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排他的経済本家
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「…その話信憑性が」
「いや、俺は納得だな。じゃなけりゃ俺がここまでやってこれるわけがない。あの頃俺は高校生だった。自分の命は守ったんだなばあちゃん。して、余ったらこっそりくれようなんていかにもらしいよな、太一」
すまん太一。しかし…。
「ああ納得だね。あのババアそんな人だよな」
案外あっけらかんと言ってくれたことにほっとし、そして少し、あぁ、太一、もう本当にあの頃からばあさんには憎しみやらなにやらすらも、ないのかと。
憎しみは越えてしまえば無になると、なにも感じなくなるもんだと再確認した。本気で太一には、ばあちゃん、どうでもいいんだな。
「…話が終わりそうじゃないですか?俺もうあんたらの名前を聞く気も、ここの敷居を跨ぐ気もないので、あとは勝手にやってくださいよ好きに金使ってくださいよ。俺はもういいんで、破棄破棄。なんの同意もしません。
別に誰がどう勝手に、うちのばあさんの財産使ったとか言いませんから。もっと欲しいなら、老人ホーム解約してその辺に捨てといてください。弁護士通して正式に絶縁でもしましょうか?ただ困るんでしょ?そーゆー機関通されると。だからここにも第三者っぽい人が見たところいない、書類もない、でしょ?」
まぁ本気で書類がなければ、俺はこいつらが死ぬ前に絶縁状とかを用意しなければならないが。
だがそうなれば家督の全ては太一に行く、はずだ。だがそれは生命保険も同じだろう。
「昴、お前…」
「太一、俺はさっきからイライラしている。普通に暴れそうだ」
小声で告げると、小さく頷いた。
「あんた、ちょっと冷たくないか?」
「あんたらはどうだ?俺はなぁ、介護やらなんやら、どこに行っても肩身は狭いし自分が何者かもわからない状態で生きてきて漸く一人立ちしたんだ。
あんたらいいよな。それとわかる親がいる。俺にはいない。だが別にそれを気にしたことはなかった。それは敏郎さんがいたからだ、夢子さんが受け入れてくれたからだ。
笑えるよな、あんたらだって俺を受け入れやしないのにあの二人は、んなババアの一言で親として育ててくれた。それがどんなことか多分あんたらにはわからんよ」
「じゃぁなんだ、あんた、連次郎さんの子供じゃないのか」
「だからまずレンジロウが誰だかわかんねぇって言ってんだよ。ホントにそんなやついたのかオイ」
「昴、ちょい待った、一回落ち着け」
太一に咄嗟にそう言われ我に返るが、やっぱり睨んでしまったまま。
「…取り敢えず一回お互い整理しましょうよ」
太一が説得するように身体を少し浮かせ、俺の腕を軽く掴んだ。
太一の隣に座っていた先程のオバハンが、「感じ悪いっ、」と言い捨て立ち上がり、俺たち二人を一睨みして子供二人を呼びつけると、そのまま部屋を出て行った。
それにつられて何人かも、溜め息を吐いたりなにか小言らしい独り言なのか皮肉なのかを吐いて去っていく。
ボス、ヨシが、「どこさ行く」と言うも、「タバコじゃ」だのなんだの言っている。
なんなんだこいつら全員。
残ったのはヨシ、隣のジジイにあと10人ほど。ふざけんな、誰が一番帰りたいと思ってんだまったく。
「…ヨシさん、酒」
ジジイが言った。この期に及んでなんだこのジジイ。
太一が苦笑した。それを見て見ぬフリをしてヨシは立ち上がる。
「じゃぁ俺と太一もください」
言ってやった。
まわりがキョトンとしたのがわかった。太一だけが隣で吹き出す。
だが俺は名も知らぬジジイに嘲笑の口角上げを見せてやった。
「若造、ナメとんかい」
「名前は?あんたどこの誰ですか?
私こういった者ですが?」
持参した鞄から名刺入れを出し、畳の上を滑らせるかの如く三つ指の下に名刺を、ちゃんと相手方に名前が見えるように配置して流す。
それから腕組んでドヤ顔してやった。
おしゃれクソ眼鏡をナメんじゃねぇ、このクソジジイが。ビジネスマナーとはこうするんじゃい、都会だろうが田舎だろうがな。
ヨシが一升瓶と陶器を3つ持ってきた。名刺の上にさりげなくお盆を乗せられ、ダイナマイト着火準備完了。
ヨシが酒をジジイに注いでる間、太一と二人、目を合わせた。
一升瓶は回ってくることがなくヨシの前に置かれたので、俺は自らふらっと立ち上がり取りに行き、また座る。
ちょっと異常に見えそうにちゃんとなんかふらっと全体的に身体の力をフラットにした。
二人で酒を酌み交わし、俺は1杯最初に煽り、二杯目を注ぐ。味とかわかんねぇけど不味い。多分芋とか。とにかく悪酔いにはいいでしょう。アドレナリン準備万端。
「…どげんして、」
「飲まんとお宅らみてぇなアホと話せんやろ。
で?お宅ら俺に何させようって?」
「は?」
「うちのババアの有り金を俺が相続する。最も、金なんてねぇ、借金だと。
しかし敏郎さん、ババアの第一子の息子太一によりゃぁ、そうさな、10年くらい前まではババアは金を持っていたはず、何千万と。筋ならまず第一子がそれを相続するはずが、遺言書には第二子の俺の名が相続人であった。
それを俺は何故だか借金に様変わりした頃に初めて知る、と。さぁ金はどこに消えた。普通の考えならこの遺産、誰かが使い込んだ、そしたら使いすぎて借金を背負う羽目になった、だから今更相続させようとしている、第二子だし、という風にしか捉えられねぇが合ってるか?」
