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第六部
第三章・暁子の春(その5)
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二月に入ると、バレンタインデーを控えて学校の雰囲気も浮足立ったものになってくる。生徒たちの間では彼氏に送るチョコをどうするか悩む者や、友達同士で「友チョコ」を贈り合う者もいたが、潮音も昇にチョコを手渡すにしても、昇にどのようなタイミングでチョコを手渡すべきか戸惑っていた。優菜は潮音と昼休みの教室で話をしながらも、そのような潮音の様子にはじれったさを感じているようだった。
「潮音もせっかくやから彼氏に堂々とチョコを渡せばええのに。潮音はあの彼氏に勉強のことではお世話になっとるのやろ?」
優菜にそこまで言われると、潮音も昇にチョコを手渡さないわけにはいかないと覚悟を決めるしかなかった。そこで潮音は優菜に言った。
「でも去年のバレンタインのとき、暁子と優菜がいきなりチョコをくれたときは驚いたよ。自分は男の子だったときも、姉ちゃんから義理チョコをもらう以外チョコなんかもらったことなかったのに」
「それでもええやん。そうやってチョコもらえるってことは、男とか女とか関係なくそれだけ人から好かれとるってことやろ」
「そこまで言うなら、私こそ暁子や優菜に何もしなくていいのかな。いつもだいぶ世話になっているのに」
潮音が気づまりな表情をしたので、優菜は潮音をなだめようとした。
「そんなに気を使ってくれることなんかあらへんよ。お世話になっとるのはお互いさまやし」
「で、優菜は今年はどうするんだよ」
「あたしは今年も潮音にチョコ贈ろうと思っとるけど、アッコはどないするかまだわからへんな」
しかしそこで、優菜は声のトーンを変えると潮音にそっと耳打ちした。
「なんかアッコって、塾に行くようになってからちょっと感じ変ったように思わへん? アッコが塾に行き出して忙しくなってから、あたしらと以前のようにつき合ったりできへんようになったのは仕方ないけど、それだけやあらへんな。何て言うたらええかわからへんけど、アッコはなんか落ち着いて大人びた感じがするようになった気がするわ。髪型とかもちゃんと手入れして、ちょっとおしゃれになったような気がするし」
潮音もそれに相槌を打った。
「そうだよね。なんか暁子が自分のちっちゃな頃から知ってた暁子じゃなくなっていくような気がして、正直言って暁子にどう接していいかわかんなくってさ」
そう話したときの潮音の表情は、どこか寂しげだった。しかしそこで優菜は身を乗り出して潮音にきっぱりと言った。
「それ言うたら潮音かて一緒やろ。アッコかて潮音が女の子になってしもて、それから潮音がこの学校で女子校の色に染まっていくのを見て、どれだけ悩んだか潮音はわかっとるん」
優菜が強い口調で言うのを聞いて、潮音も少したじたじとなった。
「そんなこと言われたって無理だよ…。私だって自分が女になって、それからこの学校で何とかしてやっていこうと必死になってがんばってきたのに」
潮音が自信なさげな口調で話すのを聞いて、優菜はとりすました表情をした。
「潮音かてそう思うやろ? だったら潮音かてアッコがどういう道に進んで、その結果どうなってもそれを受け入れてやることが大切やないかな」
優菜のこの言葉には、潮音も納得するしかなかった。
「でもほんまにアッコはどないしたんやろ。もしかして塾で好きな男の子でもできたんかな」
その優菜の話を聞くと、潮音は思わず吹き出しそうになった。
「まさか。あの乱暴でガサツで色気のない暁子にそんなことがあるわけないだろ」
しかし優菜が潮音の話を聞いて呆れ顔になっていたところに、ちょうど暁子が寄ってきた。潮音と優菜は、まずいところに暁子が現れたとでも言わんばかりの気まずそうな表情をした。
「二人とも何の話してたのよ。何かあたしに聞かれたらまずいようなことでも話してたわけ?」
