アマレット

二色燕𠀋

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空想が現実に歪むとき

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 山崎拓郎の妻、恵子は12時ジャストに、どこかのちゃんとした弁当3人分を手土産にして現れた。

 俺はその弁当の臭いを嗅ぎながら、ここ1ヶ月の調査内容を、作成した資料を元に重複も含め1から100まで説明し、全てを山崎恵子に渡した。

「充分だわ。1ヶ月もご苦労様」
「はい、まぁ…これで本件に関しての調査を終了致します」

 調査時間の時給と交通費と基本料金とプラス雑費やら資料代で計208,900円の領収書にサインと印鑑を貰った。
 ここから6割を貰ったとしてもうーん、まずまず。主にこの一件だけだとしたら、値段のわりに手間を掛けすぎたな。今月20は、でも行ったかなぁ…、今月は別件調査もあったし…。

 山崎恵子は更に「あぁこれ」と、俺にプラスで3万ほど渡してきた、まるでチップだ。

「…一応ね、一応。あの子の分も」

 …探偵の時給換算にしては高いが、援交とすれば妥当かもしれない。

「…はぁ、」
「まぁ、お疲れ様。宜しく言っといて」

 彼女はそう言ってあっさり事務所から出て行った。

 一応、俺はまるで戸惑ったような演技としてその三万円を手にしながら社長を見たが、社長はツンとしていたので遠慮なくポケットにしまった。

「…発狂されなくてよかったね西浦ちゃん」
「…あぁそうだね」
「ところで、藤川さんとこの札束も丁度20枚くらいだったんだけどどうせならもう、10万分くらい張り込まね?」
「えっ」

 上里は電卓を取り出し

「基本料金5,000円とぉ、時給2人15,000…もー18時までとして3時間くらい張っちゃわね?50,000でガソリンも4,000円くらい取っちゃおうぜ、54,000…あと何取るぅ?資料1枚1,000円は最早10枚は取るじゃん?音声2,500…あと33,500円何に使う~?」

 叩きながら超ノリノリで、流石に社長も「おい、」と声を掛けたが、

「駐車場から張れなんてそんなんポルノ写真だろ、何枚撮るかは任せるが1枚1,000円上乗せして吹っ掛けろよ、援交より安いよなぁ?」

 だなんて言ってくる。

「やっりぃ、あ、2,500円だと13.4枚になりやすしゃちょー、14枚で良いですかね?」
「シャッターは手が滑るからなぁ…」

 えーっと10万の6割は6万だから3万、安っ。美人局安っ。ハードな援交かよ。

「…社長、料金あげませんか全体的に。これじゃ援交斡旋会社じみてますよ」
「何言ってるんだ西浦。援交なんて俺は知らないぞ?」
「あっ…そうでしたね。はーい頑張りま~す…てか然り気無く俺の電話代行と混ぜんなよ」
「何言ってんの?こん中から全部やるんでしょ?だから1月掛かんだよ西浦ちゃん。今月ダイジョブ?お前家賃10万の1LDKの交通費5千円だよね?あ、余裕か、一人…じゃないじゃんダイジョブ?208,900から」
「うるせぇ計算すんなダイジョブだよ多分。他2件もやったしぃ」

 「125,340円」と呟いた上里を殴ってやろうと思ったが、うわぁ家賃払えるくらいかよと一瞬過る。…やっぱり1回殴らなきゃ気が済まないな、マジで1件のみの一月じゃなくてよかった。ざっと20いくのは多分確定だ。

 この残り10万、俺が欲しいや…。

「いや、誤魔化されそうだけど待て、電話代行はやっぱ混ぜんなよ」
「はぁ!?まぁいいやそろそろ行っちゃお?と言うか思ったんだけどさ、車内密着じゃん?待ち合わせじゃん?そっから先はいーのかな?流石にあと98,500円も残ってんのってさぁ、朝まで」
「今日取りに来るんだからやらないだろ、土日休日かとまで聞いてきたぞ、あいつ」
「いや余りすぎじゃね?って。あの人たちまぁまぁ調べてくんじゃないの?相場って。なんかあんじゃない?」

 なんとなくわかっている。

「…妹じゃないのか」

 俺が言うことじゃない、というのは間違った認識ではなく、ぴたっと一瞬空気が固まったのも間違った認識ではなく。

「……それ俺は聞くべきなのぉ…?ねぇ~」

 と駄々を捏ねるように言った上里は「ホントに一緒とかヤダ西浦ちゃん」と不満を述べてきた。

「まぁ何年かやってるわけだけど俺生きて帰りたいんだけど五体満足で、」
「…多分今時そーゆーの、なんかわりと大丈夫だと」
「わかんないじゃん、俺らあの人たちの末路なんて見たことないもん、殆んど!」
「…んまぁこれは俺の問題だからもっての他大丈夫だよ上里。気にすんな、俺のスタイルは変わらない。
 じゃ、終わり。で、3時間張り込むって言うそれは15時に現場につくのか?14時半に出て…なのか?それならその30分も計上しよう」

 さっぱり俺がそう切り捨てればまだ不服そうだが「わかった7,500円…」と上里が漸く電卓を置き行く準備を始めようとした。
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