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第25話
舞台挨拶が続く中、明日夏はやっと気が落ち着いてきていた。
今思えば何がそんなに怖いのだろう。もう縁は切った仲なのだ。ただ作品を楽しみに来ただけなのだろう。
「はぁ…よしっ。」
明日夏はマイクに入らないように小さく気合いを入れ直した。すると、近くにいた瀬戸には聞こえていたようで、今インタビューを受けている田倉の話を聞き流しながら「大丈夫か?」と聞いてきた。
明日夏は大丈夫だと伝えてどうにか舞台挨拶をやり切った。
◆◇◆◇◆
バックに戻ってきて直ぐに明日夏は瀬戸に人気のない場所へ連れ出された。
「大丈夫か?何があったんだ…?」
「あー。うん。母親が来ててね…。ちょっと予想外で。」
そう言うと瀬戸は眉をひそめた。明日夏の事を本当に心配しているのだろう。
「母親?」
「…涼実夏と父親もいた。」
「…そっか。無理はするなよ?」
「うん。ありがとう。」
頭を撫でる瀬戸にそう微笑むと、瀬戸は明日夏の顎を軽く掴んで引き寄せた。そして触れるだけのキスをした。
そして満足そうに微笑む。
「ふっ…戻る時、その匂いどうにかしねぇと皆にバレるぞ?」
「なっ!?」
こんな風にしたのはお前だろうと明日夏は心の中で悪態をつきながら、顔に集まった血で火照った顔を覚ます。
「アンタのフェロモンは特別に甘く感じる。なんでだろうな…。番になる前からそう思ってたけど。」
「そんなの知らないよ。自分のフェロモンなんてわかんないんだから…。」
「そっか。」
そんなことを話していたら、明日夏たちの事を探しに来たスタッフに呼ばれてしまった。その時、「お邪魔してすみません。」と的外れな事を言われたが、黙っておくことにした。
今は劇場版陽だまりを求めてが上映されている頃だろう。
上映後、涼実夏から連絡はあるのだろうか…。
母親の事について何か言われるのだだろうか。そんな事を明日夏は考えていた。
もう怖いわけではない。でも、すごく気になるのだ。今の両親はどう思っているのだろうと。
こんなことを考えている時点で大分毒されている。その自覚は明日夏にもあった。
「はぁ。」
明日夏は、今日何度目か分からないため息をついた。
◆◇◆◇◆
午前と午後の舞台挨拶が終わり、明日夏たちは帰ろうと支度していた。すると、タイミングを見計らったように明日夏の携帯が鳴った。
相手は涼実夏だった。
「はい。」
「あー。兄貴?」
「何?」
珍しく歯切れの悪い涼実夏に明日夏は少し面白くなっていた。
「怒ってる?黙って母さんたちを連れて来たこと。」
いつもより元気のない涼実夏は心なしか声が震えていた。きっと明日夏に連絡するまでに色々な事を考えたのだろう。いつもよく察してくれる涼実夏の代わりに、今日は明日夏が察してやった。
「怒ってない。ありがと。どう?作品は面白かった?」
明日夏は沈んでいる涼実夏の代わりに一番気になる事を聞いてみた。
「あ、うん。兄貴ってホントに演技がうまいね。いつもは近くにいる存在なのに画面の向こうにいる兄貴は全くの別人だった。」
「そりゃそうだな。」
二人で笑っているとすっと涼実夏の声が聞こえなくなってしまった。
「どうしたの?」
「今日、母さんが来たいって言ったんだ…。正直迷ったけど前向きになれるならって連れて来た。」
涼実夏は少しずつ今日なぜ来たのか話し始めた。
「でも…。ダメだった。母さんが映画を見終わって言った言葉が何かわかる?」
「……。」
明日夏はその先を黙って促した。その時の感情は明日夏にも分からなかった。
「最悪の気分だって言ったんだよ…。俺、悔しくて…。」
そう言いながら電話口で涼実夏は泣いていた。きっと涼実夏は明日夏が何度、家族を否定しようとも待っているんだろう。
「そっか。残念だな…。」
明日夏は泣いている涼実夏にそう言う事しかできなかった。
何処までも分かり合えない俺たちにもきっといつか歩みあえる時が来るのだろうか…。
