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第四部
第三章・くるみ割り人形(その1)
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十二月も半ばになると、街にもクリスマスのイルミネーションがまたたいてクリスマスソングのBGMが流れ、冬が訪れて木枯らしが吹く街に彩りを添えるようになる。松風女子学園も終業式が近づくにつれて、生徒たちの話題もクリスマスやお正月、冬休みのことが中心になっていった。そしてどの生徒たちも皆明るい表情をしており、これらのイベントを心待ちにしている様子がありありと見てとれた。
しかし潮音は、そのような明るくウキウキとした雰囲気の学校の中で、今一つ浮かない顔をしていた。潮音の心中には、期末テストの返却日に暁子とケンカをしたことがいまだに重苦しく残っていた。この日以来、暁子は潮音と顔を合わせてもすぐに顔を背けて口をきこうともしなかったし、潮音の側も暁子に軽々しく声をかけることは憚られた。潮音自身、暁子とはいつまでもこのままの関係でいてはいけないということはわかっていたが、それでも潮音にはその一歩を踏み出すだけの覚悟がなかった。
潮音はこのようなモヤモヤした気持ちを抱えたまま、終業式の何日か前に水泳部の練習に出るために校内の温水プールに向かっていた。潮音は水泳部に籍を置いてはいるものの、高校に入ってからはむしろ紫と一緒に行っているバレエの方に力を入れていて、水泳部の方はあまり真面目に活動しているとは言えなかったが、その日の潮音はプールで泳ぐことで、心の中にたまったムシャクシャした気持ちを洗い流したかった。
潮音が温水プールに着くと、その入口で優菜がすでに待っていた。
「潮音、来るの遅いで。はよせえへんと練習始まってまうよ」
潮音が更衣室に向かう途中も、優菜はつとめて明るい口調で話そうとしていた。優菜はすでに、潮音と暁子がテストの返却日にケンカをしたという話を聞かされていたが、そのときの優菜はやれやれとでも言わんばかりの呆れた顔をしてため息をつかずにはいられなかった。
「うちの学校は温水プールがあって、一年中いつでも泳ぐことができてええね」
それでも潮音の表情が晴れないのを見て、優菜はこれはしばらくそっとしておくしかないなと思い直して口をつぐんだ。
潮音は優菜と一緒に水着に着替えて、プールサイドで準備運動を終えるとそのまま力強く泳いでプールを何往復かした。潮音の一生懸命泳ごうとしている様子には、水泳部の部長をつとめている江中さゆりも目を丸くしていた。
「藤坂さん、あなたにはそれだけの素質があるんだからもっとまじめに部に来て練習すればいいのに。そりゃ峰山さんと一緒にバレエも掛け持ちしていて大変なのはわかるけど」
紫のバレエの腕は、すでに二年生の間でも有名なようだった。
優菜は一心に泳ぐ潮音の様子を、じっと黙ったまま見つめていた。優菜は潮音が今になってがむしゃらにプールで泳いでいる様子を目の当りにして、やはり潮音は暁子とケンカをして以来心の中からわだかまりが抜けていないのだろうとはっきり感じていた。
練習が一段落して休憩時間に入ると、優菜はさっそく潮音のところに来て口を開いた。
「潮音、今日はずいぶん真面目に練習しとるやないの。でも潮音がそうしとるのは、やっぱりアッコとケンカしてムシャクシャしとったからやろ? ほんまにあんたらは、二人そろって不器用同士やな」
優菜にそこまで言われると、潮音は返す言葉もないまましゅんとしていた。
「でも去年のちょうど今ごろやったね。あんたがあたしや尾上さんと一緒に市立の温水プールに行って泳いだのは。あの頃のあんたはちょうど男から女になってしもたばかりでずっと不安定なままやったから、あのときもあんたの身に何かあったらどうしようと、尾上さんと一緒に冷や冷やしとったんよ」
そのように話す優菜は、どこか感慨深げな表情をしていた。
