ノスタルジック・エゴイスト

二色燕𠀋

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The 17th episode

4

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 入り口付近が人でごった返していた。
 あれだけ静かだったにも関わらず、だ。

 しかし案外、やはり予想よりは少ない。

 機捜隊だろうか、警察組織が逃げる人々、また、別所で救護案内をしていた。そちらの方が空いている。3人は仕方なしにそちらの流れで門から出ようと試みた。

 入り口付近で気が付いた。
 あの男が、立っていて。

 長身の政宗を見つけるなり、爽やかな笑顔、しかしどこか目が笑っていない表情で手を降り、手招きした。

「副部長さーん!」

 まわりもその、優男の叫びに、道を空け、やれやれと、政宗達3人はそれからあっさりと門まで出ることが出来た。

 機捜隊隊長、山下祥真だ。

「どうも、最近よく会いますねぇ」

 のんびりとした口調で、胡散臭い笑顔を浮かべ、そう言われる。

「そうですね。
 お宅らずいぶん早いご登場で」
「遅いくらいですよ。だって、4回も爆破されてんだから」
「は?」

 4回?

「え?
 屋上と本館東、西、裏口。確認出来てるだけでこれだけなんですが他、ありましたか?」
「屋上ぉ?」
「え?はい」

 至極当たり前のことのように言う祥真に。

「マジかぁぁ」

 新たな可能性に気付いた政宗。

「屋上って、あの、建物内ってことで…」
「内というか…まあそうですね」
「次の爆発…。
 この門だったらどうしよとか考えてたが、それ、もぬけの殻になった本館、ありえるな。
 しかも本館なら毒薬仕込むの誰でも可能、これだけ大学内に人がいたら犯人特定不可能、前回同様、捜査員だけ毒殺、可能だな」

 祥真、紳士のような笑顔で固まり、こちら3人との間に間が産まれた。

「へ?」
「いや、前回の手口が」

 祥真、口元に無線を取り、

「本館にいる捜査員に注ぐ、毒薬の仕込まれた爆弾があるかもしれません。人質と共にまず、逃げ遅れないことを命じます」

切った。

「…流石、流星のとこにいただけあるなぁ」
「いい情報を聞きました。リサーチ不足でした。
 前回のってのは?」
「あぁ、大使館の」
「大使館?あぁ、麻薬取引?そういや半年くらい前にありましたね」
「あれが大筋。フェイクでホテル一件同時刻に爆破されてな。死亡者は捜査員のみ。人質を逃がした後だった。
 俺と流星と…現在のウチの現場監督は大使館でヤク取引を抑えた。しかし…」
「なるほどねぇ…。あんたはこっちがフェイクと踏んだ。しかし流星は?」
「流星はこっちが『大筋だ』とだけ寄越してきた。俺たちが向かう間にこっちが立て籠られたと一報入ったからな。そしてこちらに捜査員がこんだけ来た、まぁ、読み違いか…」

 ふと、山下が笑い俯いて。
 次に政宗を見たときには凍るような目付きで、口元だけで笑っていた。

 政宗は直感した。
 こいつ、そちら側の人間だ。

「…流石は『狂犬』だ。
 わかりました、あんたの言葉は信じて、撤収、あちらに全部、捜査員をあんたらが持ってってください」
「…それはどういうことだ」
「簡単です。
 あんたは知らないでしょう。あいつらを。
 壽美田流星はわりと頭はキレますが、いざというとき、敵地に一人で食いつくくらいの頭しかないと言いたいのです。つまりはあいつもそこそこ、死に場所は潜在意識で求めているんです」
「あんたさ、」
「さぁ、機捜隊のうーん、1と3がいれば片付く」

この男は…。

「…来ないのか」
「我々の任務はここの沈静化だ。ある意味、そちらへの人材派遣は違法だし博打、外していたら自殺行為だ。だが悪いが俺は流星を買っていてね。
 買っているが、信頼、これはするしかない。しかし信用しているか、と言われればなんとも言えない。あいつは闇だ」

それはなんて排他的で。

「…恐らく。
 あんたらに何があったか、知らねぇが、多分あいつは昔とは少し、違うと思う。
 あんたがどんなあいつを知っていて、俺もあんたは知らねぇがな」
「そうでしょうね。まぁ、あいつに言ってやってください。
 俺も昔とは違う。昔と違って渇望へは、違う形で近付いたと」

 煮えきらなかった。

 「…行きましょう、政宗さん」と伊緒に肩を叩かれ、握りしめた拳が痛むことに気付いた。

「私、多分あんた、嫌いです」
「あら、残念だな、お嬢さん」

 霞が先を歩いて行くのに。
 「霞ちゃん、」と、心配そうに自分を振り返りながらも伊緒が霞を追いかけるのに。

 少し、この男の前に立ち伏せてしまう心理が、あの、
昔いた同期で上司、流星の恩人で自分の悪友に似ているような、そんな気がした。

「荒川さん」

 最後に、山下祥真はふと、ジャケットから手帳を見せた。

 驚愕した。

「あんた…っ」
「…んなわけで。
 流星と、…潤を、よろしくお願いします」

 それだけ言って大学に戻る祥真の背中に、「おい、」と声を掛けるが、彼は、振り返ることすらしなかった。

 全てが組上がっていくような。
 崩れていくような、そんな気がして。

「くそっ、の野郎っ!」

 政宗はすぐさまケータイを取り出し耳をあてた。
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