幸薄な私達の幸せな在処

こん

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私はただの町娘。
両親が営む薬屋の手伝いをいつもしている。

今日、変な夢を見た。起きた時はビックリして戸惑ったものの、朝ご飯を食べている頃には夢だと受け入れた。

食卓には、今日の新聞が置いてあった。大々的な見出しで“3年後に魔王復活の予言!?勇者探しを王室が開始”と書かれていた。
魔王と言っても、私にはあまり実感がない。500年くらいに一度、誕生しているらしくその度に勇者探しが行われるそうだ。勇者に選ばれた人間は、魔王討伐後には大抵王様の娘を貰ったり貴族の位を貰ったりしているそうなので報酬はかなりいいと見受けられる。

今日も、両親の手伝いで薬草採取。
幸い、私は生まれながらに魔法を授かっている。平民が魔法を授かるのは滅多にないそうなので、ラッキーだ。

魔法で採取場所に飛ぶ。
指定された薬草を探すが、今日は上手く見つからない。森の中へ入って行くが、私の性格的に見つけるまで辞められなくなってしまった。

「あった……!」

やっと見つけた最後の一つ。やり遂げた達成感に浸ったのも束の間、日がほぼ落ちかけている事に気づく。
急いで帰ろうと魔法を使おうとした時、何かがいきよいよく飛び出してきた。

「……ぁ…」

魔物だった。

怖くて足がすくむ。
恐怖のせいか、魔法が上手く使えなくなった。
さらに焦り始める。

その魔物は、私に向かって大きく腕を振り上げた。終わりだと思って目を瞑る。

しかし、何も起こらなかった。

恐る恐る目を開けると、そこには倒れたさっきの魔物と魔物から剣を引き抜く同年代くらいの男の子がいた。

「君は……」

その男の子は、綺麗な銀髪をしていた。

「私を助けてくれたの?」

私の言葉にうんともすんとも言わず、こちらを振り返る。
瞬間、心臓を鷲掴みにされたような感覚が私の中を駆け巡った。

彼は赤い瞳をしていた。
赤い瞳に銀髪。それは、この国での忌み子の象徴だ。
しかし、そうやって関係無い子供を忌み嫌っているのはのは大人だけ。私は別にそんなのはどうでも良かった。

私は、その瞳に魅せられたのかもしれない。綺麗で、何か凄い物が眠ってそうな瞳。
未だにバクバクする心臓のあたりをギュッと抑える。

「綺麗……」

男の子は、驚いたような顔をして森に消えていった。

私がお礼をするのを忘れた事に気づいたのは、家に帰ってからだった。

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