「ああ…あれからもう一年が経つんだな。…たしかに女子の水着をはじめて着るのには抵抗あったよ。でもオレはあれをきっかけに、なんとか自分が女だということを受け入れられるようになった気がするんだ。もしあのとき勇気を出してそうしてなかったら、今でも自分はずっと一人で閉じこもっているしかなかったかもしれない」
そこで優菜は目を細めて、潮音をいたわるように言った。
「あんたはこの一年、ほんまにようがんばったと思うよ。…でもその結果、あんたが変ってしまうのを見て複雑に思うアッコの気持ちかてわかるよ。あんたは変に意識することなく、アッコと今まで通りにつき合うしかなさそうやね」
「わかってるよ…暁子がオレと同じ学校行ってるおかげで、このお嬢ちゃんばかりの勝手がわかんない学校でも、今までなんとかやってこられたような気がするんだ。もしそうじゃなかったら、どこの高校行ったとしても、自分の学校生活はもっと暗くて後ろ向きなものになっていたと思うから…」
「アッコかてあんたと同じように、中等部からうちにいる子とどう接してええかわからへんと思っとるんとちゃうかな。だからアッコは、あんたのことを余計気にしとるんやと思うよ」
「でも暁子は『あんたはあんたのままでいい』って言ってるんだけど、その『自分のまま』っていうのがわかんないから、オレはこんなに悩んでいるのに…」
「そんなの気にすることないやん。あんたはちゃんと毎日学校行って、テストの点はあまりようあらへんけどそれでも赤点取らん程度には勉強できて、学校の行事かて参加してあたしやアッコ、それにほかの子たちともなんとかやっていけている。それだけで十分自分らしいと思うよ」
優菜がなだめるように言っても、潮音の表情は浮かなかった。
「オレがそのそれだけのことをやるために、この学校入ってからどれだけ苦労したと思ってるんだよ」
そこで潮音は、かつて綾乃に言われた言葉を思い出していた。
――「ありのままの自分」であるってこと、そして「自分らしく生きる」ってことこそがね、本当は一番つらくて厳しい道なんだよ。
潮音は揺れるプールの水面をじっと見つめながら、心の中であらためてその綾乃の言葉を反復させていた。
――オレはその姉ちゃんの言葉を信じたからこそ、ここまでいろんなことを頑張ってきた。つらいことがあってもそこから逃げたり、弱音を吐いたりしたくないと思って耐えてきた。でも…暁子はそのようなオレの姿を見て、ずっと気にかけていたのか? だったらオレの「ほんとの自分」って何なんだ?
潮音がそのまま考え込んでいると、水泳部長の江中さゆりが休憩時間の終りを告げに来た。練習が再開して潮音と優菜はそれからひと泳ぎすると、練習時間の終りとともに更衣室に向かった。
二人が水着から制服に着替え終って、ドライヤーで髪を乾かしている途中で、優菜は潮音に声をかけた。
「さっきうちらの楓組の榎並さんに会ったけど、クリスマスはどないするか聞いても『自分は塾の冬期講習があるから、クリスマスだのお正月だのと浮かれている余裕なんかない』ってはっきり言うとったわ。ほんまに榎並さんはまじめやね」
潮音はかつて榎並愛里紗の自宅を訪ねて、その家庭の事情も知っているだけに、愛里紗の気持ちもわかるような気もしたものの、あまり無理をしすぎなければいいのにと内心で気をもんでいた。
「で、潮音はクリスマスはどないするん?」
「今度の日曜はバレエ教室で子どもたちと一緒にクリスマス会をやるんだ。ちっちゃな子たちの世話は紫がちゃんとやってくれそうだけど…そして紫はイブの当日は、市立のホールで『くるみ割り人形』の公演をやるんだ」
「紫って生徒会の副会長になった峰山さんのことやね。それに『くるみ割り人形』って、クリスマスのバレエの定番やん。でも潮音はエキストラでもええから公演に出してもらえへんの?」
「紫はちっちゃな頃からバレエをバリバリにやってきたからね。今年になってから趣味でまたバレエを始めたオレとは月とスッポンだよ」