今思えば何がそんなに怖いのだろう。もう縁は切った仲なのだ。ただ作品を楽しみに来ただけなのだろう。
「はぁ…よしっ。」
明日夏はマイクに入らないように小さく気合いを入れ直した。すると、近くにいた瀬戸には聞こえていたようで、今インタビューを受けている田倉の話を聞き流しながら「大丈夫か?」と聞いてきた。
明日夏は大丈夫だと伝えてどうにか舞台挨拶をやり切った。
◆◇◆◇◆
バックに戻ってきて直ぐに明日夏は瀬戸に人気のない場所へ連れ出された。
「大丈夫か?何があったんだ…?」
「あー。うん。母親が来ててね…。ちょっと予想外で。」
そう言うと瀬戸は眉をひそめた。明日夏の事を本当に心配しているのだろう。
「母親?」
「…涼実夏と父親もいた。」
「…そっか。無理はするなよ?」
「うん。ありがとう。」
頭を撫でる瀬戸にそう微笑むと、瀬戸は明日夏の顎を軽く掴んで引き寄せた。そして触れるだけのキスをした。
そして満足そうに微笑む。
「ふっ…戻る時、その匂いどうにかしねぇと皆にバレるぞ?」
「なっ!?」
こんな風にしたのはお前だろうと明日夏は心の中で悪態をつきながら、顔に集まった血で火照った顔を覚ます。
「アンタのフェロモンは特別に甘く感じる。なんでだろうな…。番になる前からそう思ってたけど。」
「そんなの知らないよ。自分のフェロモンなんてわかんないんだから…。」
「そっか。」
そんなことを話していたら、明日夏たちの事を探しに来たスタッフに呼ばれてしまった。その時、「お邪魔してすみません。」と的外れな事を言われたが、黙っておくことにした。
今は劇場版陽だまりを求めてが上映されている頃だろう。
上映後、涼実夏から連絡はあるのだろうか…。
母親の事について何か言われるのだだろうか。そんな事を明日夏は考えていた。
もう怖いわけではない。でも、すごく気になるのだ。今の両親はどう思っているのだろうと。
こんなことを考えている時点で大分毒されている。その自覚は明日夏にもあった。
「はぁ。」
明日夏は、今日何度目か分からないため息をついた。
◆◇◆◇◆
午前と午後の舞台挨拶が終わり、明日夏たちは帰ろうと支度していた。すると、タイミングを見計らったように明日夏の携帯が鳴った。
相手は涼実夏だった。
「はい。」
「あー。兄貴?」
「何?」
珍しく歯切れの悪い涼実夏に明日夏は少し面白くなっていた。
「怒ってる?黙って母さんたちを連れて来たこと。」
いつもより元気のない涼実夏は心なしか声が震えていた。きっと明日夏に連絡するまでに色々な事を考えたのだろう。いつもよく察してくれる涼実夏の代わりに、今日は明日夏が察してやった。
「怒ってない。ありがと。どう?作品は面白かった?」
明日夏は沈んでいる涼実夏の代わりに一番気になる事を聞いてみた。
「あ、うん。兄貴ってホントに演技がうまいね。いつもは近くにいる存在なのに画面の向こうにいる兄貴は全くの別人だった。」
「そりゃそうだな。」
二人で笑っているとすっと涼実夏の声が聞こえなくなってしまった。
「どうしたの?」
「今日、母さんが来たいって言ったんだ…。正直迷ったけど前向きになれるならって連れて来た。」
涼実夏は少しずつ今日なぜ来たのか話し始めた。
「でも…。ダメだった。母さんが映画を見終わって言った言葉が何かわかる?」
「……。」
明日夏はその先を黙って促した。その時の感情は明日夏にも分からなかった。
「最悪の気分だって言ったんだよ…。俺、悔しくて…。」
そう言いながら電話口で涼実夏は泣いていた。きっと涼実夏は明日夏が何度、家族を否定しようとも待っているんだろう。
「そっか。残念だな…。」
明日夏は泣いている涼実夏にそう言う事しかできなかった。
何処までも分かり合えない俺たちにもきっといつか歩みあえる時が来るのだろうか…。
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