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第2話
明日夏は思い出される感覚に過呼吸に陥った。
吸っても吸っても、胸が苦しく何度も息を吐きだしては息を吸い込む。
「はあ、はあ、」
額から汗が落ちる頃、やっと息が整ってきた。
しかし、詰め寄られた恐怖心は消える事無く明日夏の中でとどまっている。
「淫乱か…。ホントきついよ。」
枕なんて一度もやった事ない。
そうやって過去をゆっくりと思い出していく。
明日夏は8才の時、芸能界デビューを果たした。
明日夏は幸か不幸か、幼いながらαの様な器用さを持っていた。周りの大人は皆、まだ明日夏の2次性別が分かっていない内から、明日夏をαと扱いたがっていた。明日夏はその期待が苦しくαではなく平凡なβになりたいと心の内で思っていた。
だから、明日夏は自分がΩと知った時どこか安心した。期待からの圧やプレッシャーは感じる事無いと思ったのだ。
案の定、αになり損ねた自分の子を両親は煙たがった。Ωだと認める事の出来ない両親は、何度も何度も明日夏をαと同じ扱いをした。それは明日夏が初めての発情期が訪れるまで続いた。
雑誌の撮影が終わり家に帰った時だった。
意識が朦朧とし、息が浅くなるような感覚。酷い熱。全て一気に起こり身体が驚き倒れてしまった。
発情期で倒れて目を覚ますと明日夏の周りには誰もいなかった。
16歳の夏の事だった。明日夏は文字通り、一人となり孤独になった。
両親が明日夏に残したのは、住むための家と高校を卒業するまでの養育費だけだった。今考えればそれは両親なりの優しさだったのかもしれない。
けれどその出来事は昨日まであった家庭が一瞬にして無くなった衝撃的なものだった。
そこから明日夏は必至に芸能界を上り詰めた。
今の事務所に拾われてオメガに理解のある社長に頼み、自分と同じくΩのマネージャーをつけてもらった。それが今のマネージャーだ。
彼女はもう番を持っており、βとなんら変わらない生活をしているそうだ。Ω特有のフェロモンも旦那さんにしか効かないそうだ。だからもし何かあった時には、2人で支え合おうと言ってある。1人だった明日夏にとって凄く頼もしい人だ。
そんな過去があるからこそ昨日、努力を否定されたのが悔しかった。枕。淫乱。そんなものに体は使わない。Ωは1度の性交で酷く消耗するらしい。経験のない明日夏はよく分からないが、世間がそう言うならそうなのだろう。
◆◇◆◇◆
「はぁ。…よし。行こう。」
明日夏は落ちた気分を何とか持ち直し家を出る。
今日は雑誌の取材と『陽だまりを求めて。』の取材がある。昨日、あんな事があった為、実際は気分は乗らないが仕方ない。コレは仕事だ俳優、本松明日夏を完璧に演じるんだ。
自分を追い詰めているようにも感じるその意気込みは明日夏にとって支えとなるか、首を絞める事となるか。それは分からない。しかし、ただ事実なのはこの世はオメガである明日夏には優しく無いということだ。
「明日夏くん…!おはよう体調はどう?」
いつもの様に迎えに来ているマネージャーの車に乗り込むとバックミラー越しに心配そうな顔をして顔を覗き込まれた。
特に体調が悪いと話した覚えはないが、色々と気を回してくれたのかもしれない。
「大丈夫です。心配かけてすみません。」
「いやいや…!大丈夫ならよかった。無理はしないようにね…。」
眉をハの字にして困った顔のマネージャーに明日夏は綺麗な笑みを浮かべて「はい。」と返す。
◆◇◆◇◆
「今回の『陽だまりを求めて。』という作品はボーダーレスな世の中を望む夫婦の物語なんですね。
本松さんのこの作品の印象は何ですか?」
記者がパソコンに向かい明日夏の目を見る。ありきたりな質問に明日夏は多少つまらなく思ったがそんな表情一つせず、質問の回答を考える。
「そうですね…。この作品の夫婦の周りには、理解を示してくれる人が多いなと思いました。
勿論、最後まで理解を示す事無い登場人物も居ましたが。それでも、理解をしてくれる人が居ることが羨ましく感じましたね。」
明日夏は作品について思ったことを正直に伝えた。
するとその意味を察した記者はその事について深く突っ込んできた。
「羨ましいと言うと、本松さんはこの作品唯一のオメガなんですよね。演じられる役と何処か重なる部分はありますか…?」
明日夏はあまり余計な事を言わないように気を付けながら質問に答える。
「そうですね。まだ撮影が始まっていないので何とも言えないですが、僕が演じる後藤 純也くんは幼少期に寂しい思いをしてそれが彼の中で核となり、主人公たちに優しくなれている所ですかね。
僕は特別寂しい思いなんてしていませんけど、幼少期の頃の経験が核になって今こうして、一人の役者としてこの作品に出合えたのでそこが純也くんと重なる部分なのかなって思いますね。」
明日夏の発する言葉を何一つ逃すまいと、記者はパソコンに打ち込んでいく。
打ち終わるとまた質問をしていく。
どのくらい質問に答えただろう。
一時間程経ったところで「以上です。ありがとうございました。」と言われ取材が終わった。
取材が終わった明日夏は作品の事で思っていた事が僅かながら吐き出せて、憑き物が取れた顔をしていた。