「で、潮音はイブの当日は紫のバレエを見に行くわけやね」
そこで優菜は何かがひらめいたかのように途端に明るい顔をした。
「そうや。ええこと思いついた。今度のバレエの公演に潮音の隣の家に引っ越して来た、尚洋のかっこいい彼氏誘ってみたら? もちろん都合が合えばやけど」
ニコニコしてる優菜の顔を、潮音は当惑気味に見つめ返した。
「バカ…何言ってんだよ。優菜」
そこで優菜は、おどけて軽く舌を出してみせた。
「ちょっと言うてみただけやけど。せっかく彼氏おるんやからクリスマスくらい一緒に過ごせばええやん。この前の期末テストかて勉強教えてもろたんやろ」
「だからそんなんじゃないってば。優菜だってふざけるのもいい加減にしろよ」
潮音があわてふためいてるのを見て、さすがに優菜も悪乗りしすぎたかと反省した。
「…すまへんな。あたしもちょっと調子に乗りすぎたわ。でも潮音が誰と一緒にどんなクリスマスを過ごすとしても、はよアッコとは仲直りした方がええんとちゃう?」
「うん…そうだよな。暁子は今でこそちょっと焼きもち焼いてるけど、そのうちにいつかきっとまた仲良くなれるよ。今日こうして優菜と一緒にプールで泳いで話しただけで、少し気が楽になったよ」
「ほんまやね。こうやってプールで泳いでいると、中学生のときのことを思い出すよね。あのときは椎名君や尾上さんも一緒やったけど」
優菜も笑顔で答えた。
潮音は優菜と別れて帰宅してからも、先ほど優菜が昇と一緒にクリスマスイブを過ごしてはと提案したことが脳裏から離れなかった。しかしそこで潮音は、自分が昇と一緒にカップルとしてクリスマスのイルミネーションが灯る街を歩いている光景を想像してしまった。
――何考えてるんだ、オレ。去年まではこんなことなど思ったことさえなかったのに。
潮音は赤面しながら、思わず身をすくめてしまった。しかしその一方で、潮音は自分が昇に対して憧れに似た感情を抱き始めていることをはっきりと感じていた。しかしそうしたら暁子がどんな顔をするか…潮音はこれから迎えるクリスマスは波乱にとんだものになりそうだと不安な気持ちになりながら、先月の誕生日に暁子からもらったマスコットをじっと眺めていた。
しかし潮音は、そのような明るくウキウキとした雰囲気の学校の中で、今一つ浮かない顔をしていた。潮音の心中には、期末テストの返却日に暁子とケンカをしたことがいまだに重苦しく残っていた。この日以来、暁子は潮音と顔を合わせてもすぐに顔を背けて口をきこうともしなかったし、潮音の側も暁子に軽々しく声をかけることは憚られた。潮音自身、暁子とはいつまでもこのままの関係でいてはいけないということはわかっていたが、それでも潮音にはその一歩を踏み出すだけの覚悟がなかった。
潮音はこのようなモヤモヤした気持ちを抱えたまま、終業式の何日か前に水泳部の練習に出るために校内の温水プールに向かっていた。潮音は水泳部に籍を置いてはいるものの、高校に入ってからはむしろ紫と一緒に行っているバレエの方に力を入れていて、水泳部の方はあまり真面目に活動しているとは言えなかったが、その日の潮音はプールで泳ぐことで、心の中にたまったムシャクシャした気持ちを洗い流したかった。
潮音が温水プールに着くと、その入口で優菜がすでに待っていた。
「潮音、来るの遅いで。はよせえへんと練習始まってまうよ」
潮音が更衣室に向かう途中も、優菜はつとめて明るい口調で話そうとしていた。優菜はすでに、潮音と暁子がテストの返却日にケンカをしたという話を聞かされていたが、そのときの優菜はやれやれとでも言わんばかりの呆れた顔をしてため息をつかずにはいられなかった。
「うちの学校は温水プールがあって、一年中いつでも泳ぐことができてええね」
それでも潮音の表情が晴れないのを見て、優菜はこれはしばらくそっとしておくしかないなと思い直して口をつぐんだ。
潮音は優菜と一緒に水着に着替えて、プールサイドで準備運動を終えるとそのまま力強く泳いでプールを何往復かした。潮音の一生懸命泳ごうとしている様子には、水泳部の部長をつとめている江中さゆりも目を丸くしていた。
