16 / 30
第16話
瀬戸に後ろから抱き締められる形で話を聞く体制に入った明日夏。
しかし、案外その方が心も身体も落ち着いているこの状況に少し苦笑いを零した。
「俺にはアンタもよく知ってる姉がいる。」
「俺…?」
「あぁ。瀬戸内 遥っていう女優だ…。」
「なっ…」
瀬戸内遥とは有名な女優の一人で中々バラエティーに出演しない大物女優だ。
そんな女優が瀬戸の姉だというのだ。明日夏は思わず疑いの目を瀬戸に向けた。すると、瀬戸も苦笑いをこぼし話を続けた。
「そんな。演技が得意な姉を持ちながら俺は、演技が大の苦手だった。陽だまりの撮影が始まってすぐに姉貴に、演技のコツとか聞きに行ったよ。」
「なんて贅沢な…。」
明日夏は瀬戸の腹にもたれ掛かり話の続きを子供の様に催促する。
「でも、姉貴は『周りを見て動きさえすれば自然と次の動きが出来る』って言うだけで
具体的なアドバイスは何もくれねーんだよ。」
そう言いながら瀬戸は明日夏の頭をふわりと撫でる。
「だから、アンタに聞きに言ったら『ドラマは君一人で作られてない』とか姉貴見たいな事言われて。本当にどいつもこいつもなんなんだよって頭きた。」
そう言ってその時の苛立ちを思い出したのか、瀬戸は頭を掻きむしった。
けれど、ゆっくりと息を吸い込むと明日夏を思い切り抱きしめた。
「でも、アンタの言葉も。姉貴の言葉も、この陽だまりの現場で何となくだけど分かった気がする。」
「は?」
「周りの田倉とかアンタの事考えながら芝居すると、楽しくて。芝居がうまくいくのが自分でもわかる。」
ふっと笑う瀬戸は普段の突っ張った雰囲気からは感じられない、ただ芝居に打ち込む若手だった。
明日夏はそんな瀬戸の雰囲気に囚われるように、目を閉じる。そして瀬戸は明日夏の心の中にある核心にゆっくりと触れてくる。
「だから。アンタが今。助けたいって思う方に手を貸してやれよ。」
「……助けたい。」
明日夏は心の中で何となくそうすべきだと思っていた事があった。しかし、自分のわがままと意地でそれが出来なかった。どうしても、苦しくてその決断が出来なかった。
でも、瀬戸の少し前向きな話のお陰で気持ちの切り替えが出来た気がした。
◆◇◆◇◆
明日夏と涼実夏はもう一度話し合うことにした。
再び明日夏の家で。
「…。」
「いいよ。もう。」
「は?」
「臓器提供…する。でも。俺は母親を助ける為じゃない。可愛い弟を助ける為だ。そこだけは譲れない。決して、あの人の為じゃない。」
明日夏は真っ直ぐな瞳をして涼実夏を見た。涼実夏は提供理由を理解できなかった様だが、これ以上明日夏の意思は変えられないと踏んだのか涼実夏は明日夏の言葉を飲み込みその場はお開きとなった。
───母親を助ける為じゃない。
その言葉からは明日夏の毒親からの強い独り立ちの意思が感じられた。
しかし、案外その方が心も身体も落ち着いているこの状況に少し苦笑いを零した。
「俺にはアンタもよく知ってる姉がいる。」
「俺…?」
「あぁ。瀬戸内 遥っていう女優だ…。」
「なっ…」
瀬戸内遥とは有名な女優の一人で中々バラエティーに出演しない大物女優だ。
そんな女優が瀬戸の姉だというのだ。明日夏は思わず疑いの目を瀬戸に向けた。すると、瀬戸も苦笑いをこぼし話を続けた。
「そんな。演技が得意な姉を持ちながら俺は、演技が大の苦手だった。陽だまりの撮影が始まってすぐに姉貴に、演技のコツとか聞きに行ったよ。」
「なんて贅沢な…。」
明日夏は瀬戸の腹にもたれ掛かり話の続きを子供の様に催促する。
「でも、姉貴は『周りを見て動きさえすれば自然と次の動きが出来る』って言うだけで
具体的なアドバイスは何もくれねーんだよ。」
そう言いながら瀬戸は明日夏の頭をふわりと撫でる。
「だから、アンタに聞きに言ったら『ドラマは君一人で作られてない』とか姉貴見たいな事言われて。本当にどいつもこいつもなんなんだよって頭きた。」
そう言ってその時の苛立ちを思い出したのか、瀬戸は頭を掻きむしった。
けれど、ゆっくりと息を吸い込むと明日夏を思い切り抱きしめた。
「でも、アンタの言葉も。姉貴の言葉も、この陽だまりの現場で何となくだけど分かった気がする。」
「は?」
「周りの田倉とかアンタの事考えながら芝居すると、楽しくて。芝居がうまくいくのが自分でもわかる。」
ふっと笑う瀬戸は普段の突っ張った雰囲気からは感じられない、ただ芝居に打ち込む若手だった。
明日夏はそんな瀬戸の雰囲気に囚われるように、目を閉じる。そして瀬戸は明日夏の心の中にある核心にゆっくりと触れてくる。
