皆と仲良くしたい美青年の話

ねこりんご

文字の大きさ
125 / 153
黒の帳 『一つ目の帳』

+ 天野視点『争奪戦』

しおりを挟む
学校に着き、いつものように教室へ入る。
俺もすっかりいい子ちゃんの仲間入りだな。

この不良校に安全な場所は無いが、この教室は中々落ち着ける。俺より強い奴はいないし、変な奴だって居ねぇ。

「おっはよー鈴ちゃん」
「よぉ紫川」
「今日も可愛いねっ☆」

…居た、変な奴居た。

昨日のゴミ共だ。口々に鈴に話しかけると、瞬く間に走り去っていった。何がしてぇんだ。

鈴が不安そうにしているのが分かる。コイツらも栗田と同じく懸念材料だ。栗田に加えてコイツらも鈴の視界に入らないようにしたいな。

決めた。アイツらやるか。

「うっげー、アイツら今日も居んのか」
「よし、一週間くらい不登校にしてやるか。俺と片桐なら余裕だ」
「そこまでしなくていいよ」

…鈴が見てないところでやるべきだな。
コイツは優しすぎる。

「…お、おは、おはようございます」
「如月先生、おはようございます」

鈴と先公はそのまま話し始めた。なーんかいろんな単語が聞こえるな。体育、林間学校…、不良校のくせにそれっぽいイベントあるのかよ。

何となく先公を観察していたら、あるものを発見して気分が悪くなった。先公の首、キスマ付いてんじゃん。教育者としてどうなんだよ。この不良校で常識を語っても仕方ないが、それにしてもキスマはないだろ。自慢か?
鈴も気づいたらしく、指摘された先公は気まずそうに去っていった。だったら最初から隠しとけよ。

先公が立ち去り、鈴はカバンを探り始めた。暫くして鈴が手にしたのは、林間学習と書かれた冊子だった。

「…なあなあ鈴、今から何するんだ?」
「林間学習って聞こえたぞ」
「ああ、五月に二泊三日の林間学習があるんだって。それのグループ決めとか部屋決めを、今からやろうと思って」

そう言うと、鈴は教室を見渡した。

今の教室はかなり騒がしい。鈴一人が声を張ったって、聞こえるのは近くにいる俺たちだけだろう。

…仕方ないな。俺が手伝ってやるか。


「なあ鈴、俺がやってやらねぇこともねぇぞ?」
「鈴もうあっちにいるぞ」
「えっ」

片桐にそう言われ、俺は鈴がいた方を見た。鈴は既に、とことことクソ雑魚のところへ歩いていた。

「…いや、俺…そんな信用ねぇか?」
「当たり前だ。ぽっと出だろ」
「お前も頼られてないだろ」
「うっ…」

生産性の無い会話をだらだらと続けていたら、ピアスを付けた奴が教室にいる奴らに呼びかけた。いや、不良が言うこと聞くか?だが、俺の予想に反して、クラスの奴らは大人しくゾロゾロと集まってきた。

…気のせいかもしれないが、何人かが鈴をチラチラと見ている気がする。
昨日の変な三人組もそうだが、鈴の周りは変な奴が多いな。また絡まれたら助けてやろう。

「…今日の体育は四限目にあるんだって。それと、これが本題なんだけど、五月の下旬に林間学習があって、それで、そのグループとか部屋決めを」
「はいはいはいはいはーい!」

鈴が話している最中に、大声が聞こえた。大声を出したのは、昨日鈴に絡んだゴミ三人衆の一人だ。
全員の視線を集めたのを確認すると、ソイツは再び大声で主張した。

「俺鈴ちゃんと一緒がいい!」
「東うるせぇ!!」
「だったら俺だって紫川と一緒がいいんだが!?」
「お前ら二人ばっかずりぃぞ!!特に天野!」

突然名指しを受け、俺は全員に注目された。

「お前そんなに仲良くなりやがって、鈴ちゃんのこと狙ってんなら俺が許さん!!」

何だ、嫉妬か?
男の嫉妬が一番醜いってなんかに書いてあったぞ?

ダッセェ奴だな。
こんな奴ら、気にすることもない。

「俺らが静かだからって調子乗んなバーカ!!」

は?

