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第二部
第五章・体育祭(その6)
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潮音たちが着替えを済ませて、体育祭が午後の部になると、どのクラスもますます雰囲気が盛り上がっていった。
午後の最初の競技は棒倒しだ。潮音は光瑠から競技の概要を聞いたとき、女子校にこんな荒っぽい競技があるのかと意外に思ったが、光瑠はむしろ女子校だからこそ、こういう激しい競技が盛り上がるのだと言っていた。
競技が始まる前には、参加者で眼鏡をかけている生徒は眼鏡を外すようにという指示があった。棒倒しは棒を守る側と相手側の棒を倒そうとする側に分かれて競技を行い、棒を先に倒されて棒の一番上に差し込まれた旗を取られた方が負けになるが、潮音は攻撃側についた。桜組の切込み隊長は光瑠、棒を守る側のまとめ役は千晶が引き受けることになった。
笛が鳴って競技が始まると、潮音をはじめとする攻撃側の生徒たちは歓声をあげながら相手側の守る棒めがけて突進し、棒を守る側のスクラムを崩そうとする。潮音はわけがわからないまま相手の菊組の棒へと突進しようとしたが、両手で取っ組み合ったり、棒にとびかかろうとしたりする生徒もいて、潮音はすっかりもみくちゃにされてしまった。
そうこうしているうちに菊組の棒を守る側は散り散りになって菊組の棒は倒され、光瑠が菊組の棒のてっぺんから旗を奪うと、手を上げて旗を高々と掲げた。すると桜組の観覧席からは高らかにエールが上がった。潮音は光瑠とハイタッチを交わした。
棒倒しの決勝は桜組と梅組との間で行われることになった。潮音たち桜組は奮闘したものの惜しくも敗れたとはいえ、力を出し切った潮音たちの表情は晴れやかだった。
続いての種目は綱引きだ。紫は大きな応援旗を振って一同を盛り上げる役に回ることになった。
潮音は最初こそ、綱引きは綱を引っ張るだけの単純な競技だと思っていたが、実際に綱を引く立場になってみると、他の生徒たちと呼吸を合わせながら一体になって綱を引くのは案外難しいと感じた。それでも掛け声に合わせて、潮音が力の限り綱を引くと綱はズルズルと後退していき、桜組は綱引きで優勝することができた。
さらに続いては騎馬戦だ。騎馬戦は大将の騎馬をつぶされたら負けになるが、桜組の大将は千晶がつとめることになった。潮音は紫が乗る馬を、光瑠と美鈴と組んだ三人で担当することになったが、この騎馬戦は松風の体育祭の中でも棒倒しと並んでとりわけ盛り上がる種目だとあらかじめ聞いていたので、潮音は武者震いがした。
潮音たちの桜組は順当に勝ち進み、決勝で楓組とぶつかることになった。潮音たちは決勝の前、エールをあげてあらためて気合を入れ直した。
決勝戦が始まると潮音たちの騎馬は楓組の大将めがけて突進しようとしたが、そこに立ちふさがったのは愛里紗が上に乗った騎馬だった。さらに愛里紗の騎馬を支える役には、優菜の姿もあった。
愛里紗は紫には負けられないとばかりに厳しい表情をしながら、騎馬の上で紫と両手同士で組み合った。それに対して紫も、いつもの温和な様子とは打って変った厳しいまなざしで応えた。紫と愛里紗は騎馬の上で押したり引いたりの激しいもみ合いを続けたので、潮音も光瑠や美鈴と一体になってそれを支えるのに必死だった。
そのとき愛里紗の乗った騎馬が体勢を崩して、愛里紗は地面へと倒れこんだ。しかし潮音たちが息をつく間もなく、校庭に笛の音が鳴り響いた。楓組の大将と組み合っていた桜組の騎馬が相手の騎馬を崩して、桜組の優勝が決まったのだった。桜組の生徒たちは皆歓喜の声をあげたが、その中で紫は騎馬から降りると、愛里紗に手を差し伸べた。愛里紗も素直に紫に支えられて立ち上がると、そのまま握手を交わした。潮音は紫と愛里紗との関係にはずっと気をもんでいただけに、このときの紫と愛里紗の態度には内心でほっとさせられた。
