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アダージョ
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お互いに一口飲む。
「つか朝からビール?」
「あ、うん。そっか。思い付いたのこれだったけど、てかさ、思ったより時間掛かったよ、ごめんごめん」
「まぁいいや。昔に戻ったみたいで」
交際当時、菜月はいわゆる夜の仕事というやつをやっていた。
出会いは、たまたま久しぶりに連絡が来た大学時代の友人からの誘いが“合コン”で、俺はその穴埋めで仕方なく行ったのだ。
最初はアパレルやってますなんて言ってたから、胡散臭い女だなと思っていたら、話しは面白いし上手いし、すぐに嘘だってわかった。嘘だってわかったけど、それを隠す気もあまり無さそうに見えた。ようするに“乗り気じゃない”というやつで。
盛り上がって二次会という流れの時に二次会には行ったが途中で抜けて二人で飲みに行った。それが交際のきっかけだった。
ちなみにアパレルはガチでやっていた。それだけじゃ食っていけなかったらしい。
「そっか、時間的に電車とかじゃないよね。そのわりに時間かかったね。
まさかと思うけど…」
「うん、歩き」
「マジで!?」
「うん」
「日野だよね?」
「うん」
「うわぁ…流石、根性あるね」
「おかげで綺麗な朝焼けが見れましたわ」
「いや笑えないなそこは」
時計をみれば6時くらい。確かに2時間以上は歩いていたんだなこれ。
「言ってくれれば迎えに行ったのに」
「え?うーん」
「家だとマズイなら近くの公園とかさぁ」
「うーん。俺もさ、勢い余って飛び出してきちゃったんだよね」
「なに高校生の家出少年みたいなことしてんの…だってさ、どうすんの?」
「大丈夫。頭冷えたら帰るよ」
「あっそう…」
なんとなく寂しそうだ。
「つかいきなり来といて今更なこと言うけどさ」
「うん」
「俺ここ来て大丈夫だった?」
「なにそれ、スゴい今更!まぁ大丈夫よ。真里は毎回急だし」
「はぁ…すまん」
「てか凄いね。そんな歳になっても急に家飛び出しちゃったりするんだね」
最早なんも言い返せねぇ。
頬杖をついて優しい目で見つめてくる菜月はホント、
「姉ちゃんみたいだよな」
「え?そう?あんま嬉しくないな」
「まぁそうだよな」
「てか私の方が一応若いんだけどな」
「女は男より3歳年食ってるって言うじゃん」
「それは間違いだよ。男は実年齢より3歳下だっていうんだよ精神年齢。女は実年齢より3歳上なんだよ…ん?」
「したら俺ら」
「うるさいな、今のはなし!」
たまにこうやって子供っぽかったりするけど。
「お前、やっぱりいいな」
「なにがよ」
安心するんだよ。お前を見てるとさ。けど…。
「お前さ、彼氏出来ただろ」
「…うん」
「結婚すんの?」
「そうだよ」
少し切なそうに言う奈月が、ちょっと胸に痛い。
「よかったじゃねぇか」
だからこそ、本気でそう思うんだよ。
「お前が見つけるってことはさ、良い人なんだろうな」
「あげないからね!」
「わかってるよ」
「真里…」
幸せそうなんだ、本当に。だけどなんだかそこに映る影がある気がして。多分その影の正体、なんとなくわかっちまった気がする。
「俺さぁ」
「うん」
「今日、喧嘩しちゃってさ」
「光也さんと?」
だからこそちょっと愚痴になってもいいやって。
「そう。でもごめんな、これ、お前に話していいのかさ…」
「まぁ聞こうじゃないの。そこまで言ったなら」
「はー、やっぱりお前のが俺より器あるね」
俺はここ最近のモヤモヤやらなにやらを菜月に話してみた。話してる途中で訳がわからなくなった。
けれども菜月は真剣に話を聞いてくれて。ついつい毎回ながらすらすらと思ったことを吐き出してしまった。
「なるほどねぇ」
「でも今話してて思った…言っていい?」
「…うん」
「お前って多分俺と別れたとき、こんな気持ちだったんだよな」
「うん、まぁそうだよ」
「はぁ…まぁ謝れねぇけどさ」
「うん。却って謝んないで欲しいかな」
「だと思うんだ。うん。それをね、こうして愚痴ってる俺は情けないよな」
「…情けなくはないけどさ」
「あの時凄く思ったのにな、考えたのにな、お前のことさ」
「まぁ…でもさ」
それでも菜月は屈託のない笑顔で笑ってくれて。
「だからこうして友人でいられてんでしょ?普通あり得ないからね」
「まぁ、そうか…」
多分今、光也さんも俺と同じことを考えてるのかもしれないな。
「どうすんの?真里は」
「え?」
「いままでしてたのは過去の話じゃん。これからのこと」
「うーん…。
菜月はきっとさ、俺たちやっぱり一緒にいない方が…良いって思うよね」
