな野暮用。
「なんか機嫌悪くねぇか?」
「んなことないですよ。さっさと金巻き上げましょう」
「案外単細胞だな」
その台詞には少し足が止まった。
「それ、よく言われます」
「褒めてねぇよ、全然」
溜め息をひとつ吐いて、枝野が先に歩いて行く。
はっきり言って、かったりぃ。
二日目にしてこの仕事、すげぇどうでもよくなってきている。
しかし、こいつらの生態系を知っておかなきゃならないのは事実だ。
「枝野さん」
「ん?」
「その教授は、なんでこんなヤクザから金借りたんですか」
「さぁ。ヤクザから金借りるやつは何かしら後ろに黒い繋がりがあったり、八方塞がりだったりするからな。まぁ、ろくなヤツではないのは確かだな」
「それ、あんたが言います?」
「言うよ。俺だから言うんだよ」
…なるほどな。
「あんたさ」
「んぁ?」
イライラする。
タバコに火をつけた。
「なんでこんなことしてんの?」
「は?
喧嘩売ってんのか若造」
「そうかもね」
「…ふっ」
枝野はふと笑い、冷たい目で俺を見つめた。
多分、俺と同じだ。
「てめぇにだけは言われたくねぇな」
「…あぁそうですか」
それから互いに無言のまま、物理学研究所へ向かう。
その研究所は大学の構内にあって。
その辺を歩いていたよくわかんない白衣を着た学生を捕まえて谷栄一郎について聞き出してみると、「ただいま外出中です…」と震える声で言われた。
「へぇ、外出ねぇ。
ここにこの時間にこちらが伺うと言ってあるんだけど、やっぱりルーズな男だねぇ」
「え?」
「んじゃ冨多。一人ずつ片っ端から聞いていくか。ありがとな学生くん」
「えっ、そんな…」
「誰かしら知ってんでしょ?まさか、一人で誰にも何も言わずに逃げちゃったの?」
「いや、あの…」
「君さぁ…」
大学の廊下で繰り広げられる問答。講義中の時間帯だからか人通りは少ないが野次馬は集まりつつある。
可哀想にな、若造くん。
「早くしたほうが身のためだよ。この職業は皆気が短いからね。なんならどこにいるか教えてよ」
こっそり耳打ちで言えば、怯えた学生は、「ち、地下の…第三研究室…です」
と言った。
「ありがとう。じゃぁね。
枝野さん、第三研究室ってどこですか?」
それから枝野に先頭を歩かせて地下室まで行く。
人通りがなくなった地下で、ふと枝野が、「お前さ」と言ってきた。
「警察呼ばれたらどうする気?」
「呼ばないでしょう。だって呼んだら、そのせんせーだって捕まるんだから」
「まぁそうだが」
「あれくらいのガキは、その程度の知識と度胸しかない。だから呼ばないですよ。呼ぶとしたら、外の野次馬学生くらいかな」
「どうすんだよ」
「別に。逃げればいい」
「簡単に言うなぁ、お前」
「俺はわりと逃げ足だけは早いんですよ。今までお上さんに世話になったことなんてないですよ」
SWATに勘違いで殺されかけたことはあるけどな。
「てかぶっちゃけお上さんよりテロリストの方が怖いしね」
「まぁ、そりゃぁ言えてるが」
「この前もあったでしょ。ニュースでやってたじゃないですか。ホテル立て籠ったやつ。怖いわー」
試しに話題を振ってみる。少々雑だがまぁいいか。
「あー、あれな。流石にビビるよな」
「あれも犯人捕まってないんでしょ?お上さん、あんなホテル一個に一週間掛けてやがるし。ほら、テロの方が怖いよ」
「そうだな。ものにもよるだろうがな」
なかなか、長期戦だな。
「あれってでも噂じゃぁヤクザ関連なんじゃねぇかって話じゃないですか?こっちの業界にいるとちらほら聞きますが」
「うーん、どうかな。あんな派手なヤクザ、聞いたことねぇよ」
「まぁ確かに」
そんなところで第三研究室についた。
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注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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