潮音はここであらためて、愛里紗の騎馬を支えていた優菜に目を向けたが、優菜は自分と潮音が体育祭で争うことに対して複雑な気持ちを抱いているようだった。潮音は優菜の肩を抱いて、優菜を慰めようとした。
これらの一連の競技にすっかり盛り上がっていたのはキャサリンだった。キャサリンにとって、体育祭で行われる競技の一つ一つが英国にはない新鮮なもののように目に映ったようで、しまいにはキャサリンは誰かから借りた黒い学生服を羽織りながら、興奮気味に競技を行う生徒たちに声援を送ったり手を振ったりしていた。そのようなキャサリンの嬉しそうな様子を見て、桜組以外の生徒までもが自然と笑顔になっていた。
体育祭も終りに近づき、いよいよ学年毎に行われるクラス対抗リレーの番になった。これはリレーといっても前半の走者は二人三脚で走り、アンカーは各クラスの担任の先生を騎馬で担ぎながら走るというものであり、これで各クラスの順位が確定する、体育祭のクライマックスとでもいうべき種目である。
しかしあろうことか、潮音はこの種目で暁子とペアを組んで二人三脚で走ることになってしまった。潮音は自分の左足を暁子の右足とひもで結び付けたとき、胸の高鳴りを覚えずにはいられなかった。潮音が横を向くとすぐそこに暁子の顔があるのを目の当りにしたときには、潮音は幼い頃から一緒に過ごしてきたはずの暁子の存在をここまで身近に感じたことなどなかったような気がした。それは暁子も同じなようで、暁子も表情に戸惑いを浮べていることがありありと見てとれた。
そこで潮音は、思いきって暁子に声をかけてみた。
「暁子、このクラス対抗リレーで勝てたら桜組は逆転優勝の可能性があるからな。気を引き締めていこうぜ」
その潮音の言葉で、暁子も気を持ち直したようだった。
「うん…そうだよね、潮音。あんたもあたしもずっとこの学校で頑張ってきたんだから、悔いが残らないようにしっかりやろうね」
そして潮音と暁子は、トラックの第二走者が待機する位置についた。しかし潮音は、暁子と肩を組んで、互いの足をひもで結んだだけで胸の高鳴りが止まらなかった。
桜組の第一走者は、キャサリンと光瑠がペアを組んだ二人三脚だった。英国から留学したキャサリンと、バスケットボール部のエースとして校内でも注目を集めている光瑠とのペアには、特に中等部の観覧席からも熱い視線が送られていた。
暁子が光瑠からバトンを受け取ると、潮音と暁子は覚束ない足取りながら、それでも一生懸命走った。潮音は暁子と一緒に走ることに対して最初こそ気後れを感じずにはいられなかったが、それでも雑念を振り払って、まずは走ることにのみ集中した。
しかし走るにつれて、なんとかして潮音は暁子とペースを合わせながら走ることができるようになったような気がした。それにつれて、二人の足取りも確かなものになっていった。
なんとかして潮音と暁子はコースを走り切り、待機していた琴絵を乗せた騎馬にバトンを渡した。運動が得意ではない琴絵も、クラスの副委員長という手前もあり、騎馬に乗る役なら大丈夫だろうと言ってその役を引き受けたのだった。
潮音と暁子は走り終えたときは疲れて肩で息をしていたものの、それでもミスなく走り終えたという確かな充実感を感じていた。潮音は暁子と互いの足を結んでいたひもをほどくと、晴れ晴れとした笑顔でハイタッチを交わした。その二人の様子には、潮音や暁子とは体育祭ではライバルであるはずの優菜までもが、暖かな視線を送っていた。