暁子は胡散臭いものでも見るような目で、あわてふためいている潮音と優菜を眺めていた。優菜はあわてて、手を振りながら暁子の疑念を打消そうとした。
「い、いや、あたしら何も変なことなんか話しとらへんってば」
しかし暁子が視線を向けたのは潮音の方だった。
「さっきから聞いてたよ。あんた、言わせておけばずいぶん言いたい放題言ってくれるじゃない」
潮音が顔面を蒼白にして息を飲んだときはもう遅かった。優菜も潮音がこれから暁子にどんな目にあわされるかとはらはらしながら眺めていたが、暁子の表情は案外さばさばしていた。そこで暁子は気恥ずかしそうに声をこもらせて口を開いた。
「潮音の言う通りだよ。あたし…、今塾でちょっと気になっている子がいるんだ」
暁子がはっきりと真相を打ち明けたのを聞いて、潮音と優菜は二人ともその場にずっこけそうになった。潮音は笑いを必死で抑えながら暁子に話しかけた。
「まさか暁子にそんなことがあるとはね。で、その彼氏っていったいどんな子なんだよ」
「鴻山高校に通ってる子なんだけど、成績も良くてクールで落ち着いた子なんだ」
暁子の話を、優菜も興味深げに聞いていた。
「鴻山高校って、神戸の県立高校の中ではなかなかの進学校やん。こりゃどんな子なのかますます楽しみやな」
優菜までもが暁子の話に対して興味深げに身を乗り出してきたのを、暁子はいやそうな目で見ていた。
「だから優菜までそんな顔しないでよ。ほんとに大したことないんだってば」
そうやって暁子が強い口調で言ったときになって、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。潮音と暁子がそれぞれの席に戻るのを見送りながら、優菜は内心で考え事をしていた。
――アッコもやっぱり変ったな。昔やったらあそこで潮音を何発かビンタしてたと思うけど。
そして潮音も午後の授業が始まってからも、勉強の合間にちらちらと暁子の横顔を見ていた。潮音は暁子が先ほど言ったことが気になって、授業に集中するどころではなかった。
――暁子はよく、自分から打ち明けようって気になったよな。それってやっぱり、暁子は私や優菜のことを頼りにしているということだろうか…。
潮音は暁子が自分のことをここまで信頼している以上は、その友情を裏切るような真似だけはしてはいけないと意を新たにしていた。
その日の授業が終っても、暁子はすぐに学校を後にして塾に向かった。潮音はちょうどその日はバレエのレッスンもなかったので、帰宅しようとすると、優菜が潮音に誘いをかけた。
「今日はバレエのレッスンがないんやろ? だったら体育館の温水プールでちょっと一緒に泳いでいかへん?」
潮音は優菜の提案に従うことにした。
潮音はプールで一通り泳いで体を動かした後で、休憩時間にプールサイドで伸びをしながら優菜に話しかけた。
「久しぶりに泳ぐと気持ちいいよな。スカッとするよ」
「今日は昼休みにアッコとの間にあんなことがあったから、余計にモヤモヤしとったんやろ?」
「ああ、たしかにそうだね。おかげでいいストレス解消になったよ」
そこで潮音と並んでプールサイドに腰を下していた優菜も、揺れるプールの水面を見つめながら潮音に話しかけた。
「なんかこないにしとると、中学のときの水泳部のことを思い出すよね。あのときはこんな冬でも泳げるような立派な温水プールなんかあらへんかったけど、椎名君も尾上さんも一緒で楽しかったよね」
潮音は優菜が「尾上さん」と名を呼ぶのを聞いて、自分が男の子として玲花にほのかな想いを寄せていたときのことを思い出して、胸の奥が甘酸っぱくなるのを感じていた。
そこで潮音は、先ほどの昼休みに暁子が告白したことの話題を優菜に振った。
「でも優菜、さっきの昼休みに暁子が言ったことをどう思った? まさか暁子に好きな男ができる日が来るなんて思わなかったよ」
しかし優菜は、浮ついた口調で話す潮音をきっぱりとたしなめた。