「だから。アンタが今。助けたいって思う方に手を貸してやれよ。」
「……助けたい。」
明日夏は心の中で何となくそうすべきだと思っていた事があった。しかし、自分のわがままと意地でそれが出来なかった。どうしても、苦しくてその決断が出来なかった。
でも、瀬戸の少し前向きな話のお陰で気持ちの切り替えが出来た気がした。
◆◇◆◇◆
明日夏と涼実夏はもう一度話し合うことにした。
再び明日夏の家で。
「…。」
「いいよ。もう。」
「は?」
「臓器提供…する。でも。俺は母親を助ける為じゃない。可愛い弟を助ける為だ。そこだけは譲れない。決して、あの人の為じゃない。」
明日夏は真っ直ぐな瞳をして涼実夏を見た。涼実夏は提供理由を理解できなかった様だが、これ以上明日夏の意思は変えられないと踏んだのか涼実夏は明日夏の言葉を飲み込みその場はお開きとなった。
───母親を助ける為じゃない。
その言葉からは明日夏の毒親からの強い独り立ちの意思が感じられた。
あなたにおすすめの小説
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
消えることのない残像
万里
BL
最愛の兄・大貴の結婚式。高校生の志貴は、兄への想いが「家族愛」ではなく「恋」であったと、失恋と同時に自覚する。血の繋がりという境界線、そして「弟」という役割に縛られ、志貴は想いを封印して祝福の仮面を被る。
しかし数年後、大貴の息子が成長し、かつての兄と瓜二つの姿となったとき、止まっていた志貴の時間は歪な形で動き出す。
志貴(しき):兄・大貴に長年片思いしているが、告げることなく距離を置いていた。
大貴(だいき):志貴の兄。10歳年上。既婚者で律樹の父。無自覚に人を惹きつける性格。志貴の想いには気づいていない。
律樹(りつき):大貴の息子。明るく素直だが、志貴に対して複雑な感情を抱く。
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
籠中の鳥と陽の差す国〜訳アリ王子の受難〜
むらくも
BL
氷の国アルブレアの第三王子グラキエは、太陽の国ネヴァルストの第五王子ラズリウの婚約者。
長い冬が明け、いよいよ二人はラズリウの祖国へ婚約の報告に向かう事になった。
初めて国外へ出るグラキエのテンションは最高潮。
しかし見知らぬ男に目をつけられ、不覚にも誘拐されてしまう。
そこに婚約者を探し回っていたラズリウが飛び込んできて──
……王への謁見どころじゃないんだが?
君は、必ず守るから。
無防備なおのぼりα王子×婚約者が心配なΩ王子の
ゆるあまオメガバース&ファンタジーBL
※「籠中の鳥と陽色の君〜訳アリ王子の婚約お試し期間〜」の続きのお話です。
箱入りオメガの受難
おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。
元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。
ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰?
不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。
現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。
この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。
めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。
その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。
⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる
⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない
※全四話、予約投稿済み。
本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。
※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。