その間にも、バトンはアンカーの、美咲をかついだ騎馬に渡っていた。その騎馬は紫が正面をつとめ、後ろで恭子と美鈴が美咲の足を支えていた。桜組は紗智が上に乗る楓組の騎馬とデッドヒートを繰り広げたが、なんとかして美咲を乗せた桜組の騎馬が優勝することができた。美咲を乗せた騎馬がゴールインしたときには、一年桜組の生徒たちはこぞって歓声をあげた。
そして体育祭を締めくくるのは、クラブ対抗リレーだ。これはバスケ部の光瑠やテニス部の恭子もそれぞれのユニホームを着て出場したが、陸上部の美鈴にはかなわないようだった。特に千晶は、剣道の道着だとなかなか走りにくそうだった。
全ての種目が終り、結果発表と閉会式が行われる頃には、初夏の日も西に傾き辺りには暮色が漂い始めていた。
結果発表では、潮音たちの所属する桜組が二位の楓組との差はわずかながらも見事に優勝を決めた。先生から桜組の優勝が告げられたとたん、桜組の生徒たちの間から歓声が上がった。美咲もそのような生徒たちの様子を見て嬉しそうにしていたが、その傍らで紗智はどこか悔しそうな表情をしていた。
そして閉会式が終ると、潮音たち高等部一年桜組の生徒たちは歓声を上げながら、クラス委員長の光瑠、そして担任の美咲をみんなで胴上げした。潮音もその中に加わったが、もともと陽気でお祭り好きな美鈴は、普段あまり仲が良くなかった恭子と肩を抱き合いながら喜び合っていた。キャサリンは胴上げという、英国にはないような習慣をもの珍しげに見ていたが、あまり体育祭が好きそうではなかった琴絵までもが、このときばかりは顔に笑みを浮べていた。それよりも潮音にとっては、いつもクールで優等生然とした紫が、嬉しさを体いっぱいで表しながらはしゃいでいるのがどこかおかしかった。
潮音は、こうして体育祭でみんなで盛り上がることを通して、少し前まで男子だった自分が女子校に通っていることに対して、入学からずっと抱いていたわだかまりを多少なりとも洗い流せたような気がしていた。
しかしそこで、美咲の声がした。
「みんな喜ぶのもいいけど、これから後片付けがあるわよ。さっさと後片付けして早く帰宅しなさい」
そこで潮音たちも、体育祭の後片付けにとりかかっていった。
午後の最初の競技は棒倒しだ。潮音は光瑠から競技の概要を聞いたとき、女子校にこんな荒っぽい競技があるのかと意外に思ったが、光瑠はむしろ女子校だからこそ、こういう激しい競技が盛り上がるのだと言っていた。
競技が始まる前には、参加者で眼鏡をかけている生徒は眼鏡を外すようにという指示があった。棒倒しは棒を守る側と相手側の棒を倒そうとする側に分かれて競技を行い、棒を先に倒されて棒の一番上に差し込まれた旗を取られた方が負けになるが、潮音は攻撃側についた。桜組の切込み隊長は光瑠、棒を守る側のまとめ役は千晶が引き受けることになった。
笛が鳴って競技が始まると、潮音をはじめとする攻撃側の生徒たちは歓声をあげながら相手側の守る棒めがけて突進し、棒を守る側のスクラムを崩そうとする。潮音はわけがわからないまま相手の菊組の棒へと突進しようとしたが、両手で取っ組み合ったり、棒にとびかかろうとしたりする生徒もいて、潮音はすっかりもみくちゃにされてしまった。
そうこうしているうちに菊組の棒を守る側は散り散りになって菊組の棒は倒され、光瑠が菊組の棒のてっぺんから旗を奪うと、手を上げて旗を高々と掲げた。すると桜組の観覧席からは高らかにエールが上がった。潮音は光瑠とハイタッチを交わした。
棒倒しの決勝は桜組と梅組との間で行われることになった。潮音たち桜組は奮闘したものの惜しくも敗れたとはいえ、力を出し切った潮音たちの表情は晴れやかだった。
続いての種目は綱引きだ。紫は大きな応援旗を振って一同を盛り上げる役に回ることになった。
潮音は最初こそ、綱引きは綱を引っ張るだけの単純な競技だと思っていたが、実際に綱を引く立場になってみると、他の生徒たちと呼吸を合わせながら一体になって綱を引くのは案外難しいと感じた。それでも掛け声に合わせて、潮音が力の限り綱を引くと綱はズルズルと後退していき、桜組は綱引きで優勝することができた。