「いや、俺は納得だな。じゃなけりゃ俺がここまでやってこれるわけがない。あの頃俺は高校生だった。自分の命は守ったんだなばあちゃん。して、余ったらこっそりくれようなんていかにもらしいよな、太一」
すまん太一。しかし…。
「ああ納得だね。あのババアそんな人だよな」
案外あっけらかんと言ってくれたことにほっとし、そして少し、あぁ、太一、もう本当にあの頃からばあさんには憎しみやらなにやらすらも、ないのかと。
憎しみは越えてしまえば無になると、なにも感じなくなるもんだと再確認した。本気で太一には、ばあちゃん、どうでもいいんだな。
「…話が終わりそうじゃないですか?俺もうあんたらの名前を聞く気も、ここの敷居を跨ぐ気もないので、あとは勝手にやってくださいよ好きに金使ってくださいよ。俺はもういいんで、破棄破棄。なんの同意もしません。
別に誰がどう勝手に、うちのばあさんの財産使ったとか言いませんから。もっと欲しいなら、老人ホーム解約してその辺に捨てといてください。弁護士通して正式に絶縁でもしましょうか?ただ困るんでしょ?そーゆー機関通されると。だからここにも第三者っぽい人が見たところいない、書類もない、でしょ?」
まぁ本気で書類がなければ、俺はこいつらが死ぬ前に絶縁状とかを用意しなければならないが。
だがそうなれば家督の全ては太一に行く、はずだ。だがそれは生命保険も同じだろう。
「昴、お前…」
「太一、俺はさっきからイライラしている。普通に暴れそうだ」
小声で告げると、小さく頷いた。
「あんた、ちょっと冷たくないか?」
「あんたらはどうだ?俺はなぁ、介護やらなんやら、どこに行っても肩身は狭いし自分が何者かもわからない状態で生きてきて漸く一人立ちしたんだ。
あんたらいいよな。それとわかる親がいる。俺にはいない。だが別にそれを気にしたことはなかった。それは敏郎さんがいたからだ、夢子さんが受け入れてくれたからだ。
笑えるよな、あんたらだって俺を受け入れやしないのにあの二人は、んなババアの一言で親として育ててくれた。それがどんなことか多分あんたらにはわからんよ」
「じゃぁなんだ、あんた、連次郎さんの子供じゃないのか」
「だからまずレンジロウが誰だかわかんねぇって言ってんだよ。ホントにそんなやついたのかオイ」
「昴、ちょい待った、一回落ち着け」
太一に咄嗟にそう言われ我に返るが、やっぱり睨んでしまったまま。
「…取り敢えず一回お互い整理しましょうよ」
太一が説得するように身体を少し浮かせ、俺の腕を軽く掴んだ。
太一の隣に座っていた先程のオバハンが、「感じ悪いっ、」と言い捨て立ち上がり、俺たち二人を一睨みして子供二人を呼びつけると、そのまま部屋を出て行った。
それにつられて何人かも、溜め息を吐いたりなにか小言らしい独り言なのか皮肉なのかを吐いて去っていく。
ボス、ヨシが、「どこさ行く」と言うも、「タバコじゃ」だのなんだの言っている。
なんなんだこいつら全員。
残ったのはヨシ、隣のジジイにあと10人ほど。ふざけんな、誰が一番帰りたいと思ってんだまったく。
「…ヨシさん、酒」
ジジイが言った。この期に及んでなんだこのジジイ。
太一が苦笑した。それを見て見ぬフリをしてヨシは立ち上がる。
「じゃぁ俺と太一もください」
言ってやった。
まわりがキョトンとしたのがわかった。太一だけが隣で吹き出す。
だが俺は名も知らぬジジイに嘲笑の口角上げを見せてやった。
「若造、ナメとんかい」
「名前は?あんたどこの誰ですか?
私こういった者ですが?」
持参した鞄から名刺入れを出し、畳の上を滑らせるかの如く三つ指の下に名刺を、ちゃんと相手方に名前が見えるように配置して流す。
それから腕組んでドヤ顔してやった。
おしゃれクソ眼鏡をナメんじゃねぇ、このクソジジイが。ビジネスマナーとはこうするんじゃい、都会だろうが田舎だろうがな。
ヨシが一升瓶と陶器を3つ持ってきた。名刺の上にさりげなくお盆を乗せられ、ダイナマイト着火準備完了。
ヨシが酒をジジイに注いでる間、太一と二人、目を合わせた。
一升瓶は回ってくることがなくヨシの前に置かれたので、俺は自らふらっと立ち上がり取りに行き、また座る。
ちょっと異常に見えそうにちゃんとなんかふらっと全体的に身体の力をフラットにした。
二人で酒を酌み交わし、俺は1杯最初に煽り、二杯目を注ぐ。味とかわかんねぇけど不味い。多分芋とか。とにかく悪酔いにはいいでしょう。アドレナリン準備万端。
「…どげんして、」
「飲まんとお宅らみてぇなアホと話せんやろ。
で?お宅ら俺に何させようって?」
「は?」
「うちのババアの有り金を俺が相続する。最も、金なんてねぇ、借金だと。
しかし敏郎さん、ババアの第一子の息子太一によりゃぁ、そうさな、10年くらい前まではババアは金を持っていたはず、何千万と。筋ならまず第一子がそれを相続するはずが、遺言書には第二子の俺の名が相続人であった。
それを俺は何故だか借金に様変わりした頃に初めて知る、と。さぁ金はどこに消えた。普通の考えならこの遺産、誰かが使い込んだ、そしたら使いすぎて借金を背負う羽目になった、だから今更相続させようとしている、第二子だし、という風にしか捉えられねぇが合ってるか?」
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