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黒の帳 『一つ目の帳』
+ 天野視点『可愛い男の子』
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めちゃめちゃ暇だ。
根暗野郎を観察するのにも飽きてしまった。明日からはイヤホンを持ってこよう。音楽を聞けば暇つぶしくらいにはなるだろう。そもそもスマホの充電を忘れたからもう電源が入らない。
根暗野郎はめちゃめちゃ勉強している。一度も休むことなくサボることなく、シャーペンを動かし続けている。真面目なんだな。
それと、気づいたことがある。いくら俺が馬鹿だといっても、何を勉強しているかくらい分かる。だが、根暗野郎はめちゃめちゃ頭が良さそうだ。俺にとっては全く訳の分からない問題を見ても、数秒見ただけで答えを描きやがる。問題集が簡単なのかと思ってよくよく覗いてみると、
〔K大教授によるワカル数学(上級編)〕
と書いてあった。は?K大?めっっちゃ頭いいとこじゃねぇか。T大じゃないってところが現実味があって恐ろしい。
チャイムが鳴ると、根暗野郎はノートをしまった。これから昼休みだからな、勉強は終わりだ。俺は朝コンビニで買ってきたから、購買に行く必要は無い。隣の根暗野郎も弁当箱を取り出した。
弁当か。
自分で作ったのか、それとも、作ってくれる家族が居るんだろうか。俺とは違うな。料理が出来るほど器用ではないし、作ってもらえるほど家族仲がいいわけでもない。
だが、根暗野郎は弁当箱を開くことなく、弁当箱を持って立ち上がった。何を考えてんだ?
「おい、どこ行くんだ」
「屋上だよ」
「屋上ッ!?」
屋上つったら、中央柳高校の危ない場所ランキング一位だろうが。だって、そこは、最凶の裏番、そいつの居住区みたいなもんだ。そこに行くなんて自殺行為だ。
「何でだ、裏番に用事あんのか」
まさか、あるわけないだろ。屋上って楽しそう!とか馬鹿なこと考えて、今日初めて行こうとしてるとかそんなとこだろう。
「うん、一緒にお昼食べるんだ」
は、はァ~~~~~~~~~~!?
信じられない。今の俺はきっと間抜けな顔をしている。だがそれを気にしていられないほどの衝撃に襲われている。
裏番と仲がいいのは本当だったらしい。出会いと親交を深めた理由を聞く機会を何としても探さねえと。
「まあ居ないかもしれないけどね」
「なんだよそれ」
「天野君はお昼どうするの?」
「…裏番か」
正直、怖い。何たって渡来より遥かに強い。渡来に手を出せずやられた俺だから、尚更恐ろしい。
だが、根暗野郎が行くんだ、大丈夫だろう。どこか秀でた人間は変なやつであることが多い。根暗野郎を受け入れたのなら、俺のこともしれっと受け入れてくれるかもしれない。
そして何よりも、リンさんのことを聞かせて欲しい。
よし、行くぞ。
俺は勇気を振り絞って返事をしようとした。
「いや、俺も屋上に」
「失礼しまーす!!」
こ、この声、聞き覚えあんぞ、おい。
教室の入口を見れば、横山が居た。おい、嘘だろ、お前ここまで来たのかよ。何でだ、俺のことなんか放っとけよ。
「ね、優人くん。僕と一緒にお昼食べない?」
「えっ、天野君!?」
ッだーーーー邪魔だァ!!!
馴れ馴れしい。俺らまだ一回しか会ってねぇだろ!
お前より、リンさんの手がかりが得られそうな裏番と食う方が俺には得だ。
断らせてもらおう。
「…横山か。悪いけど、昼メシはコイツと」
「あーあーあー是非行きたいって!ね、天野君!!」
「あ!?何テメェ勝手なこと言って」
「やった~!優人くん、体育館のベンチね、あそこ日当たりいいんだよ!」
クソっ、何で根暗野郎が横山側に回るんだ!?
そんなに俺に守られるのは嫌か?
