陶酔サナトリウム【途中完結】

二色燕𠀋

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Act.2

2

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「だからごめんてぇぇ!」
『サナくんはどうしてこの仕事をするの?』
『…えっ、あの…』

 恥じらうサナくんが写される。
 それAVで大体すっ飛ばすシーンなんだけど、俯く姿がまたホントになんかエロいというか、媚びている。

『え?もう一回、言ってよ』

 カメラだろう音声に、上目遣い。
 しかしやっぱりどこか挑戦的だ。その辺の媚びすぎてるAV女優より遥かに。

『…わかりません』
『…どうして?』
『自分でも、わかりません』
『そっかぁ…。
 今日はまぁ3人なんだけどサナくんの本当の姿見えるかな?ね?』

 ねっとりしたカメラの早口と興奮。
 やっぱこーゆーの撮る奴って、そうだよなぁ。俺みたい。わかるんだけどさぁ、興奮するもん撮ろうとか、そういうのはさ。形違えどって、
 は?3?

 不貞腐れたように俯いたサナくんを最後に、シーンが途端に変わる。

 出してる霊長類(さっきの奴ではない)を前にして、サナくんの背中には抱きつくようにまさぐる霊長類(また違うゴリラ)。

「ごふっ、」

 と吹き出せばサナトは隣で「あーあー、大丈夫ですか五十嵐いがらしさん」と立ち上がる。

 いや、

「ごめんなさいぃぃ…!もー見ないからやめてこれぇぇ!」
「え?」

 ポカンとしている。
 君のそのズレ具合はなんなんだ。画像がストップ。サナくんがそれを上目遣いで掴んだあたりで止まり、我慢できずにパソコンを閉じた。

「君、待って、平気なの!?」
「いや平気ではないですけど案外感心してます」
「何にぃ!?」
「いや、この非現実感ヤバイなぁって」
「待て、これ仮に君かもしれない80%だよね」
「多分100%ですよ」
「なんで俺の方がなんか恥ずかしがってんのかわかんないんだけど」
「はぁ、疚しいからですか?」
「いや…」

 疚しくなくはないわ。
 ただ。

「…複雑というか、わかる?君ゴリラに」
「そうですねぇ。複雑なんですか。
 いやぁ、僕案外何も感じないからどんなもんかなと」
「はぁ!?」
「そりゃぁゲイビデオって、普通の人にはそうじゃないかと」
「ん?いや俺も普通だけどさその点」
「わかりますよ。会ったときだって女の人と」
「うん、うん全部含めて謝るのは俺なんだけど」
「いやまぁもういいですよ。繁殖関係なしにあんた本能が虫ですよね」
「いやいやいや」
「いやー本当の姿って僕どんななんだろ。気になるなぁ…」

 と言いつつ「でも…」と、
いまもう一度自分でパソコンを開こうとしたその手を引っ込め、サナトは少し俯いた。

「どのみち、あんまり自分は大切にしてなかったんでしょうかね、僕」
「…ん?」

 絵に描きたい哀愁だなぁと感じて、あんま聞いてなかった。

「どんな姿なんだろう?でも、結果こうなってるなら多分、あまりにも嫌だったのかなぁとね。いや、これが原因かも最早わからないんですけど」
「…全くピンと来ないのか」
「えぇ。ただ、うーん、どうだろうな。わかりません」

 画面のように。
 サナトは凄く怯えたような、空虚なような、諦めたような表情だった。

 どうにも。

「生き長らえたことには代わり無いらしいな。このときも、いまも」
「はぁ…」

 気の抜けた返事だ。ホントにピンと来ていないのかもしれないが、まぁ、正直だ。

「…素直にごめん」
「いや、まぁ良いですけど」
「よし。じゃぁ寝てそこに」

 白いカットシャツと黒いズボン。シンプルで清楚だ。
 しかしサナトは怪訝な、眉を潜めて「えっ、」と俺を見た。

「うーん、体勢はまぁ考えるから」
「待ってください今謝った意味は?え?」
「あ、いやぁ…」

 そうじゃなくて。

「あー…。えっと疚しい意味じゃなく。うーん、寝転がってが正しいかな」
「はい?」
「君、仕事はコーヒー入れじゃないでしょ。モデル、絵の!」
「あー、」

 納得したのかしてないのか。サナトは取り敢えず座っていたベットに寝転がってくれた。スケッチを持ったまま立ち上がる俺に視線を向け躊躇いがちに、

「あの、脱ぐ感じですか」

とシャツのボタンに手を掛けたのには目を丸くしてしまった。

「いや、いいですまんまで」
「…そうですか」
「ダメだな固いな。もっとリラックス」
「できませんよね今」

 起き上がってしまった。
 いや、確かに俺が悪いんですが。
 気まずそうにぽりぽりと後頭部を掻く姿に「それもいいな」と感心してしまった。

「はぁ?」
「いやー、お前自覚ないかもだけど顔はいいんだよね」
「…あそう、」
「そんなヤツの自然な動作ってまぁ新鮮だよな」
「よくわかりませんけど、なんとなくわかったような」

 そう言ってはまた寝転がり、
 左手を然り気無く腹に投げ、右手は顔の横。

 あぁなんか少しアバンギャルドさ、プラスだな。

 見上げる顔が少し、笑っていた。

「無防備感でました?」

 やはりどうやら。
 怒っているらしい。

 答えられずに苦笑いしてスケッチに集中することにした。
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