ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 12nd episode

3

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「お前やり方わかる?」
「全然わからないです」

 政宗は伊緒を座らせ、「若干インチキ含めるけどね」と、昔俺にしたような雑だけど分かりやすい説明を軽くしてから牌を振った。
 親は政宗になった。

あぁ、これはダメだな。

「流星」
「え、ん?」
「今回は結構ヤバイな」
「…なんの話?」

 互いに牌を一つづつ捨て、引いたり拾ったりしていく。
 なんとなく、なんの話かは聞かなくてもわかっていた。

「俺が少し見ない間にどうした」
「…まぁよくある喧嘩ですよ。あいつの知り合いからあいつが勝手に仕事を受けた、その場にいたから、ふざけんなって喧嘩になった」
立直リーチ
「んで、その場ではあいつ、引いたんだけど結果勝手に速見のとこに行っちまったと」
大三元ダイサンゲン字一色ツーイーソー

 再び牌は配られる。俺はタバコに火をつけた。まったくセコい役で和了あがりやがる。

さて今回は…。あぁ、狙えば大技。お喋りとかしてたら無理かも。

「政宗さん、引き運ありますねぇ」

 伊緒が見て言う。じゃぁやめとこうかな。
しかし、てことはまたセコい、例えば小四喜シャオスーシーあたりで来そうだ。運が良ければいけちゃったりして。

「まぁな。俺こーゆーのあるのよ。バックれ時期これで食ってたからね。
で?」
「あぁ…。どこまで話しました?」
「…速見のとこに潤が勝手に行った」
「あぁ、うーん。で、頑張って伊緒と潤探した」
「雑だなお前」
「あぁあと伊緒がね、もう慧さんと連絡取ってくれて、慧さんがカン

あ、いけたなこれ。

「え?」
「うん、慧さんが愛蘭ちゃんと連絡取ってくれて」
「いつの間にちゃん呼びになったの?」
「頑張ってホテルまで辿り着いた。和了り」
「え、えぇ!?」
嶺上開花リャンシャンカイホウ
「しかも門前モンゼンチン白摸ツモホーって…」

 俺の役を聞いた雀荘のやつらが集まってきた。「ひえー」だの「すげぇ」だの「人間じゃねー」「ぜってぇねえよ普通」だの沸いている。

 確かに伊緒にかまけている政宗は相当ちょろまかしやすいけどな、普通無理だよなこれ。

 「兄さん最早無理じゃないか?」なんて政宗に同情じみた声まで掛けているやつもいた。

「待った、流星、いくらなんでも合法でいこうぜ」

 容赦なく俺は、牌を混ぜろと政宗に目で合図すれば、渋々牌は配られた。

最早こいつは今の時点で死んでるも同然だ。

よく怒られないな俺。まぁ大分色々重なって、最早怒られてもピンとこないけど。

 まわりも、「うわぁ…」と顔をひきつらせている。

「で今回だが」

 最早勝負はついたと見たか、群衆は皆散り散りにまたそれぞれ離れていった。

「はい?」
「それで結局潤は喧嘩負けしたわけだな」
「いや…」

正直。
どうなんだろう。

四刻暗スーアンコー
「あっ、」

ずっけぇ。

「流星、俺これで食ってたんだよ」
「案外クズですねー」
「まぁな、しかしお前ほどじゃないな」

ムカつくな。

「政宗さん、なんかズルい」
「大人とはこんなもんだよ少年や」

 政宗は余裕をぶっこいてタバコに火をつける。俺もタバコを吸おうと咥えたら、伊緒がジッポで火をつけてくれた。
 それを見た政宗が少し、悲しそうな顔をした気がした。

「正直今回はどっちもどっちだな。止めた俺も、止められなかったあいつも悪い」
「…へぇ。なんか、お前がそんなことを言うかね」
「…あいつがなんで止まんなかったのか俺にはわかるような気がするが、わかっちゃいけない。だから止められなかったんだから。だけどそのおかげで得られた情報もあったから。立直」
「は?」

 再び、ちらちら覗き見ていた雀荘連中が集まり始めた。

最早これでこいつは死ぬだろう。good bye政宗。俺ってこういうとこある。

純正ジュンセイ九連宝燈チューレンポートン白摸ツモ
「ごふっ!」

 あまりの非現実さに皆様一瞬反応に遅れた後、誰か一人が「ふぁぁ」と、空気が抜けたような声を出す。

「きれーに揃ってんなおい…」

と唖然とした政宗の一言。
確かにきれーに揃えた。見事だ。

「お前ホント性格悪っ…」
「政宗ほどじゃないっすよ」
「ズルしたろ!」

何をいちゃもんつけてやがる。ただの神すぎる豪運なんだよ。こーゆー時だけな。自分でも鳥肌立つよ。

 悶える政宗。
 ふと、政宗の後ろに座るチャイニーズが目に入った。
 「プロでもムリだぞ、よく死なねぇよな天国への階段でよ!地獄だよ!」とか言っている政宗はどうでもいい。足元で怪しい動きを見かける。

 飽きてきたし最早ゲームは見えているのでちょっくら立ち上がり、俺はチャイニーズのテーブルへ歩いていく。
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