「ちょ、待て、俺はな」
「天野君、ちょっとこっち。横山君、ちょっと待っててね、すぐ終わるからね」
「分かった!」
根暗野郎はどういうつもりなんだ。奴は俺を引っ張り、こっそり囁いてきた。
「ちょっと、あんなに可愛い子の誘い、何で断るの。私なんかと居ないでさ、あの可愛い子とお昼食べなよ、絶対楽しいよ?」
「あのな、リンさんはアイツより可愛いんだ。アイツと飯食うくらいならリンさんへの手がかりになる裏番と話をだな…」
「えっどこが?横山君の方が断然可愛いでしょ?いくら騒がれる顔面だからってあの子に比べれば…」
は?
コイツ許さん。
騒がれる顔面?本人だって好きで騒がれてるわけじゃないだろ、何て酷いこと言いやがる。俺が絶賛していることから騒がれる顔面と呼んだのだろう。
だって、リンさんを見れば絶対そんなこと言えないからな。
根暗野郎は少し遅れて失言に気づいたらしく、口元に手を当て、口端を引き攣らせている。
「……………あっ」
「お前、何様のつもりでリンさんを侮辱してんだ、あ?」
「ごめんっ、ごめん!今のは言葉の綾っていうか、ほら、あるじゃん」
「何があるってんだよ、あぁ?舐めてんのかオイ」
「いや、個人の感想っていうか、ね、ね!ほら、人それぞれ好みがあるじゃん、だから今のは許してほしッ」
個人の感想?人それぞれの好み?
そんなもので人の悪口が許されると思ってんのかよ。お前だって片桐に酷いこと言われて落ち込んだだろ、何でそんなことが言えるんだ。
許せなくて、根暗野郎の胸元を掴み、引き寄せて睨みつけた。マジで許せん。
でも、殴っちゃダメだ。守るって決めた。
震える片手を気合いで抑える。我慢しろ、俺。
「ちょっと、優人くん何してるの?」
「横山は黙ってろ」
「ダーメ、凛の怖いことしないで?」
いつの間に横に回っていたんだ。横山が俺に話しかけてくるが、これは俺らの問題だ。首を突っ込まないで欲しい。こいつに分からせてやりたい。リンさんの悪口は許さない。
「えっ、君が横山凛君!?」
横山が自分のことを名前で呼んだ瞬間、根暗野郎が飛び上がるように驚いた。
「そうだけど?」
「何だ、お前知ってんのか」
「…A組の、頭?」
「頭?横山が?」
何言ってんだ?横山はどこからどう見ても無害で可愛い美男子だ。喧嘩なんかとてもじゃないが出来そうにない。
横山は笑顔でその質問に答えた。
「あはは、何言ってんの?ねえねえ優人くん、僕もこの子とお話したいな」
やはり違うようだ。当たり前だろ、こんな奴が頭だったら意味わかんねぇもん。
横山が話したいと言うなら、こいつを差し出してやらなきゃならない。横山は、俺が手を離すと根暗野郎を連れて行った。
顔をうんと近づけ、内緒話をしている。俺には聞かれたくないことだろう。
早く終わらないかな。早く屋上に行きたい。
待っていると、突然横山の大声が響き渡った。
「なっ、なに、何言ってんの!?僕の可愛さに何とも思わない優人くんがムカついてるだけだけど!?あー本当リンさんって誰なんだか、ね!!あーもういい、もうお前には話しかけない」
めちゃめちゃキレているが、顔は真っ赤だ。可愛い。一体何を言われたんだ?
俺が疑問に思っていると、横山は足早に俺に駆け寄り、俺の腕を掴んだ。
「ほらっ優人くん行こ!!」
は?
いやいや、行かねぇよ。
そう思って足を動かさなかった。
だが、次の瞬間恐ろしいことが起きた。
横山は、俺の事を片手で引きずった。
…え?
