リコの栄光

紫蘇ジュースの達人

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古びたアルバム

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「・・・というわけで、アルカディア王国との因縁が、今の世界情勢に暗い影を落としているのである。そろそろ時間なので本日の授業はこれまで。そうそう、連絡事項を1点言い忘れていました。リコ・バルトは講義終了後、教官室のロキ教官のところまで行って下さい。以上です。」

「起立。教官に礼。直れ。ありがとうございました!」

その日最後の講義であるジラルディ教官の講義が終わった。


「リコ、何かやったのか?」
サッチが心配そうな顔をしている。

「居眠りがばれたんじゃない?リコ腕立て伏せ頑張ってねー。」
モモはうれしそうだ。

「失礼な。俺は居眠りなんかしてないって。でも何だろうな、心当たりがないよ。」
「とりあえず、行ってくる。」

リコは教官室へと走っていった。


「入ります。訓練生リコ・バルトは、ロキ教官に要件があって参りました。」

ロキ教官は書類を見る手を止めて、ゆっくりと立ち上がった。

「リコか、ついてこい。」

教官室を出て、廊下のつきあたりに地下に通じる階段がある。夜間はセキュリティーがかかるため、学生たちが立ち入りを禁止されているエリアだ。
ロキ教官はゆっくりと薄暗い階段を下りて行った。
階段を下りてすぐ右側に書庫があって、扉には鍵が掛けられていた。
ロキ教官は鍵を開け、部屋に入ると電球のスイッチを入れた。棚の奥のほうから一冊のアルバムを出し、ページをめくっていく。

「見てみなさい。」
訓練服を着た二人の青年が、肩を組んで笑っている。

「これは・・・父さん?」
「そうだ。」
「となりにいるのは?」
「俺だ。」
「・・・?!」
「俺とレオは、同期で親友だった。」

「当時レオは体力はなかったし、学業の成績が良いわけでもなかった。ただ、射撃の腕前が当時からずば抜けていたんだ。教官ですら誰一人勝てなかったほどだ。」
「今のお前と本当によく似ているよ。」

「この間、レストランでアルカディアの夜明けの襲撃があったな。」
「はい。あの時はすみませんでした。」
「それはいい。お前に話さなければならないことがあるんだ。レオに関することでもある。」

「俺たちは仲の良い同期でな、よく3人で一緒にいた。」
ロキはそう言って、アルバムのページをめくっていき、あるページで手を止めた。
「これがレオ、これが俺、そしてこれがゾーイだ。ゾーイ・エンリケ。」
「ゾーイ・エンリケ・・・。」
その写真には、いたずらっぽく笑う背の高い青年が写っていた。

「俺たちは真の同期だった。訓練では真剣にぶつかり合い、週末は夜が明けるまで馬鹿な話をして遊んだ。共にこの国を守ろうと誓い合った。
訓練学校を卒業しても俺達の友情は続き、3人とも目標にしていたレンジャー部隊に入隊することができたんだ。」

「だが、世界統一大戦の前、ゾーイの父親が撃たれて死んだ。強盗に襲われたらしい。それからゾーイは人が変わったようになってしまって、仕事を休みがちになったんだ。そんな状況だから当然世界統一大戦にも召集させることはなかった。」

「お前の親父さんは知っての通り、スナイパーとして伝説的な活躍をして、国王から勲章を頂ける話もあったほどだ。まあ、辞退したのはいかにもあいつらしいが。」
「ある日、レオが管理を任されていた金庫の中身が、何者かによってすべて盗み出されていたんだ。それだけじゃない。軍の機密情報が記されたファイルも無くなっていた。」

「防犯カメラの映像を確認すると、ゾーイらしき人物が数人の男に指示を出し、犯行に及んだことが分かったんだ。」

「ゾーイは軍の金と情報を持って、あろうことか、アルカディア軍に寝返り、アルカディアの夜明けというテロ組織の指導者になった。あいつがなんでこんなことをしたのか、俺には分からないが、レオは何かを感じていたようだった。」

「お前にこの話をしたのは、あの日あの店でお前が組織の人間に顔を見られたからだ。名前を知られたかもしれない。」

「リコ、用心しろ。この男の顔をよく覚えておけ。」

ロキはゾーイの写った写真のページを開いていく。
ピースサインをしている一枚の写真を見て、リコは何かに気が付いた。

「六芒星・・・。」
左手首に、くっきりと六芒星の入れ墨があった。

「僕がまだ小さい頃、父さんの仲間が裏切った話、その男の左の手首に六芒星の入れ墨がある話を聞いたことがありました。」

「おそらくゾーイのことだろう。お前に危害が及ばないように警戒していたんだ。とにかく、外では用心するんだ。何かあったらすぐに連絡しなさい。」

「ありがとうございます。」

うす暗い廊下を歩きながら、リコは部屋へと戻っていった。
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