「うん。けど…どうかな。
今潰れてんのはお互いもうわかってんでしょ?少なくてもあんたはわかってんでしょ?それってあの時の私らとあんまり変わらないよね」
「…うん」
「終わりではないと思うんだよね、どーゆー形にしても。ただね、うちらみたいに、お互いのこと話し合ってる訳じゃないからね。誤解は生じてるだろうなって気はしなくないな」
「うん…?」
「考えて?相手は強敵なんだよ?あんたもそれに弱気になってるじゃん。だから、変なところで食い違ってるような気は、聞いてて思うな。
ウチらは解り合ってたからまだいい。けどあんたらはどうなの?多分、解り合えてないと、後は心の殺し合いだよ」
菜月はタバコに火をつけた。まだやめてなかったんだな。キャスター・マイルド。バニラの匂いが鼻につく。
「真里、私ね」
「うん」
「実は少し待ってたんだよ。真里のこと。
でも吹っ切れた。今漸く吹っ切れた。これでちゃんとお嫁に行ける。
不思議だね。
私さ、顔も知らない頃、光也さんを恨んだこともあったよ勿論。けど会ってみたら良い人でさ。その時点でわりとずたぼろになったわけ。何もかも敵わないって。まず異性だし、性格も、愛され方も人生も。
会った後に真里が話してんの聞いたらもうね、頭にも逆に残らないくらいの人になったの。あまりに違いすぎて。でも私にとって真里は忘れられないから、別に二人がくっつかなくたってなんだっていい、二人が本当に心から一番幸せになれたらいいなって、思った。ここまでの諦めが今漸くついた。それまでは私もあんたを捨てきれないでモヤモヤしたまま婚約して、ホントいまのいままで、今のあんたと同じ状態だった。
スッキリした。二人ともちゃんと責任持って幸せになってください。私もなります」
「は、はい…なんか…」
「ん?」
やっぱお前良い女だよ。
「お前、真面目に幸せになってくれ。俺はお前を、お前が望む形では…幸せに出来なかったけど…」
「うん、ありがとう。あんたもな!」
一度惚れておいて本当によかった。
それから長々と二人で駄弁って気が付いたら昼くらいになっていて。
昼飯だけ作ってやって帰ることにした。
「そだ、菜月」
「ん?」
「まぁ…無理なお願いかもしれないけど…もし大丈夫だったら…。
結婚式呼んでくれ」
「は?呼ぶに決まってんじゃん4人まとめて。まぁ旦那には上手く言っとくさ」
「あぁ、そっか…」
一応俺は元交際相手だからな。
「今日はありがとう。じゃぁな」
「んー。またねー」
そう言って俺は菜月の家を後にした。帰りは電車で帰った。
「つか朝からビール?」
「あ、うん。そっか。思い付いたのこれだったけど、てかさ、思ったより時間掛かったよ、ごめんごめん」
「まぁいいや。昔に戻ったみたいで」
交際当時、菜月はいわゆる夜の仕事というやつをやっていた。
出会いは、たまたま久しぶりに連絡が来た大学時代の友人からの誘いが“合コン”で、俺はその穴埋めで仕方なく行ったのだ。
最初はアパレルやってますなんて言ってたから、胡散臭い女だなと思っていたら、話しは面白いし上手いし、すぐに嘘だってわかった。嘘だってわかったけど、それを隠す気もあまり無さそうに見えた。ようするに“乗り気じゃない”というやつで。
盛り上がって二次会という流れの時に二次会には行ったが途中で抜けて二人で飲みに行った。それが交際のきっかけだった。
ちなみにアパレルはガチでやっていた。それだけじゃ食っていけなかったらしい。
「そっか、時間的に電車とかじゃないよね。そのわりに時間かかったね。
まさかと思うけど…」
「うん、歩き」
「マジで!?」
「うん」
「日野だよね?」
「うん」
「うわぁ…流石、根性あるね」
「おかげで綺麗な朝焼けが見れましたわ」
「いや笑えないなそこは」
時計をみれば6時くらい。確かに2時間以上は歩いていたんだなこれ。
「言ってくれれば迎えに行ったのに」
「え?うーん」
「家だとマズイなら近くの公園とかさぁ」
「うーん。俺もさ、勢い余って飛び出してきちゃったんだよね」
「なに高校生の家出少年みたいなことしてんの…だってさ、どうすんの?」
「大丈夫。頭冷えたら帰るよ」
「あっそう…」
なんとなく寂しそうだ。
「つかいきなり来といて今更なこと言うけどさ」
「うん」
「俺ここ来て大丈夫だった?」
「なにそれ、スゴい今更!まぁ大丈夫よ。真里は毎回急だし」
「はぁ…すまん」
「てか凄いね。そんな歳になっても急に家飛び出しちゃったりするんだね」
最早なんも言い返せねぇ。
頬杖をついて優しい目で見つめてくる菜月はホント、
「姉ちゃんみたいだよな」
「え?そう?あんま嬉しくないな」
「まぁそうだよな」
「てか私の方が一応若いんだけどな」
「女は男より3歳年食ってるって言うじゃん」