「潮音、こういうデリケートなことは興味本位で茶化したりしてもええような問題とちゃうで。それにアッコかてこの年頃になったら、好きな男の子の一人くらいできたっておかしくないよ」
優菜にたしなめられて、潮音も少し調子に乗りすぎたと反省したような顔をしながら、少しの間黙った後で口を開いた。
「その暁子が好きな男の子っていうのがどんな子かわかんないけど、暁子と仲良くなれたらいいのにな。せっかく今はバレンタインの前なんだから、ダメもとで告白してもいいのに」
そこで優菜は、再び潮音をたしなめるように言った。
「潮音は『ダメもとで』なんて言うとるけど、それでダメだった場合、アッコが傷ついたりしたら責任取れるん」
そこで潮音も、優菜を向き直すときっぱりと言い放った。
「傷つくことなんか怖がってたら、人間何もできやしないよ」
そう言い放ったときの潮音の表情は、遠くを見つめながら何かを思い出そうとしているかのようだった。それを見て優菜も答えた。
「潮音はやっぱり、尾上さんのこと好きやったからそういうこと言うん」
そこで潮音ははっきりと言った。
「いや…尾上さんが椎名とつき合ってるなんてことは十分わかってたよ」
「そこで潮音もずっと一人で悩んどったわけやね。でもアッコかて、中学の頃からあんたのこと好きやったんやないかってちょっと思っとるんやけど。あの子自身、気づいてなかったかもしれへんけどな」
優菜に言われて、潮音は少し当惑したような顔をした。
「それはそうかもしれないけど…だったらどうすりゃよかったんだよ」
「潮音はアッコとは今まで通りに自然につきおうたらええんとちゃうかな。それがアッコにとっていっちゃん嬉しいはずやで。それに今度のことかて、潮音はあまりいらんおせっかいをやいたりせずに、アッコの気持ちを第一に考えるのが大切やと思うよ」
「そんなことわかってるよ。私と暁子の関係は、これまでのような関係がずっと続くわけないからね。今は暁子がこの男の子と仲良くなれたらいいのにね」
「やっぱりアッコのことを突き放して見ることができるようになったってことは、それだけ潮音も成長したってことやね」
「そうかなあ」
そこで優菜は、当惑した表情をする潮音の肩をぽんと叩いてやった。
「今はそんなことばっかりクヨクヨ悩んでへんで、もう一泳ぎしてから帰ろうか」
そう言って優菜は潮音と一緒に、冬の午後の柔らかい日差しがさしこむプールへと戻っていった。
「潮音もせっかくやから彼氏に堂々とチョコを渡せばええのに。潮音はあの彼氏に勉強のことではお世話になっとるのやろ?」
優菜にそこまで言われると、潮音も昇にチョコを手渡さないわけにはいかないと覚悟を決めるしかなかった。そこで潮音は優菜に言った。
「でも去年のバレンタインのとき、暁子と優菜がいきなりチョコをくれたときは驚いたよ。自分は男の子だったときも、姉ちゃんから義理チョコをもらう以外チョコなんかもらったことなかったのに」
「それでもええやん。そうやってチョコもらえるってことは、男とか女とか関係なくそれだけ人から好かれとるってことやろ」
「そこまで言うなら、私こそ暁子や優菜に何もしなくていいのかな。いつもだいぶ世話になっているのに」
潮音が気づまりな表情をしたので、優菜は潮音をなだめようとした。
「そんなに気を使ってくれることなんかあらへんよ。お世話になっとるのはお互いさまやし」
「で、優菜は今年はどうするんだよ」
「あたしは今年も潮音にチョコ贈ろうと思っとるけど、アッコはどないするかまだわからへんな」
しかしそこで、優菜は声のトーンを変えると潮音にそっと耳打ちした。
「なんかアッコって、塾に行くようになってからちょっと感じ変ったように思わへん? アッコが塾に行き出して忙しくなってから、あたしらと以前のようにつき合ったりできへんようになったのは仕方ないけど、それだけやあらへんな。何て言うたらええかわからへんけど、アッコはなんか落ち着いて大人びた感じがするようになった気がするわ。髪型とかもちゃんと手入れして、ちょっとおしゃれになったような気がするし」
