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The 11st episode
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結局、“グランドホテル鏡水”は外れた。
と言うのも…。
「今日は確かにいらっしゃいましたけど、なんだか若い男の子と1時間くらい話して帰られてしまいました。まぁもともとお食事の予定だったので、部屋は取っておらず、満室だったんですよ」
名簿を見てみれば確かに。どこも満室だ。
「ちなみにその若い男の子ってのは…」
潤の写真を見せてみると、ホテルマンは一瞬で、「あぁ、全然もっと若い子です」と一蹴した。
「なんか、印象に残りました。速見さんってなんか、こーゆー、写真の子みたいなタイプの子が好きな印象だったのに、なんかいかにも真面目そうなと言うか…少年みたいな子だったので」
「はあ…」
と言うか。
FBI手帳を見せた瞬間なにこの喋りよう。愛蘭に電話で渋ってたんじゃねぇの?
「ありがとうございました」
残念ながら収穫はあんまりなし。こりゃぁ、本来なら次で決まりそうだが。
次の“滝川プリンスホテル”が難航。
鏡水と違い、「個人情報ですので」の一点張り。強行突破を試みて、「拉致監禁の共謀罪」を叩きつけてみるも、「令状でもご用意頂けますか?」とムカつく対応。
仕方なく他二件を先に潰すことにした。
だが他二件も、「さぁ、本日は会合があったのでいらしたかもしれませんがわかりませんね」だとか、「覚えてませんね」だとか甲乙つけがたい微妙な対応。
一度引き上げ、まずは滝川プリンスホテルの捜査令状について考える。
「管轄外ですね」
「ああ…」
どうしたもんかな。
「…速見が薬を持っていたら…」
「へ?」
暁子の言葉が思い出される、『粉くせぇヤツ』というワード。
「やはり速見の近辺は洗うべきかもしれないな」
これは少し時間が掛かるかもしれない。
「…ただ…」
なぜ暁子は殺され、速見のSPが殺されたのか。
「近道か、もの凄く無駄足か…」
「…令状、ですよね。
いっそ偽造してしまえばどうでしょう。速見さんは誤魔化せなくても、ホテルさえ突破して潤さんを助ければいいんですよね」
またこいつは…。
「また破天荒なことを言いますね君は。悪知恵ゴリラに教わりましたか」
「そうですね」
「悪い子ですね。ただそうしたいが…ウチのクソ上司が今立て込んでるから判子が…」
「なるほどですね」
「だがまぁ…」
偽造をするならぶっちゃけ最早日本政府頼みじゃないとして。
だったら高田判子じゃなくてもバレなそうな気はする。
「ただこれはもし外れだった場合ちょっと痛手を食うな…なんとか、別件でそれっぽいカマをかけてみるしかないな」
仕方がない。
まぁ、俺がやるこれもまた犯罪ではあるがまぁ、高田のせいにしてしまえ。一本メールくらいは打っておこうか。
To:高田
件名:
作成 高田さん、俺はただいまから高田さんの名を使い捜査令状を偽装しますがよろしいですか?
