陶酔サナトリウム【途中完結】

二色燕𠀋

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Act.6

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 まるでぼーっとしながらも、不眠のように目が充血したサナトはベッドから「五十嵐さん?」と覚束なく言った。
 落ち着いているようだ。

「落ち着いたらしいな」
「…すみません、取り乱して…」
「お前これから通えんのか」

 何故か主治医は「五十嵐さん、」と窘めるように言ってくる。口調が悪いということなのか。
 過剰だな。

「……………」
「まぁ、良いんだけど、別に。
 一応これから俺は画廊で打ち合わせしに行くんだけど」
「あ……はい」
「別に一人でやって来たからお前いなくても良いし無理しなくても」
「五十嵐さん!」
「なんですか」
「………神月さん、今日は病院で」
「あ、いや、行きます。
 すみません、何日分は、薬くれますか」

 察したらしい。平然と言おうというのは少し失敗気味なようだが、サナトは起き上がりはっきりと主治医の目を見て言った。

「えっと……」
「体調は上下しそうなのですが、えっと……午後とかには大体来るようにしますので何日毎に来れば良いのか」
「……わかりました。
 まず、3日で出しますから。神月さん本当に大丈夫?無理しなくても」
「出来ますから。
 楽しみですし、個展だから」

 まるで伺うように俺を見たサナトにふふ、よく言ったぞとニヤけそうになったが「あっそ」と素っ気なく返しておいた。

 楽しみですか、はは、やっぱ笑いそうだなと思うが女医の何とも言えない、どちらかと言えば非難寄りの顔にちゃんとシャキッとする。

「……では3日後の14時頃、ここなら診察最後ですしゆっくりお話出来ますから、お越し下さい」
「はーいわかりましたー。
 ほれ行くぞパニック障害。なんかあったら言え、今日はすぐ終わるけど」

 なっ!と医者はやっぱりむきになるがサナトはぽかんとした後に「ははは…」と、穏やかに笑った。

 まぁ、ぶっちゃけ俺も身構えすぎた、それだけのことだった。

 それから会計を終え、車に乗ったサナトは打って変わり機嫌も良さそうに「すみませんでした」と、まるで憑き物が落ちたというやつで。

「時間取らせちゃって」
「別に」
「しかもより長く」
「そうだな。まぁお陰で色んな世界を知りましたが」

 ん?と疑問顔で首を軽く傾げたのがわかる。

「取り敢えず大変なのは聞いたけど、総括してそんなもん、俺はサポート程度じゃね?どうよ?」
「えぇまぁ、自己管理ですからね実際は」
「だよなぁ。なんか色々言われたけど総無視したわ」

 あっちがその気だったんだし。
 何より守りすぎって気にしすぎってことだろ、全く。

「…みたいですね」
「あっちも仕事だから仕方ねぇけど、俺だけかな?あんまこっちに寄ってねぇなって思ったの」
「いや……まぁ僕が大してその……上手く伝えられないのも悪いんですよ」
「まぁそうだな。それ今日の収穫で」
「はい」
「あのー今日アポ取った出版のやついんだろ?駒込こまごめ。あいつも「あれ?俺の言い方悪かった?」て、お前のあのしどろもどろさに言ってたわ」
「……すみませんね」
「いや、事実「性格悪ぃよてめぇ」って俺も返しちゃったけどね」
「まぁ……」

 「久々だなー死んだかと思ってた五十嵐ー」とか、もう露骨に嫌味ったらしく言われたらそりゃ返すわ。3年ぶりだな駒込と、クソムカつくオールバック執事かなんかかよポマードを思い出した。

 駒込こまごめ拓哉たくや。美大の頃のクソ友だった、文芸部所属で「純文学とは~芸術とは~」とペラペラペラペラ喋るような高慢。今回こそは「映えないねぇ」とは言わせねぇ。
 なんだ映えないって。女子高生かよ、パンケーキじゃねぇっつーの。

「…駒込さんって、言ってましたけど五十嵐さんと同じ大学だとか…」
「同じ大学って言い方がムカつくよな、バリバリクラス一緒だよ」
「そうなんですね。確かにもっと遠い印象を持ちました。そっかぁ、クラスメイトか…」

 ぼんやりどこかを見て黄昏そうなサナトに「良いもんじゃねぇぞわかる通り」と返す。ミノルくんなんて知り合いを見てすぐだとよりそう思う。

「そうなんですね」
「ホンッットにそれだけでしかないやつ」
「でも、画集の際は頼むんでしょ?」
「んーまぁね。良いコネってやつ。編集とか企画とか組む奴だからまぁまぁなんつーか“一般的に受けが良さそう”な感じで掲載してくれる奴ではある」
「…ファン、でないとまぁまぁ出来ないような気がしますね、そーゆーのって」
「んー」

 まぁ確かに。わりと拾い上げてもくれている。確かにそれは理解が深くなければ出来ない仕事だが。

「まぁそういう仕事だから」

 特別ではなく誰にでもそう。そういう意味では非常に良い仕事をしているだろう、あいつは。
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