俺は体重もあるし、自分で踏ん張っていた。横山のように華奢な奴なら、いくら男でも俺を動かせないはずだ。
それなのに、横山はなんてことのないように引っ張っていく。この細腕のどこからこんな力が出ているんだ。はたから見れば俺が大人しく着いていっているように見えるだろう。
唖然とする俺には取り合わず、横山は俺を連れ出したのだった。
根暗野郎を観察するのにも飽きてしまった。明日からはイヤホンを持ってこよう。音楽を聞けば暇つぶしくらいにはなるだろう。そもそもスマホの充電を忘れたからもう電源が入らない。
根暗野郎はめちゃめちゃ勉強している。一度も休むことなくサボることなく、シャーペンを動かし続けている。真面目なんだな。
それと、気づいたことがある。いくら俺が馬鹿だといっても、何を勉強しているかくらい分かる。だが、根暗野郎はめちゃめちゃ頭が良さそうだ。俺にとっては全く訳の分からない問題を見ても、数秒見ただけで答えを描きやがる。問題集が簡単なのかと思ってよくよく覗いてみると、
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と書いてあった。は?K大?めっっちゃ頭いいとこじゃねぇか。T大じゃないってところが現実味があって恐ろしい。
チャイムが鳴ると、根暗野郎はノートをしまった。これから昼休みだからな、勉強は終わりだ。俺は朝コンビニで買ってきたから、購買に行く必要は無い。隣の根暗野郎も弁当箱を取り出した。
弁当か。
自分で作ったのか、それとも、作ってくれる家族が居るんだろうか。俺とは違うな。料理が出来るほど器用ではないし、作ってもらえるほど家族仲がいいわけでもない。
だが、根暗野郎は弁当箱を開くことなく、弁当箱を持って立ち上がった。何を考えてんだ?
「おい、どこ行くんだ」
「屋上だよ」
「屋上ッ!?」
屋上つったら、中央柳高校の危ない場所ランキング一位だろうが。だって、そこは、最凶の裏番、そいつの居住区みたいなもんだ。そこに行くなんて自殺行為だ。
「何でだ、裏番に用事あんのか」
まさか、あるわけないだろ。屋上って楽しそう!とか馬鹿なこと考えて、今日初めて行こうとしてるとかそんなとこだろう。
「うん、一緒にお昼食べるんだ」
は、はァ~~~~~~~~~~!?
信じられない。今の俺はきっと間抜けな顔をしている。だがそれを気にしていられないほどの衝撃に襲われている。
裏番と仲がいいのは本当だったらしい。出会いと親交を深めた理由を聞く機会を何としても探さねえと。
「まあ居ないかもしれないけどね」
「なんだよそれ」
「天野君はお昼どうするの?」
「…裏番か」
正直、怖い。何たって渡来より遥かに強い。渡来に手を出せずやられた俺だから、尚更恐ろしい。
だが、根暗野郎が行くんだ、大丈夫だろう。どこか秀でた人間は変なやつであることが多い。根暗野郎を受け入れたのなら、俺のこともしれっと受け入れてくれるかもしれない。
そして何よりも、リンさんのことを聞かせて欲しい。
よし、行くぞ。
俺は勇気を振り絞って返事をしようとした。
「いや、俺も屋上に」
「失礼しまーす!!」
こ、この声、聞き覚えあんぞ、おい。
教室の入口を見れば、横山が居た。おい、嘘だろ、お前ここまで来たのかよ。何でだ、俺のことなんか放っとけよ。
「ね、優人くん。僕と一緒にお昼食べない?」
「えっ、天野君!?」
ッだーーーー邪魔だァ!!!
馴れ馴れしい。俺らまだ一回しか会ってねぇだろ!
お前より、リンさんの手がかりが得られそうな裏番と食う方が俺には得だ。
断らせてもらおう。
「…横山か。悪いけど、昼メシはコイツと」
「あーあーあー是非行きたいって!ね、天野君!!」
「あ!?何テメェ勝手なこと言って」
「やった~!優人くん、体育館のベンチね、あそこ日当たりいいんだよ!」
クソっ、何で根暗野郎が横山側に回るんだ!?
そんなに俺に守られるのは嫌か?