吸っても吸っても、胸が苦しく何度も息を吐きだしては息を吸い込む。
「はあ、はあ、」
額から汗が落ちる頃、やっと息が整ってきた。
しかし、詰め寄られた恐怖心は消える事無く明日夏の中でとどまっている。
「淫乱か…。ホントきついよ。」
枕なんて一度もやった事ない。
そうやって過去をゆっくりと思い出していく。
明日夏は8才の時、芸能界デビューを果たした。
明日夏は幸か不幸か、幼いながらαの様な器用さを持っていた。周りの大人は皆、まだ明日夏の2次性別が分かっていない内から、明日夏をαと扱いたがっていた。明日夏はその期待が苦しくαではなく平凡なβになりたいと心の内で思っていた。
だから、明日夏は自分がΩと知った時どこか安心した。期待からの圧やプレッシャーは感じる事無いと思ったのだ。
案の定、αになり損ねた自分の子を両親は煙たがった。Ωだと認める事の出来ない両親は、何度も何度も明日夏をαと同じ扱いをした。それは明日夏が初めての発情期が訪れるまで続いた。
雑誌の撮影が終わり家に帰った時だった。
意識が朦朧とし、息が浅くなるような感覚。酷い熱。全て一気に起こり身体が驚き倒れてしまった。
発情期で倒れて目を覚ますと明日夏の周りには誰もいなかった。
16歳の夏の事だった。明日夏は文字通り、一人となり孤独になった。
両親が明日夏に残したのは、住むための家と高校を卒業するまでの養育費だけだった。今考えればそれは両親なりの優しさだったのかもしれない。
けれどその出来事は昨日まであった家庭が一瞬にして無くなった衝撃的なものだった。
そこから明日夏は必至に芸能界を上り詰めた。
今の事務所に拾われてオメガに理解のある社長に頼み、自分と同じくΩのマネージャーをつけてもらった。それが今のマネージャーだ。
彼女はもう番を持っており、βとなんら変わらない生活をしているそうだ。Ω特有のフェロモンも旦那さんにしか効かないそうだ。だからもし何かあった時には、2人で支え合おうと言ってある。1人だった明日夏にとって凄く頼もしい人だ。
そんな過去があるからこそ昨日、努力を否定されたのが悔しかった。枕。淫乱。そんなものに体は使わない。Ωは1度の性交で酷く消耗するらしい。経験のない明日夏はよく分からないが、世間がそう言うならそうなのだろう。
◆◇◆◇◆
「はぁ。…よし。行こう。」
明日夏は落ちた気分を何とか持ち直し家を出る。
今日は雑誌の取材と『陽だまりを求めて。』の取材がある。昨日、あんな事があった為、実際は気分は乗らないが仕方ない。コレは仕事だ俳優、本松明日夏を完璧に演じるんだ。
自分を追い詰めているようにも感じるその意気込みは明日夏にとって支えとなるか、首を絞める事となるか。それは分からない。しかし、ただ事実なのはこの世はオメガである明日夏には優しく無いということだ。
「明日夏くん…!おはよう体調はどう?」
いつもの様に迎えに来ているマネージャーの車に乗り込むとバックミラー越しに心配そうな顔をして顔を覗き込まれた。
特に体調が悪いと話した覚えはないが、色々と気を回してくれたのかもしれない。
「大丈夫です。心配かけてすみません。」
「いやいや…!大丈夫ならよかった。無理はしないようにね…。」
眉をハの字にして困った顔のマネージャーに明日夏は綺麗な笑みを浮かべて「はい。」と返す。
◆◇◆◇◆
「今回の『陽だまりを求めて。』という作品はボーダーレスな世の中を望む夫婦の物語なんですね。
本松さんのこの作品の印象は何ですか?」
記者がパソコンに向かい明日夏の目を見る。ありきたりな質問に明日夏は多少つまらなく思ったがそんな表情一つせず、質問の回答を考える。
「そうですね…。この作品の夫婦の周りには、理解を示してくれる人が多いなと思いました。
勿論、最後まで理解を示す事無い登場人物も居ましたが。それでも、理解をしてくれる人が居ることが羨ましく感じましたね。」
明日夏は作品について思ったことを正直に伝えた。
するとその意味を察した記者はその事について深く突っ込んできた。
「羨ましいと言うと、本松さんはこの作品唯一のオメガなんですよね。演じられる役と何処か重なる部分はありますか…?」
明日夏はあまり余計な事を言わないように気を付けながら質問に答える。
「そうですね。まだ撮影が始まっていないので何とも言えないですが、僕が演じる後藤 純也くんは幼少期に寂しい思いをしてそれが彼の中で核となり、主人公たちに優しくなれている所ですかね。
僕は特別寂しい思いなんてしていませんけど、幼少期の頃の経験が核になって今こうして、一人の役者としてこの作品に出合えたのでそこが純也くんと重なる部分なのかなって思いますね。」
明日夏の発する言葉を何一つ逃すまいと、記者はパソコンに打ち込んでいく。
打ち終わるとまた質問をしていく。
どのくらい質問に答えただろう。
一時間程経ったところで「以上です。ありがとうございました。」と言われ取材が終わった。
取材が終わった明日夏は作品の事で思っていた事が僅かながら吐き出せて、憑き物が取れた顔をしていた。
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