さらに続いては騎馬戦だ。騎馬戦は大将の騎馬をつぶされたら負けになるが、桜組の大将は千晶がつとめることになった。潮音は紫が乗る馬を、光瑠と美鈴と組んだ三人で担当することになったが、この騎馬戦は松風の体育祭の中でも棒倒しと並んでとりわけ盛り上がる種目だとあらかじめ聞いていたので、潮音は武者震いがした。
潮音たちの桜組は順当に勝ち進み、決勝で楓組とぶつかることになった。潮音たちは決勝の前、エールをあげてあらためて気合を入れ直した。
決勝戦が始まると潮音たちの騎馬は楓組の大将めがけて突進しようとしたが、そこに立ちふさがったのは愛里紗が上に乗った騎馬だった。さらに愛里紗の騎馬を支える役には、優菜の姿もあった。
愛里紗は紫には負けられないとばかりに厳しい表情をしながら、騎馬の上で紫と両手同士で組み合った。それに対して紫も、いつもの温和な様子とは打って変った厳しいまなざしで応えた。紫と愛里紗は騎馬の上で押したり引いたりの激しいもみ合いを続けたので、潮音も光瑠や美鈴と一体になってそれを支えるのに必死だった。
そのとき愛里紗の乗った騎馬が体勢を崩して、愛里紗は地面へと倒れこんだ。しかし潮音たちが息をつく間もなく、校庭に笛の音が鳴り響いた。楓組の大将と組み合っていた桜組の騎馬が相手の騎馬を崩して、桜組の優勝が決まったのだった。桜組の生徒たちは皆歓喜の声をあげたが、その中で紫は騎馬から降りると、愛里紗に手を差し伸べた。愛里紗も素直に紫に支えられて立ち上がると、そのまま握手を交わした。潮音は紫と愛里紗との関係にはずっと気をもんでいただけに、このときの紫と愛里紗の態度には内心でほっとさせられた。
潮音はここであらためて、愛里紗の騎馬を支えていた優菜に目を向けたが、優菜は自分と潮音が体育祭で争うことに対して複雑な気持ちを抱いているようだった。潮音は優菜の肩を抱いて、優菜を慰めようとした。
これらの一連の競技にすっかり盛り上がっていたのはキャサリンだった。キャサリンにとって、体育祭で行われる競技の一つ一つが英国にはない新鮮なもののように目に映ったようで、しまいにはキャサリンは誰かから借りた黒い学生服を羽織りながら、興奮気味に競技を行う生徒たちに声援を送ったり手を振ったりしていた。そのようなキャサリンの嬉しそうな様子を見て、桜組以外の生徒までもが自然と笑顔になっていた。
体育祭も終りに近づき、いよいよ学年毎に行われるクラス対抗リレーの番になった。これはリレーといっても前半の走者は二人三脚で走り、アンカーは各クラスの担任の先生を騎馬で担ぎながら走るというものであり、これで各クラスの順位が確定する、体育祭のクライマックスとでもいうべき種目である。
しかしあろうことか、潮音はこの種目で暁子とペアを組んで二人三脚で走ることになってしまった。潮音は自分の左足を暁子の右足とひもで結び付けたとき、胸の高鳴りを覚えずにはいられなかった。潮音が横を向くとすぐそこに暁子の顔があるのを目の当りにしたときには、潮音は幼い頃から一緒に過ごしてきたはずの暁子の存在をここまで身近に感じたことなどなかったような気がした。それは暁子も同じなようで、暁子も表情に戸惑いを浮べていることがありありと見てとれた。
そこで潮音は、思いきって暁子に声をかけてみた。
「暁子、このクラス対抗リレーで勝てたら桜組は逆転優勝の可能性があるからな。気を引き締めていこうぜ」
その潮音の言葉で、暁子も気を持ち直したようだった。
「うん…そうだよね、潮音。あんたもあたしもずっとこの学校で頑張ってきたんだから、悔いが残らないようにしっかりやろうね」