潮音もそれに相槌を打った。
「そうだよね。なんか暁子が自分のちっちゃな頃から知ってた暁子じゃなくなっていくような気がして、正直言って暁子にどう接していいかわかんなくってさ」
そう話したときの潮音の表情は、どこか寂しげだった。しかしそこで優菜は身を乗り出して潮音にきっぱりと言った。
「それ言うたら潮音かて一緒やろ。アッコかて潮音が女の子になってしもて、それから潮音がこの学校で女子校の色に染まっていくのを見て、どれだけ悩んだか潮音はわかっとるん」
優菜が強い口調で言うのを聞いて、潮音も少したじたじとなった。
「そんなこと言われたって無理だよ…。私だって自分が女になって、それからこの学校で何とかしてやっていこうと必死になってがんばってきたのに」
潮音が自信なさげな口調で話すのを聞いて、優菜はとりすました表情をした。
「潮音かてそう思うやろ? だったら潮音かてアッコがどういう道に進んで、その結果どうなってもそれを受け入れてやることが大切やないかな」
優菜のこの言葉には、潮音も納得するしかなかった。
「でもほんまにアッコはどないしたんやろ。もしかして塾で好きな男の子でもできたんかな」
その優菜の話を聞くと、潮音は思わず吹き出しそうになった。
「まさか。あの乱暴でガサツで色気のない暁子にそんなことがあるわけないだろ」
しかし優菜が潮音の話を聞いて呆れ顔になっていたところに、ちょうど暁子が寄ってきた。潮音と優菜は、まずいところに暁子が現れたとでも言わんばかりの気まずそうな表情をした。
「二人とも何の話してたのよ。何かあたしに聞かれたらまずいようなことでも話してたわけ?」
暁子は胡散臭いものでも見るような目で、あわてふためいている潮音と優菜を眺めていた。優菜はあわてて、手を振りながら暁子の疑念を打消そうとした。
「い、いや、あたしら何も変なことなんか話しとらへんってば」
しかし暁子が視線を向けたのは潮音の方だった。
「さっきから聞いてたよ。あんた、言わせておけばずいぶん言いたい放題言ってくれるじゃない」
潮音が顔面を蒼白にして息を飲んだときはもう遅かった。優菜も潮音がこれから暁子にどんな目にあわされるかとはらはらしながら眺めていたが、暁子の表情は案外さばさばしていた。そこで暁子は気恥ずかしそうに声をこもらせて口を開いた。
「潮音の言う通りだよ。あたし…、今塾でちょっと気になっている子がいるんだ」
暁子がはっきりと真相を打ち明けたのを聞いて、潮音と優菜は二人ともその場にずっこけそうになった。潮音は笑いを必死で抑えながら暁子に話しかけた。
「まさか暁子にそんなことがあるとはね。で、その彼氏っていったいどんな子なんだよ」
「鴻山高校に通ってる子なんだけど、成績も良くてクールで落ち着いた子なんだ」
暁子の話を、優菜も興味深げに聞いていた。
「鴻山高校って、神戸の県立高校の中ではなかなかの進学校やん。こりゃどんな子なのかますます楽しみやな」
優菜までもが暁子の話に対して興味深げに身を乗り出してきたのを、暁子はいやそうな目で見ていた。
「だから優菜までそんな顔しないでよ。ほんとに大したことないんだってば」
そうやって暁子が強い口調で言ったときになって、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。潮音と暁子がそれぞれの席に戻るのを見送りながら、優菜は内心で考え事をしていた。
――アッコもやっぱり変ったな。昔やったらあそこで潮音を何発かビンタしてたと思うけど。
そして潮音も午後の授業が始まってからも、勉強の合間にちらちらと暁子の横顔を見ていた。潮音は暁子が先ほど言ったことが気になって、授業に集中するどころではなかった。
――暁子はよく、自分から打ち明けようって気になったよな。それってやっぱり、暁子は私や優菜のことを頼りにしているということだろうか…。
潮音は暁子が自分のことをここまで信頼している以上は、その友情を裏切るような真似だけはしてはいけないと意を新たにしていた。
