皆と仲良くしたい美青年の話

ねこりんご

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黒の帳 『一つ目の帳』

+ 天野視点 面倒な先輩

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一頻り根暗野郎と笑ったあと、俺はこんなことしてる場合じゃないと気づいた。

そうだ、あの人を探さないと。

根暗野郎に別れを告げ、校内を歩き回る。
やはり不良校と言うべきか、授業中にも関わらず、あちこちに生徒が屯している。ピアスをジャラジャラつけた見た目だけでイキってる奴、何か奇抜な色に染めすぎてミラーボールみたいな頭してる奴。…やべ、見てると殴りたくなってきた。目がチカチカすんだよ、アイツら。

こんな奴らの中に、あの美しい人がいるとは到底思えない。やっぱり、あの時のは幻覚じゃないか、なんてことまで頭をよぎる。それ程までにあの人は綺麗だった。
センコーに聞いてみようか。いや、それは情けない。無しだ。何としてでも自分の手で見つけてみせる。一年生ということは分かってるんだ、それだけでも充分な手がかりだ!
とりあえず、俺は一クラスずつ覗いていくことにした。

A組、やけにざわついてるが、特に目立った奴は見えない。横山ちゃんが~とか聞こえたが、俺には関係ない。
B組…は、チラッとだけ見た。天パ野郎に遭遇するなんてごめんだからな。でも、やっぱり居ない。というか、怪我してる奴がやたら多い。天パ野郎がやったのか?アイツが頭になったらしいしな。あの人のことは天パ野郎も見かけていないと言っていたし、そうなるとC組にも居ないだろうな。
C組はとばしてD組、やはり居ない。さっきぶっ倒した雑魚二人が見えた。アイツらはここのクラスだったんだな。
E組、望みを込めて覗いたが、居ない。褐色の大男が偉そうにしている。ここの頭はアイツなのかもしれない。まあ、どうでもいいな。

…居ねぇじゃねぇか!

やはり今日は学校へ来ていないんだろうか。真面目そうな人だから、授業をきちんと受けていそうなものだが。いや、服装だけで判断するのは早計だったのかもしれない。あんな美しさを持っておきながら、抗争のど真ん中で大暴れとか…いや、それもありだな、可愛い。隣で共闘したい。
とにかく、教室には居なかったんだ、他を探すべきだろう。二階、三階と上がっていく。二階には二年生、三階には三年生の教室がある。怖ぇ先輩には目を向けないように気をつける。絡まれたらヤバい。喧嘩に勝てないかもしれないのもあるが、喧嘩なんかで時間を取られるのは嫌だ。
だが、そんな俺の希望は踏みにじられた。

「よォ天野」

聞き覚えのあるハスキーな声。この人に見つかるなんて…!

「わ、渡来先輩、ちっす」
「ちっすじゃねぇよ。お前、この高校に入るなら何で俺に言わねぇんだ、あ?」
「すみません、渡来先輩なら知ってるかなーって思って」

アンタに構ってる暇はねぇんだよ!!
と言えたらいいのだが、言える訳がない。

渡来賢吾わたらいけんご、この高校の三年生で、元番長。喧嘩がめちゃめちゃ強い。おまけに超乱暴で、後輩には力づくで言うこと聞かせている。パシられるのが嫌なのでMineはこっそりブロックした。バレてないといいんだが。
俺が中学で暴れてた時に目をつけられ、完膚なきまでに叩きのめされて以来、俺はこの人に逆らえない。あの時の喧嘩、いや、あれは一方的な暴力だ。なぜなら俺は渡来先輩に傷一つ付けられなかったから。
裏番はそんな渡来先輩を簡単に沈めたらしい。俺が裏番に纏わる化け物級の噂を信じたのも、それを聞いたからだ。勿論その時の裏番は無傷。マジでバケモンだ。

「どうだ、新入生は。可愛い奴、鼻につく奴、…色々居るよな、教えろ」
「……ま、まあ、色々居ますけど、特にこいつがーっていうのはないっスね」

可愛い奴、いや、美しい人なら居る。だがどう口を滑らそうが、絶ッッ対に言わないからな!それと、天パ野郎はムカつくけど、言う必要は無い。
あの人を教えれば渡来先輩という最悪のライバルが増えるし、天パ野郎を教えれば嫌なことが起きる。天パ野郎はムカつくが、非常にムカつくが、このもっとムカつく先輩に差し出すほどムカついちゃいない。
あー、早くこの場を去りたい。

「…そうだ、お前。Mineブロックしてんだろ。グルも抜けてっしよ、なァ」
「いやっ、え、誤操作じゃないすかね?サーセン、直ぐにやっときますんで」

バレてたか~
面倒だな、渡来先輩。面倒くさい彼女ってこんなんだろうな。渡来先輩は逆立ちしたって女には見えねぇけど。

「ダメだ、今すぐやれ」
「サーセン、スマホ持ってないんすよ。教室に置いてきちゃって」

ほんっとに面倒くせぇな!!
勿論、現代っ子がスマホを手放すわけが無い。俺のポッケにガッツリ入ってる。だが、今すぐこの場を離れたい俺は嘘をついた。

「…後でやっとけよ。ああそうだ、1-Eには俺の弟が居るからな。渡来慎吾だ、覚えとけよ?」
「うっすうっす、んじゃ失礼しやーす」

E組には褐色の大男が居たな。渡来先輩もごついし、色が黒いから、アイツが弟なのかもしれない。覚えておこう。先輩は弟を可愛がっているから、万が一があるとちょっと怖い。
渡り廊下を渡ると他の校舎に行けるが、今日はここまでにしておこう。これ以上フラフラして他のヤバい先輩に目をつけられるのはよくない。
気づけばもう五限目が終わる。学校が終わればここに居ても仕方がない。でも、あの人が放課後どこにいるかなんて分からない。
こういう時は、気分転換だ。とにかく色々なところをブラブラしよう。思いがけない場所で会えるかもしれないから。


この時の俺の判断を全力で褒めてやりたい。
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