「藤坂さん、あなたにはそれだけの素質があるんだからもっとまじめに部に来て練習すればいいのに。そりゃ峰山さんと一緒にバレエも掛け持ちしていて大変なのはわかるけど」
紫のバレエの腕は、すでに二年生の間でも有名なようだった。
優菜は一心に泳ぐ潮音の様子を、じっと黙ったまま見つめていた。優菜は潮音が今になってがむしゃらにプールで泳いでいる様子を目の当りにして、やはり潮音は暁子とケンカをして以来心の中からわだかまりが抜けていないのだろうとはっきり感じていた。
練習が一段落して休憩時間に入ると、優菜はさっそく潮音のところに来て口を開いた。
「潮音、今日はずいぶん真面目に練習しとるやないの。でも潮音がそうしとるのは、やっぱりアッコとケンカしてムシャクシャしとったからやろ? ほんまにあんたらは、二人そろって不器用同士やな」
優菜にそこまで言われると、潮音は返す言葉もないまましゅんとしていた。
「でも去年のちょうど今ごろやったね。あんたがあたしや尾上さんと一緒に市立の温水プールに行って泳いだのは。あの頃のあんたはちょうど男から女になってしもたばかりでずっと不安定なままやったから、あのときもあんたの身に何かあったらどうしようと、尾上さんと一緒に冷や冷やしとったんよ」
そのように話す優菜は、どこか感慨深げな表情をしていた。
「ああ…あれからもう一年が経つんだな。…たしかに女子の水着をはじめて着るのには抵抗あったよ。でもオレはあれをきっかけに、なんとか自分が女だということを受け入れられるようになった気がするんだ。もしあのとき勇気を出してそうしてなかったら、今でも自分はずっと一人で閉じこもっているしかなかったかもしれない」
そこで優菜は目を細めて、潮音をいたわるように言った。
「あんたはこの一年、ほんまにようがんばったと思うよ。…でもその結果、あんたが変ってしまうのを見て複雑に思うアッコの気持ちかてわかるよ。あんたは変に意識することなく、アッコと今まで通りにつき合うしかなさそうやね」
「わかってるよ…暁子がオレと同じ学校行ってるおかげで、このお嬢ちゃんばかりの勝手がわかんない学校でも、今までなんとかやってこられたような気がするんだ。もしそうじゃなかったら、どこの高校行ったとしても、自分の学校生活はもっと暗くて後ろ向きなものになっていたと思うから…」
「アッコかてあんたと同じように、中等部からうちにいる子とどう接してええかわからへんと思っとるんとちゃうかな。だからアッコは、あんたのことを余計気にしとるんやと思うよ」
「でも暁子は『あんたはあんたのままでいい』って言ってるんだけど、その『自分のまま』っていうのがわかんないから、オレはこんなに悩んでいるのに…」
「そんなの気にすることないやん。あんたはちゃんと毎日学校行って、テストの点はあまりようあらへんけどそれでも赤点取らん程度には勉強できて、学校の行事かて参加してあたしやアッコ、それにほかの子たちともなんとかやっていけている。それだけで十分自分らしいと思うよ」
優菜がなだめるように言っても、潮音の表情は浮かなかった。
「オレがそのそれだけのことをやるために、この学校入ってからどれだけ苦労したと思ってるんだよ」
そこで潮音は、かつて綾乃に言われた言葉を思い出していた。
――「ありのままの自分」であるってこと、そして「自分らしく生きる」ってことこそがね、本当は一番つらくて厳しい道なんだよ。
潮音は揺れるプールの水面をじっと見つめながら、心の中であらためてその綾乃の言葉を反復させていた。
――オレはその姉ちゃんの言葉を信じたからこそ、ここまでいろんなことを頑張ってきた。つらいことがあってもそこから逃げたり、弱音を吐いたりしたくないと思って耐えてきた。でも…暁子はそのようなオレの姿を見て、ずっと気にかけていたのか? だったらオレの「ほんとの自分」って何なんだ?