そして潮音と暁子は、トラックの第二走者が待機する位置についた。しかし潮音は、暁子と肩を組んで、互いの足をひもで結んだだけで胸の高鳴りが止まらなかった。
桜組の第一走者は、キャサリンと光瑠がペアを組んだ二人三脚だった。英国から留学したキャサリンと、バスケットボール部のエースとして校内でも注目を集めている光瑠とのペアには、特に中等部の観覧席からも熱い視線が送られていた。
暁子が光瑠からバトンを受け取ると、潮音と暁子は覚束ない足取りながら、それでも一生懸命走った。潮音は暁子と一緒に走ることに対して最初こそ気後れを感じずにはいられなかったが、それでも雑念を振り払って、まずは走ることにのみ集中した。
しかし走るにつれて、なんとかして潮音は暁子とペースを合わせながら走ることができるようになったような気がした。それにつれて、二人の足取りも確かなものになっていった。
なんとかして潮音と暁子はコースを走り切り、待機していた琴絵を乗せた騎馬にバトンを渡した。運動が得意ではない琴絵も、クラスの副委員長という手前もあり、騎馬に乗る役なら大丈夫だろうと言ってその役を引き受けたのだった。
潮音と暁子は走り終えたときは疲れて肩で息をしていたものの、それでもミスなく走り終えたという確かな充実感を感じていた。潮音は暁子と互いの足を結んでいたひもをほどくと、晴れ晴れとした笑顔でハイタッチを交わした。その二人の様子には、潮音や暁子とは体育祭ではライバルであるはずの優菜までもが、暖かな視線を送っていた。
その間にも、バトンはアンカーの、美咲をかついだ騎馬に渡っていた。その騎馬は紫が正面をつとめ、後ろで恭子と美鈴が美咲の足を支えていた。桜組は紗智が上に乗る楓組の騎馬とデッドヒートを繰り広げたが、なんとかして美咲を乗せた桜組の騎馬が優勝することができた。美咲を乗せた騎馬がゴールインしたときには、一年桜組の生徒たちはこぞって歓声をあげた。
そして体育祭を締めくくるのは、クラブ対抗リレーだ。これはバスケ部の光瑠やテニス部の恭子もそれぞれのユニホームを着て出場したが、陸上部の美鈴にはかなわないようだった。特に千晶は、剣道の道着だとなかなか走りにくそうだった。
全ての種目が終り、結果発表と閉会式が行われる頃には、初夏の日も西に傾き辺りには暮色が漂い始めていた。
結果発表では、潮音たちの所属する桜組が二位の楓組との差はわずかながらも見事に優勝を決めた。先生から桜組の優勝が告げられたとたん、桜組の生徒たちの間から歓声が上がった。美咲もそのような生徒たちの様子を見て嬉しそうにしていたが、その傍らで紗智はどこか悔しそうな表情をしていた。
そして閉会式が終ると、潮音たち高等部一年桜組の生徒たちは歓声を上げながら、クラス委員長の光瑠、そして担任の美咲をみんなで胴上げした。潮音もその中に加わったが、もともと陽気でお祭り好きな美鈴は、普段あまり仲が良くなかった恭子と肩を抱き合いながら喜び合っていた。キャサリンは胴上げという、英国にはないような習慣をもの珍しげに見ていたが、あまり体育祭が好きそうではなかった琴絵までもが、このときばかりは顔に笑みを浮べていた。それよりも潮音にとっては、いつもクールで優等生然とした紫が、嬉しさを体いっぱいで表しながらはしゃいでいるのがどこかおかしかった。
潮音は、こうして体育祭でみんなで盛り上がることを通して、少し前まで男子だった自分が女子校に通っていることに対して、入学からずっと抱いていたわだかまりを多少なりとも洗い流せたような気がしていた。
しかしそこで、美咲の声がした。
「みんな喜ぶのもいいけど、これから後片付けがあるわよ。さっさと後片付けして早く帰宅しなさい」
そこで潮音たちも、体育祭の後片付けにとりかかっていった。
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