速攻電話が掛かってきた。
「もしもーし」
『バカなのお前。殺すよ』
「いや本気ですよわりと」
『は?なに?』
「潤がガチでヤバイんです。死んだ横溝の依頼を受けて今行方をくらましてんだから」
『はぁ!?』
沈黙。
『なんで先に言わないのそーゆーこと!』
「聞かなかったじゃん」
『なんなのナメてんの?大人をからかわないでくれる?』
「からかってないです。だから一大事なんだよ。
速見の素性とかその他を教えて下さい。そこにヒントがあるはずなんだ」
『…速見…?』
「警視庁長官のだよ」
嫌な、物々しい静かな殺気が電話越しで伝わってきた。たまにある高田ショック。この人は不機嫌だけで多分人を殺せる。
押し潰さんばかりの威圧的な沈黙のあと、高田の震える息遣いが聞こえた。
『目星は?』
「滝川プリンスホテルかグランドホテル鏡水。六本木の」
『わかった。連絡を待ちなさい。それまでに殺されたら地獄まで迎えに行くよ』
一方的に電話は切れた。
「ぷはっ、あっ、」
どうやら息を止めていたらしい。気付かなかった。
「…大丈夫ですか」
「…わりと死ぬかと思ってる」
そしてすぐさまメール。
潤のケータイのすべての番号やら機種やらが送られてきて、場所までご丁寧に送信されてきた。
最後に一言、『しくじったらぶっ殺す』と書いてあった。これは立派な脅迫罪の証拠だ、保護しておこう。
また、高田フォルダにひとつメールが増えてしまった。果たして何件目だろうか。いい加減処理しないとメールって要領でかいんだからな全く。
「最初から送ってこいよ~!」
「わかったんですか!?」
「わかった。しかし…」
的外れだった。
「…伊緒、タクシー拾うぞどっかで」
「はぁ、はい」
そして。
『お前ら特本部の幹部全員減給対象とします。しくじったら首が飛びます。覚悟しなさいクソガキ。
成功したら菓子折り持って壽美田、星川、荒川の三名はガン首揃えて来られたし』
なんじゃこの不機嫌メールは。言ってることちぐはぐだよ。仮にも部下じゃないか。
ん?てか、政宗?
「上等だよクソ上司ぃぃ!あぁぁもう!」
「え?え?」
伊緒にメールを見せ付けると「うっわー…」と息を飲んだ。
「かまってちゃんなんですね」
「うぜぇすげぇうぜぇ。それもこれもぜーんぶあの女顔クソ淫乱野郎のせいだ!会ったらぶっ殺す、助けたら本気でぶっ殺す。ぜってぇ助けてやるあのジゴロ野郎が!」
「単細胞炸裂してますね。取り敢えず行きましょうか」
なんだっつーのホント今日はよ。これでひとつ、今日は生き延びねばならなくなったらしい。
と言うのも…。
「今日は確かにいらっしゃいましたけど、なんだか若い男の子と1時間くらい話して帰られてしまいました。まぁもともとお食事の予定だったので、部屋は取っておらず、満室だったんですよ」
名簿を見てみれば確かに。どこも満室だ。
「ちなみにその若い男の子ってのは…」
潤の写真を見せてみると、ホテルマンは一瞬で、「あぁ、全然もっと若い子です」と一蹴した。
「なんか、印象に残りました。速見さんってなんか、こーゆー、写真の子みたいなタイプの子が好きな印象だったのに、なんかいかにも真面目そうなと言うか…少年みたいな子だったので」
「はあ…」
と言うか。
FBI手帳を見せた瞬間なにこの喋りよう。愛蘭に電話で渋ってたんじゃねぇの?
「ありがとうございました」
残念ながら収穫はあんまりなし。こりゃぁ、本来なら次で決まりそうだが。
次の“滝川プリンスホテル”が難航。
鏡水と違い、「個人情報ですので」の一点張り。強行突破を試みて、「拉致監禁の共謀罪」を叩きつけてみるも、「令状でもご用意頂けますか?」とムカつく対応。
仕方なく他二件を先に潰すことにした。
だが他二件も、「さぁ、本日は会合があったのでいらしたかもしれませんがわかりませんね」だとか、「覚えてませんね」だとか甲乙つけがたい微妙な対応。
一度引き上げ、まずは滝川プリンスホテルの捜査令状について考える。
「管轄外ですね」
「ああ…」
どうしたもんかな。
「…速見が薬を持っていたら…」
「へ?」
暁子の言葉が思い出される、『粉くせぇヤツ』というワード。
「やはり速見の近辺は洗うべきかもしれないな」
これは少し時間が掛かるかもしれない。
「…ただ…」
なぜ暁子は殺され、速見のSPが殺されたのか。
「近道か、もの凄く無駄足か…」
「…令状、ですよね。
いっそ偽造してしまえばどうでしょう。速見さんは誤魔化せなくても、ホテルさえ突破して潤さんを助ければいいんですよね」
またこいつは…。
「また破天荒なことを言いますね君は。悪知恵ゴリラに教わりましたか」
「そうですね」
「悪い子ですね。ただそうしたいが…ウチのクソ上司が今立て込んでるから判子が…」
「なるほどですね」
「だがまぁ…」
偽造をするならぶっちゃけ最早日本政府頼みじゃないとして。
だったら高田判子じゃなくてもバレなそうな気はする。
「ただこれはもし外れだった場合ちょっと痛手を食うな…なんとか、別件でそれっぽいカマをかけてみるしかないな」
仕方がない。
まぁ、俺がやるこれもまた犯罪ではあるがまぁ、高田のせいにしてしまえ。一本メールくらいは打っておこうか。
To:高田
件名:
作成 高田さん、俺はただいまから高田さんの名を使い捜査令状を偽装しますがよろしいですか?