その日の授業が終っても、暁子はすぐに学校を後にして塾に向かった。潮音はちょうどその日はバレエのレッスンもなかったので、帰宅しようとすると、優菜が潮音に誘いをかけた。
「今日はバレエのレッスンがないんやろ? だったら体育館の温水プールでちょっと一緒に泳いでいかへん?」
潮音は優菜の提案に従うことにした。
潮音はプールで一通り泳いで体を動かした後で、休憩時間にプールサイドで伸びをしながら優菜に話しかけた。
「久しぶりに泳ぐと気持ちいいよな。スカッとするよ」
「今日は昼休みにアッコとの間にあんなことがあったから、余計にモヤモヤしとったんやろ?」
「ああ、たしかにそうだね。おかげでいいストレス解消になったよ」
そこで潮音と並んでプールサイドに腰を下していた優菜も、揺れるプールの水面を見つめながら潮音に話しかけた。
「なんかこないにしとると、中学のときの水泳部のことを思い出すよね。あのときはこんな冬でも泳げるような立派な温水プールなんかあらへんかったけど、椎名君も尾上さんも一緒で楽しかったよね」
潮音は優菜が「尾上さん」と名を呼ぶのを聞いて、自分が男の子として玲花にほのかな想いを寄せていたときのことを思い出して、胸の奥が甘酸っぱくなるのを感じていた。
そこで潮音は、先ほどの昼休みに暁子が告白したことの話題を優菜に振った。
「でも優菜、さっきの昼休みに暁子が言ったことをどう思った? まさか暁子に好きな男ができる日が来るなんて思わなかったよ」
しかし優菜は、浮ついた口調で話す潮音をきっぱりとたしなめた。
「潮音、こういうデリケートなことは興味本位で茶化したりしてもええような問題とちゃうで。それにアッコかてこの年頃になったら、好きな男の子の一人くらいできたっておかしくないよ」
優菜にたしなめられて、潮音も少し調子に乗りすぎたと反省したような顔をしながら、少しの間黙った後で口を開いた。
「その暁子が好きな男の子っていうのがどんな子かわかんないけど、暁子と仲良くなれたらいいのにな。せっかく今はバレンタインの前なんだから、ダメもとで告白してもいいのに」
そこで優菜は、再び潮音をたしなめるように言った。
「潮音は『ダメもとで』なんて言うとるけど、それでダメだった場合、アッコが傷ついたりしたら責任取れるん」
そこで潮音も、優菜を向き直すときっぱりと言い放った。
「傷つくことなんか怖がってたら、人間何もできやしないよ」
そう言い放ったときの潮音の表情は、遠くを見つめながら何かを思い出そうとしているかのようだった。それを見て優菜も答えた。
「潮音はやっぱり、尾上さんのこと好きやったからそういうこと言うん」
そこで潮音ははっきりと言った。
「いや…尾上さんが椎名とつき合ってるなんてことは十分わかってたよ」
「そこで潮音もずっと一人で悩んどったわけやね。でもアッコかて、中学の頃からあんたのこと好きやったんやないかってちょっと思っとるんやけど。あの子自身、気づいてなかったかもしれへんけどな」
優菜に言われて、潮音は少し当惑したような顔をした。
「それはそうかもしれないけど…だったらどうすりゃよかったんだよ」
「潮音はアッコとは今まで通りに自然につきおうたらええんとちゃうかな。それがアッコにとっていっちゃん嬉しいはずやで。それに今度のことかて、潮音はあまりいらんおせっかいをやいたりせずに、アッコの気持ちを第一に考えるのが大切やと思うよ」
「そんなことわかってるよ。私と暁子の関係は、これまでのような関係がずっと続くわけないからね。今は暁子がこの男の子と仲良くなれたらいいのにね」
「やっぱりアッコのことを突き放して見ることができるようになったってことは、それだけ潮音も成長したってことやね」
「そうかなあ」
そこで優菜は、当惑した表情をする潮音の肩をぽんと叩いてやった。
「今はそんなことばっかりクヨクヨ悩んでへんで、もう一泳ぎしてから帰ろうか」
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