「今俺の事馬鹿っつったの誰だコラァ!!!」

罵倒は別だ。この俺を馬鹿だなんて呼ぶ馬鹿はぶっ飛ばしてやる。俺は馬鹿じゃねぇ。
反射的に俺が叫ぶと、俺を馬鹿と言った男が怒鳴り返してきた。

「あ"ぁ!?文句あんのか!!」
「大体なあ、男一人にぴーぴーうるせぇんだよ、ダッセェ嫉妬か、あ"!?」
「だったらお前もしょーもねぇ独占止めろ!?力に物言わせて好きな子囲ってんじゃねぇよ!!」
「はァ!!??好きじゃねェし!!!!!!」

…ヤベェ。

啖呵を切る時は勢いが大事だ。詰まったり噛んだりしたらダサさの極み。ほぼ反射で言葉を返すからか、思いつく限りのことがぽんぽんと口から出る。

だが、今のはマズかった。

今のはまるで、好きな子をからかわれた童貞のようなキレ方だ。

相手がきょとんとし、俺も言葉に詰まる。

だがそこで助け舟が出た。

「お前らうるせえーーーーっ!!!鈴がビビってんだろうが!?鈴の話全部聞いてから喧嘩しろよ!」

片桐がそう叫び、喧騒は波が引くように鎮まった。クラスの奴らが口々に鈴に謝るが、俺は悪くないから謝らないぞ。

…後でクラスの奴らに何か言われるだろうな。聞いてきたら殴って黙らせるか。いや、それだと図星に見えるか。うーん…、考えておかないとな。


その後鈴は、何故か陰キャメガネ共を呼び寄せ、話を再開した。奴ら、鈴をチラチラと見てやがる。後でアイツらもシメとくか。

鈴が口を開いた瞬間、またしても邪魔が入った。鈴はそういう体質なのだろうか。

「はい!決める前に一個」
「何?龍牙」

だが、邪魔をしたのは片桐だ。幼馴染みだからか、鈴は母親のようににっこり笑って、片桐を促した。何か姉弟みたいだな。

「鈴のメンバーは俺と天野を絶対入れるぞ」
「は!?」
「んなクソみてぇな独裁許さん!!」
「鈴は絶対そっちの方がいいだろ、な?」

…何で俺を入れてくれたんだ?
信用されているのか。

片桐のことを敵視しているが、その気遣いには何だかムズムズする。何だ、フェアにいこうって話か?

「うん、私もそっちの方が」
「なあ紫川、同じ奴らと居ちゃあ行事の意味が無ぇんじゃねぇの?」
「そうそう、もっと色々な奴と仲良くならなくちゃダメだろ」

そう言われ、鈴は考え出した。
いやいやいや、考える必要無いだろ。コイツらの顔見てみろ?にやにや笑って、自分が選ばれないかって顔してんぞ?


片桐は呆れた様子で鈴に声をかけた。
俺も何か言ってやらないと。

「鈴、騙されんな。コイツら頭ん中ピンク色だぞ。脳が下半身に直結してる」
「俺らが抜けたとこに収まろうとしてるだけだからな?よく考えろよ」

俺たちの言葉を聞き、鈴は少し拗ねてしまった。まさか本当に友達になれるとでも思っていたのだろうか。馬鹿で呑気だなあとは思うけれど、口を尖らせて喋る鈴は、ちょっと可愛い。…小動物的な意味で。

「やっぱり私、龍牙と天野君と一緒のグループがいい」
「そうしろ」
「さんせーい」
「「「えーーーー」」」

クラスの奴らの不満げな声は、誰にも聞き入れられない。

その後は何の支障もなくメンバー決めが進んでいった。部屋決めで若干騒ぎになったが、特に喧嘩はせずそれも決まった。
俺、片桐、鈴、よく知らないメガネ、この四人だ。昼飯の班は五人で、俺と片桐と鈴、その他二人に決まった。

…林間学習か。
二段ベッドってあるかな。ま…枕投げとかしてみるか?風呂ってどうなるんだろう。昼はカレーだろうか。肉いっぱいだといいな。

…リンさんにも会えるかな。


………ちょっとだけ、ほんの少しだけ、楽しみだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話 ※長くなりそうでしたら長編へ変更します。

処理中です...