速攻電話が掛かってきた。
「もしもーし」
『バカなのお前。殺すよ』
「いや本気ですよわりと」
『は?なに?』
「潤がガチでヤバイんです。死んだ横溝の依頼を受けて今行方をくらましてんだから」
『はぁ!?』
沈黙。
『なんで先に言わないのそーゆーこと!』
「聞かなかったじゃん」
『なんなのナメてんの?大人をからかわないでくれる?』
「からかってないです。だから一大事なんだよ。
速見の素性とかその他を教えて下さい。そこにヒントがあるはずなんだ」
『…速見…?』
「警視庁長官のだよ」
嫌な、物々しい静かな殺気が電話越しで伝わってきた。たまにある高田ショック。この人は不機嫌だけで多分人を殺せる。
押し潰さんばかりの威圧的な沈黙のあと、高田の震える息遣いが聞こえた。
『目星は?』
「滝川プリンスホテルかグランドホテル鏡水。六本木の」
『わかった。連絡を待ちなさい。それまでに殺されたら地獄まで迎えに行くよ』
一方的に電話は切れた。
「ぷはっ、あっ、」
どうやら息を止めていたらしい。気付かなかった。
「…大丈夫ですか」
「…わりと死ぬかと思ってる」
そしてすぐさまメール。
潤のケータイのすべての番号やら機種やらが送られてきて、場所までご丁寧に送信されてきた。
最後に一言、『しくじったらぶっ殺す』と書いてあった。これは立派な脅迫罪の証拠だ、保護しておこう。
また、高田フォルダにひとつメールが増えてしまった。果たして何件目だろうか。いい加減処理しないとメールって要領でかいんだからな全く。
「最初から送ってこいよ~!」
「わかったんですか!?」
「わかった。しかし…」
的外れだった。
「…伊緒、タクシー拾うぞどっかで」
「はぁ、はい」
そして。
『お前ら特本部の幹部全員減給対象とします。しくじったら首が飛びます。覚悟しなさいクソガキ。
成功したら菓子折り持って壽美田、星川、荒川の三名はガン首揃えて来られたし』
なんじゃこの不機嫌メールは。言ってることちぐはぐだよ。仮にも部下じゃないか。
ん?てか、政宗?
「上等だよクソ上司ぃぃ!あぁぁもう!」
「え?え?」
伊緒にメールを見せ付けると「うっわー…」と息を飲んだ。
「かまってちゃんなんですね」
「うぜぇすげぇうぜぇ。それもこれもぜーんぶあの女顔クソ淫乱野郎のせいだ!会ったらぶっ殺す、助けたら本気でぶっ殺す。ぜってぇ助けてやるあのジゴロ野郎が!」
「単細胞炸裂してますね。取り敢えず行きましょうか」
なんだっつーのホント今日はよ。これでひとつ、今日は生き延びねばならなくなったらしい。
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