オメガは陽だまりを求めて。

佐々木 おかもと

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第18話

───ピ。ピ。ピ。

明日夏は微睡みの中、規則だだしい機会の音が耳元でなっている事に気付き頭を覚醒させはじめる。

じんわりと目を開ければ、真っ白い天井がまずは目に入ってきた。何も考えていない頭の中には、瀬戸に会いたいとただ本能がそう浮かんだ。

カーテンから覗いた窓からは太陽の光が注いでいる。しかし、明日夏の求める男の姿は病室にはいなかった。少しガッカリしたが、明日夏が目覚めた事に気付きやって来た看護師さんや医師によって、そんな感情も追いやられてしまった。

(どうやらこの病室はナースステーションと合体している様な場所らしい…よく分からない。)

「気分はどうですか?」
「…悲しいです。でも、最高だ。」
「そうですか。お母様の方も上手くいきましたよ。」

そう行って医師は斜め向かいの患者を見た。
明日夏からは見えないが恐らくそこには明日夏の母親がまだ寝ているのだろう。

「そうですか。」

適当に相槌をうち明日夏は気になっていた事をまだ回らない頭で聞いてみた。

「…あの。いつから見舞いっていいんですか?」
「お見舞いですか?」
「あ、…はい。職業柄聞かれることが多くて…はは。」

明日夏は思い切って聞いてみたが、変な事を聞いてしまったと自信を無くし少し顔を赤らめてしまった。急いで誤魔化したが余計に変な事になってしまった。

「うーん。本松さんの回復状況を見てからではないと、なんとも言えませんが。あと1週間もすればお見舞いで会いたい方とは会っても体力的に大丈夫でしょう。」

そう、笑ってくれるお医者さんに明日夏は「ありがとうございます。」とお礼をいい。1人にして貰った。
明日夏は少し寂しさを感じながら、1週間を心待ちにした。


◆◇◆◇◆


明日夏が目覚めた次の日。病室の入れ替えが行われた。明日夏はタレントの為、個室に移され特別待遇となった。明日夏は正直、そっちの方が気が楽だった。
そして、その入れ替えを狙っての事か、家族の面会は許されている為。涼実夏が明日夏を尋ねてきた。

「調子はどう?」
「まぁまぁかな。」
「そっか。」

互いにぎこちない。それもそうだ術前に喧嘩の流れで決まった事を今でも互いに申し訳なく思っているのだ。

「ごめんな。こんな兄で…オメガでちょっと親の機嫌とるのが癖になってて。気付けば勝手に捨てられて、今度は勝手に親を捨てて。本当に親不孝な子供だよな。俺。」

そう明日夏は涼実夏に言った。
まるで涼実夏を母親と重ねるように。涼実夏も下を向いて表情の見えない明日夏の言葉を静かに聞いていた。

「…でも。俺さ母親の1番であり続けるって結構しんどかったんだ。だからオメガだって分かった時少しだけ安心した自分もいて。でもオメガな自分を恨む自分もいるんだよ。だから…本当に俺って面倒臭くて嫌い。ごめん。」

明日夏はそう言いながらポタポタと涙を零した。母親や父親。家族に言えなかった本音。自分の心に閉まっておいた本音を肉親に言っているこの状況に、明日夏は安堵して少しだけ心が楽になっていた。

「泣かないでよ。あんたのされた事は全部、親父と母さんにそれとなく聞いてみた。言葉は濁して言ってたけど…仕打ちは何にも変わらなかった。だから、あんたのその、『オメガだから』ってのやめとけよ。」
「…え?」
「『陽だまりを求めて』全部見た。ドラマ見て思ったのが、オメガだって公表してしっかり仕事してるあんたに救われてる人沢山居るんじゃねーのって思ったから。だからオメガだからって言い方を良くない!」
「はい…?」

何故か弟に怒られてしまい、呆気にとられる明日夏に涼実夏は笑って明日夏の涙を拭ってやった。

「ほら。俳優、本松明日夏はキラキラ笑ってる方が可愛いし、カッコいい…。それに自慢の兄貴だ。」
「っ…!」
「あ、照れてる!」

突然の涼実夏の兄貴呼びに明日夏は思いっきり照れてしまった。幼少の頃、弟と過ごした記憶がない明日夏は今涼実夏が可愛くて堪らないのだろう。だってこんなに幸せそうに笑うのだから。

「照れてないっ!!」
「またまた~!」
「涼実夏はいつも一言余計なんだよっ。」
「あ、名前呼び。兄弟っぽくていいね~。俺は兄貴になら下の名前で呼ばれてもいーよ。」


明日夏は家族を遠い物にしたのではなく遠かった物を近くに取り寄せただけかもしれない。

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