「ちょ、待て、俺はな」
「天野君、ちょっとこっち。横山君、ちょっと待っててね、すぐ終わるからね」
「分かった!」
根暗野郎はどういうつもりなんだ。奴は俺を引っ張り、こっそり囁いてきた。
「ちょっと、あんなに可愛い子の誘い、何で断るの。私なんかと居ないでさ、あの可愛い子とお昼食べなよ、絶対楽しいよ?」
「あのな、リンさんはアイツより可愛いんだ。アイツと飯食うくらいならリンさんへの手がかりになる裏番と話をだな…」
「えっどこが?横山君の方が断然可愛いでしょ?いくら騒がれる顔面だからってあの子に比べれば…」
は?
コイツ許さん。
騒がれる顔面?本人だって好きで騒がれてるわけじゃないだろ、何て酷いこと言いやがる。俺が絶賛していることから騒がれる顔面と呼んだのだろう。
だって、リンさんを見れば絶対そんなこと言えないからな。
根暗野郎は少し遅れて失言に気づいたらしく、口元に手を当て、口端を引き攣らせている。
「……………あっ」
「お前、何様のつもりでリンさんを侮辱してんだ、あ?」
「ごめんっ、ごめん!今のは言葉の綾っていうか、ほら、あるじゃん」
「何があるってんだよ、あぁ?舐めてんのかオイ」
「いや、個人の感想っていうか、ね、ね!ほら、人それぞれ好みがあるじゃん、だから今のは許してほしッ」
個人の感想?人それぞれの好み?
そんなもので人の悪口が許されると思ってんのかよ。お前だって片桐に酷いこと言われて落ち込んだだろ、何でそんなことが言えるんだ。
許せなくて、根暗野郎の胸元を掴み、引き寄せて睨みつけた。マジで許せん。
でも、殴っちゃダメだ。守るって決めた。
震える片手を気合いで抑える。我慢しろ、俺。
「ちょっと、優人くん何してるの?」
「横山は黙ってろ」
「ダーメ、凛の怖いことしないで?」
いつの間に横に回っていたんだ。横山が俺に話しかけてくるが、これは俺らの問題だ。首を突っ込まないで欲しい。こいつに分からせてやりたい。リンさんの悪口は許さない。
「えっ、君が横山凛君!?」
横山が自分のことを名前で呼んだ瞬間、根暗野郎が飛び上がるように驚いた。
「そうだけど?」
「何だ、お前知ってんのか」
「…A組の、頭?」
「頭?横山が?」
何言ってんだ?横山はどこからどう見ても無害で可愛い美男子だ。喧嘩なんかとてもじゃないが出来そうにない。
横山は笑顔でその質問に答えた。
「あはは、何言ってんの?ねえねえ優人くん、僕もこの子とお話したいな」
やはり違うようだ。当たり前だろ、こんな奴が頭だったら意味わかんねぇもん。
横山が話したいと言うなら、こいつを差し出してやらなきゃならない。横山は、俺が手を離すと根暗野郎を連れて行った。
顔をうんと近づけ、内緒話をしている。俺には聞かれたくないことだろう。
早く終わらないかな。早く屋上に行きたい。
待っていると、突然横山の大声が響き渡った。
「なっ、なに、何言ってんの!?僕の可愛さに何とも思わない優人くんがムカついてるだけだけど!?あー本当リンさんって誰なんだか、ね!!あーもういい、もうお前には話しかけない」
めちゃめちゃキレているが、顔は真っ赤だ。可愛い。一体何を言われたんだ?
俺が疑問に思っていると、横山は足早に俺に駆け寄り、俺の腕を掴んだ。
「ほらっ優人くん行こ!!」
は?
いやいや、行かねぇよ。
そう思って足を動かさなかった。
だが、次の瞬間恐ろしいことが起きた。
横山は、俺の事を片手で引きずった。
…え?
俺は体重もあるし、自分で踏ん張っていた。横山のように華奢な奴なら、いくら男でも俺を動かせないはずだ。
それなのに、横山はなんてことのないように引っ張っていく。この細腕のどこからこんな力が出ているんだ。はたから見れば俺が大人しく着いていっているように見えるだろう。
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※11/12に10話加筆しています。
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