「それは間違いだよ。男は実年齢より3歳下だっていうんだよ精神年齢。女は実年齢より3歳上なんだよ…ん?」
「したら俺ら」
「うるさいな、今のはなし!」
たまにこうやって子供っぽかったりするけど。
「お前、やっぱりいいな」
「なにがよ」
安心するんだよ。お前を見てるとさ。けど…。
「お前さ、彼氏出来ただろ」
「…うん」
「結婚すんの?」
「そうだよ」
少し切なそうに言う奈月が、ちょっと胸に痛い。
「よかったじゃねぇか」
だからこそ、本気でそう思うんだよ。
「お前が見つけるってことはさ、良い人なんだろうな」
「あげないからね!」
「わかってるよ」
「真里…」
幸せそうなんだ、本当に。だけどなんだかそこに映る影がある気がして。多分その影の正体、なんとなくわかっちまった気がする。
「俺さぁ」
「うん」
「今日、喧嘩しちゃってさ」
「光也さんと?」
だからこそちょっと愚痴になってもいいやって。
「そう。でもごめんな、これ、お前に話していいのかさ…」
「まぁ聞こうじゃないの。そこまで言ったなら」
「はー、やっぱりお前のが俺より器あるね」
俺はここ最近のモヤモヤやらなにやらを菜月に話してみた。話してる途中で訳がわからなくなった。
けれども菜月は真剣に話を聞いてくれて。ついつい毎回ながらすらすらと思ったことを吐き出してしまった。
「なるほどねぇ」
「でも今話してて思った…言っていい?」
「…うん」
「お前って多分俺と別れたとき、こんな気持ちだったんだよな」
「うん、まぁそうだよ」
「はぁ…まぁ謝れねぇけどさ」
「うん。却って謝んないで欲しいかな」
「だと思うんだ。うん。それをね、こうして愚痴ってる俺は情けないよな」
「…情けなくはないけどさ」
「あの時凄く思ったのにな、考えたのにな、お前のことさ」
「まぁ…でもさ」
それでも菜月は屈託のない笑顔で笑ってくれて。
「だからこうして友人でいられてんでしょ?普通あり得ないからね」
「まぁ、そうか…」
多分今、光也さんも俺と同じことを考えてるのかもしれないな。
「どうすんの?真里は」
「え?」
「いままでしてたのは過去の話じゃん。これからのこと」
「うーん…。
菜月はきっとさ、俺たちやっぱり一緒にいない方が…良いって思うよね」
「うん。けど…どうかな。
今潰れてんのはお互いもうわかってんでしょ?少なくてもあんたはわかってんでしょ?それってあの時の私らとあんまり変わらないよね」
「…うん」
「終わりではないと思うんだよね、どーゆー形にしても。ただね、うちらみたいに、お互いのこと話し合ってる訳じゃないからね。誤解は生じてるだろうなって気はしなくないな」
「うん…?」
「考えて?相手は強敵なんだよ?あんたもそれに弱気になってるじゃん。だから、変なところで食い違ってるような気は、聞いてて思うな。
ウチらは解り合ってたからまだいい。けどあんたらはどうなの?多分、解り合えてないと、後は心の殺し合いだよ」
菜月はタバコに火をつけた。まだやめてなかったんだな。キャスター・マイルド。バニラの匂いが鼻につく。
「真里、私ね」
「うん」
「実は少し待ってたんだよ。真里のこと。
でも吹っ切れた。今漸く吹っ切れた。これでちゃんとお嫁に行ける。
不思議だね。
私さ、顔も知らない頃、光也さんを恨んだこともあったよ勿論。けど会ってみたら良い人でさ。その時点でわりとずたぼろになったわけ。何もかも敵わないって。まず異性だし、性格も、愛され方も人生も。
会った後に真里が話してんの聞いたらもうね、頭にも逆に残らないくらいの人になったの。あまりに違いすぎて。でも私にとって真里は忘れられないから、別に二人がくっつかなくたってなんだっていい、二人が本当に心から一番幸せになれたらいいなって、思った。ここまでの諦めが今漸くついた。それまでは私もあんたを捨てきれないでモヤモヤしたまま婚約して、ホントいまのいままで、今のあんたと同じ状態だった。
スッキリした。二人ともちゃんと責任持って幸せになってください。私もなります」
「は、はい…なんか…」
「ん?」
やっぱお前良い女だよ。
「お前、真面目に幸せになってくれ。俺はお前を、お前が望む形では…幸せに出来なかったけど…」
「うん、ありがとう。あんたもな!」
一度惚れておいて本当によかった。
それから長々と二人で駄弁って気が付いたら昼くらいになっていて。
昼飯だけ作ってやって帰ることにした。
「そだ、菜月」
「ん?」
「まぁ…無理なお願いかもしれないけど…もし大丈夫だったら…。
結婚式呼んでくれ」
「は?呼ぶに決まってんじゃん4人まとめて。まぁ旦那には上手く言っとくさ」
「あぁ、そっか…」
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