ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 6th episode

6

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 パン、という音がした。
 火薬の臭いと。
 ずっしりとした重みに、じっとりとした身体へ伝わるこれは…。

血?

「…潤!」

 赤髪が倒れ込んできた。
 声は、ドアの方から。
 激しく息を切らせた流星が、煙を立たせた拳銃を構えて立っていた。

「流星!?」
「こんのバカタレ!」

 そして凄い剣幕でベットの横まで来て、グーパンされた。

「何、…してん…だよクソが!」

 死体となった赤髪を退かして馬乗りになってもう一発、今度はビンタされた。

「てめぇ自分がしてることわかってんのか」

あぁ、これガチギレしてる。
だって今むちゃくちゃ声低いもん。

「…うるせぇな」
「あ?」
「うるせぇって…言って…」

やべぇ。
怒鳴ったろーかと思ってんのに。
全然声出ねぇ。
代わりに、不本意ながら涙が溢れてきて。

 流星は手元に転がった注射器を掴み、

「てめぇこれなんだかわかってんのか、おい。
 お前あぶねぇのわかっててなんでこんなことしてんだよ、あぁ!?」

とか言って見せつけてきやがる。

「打ってない」
「んなの見たらわかるわ!
お前こいつがヤバイことくらいわかっただろ、なぁ、おい!バカかてめぇは!」
「うるさい…」
「うるさいじゃねぇよこのっ」

 拳を振りかざす。反射的に目を瞑ったが、なかなか打撃が来ない。「待て待て流星!」と、政宗の声がした。

え?なにこの茶番劇。

「うっせぇ、黙ってろ政宗」
「はいはいわかるけど、お前も病み上がりなんだから無茶すんなよ」
「てかお前…」

 流星の頬に手を伸ばす。
冷たいけど。

「生き返ったんだな…」
「あ?…悪かったな死んでなくて」

 シャツのボタンを掛け直してくれてるのがなんか笑えてきてしまって。

「ったく。お前俺を密葬すんだろ」
「あぁ、そうだったな」
「政宗、タオルある?こいつ血塗れだわ」
「誰のせいだよ」
「てか殺すか普通」

そういえば赤髪殺しちゃいましたけど流星さん。それって…。

「あ?いいんだよこんな死刑囚」

あ、そうだったのね。てか…。

「えっ」
「あ?なんだお前知らなかったのか」
「えぇぇぇ!き…気色悪っ」
「今更かよ、てかお前マジか。素性くらい知ってからその…なんだ…」
「性交渉な」
「そう。言いにくいことをぬけぬけと言いやがって政宗ぶっ飛ばしますよ」
「え、てかあんたらなんで色々わかったの!?」

 場所とか状況とか素性とかその他もろもろ。

 政宗が流星にタオルを投げて寄越し、それを乱暴に渡された。取り敢えず拭いてみるけど血は固まってきている。なかなか拭えない。

「お前なぁ、みんながなぁ、潤が変な男に拐われたって大騒ぎだよ。うるさくて寝てらんねぇわ、バカ」
「元々そこに死刑囚がいたのは知ってたからな。
 急ピッチで調べて後はお前のケータイ逆探だよ。もし途中でケータイ捨てられてたらお前今頃死んでたな」
「…流石だな」
「流石だなじゃねぇよてめぇ」

あぁまた流星の怒りが…。

「まぁまぁ、そう怒るな単細胞王子。俺は今日てめぇらに散々付き合ってんだ。まずは礼を言ってくれないか?」

笑顔だが怖いぞこれ。
「ごめんなさい」が思わずハモった。

「よろしい。じゃぁ帰るか。姫は早く服を着なさい。半脱ぎだからすぐ終わんだろ」
「てかその他後輩たちは?」
「こんなとこ連れてこれるわけねぇだろ」

あぁ、ですよね。

 注射器を回収して流星は漸く退いてくれた。
 ちゃっちゃと服を直して起き上がる。
流石に悪いことしたかな、今回は。

「今回は謝るわ、素直に」
「素直でよろしい」
「…死にてぇなら俺に言え。容赦なく撃ち殺してやるから」

どうしてこう…。

「はーいバカ」
「なんだてめぇ」
「悪かった、けど殺すなら絞殺ね」
「あ?なんでよ」

それを聞かれると痛いんだけど。

「生きてたなって感じるからだよ」

そう、ただ、それだけなんだ。
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