潮音がそのまま考え込んでいると、水泳部長の江中さゆりが休憩時間の終りを告げに来た。練習が再開して潮音と優菜はそれからひと泳ぎすると、練習時間の終りとともに更衣室に向かった。
二人が水着から制服に着替え終って、ドライヤーで髪を乾かしている途中で、優菜は潮音に声をかけた。
「さっきうちらの楓組の榎並さんに会ったけど、クリスマスはどないするか聞いても『自分は塾の冬期講習があるから、クリスマスだのお正月だのと浮かれている余裕なんかない』ってはっきり言うとったわ。ほんまに榎並さんはまじめやね」
潮音はかつて榎並愛里紗の自宅を訪ねて、その家庭の事情も知っているだけに、愛里紗の気持ちもわかるような気もしたものの、あまり無理をしすぎなければいいのにと内心で気をもんでいた。
「で、潮音はクリスマスはどないするん?」
「今度の日曜はバレエ教室で子どもたちと一緒にクリスマス会をやるんだ。ちっちゃな子たちの世話は紫がちゃんとやってくれそうだけど…そして紫はイブの当日は、市立のホールで『くるみ割り人形』の公演をやるんだ」
「紫って生徒会の副会長になった峰山さんのことやね。それに『くるみ割り人形』って、クリスマスのバレエの定番やん。でも潮音はエキストラでもええから公演に出してもらえへんの?」
「紫はちっちゃな頃からバレエをバリバリにやってきたからね。今年になってから趣味でまたバレエを始めたオレとは月とスッポンだよ」
「で、潮音はイブの当日は紫のバレエを見に行くわけやね」
そこで優菜は何かがひらめいたかのように途端に明るい顔をした。
「そうや。ええこと思いついた。今度のバレエの公演に潮音の隣の家に引っ越して来た、尚洋のかっこいい彼氏誘ってみたら? もちろん都合が合えばやけど」
ニコニコしてる優菜の顔を、潮音は当惑気味に見つめ返した。
「バカ…何言ってんだよ。優菜」
そこで優菜は、おどけて軽く舌を出してみせた。
「ちょっと言うてみただけやけど。せっかく彼氏おるんやからクリスマスくらい一緒に過ごせばええやん。この前の期末テストかて勉強教えてもろたんやろ」
「だからそんなんじゃないってば。優菜だってふざけるのもいい加減にしろよ」
潮音があわてふためいてるのを見て、さすがに優菜も悪乗りしすぎたかと反省した。
「…すまへんな。あたしもちょっと調子に乗りすぎたわ。でも潮音が誰と一緒にどんなクリスマスを過ごすとしても、はよアッコとは仲直りした方がええんとちゃう?」
「うん…そうだよな。暁子は今でこそちょっと焼きもち焼いてるけど、そのうちにいつかきっとまた仲良くなれるよ。今日こうして優菜と一緒にプールで泳いで話しただけで、少し気が楽になったよ」
「ほんまやね。こうやってプールで泳いでいると、中学生のときのことを思い出すよね。あのときは椎名君や尾上さんも一緒やったけど」
優菜も笑顔で答えた。
潮音は優菜と別れて帰宅してからも、先ほど優菜が昇と一緒にクリスマスイブを過ごしてはと提案したことが脳裏から離れなかった。しかしそこで潮音は、自分が昇と一緒にカップルとしてクリスマスのイルミネーションが灯る街を歩いている光景を想像してしまった。
――何考えてるんだ、オレ。去年まではこんなことなど思ったことさえなかったのに。
潮音は赤面しながら、思わず身をすくめてしまった。しかしその一方で、潮音は自分が昇に対して憧れに似た感情を抱き始めていることをはっきりと感じていた。しかしそうしたら暁子がどんな顔をするか…潮音はこれから迎えるクリスマスは波乱にとんだものになりそうだと不安な気持ちになりながら、先月の誕生日に暁子からもらったマスコットをじっと眺めていた。
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